2018年6月28日木曜日

文字を数える

3年生,「一億までの数」の導入場面です。子どもたちに,次のように投げかけます。

「何文字あるでしょう」
大量の文章が両面に印刷されたプリントを配布します。

配布と同時に,子どもたちは文字を数え始めます。ところが,子どもたちは「大変」「面倒」「何時間かかるの?」と,既に悲鳴をあげています。

最初から文字を数えていては,何時間もかかりそうです。このままでは授業時間内に数えきれません。そこで,次のように子どもたちに投げかけます。
「みんな苦労をしているね。どうしたらいいかな?」

まず,生まれてきたのが次の声です。
「横が何文字かわかれば,それに何行あるかを調べて計算すればわかる」

横の文字数×縦の行数で計算しようとするアイディアです。これには,子どもたちも納得です。横の文字数を全員で調べます。その結果,横は20文字あることがわかりました。

続いて,次の声が生まれてきました。
「班で調べる場所を分担したらいいよ」

1人で全部の文字を調べるのは大変です。そこで,分担して調べ,最後にそれらを合計するというアイディアです。これも子どもたちが納得しました。

8つの班で分担して調べます。多くの子どもたちが,20文字×5行ずつに線を入れていました。100文字の固まりを意識したのです。100文字で印を入れることで,「数えやすい」「100の固まりが何個と数えれば,簡単だ」と声があがります。

子どもたちは,班で協力しながら文字を調べていきます。どの班も3000文字前後の文字数であることを調べ上げます。

これらの文字数を,まずは2つのずつ合計していきます。順次合計していくと,1~4班で13570文字,5~8班で12235文字となりました。続いて,この2つの文字数を合計します。どちらの文字数を,1万があります。従って,1万が2つあります。1万が2つでいくつができるかを考えさせます。これは,「2万」とすぐに声があがります。100の固まりと同じように,1万の固まりが2つと考えれば,2万であることは同様の説明ができます。

1万を超える数で大切なことは,基準となる1万がいくつで何万になるのかを捉えることです。しかも,この仕組みが100の固まりや1000の固まりがいくつ分と同じであることに気づくことも大切です。
また,この授業では,約3万の量を子どもたちに実感させたいと考えました。その量を見える範囲で,簡単に実感できるのは文字が適切と考えたのです。子どもたちは,大量の文字量に十分に圧倒されていました。



2018年6月27日水曜日

たしたのにたす?

たしざんの暗算の学習を終えた3年生の子どもたちに,次のように投げかけます。
「ひき算の暗算もできるでしょうか」
子どもたちは,「できるよ」と声をあげます。しかし,「繰り下がりがあると,大変そう」という声もあがります。暗算を行った場合,どの部分の計算が難しいのかが子どもたちなりに見えているようです。

そんな子どもたちに,「71—46」の問題を投げかけます。多くの子どもは,一の位と十の位を分けて計算していました。答えが25になることを確認します。その後,「どうやって25と答えを出したの?」と尋ねます。

N男が次の説明をします。
「71−46を71−50にします」
この説明だけで,教室は騒然となります。「なんで50にするの」「そうか」と賛否両論の声があがります。

前者は,46を,なぜわざわざ50にしたのか理解できない声です。一方,後者の声は50にした意味を理解した声です。
「4をたせば50になって,引きやすくなる」
「繰り下がりがなくなる」

繰り下がりの面倒さを消すために,46を50に変身したのです。これで,子どもたちも46を50に変身した理由に納得です。

71-50=21となります。しかし,これは本当の答えではありません。N男が式の続きを説明します。
「さっき4を増やしたから,今の答えを21−4=17・・・,あれ,違う。21+4=25だ」
N男は,46に4を増やして50にしたのだから,答えは4減らさなければいけないと考えたのです。ところがそれでは,本当の答え25から遠くなってしまいます。それに気づいたN男は,慌てて21に4をたしたのです。
ところが,この説明に疑問の声があがります。
「なんで4をたしたのに,4をまた増やすの?」
「4をたしたんだから,4を減らさなければだめだよ」
「4たさなければいけないという人は,本当の答えが25と分かっているから,4をたすと言っているんだよ」
「本当の答えが分かっていなければ,それは分からないはずだよ」
「46を50にして,4多く減らしたでしょ。だから,答えも4多くしなければいけないんだよ」
「えー,なんで4をまた増やすの?」

46に4を増やしたのに,なぜ,答えの21にさらに4を増やすのか,子どもたちは混とんとしてきました。ここまで子どもたちは,式と言葉だけで話し合いを進めていました。

そこで,次のように投げ返します。
「なぜ4を増やせばいいのか,よく分からないね。言葉でうまく説明できないとき,なにかいい方法はないかな?」
この投げかけに,「図だ」と声があがります。具体物を使って考えれば,この混沌とした状況を打破できるかもしれません。

子どもたちは,10円玉7枚と,1円玉1枚を板書します。50円を減らすので,10円玉の絵を5枚消していきます。この部分までは,子どもたち全員が理解できました。しかし,その後,4円を増やす理由が,まだ見えてきません。
そこで,次のように絵を見ることを促しました。
「みんなは71円持っています。お母さんが46円貸してと言いました。残りは何円になるか考えます。でも,繰り下がりがあって面倒だから,50円をお母さんに貸したということだよね」

絵の状況を,お母さんがお金を借りるという設定にしました。この設定で,子どもたちが動き始めます。
「そうことか,わかった」
「だから,50円貸したんだよね。本当は46円なのに,4円多く貸したから,21円に4円をたすんだよ」
「4円多く貸したから,おつりの4円をお母さんからもらわなければいけないでしょ。だから,おつりの4円をたして21+4=25円だよ」

「おつり」という言葉で,子どもたちが納得しました。

暗算の問題を通して,計算の工夫の視点が生まれてきました。その工夫の背景にある論理的に考える姿を,子どもたちとともに創り出した1時間でした。

2018年6月26日火曜日

平行のある四角形は?

平行・垂直の4年生での実践を紹介しました。その後の授業をお伝えします。

子どもたちに,次のように投げかけます。
「平行のある四角形はいくつあるでしょうか」
子どもたちは,「2こ」「3こ」「4こ」「5こ」「12こ」と様々な数をイメージします。私の発問は,四角形の数を問うています。従って,この額面通り捉えれば無限に四角形は作成できます。ところが子どもたちは,四角形の種類と捉えたようです。ここは,子どもたちの思いに寄り添うことにしました。

子どもたちに,自分の頭にイメージできた四角形をノートに作図させました。それらの図形を,順次黒板に板書させます。
まずは,長方形と正方形が板書されました。この形には,平行が2組あることを確認します。次に子どもたちが板書したのは,平行四辺形です。この図形も平行は2組です。2組という視点で考えれば,長方形と同じ仲間と考えることもできます。そこで,次のように投げかけます。

「長方形も,この形(平行四辺形)も平行が2組なら同じ仲間でいいんじゃないの?」

子どもたちが,猛烈に反論してきます。
「長方形は直角が4つある。でもこの形(平行四辺形)には,直角がない」
「長方形とこの形(平行四辺形)を重ねると,2つの間に三角形の隙間ができる。だから同じ仲間とは言えない」

この形に,子どもたちは「別物」と名前を付けました。子どもたちは,辺の関係から角の関係にも目を向けてきました。よい視点の転換です。

次に,板書されたのは等脚台形でした。この形には,平行が1組しかありません。これまでは,平行が2組の四角形だけしたので,新しい形と考えられます。この四角形には,「別物2」と名前を付けました。

続いて板書されたのは,右上下の2つの角が直角になった台形です。先行学習をしている子どもたちは,この図形が板書された瞬間,「それは,さっき(別物2)と同じ形だよ」と声をあげます。「台形」という視点で見れば,同じ仲間だからです。しかし,先行学習をしていない子どもにとっては,この2つの図形を同じと見ることに違和感があるのです。「さっきとは別だよ」と,考える子どもが主張します。
「だって,この形には直角が2つある」
「別物には直角がないから,別の形だよ」
「長方形と別物2のあいのこだよ」

長方形と台形の,それぞれの特徴を併せ持った図形だという視点です。先行知識に邪魔されないからこそ生まれきた素晴らしい視点です。この形には「別物さん」と名前を付けます。

さらに板書されたのは,ひし形です。今度も子どもから,呟きがあがります。
「それって回転したら,正方形と同じじゃん」
「まっすぐに置いたら,正方形だよ」
ところが,この指摘に対して次の声があがります。
「正方形とは違うよ。角が直角じゃないよ」
「平行が2つあるけど,角が違うから正方形と別物(平行四辺形)のあいのこだよ」

再び角の視点で図形を見直す声が生まれてきたのです。さらに,正方形と平行四辺形の特徴を併せ持つことで,新たな図形であることが見えてきました。

平行のある四角形の数を問うことで,子どもたちのズレを引き出すことできました。さらに,子どもたちが板書した図形を,子どもの素直な見方で見つめ直すことで,それぞれの特徴を引き出すことができた授業です。

2018年6月16日土曜日

ボーリング場から平行の概念を引き出す

4年生の子どもたちに,次のように投げかけます。

「ボーリングをします。どちらのボーリング場でやりたいですか」

2つのボーリング場のレーンを提示します。多くの子どもたちは,Aのボーリング場を選択しました。
一方,Bがいいと考える子どももいました。そこで,ボーリング場を選択した理由をノートに書かせます。

理由を書き終えた子どもたちが,理由を発表します。
「Bがいいです。だって,Bは長さが違うから短い方でボーリングしたらお得だから」
「長さが違うのは,平等じゃないよ」
「Aは,長さが全部同じだから平等」
「Aは,どのレーンも長さが同じだよ」
「Bだと左端のレーンならいいけど,右端のレーンになったら長いからいやだよね」
「長さが同じ方がけんかにならない。Bだとけんかになるよ」
「Aは全部同じだからいいんだよ」(K子)

子どもたちは,上下の2本の直線の間にあるレーンの縦の長さに着目しました。Aはどのレーンも同じ長さ,Bは長さが異なることに気づいていきました。この気づきを価値づけます。

次に,K子の声を子どもたちに投げ返します。

「K子さんが『全部同じだよ』と言っているけど,どういうことかわかるかな」

レーンの縦の長さが等しいことを説明する声と同時に,次の声もあがってきました。
「角も同じだよ」
「Bは斜めになっているでしょ」
「Aは4つとも同じ角だよ」
「Bは上の角は100°,Aは90°」

「同じ」の意味を子どもたちに投げ返すことで,長さだけではなく角の大きさも同じ部分があることが見えてきました。
そんな子どもたちに,「もっとレーンが増えたら,どんなボーリング場ができるかな」と尋ねます。

「Aはどこまで行っても同じ長さのレーンになる」
「Bは右に行くと,どんどん遠くなる。反対に左に行くとどんどん近くなる」
「最後は三角形になる」
「ありえない」

平行な2直線は,永遠に交わらないことが見えてきました。

最後に,次のように投げかけます。
「もう1つボーリング場があるのを忘れていました。このボーリング場は,けんかにならないレーンですか,けんかになるレーンですか」

3つ目のボーリング場を提示します。子どもたちは,ボーリング場の絵を見つめます。「えっ,どっち」と子どもたちの判断は分裂しました。

本当はどちらのボーリング場なのか,子どもたちは知りたくなっています。「ボーリング場の印刷された紙がほしい」と声があがります。子どもたちが動き出した姿です。そこで,同じ図を配布します。子どもたちは,角度や長さを測定します。
「あれ,けんかの起きる方だ。角度は93°」
「レーンの縦の長さも微妙に違う」
「上にまっすぐな(平行)線を引くと,隙間ができる」

3つ目のボーリング場は,微妙に平行ではありません。微妙な図を提示することで,子どもたちは平行か否かを確認したくなったのです。さらに,角の大きさと長さの視点で,平行か否かを実験することもできました。

ボーリング場を素材とすることで,平行の概念を子どもから引き出すことができた1時間でした。


2018年6月9日土曜日

円のはしからはしの長さ

 3年生の子どもたちに,次のように投げかけます。
「円が5つつながっています。端から端までの長さは何㎝でしょう」

この段階では,まだ図は提示していません。子どもの頭の中には,様々な円がイメージされています。そのイメージは,子どもによってズレています。そのズレが,子どもの声となって表出します。
「円の直径か半径がわからないとできない」
「重なり方がわからないとできない」
「くっついているの?」
「ベン図みたいになっているの?」

半径や重なり方のイメージが異なれば,正しい長さを求めることができません。どんな情報が必要なのかを子どもから引き出すことができました。

そこで,右の図を提示します。円と円はぴったりとくっついています。この図を見た当初,子どもたちは長さを求められると考えていました。ところが,しばらくすると円の幅が分からないと求めれないことに気付きます。

円の半径は8㎝,幅は2㎝であることを示します。子どもたちは,長さを求められそうだと考え,ノートに向かいます。ところが,しばらくすると「できない」「難しい」という声が聞こえてきます。一方,「できた」という声も聞こえてきました。

ある子どもは,次のような式を書きました。

①8×2=16
②2×2=4
③16−4=12
④12×4=48
⑤16+48=64    答え64㎝

授業では,時間をかけてこの式の読解を行いました。

①は,円の直径を求める式です。
②は,つながっている部分の円の幅を示しています。
③は,上図であれば左端の赤い円の左端の円周上から隣の青い円の円周上までの長さを示しています。
④は,③の12㎝が4個分あることを示しています。これで,左端の赤い円の円周上から右端の赤い円の左の円周部分までの長さが分かります。
⑤は,まだたされていない右端の赤い円の直径をたす計算です。

「難しい」と考えていた子どもも,この式の読解を通して「わかった」「すっきりした」と納得することができました。




2018年6月2日土曜日

算数講座 「子どもが分かる授業は、子どもと作る授業!」ご案内

6月16日(土)大阪府寝屋川市で算数講座を開催します。新学期がスタートして2カ月が過ぎました。子どもたちは,算数の授業を好きになり,算数の力は向上しているでしょうか。

今回の講座では,子どもが「算数が大好き」「考えることって愉しい」と言ってくれる算数授業の創り方を,具体的な授業を事例に先生方と一緒に考えていきます。

当日の主な日程は次の通りです。


算数講座
テーマ「子どもが分かる授業は、子どもと作る授業!」
関西大学初等部 尾﨑正彦 先生

日 時:平成30年6月16日(土) 
受付開始13:00 13:30~17:00
場 所:寝屋川市総合センター(中央公民館)
〒572-8533 大阪府寝屋川市池田西町28-22
電話/ 072-824-1181
参加費:2,500円 定員:40名  駐車場あり

日 程
13:00~    受付
13:30~13:35  挨拶
13:35~14:15  実践報告  
「子どもの“問い”から作る算数授業を目指して!」
寝屋川市立池田小学校 瀬戸健司先生
14:20~16:20  算数講座 
「子どもが分かる授業は、子どもと作る授業!」
関西大学初等部 尾﨑正彦 先生
16:35~16:55  質問タイム 
16:55~17:00  挨拶

申込は,以下のアドレスからお願いします!

http://kokucheese.com/event/index/517819/