2019年12月29日日曜日

かわいい和歌山の子どもたち

今年最後の授業は,和歌山大学附属小学校3年生との授業でした。4桁同士のたし算とひき算の計算問題に取り組みました。

子どもの素直な論理に寄り添いながら授業を進めていきました。(授業の詳細はまた別の機会にお知らせします)多くの子どもが活躍する授業となりました。授業の終わりには,「もう終わりなの」「もっとやりたい」といううれしい声があがりました。しかし,もう私の体力は限界寸前でした。私が「もう疲れたからおしまいだよ」というと,今度は子どもたちから,「だったら5分休憩して,またやろうよ」と声が続きました。算数を愉しんでいる素敵な子どもの姿に出会えた授業でした。

ありがとう!和歌山大学附属小の子どもたち!

2019年12月25日水曜日

明日は全国算数授業研究会和歌山大会!

明日,12月26日(木)は全国算数授業研究会和歌山大会です。私は3年生の子どもたちに授業を行います。子どもの論理を引き出し,その論理に寄り添った授業を展開したいと考えています。

本研究大会は,おかげさまで定員を超えたため申し込みを〆切っています。当日受付はありません。参加される先生方は,お気をつけてお越しください。

私にとっては今年最後の公開授業納めになります!

2019年12月19日木曜日

3年小数の差


3年生の子どもたちに,「差が大きい方が勝ちゲームをしよう」と投げかけます。

ゲームは2人1組で行います。1人にブロックを25個ずつ配ります。1個のブロックは0.1点と数えます。従って,最初の持ち点は各自2.5点です。
隣同士でジャンケンをします。パーで勝つと0.3点,チョキで勝つと0.2点,グーで勝つと0.1点,相手からブロックをもらえます。

子どもたちは,元気にジャンケンを行います。2回戦を終えた子どもたちが,自分のペアの得点を計算していきます。しばらくすると,「引き分けだ」という声が多く聞こえてきます。一方,「勝った」という喜びの声も聞こえてきます。

全員が計算を終えた時点で,最も多く聞こえたのは「引き分け」の声でした。そこで,この子どもたちの得点を順に聞いていきます。

結果は右のようになりました。どのペアも引き分けになっています。この結果を見た子どもから,「絶対に引き分けだ」「だって,全部が引き分けになっているか」と声があがります。発表されたペア以外にも,ほとんどのペアが引き分けになっています。
多くの子どもは,ゲームを行えば必ず勝負がつくと考えていました。ところが,勝負はつかずに引き分けになりました。予想とのズレに出会ったのです。そのため,「なんで引き分けなの?」と疑問の声があがります。

するとN男が「秘密が分かった」と声をあげます。
「⑤⑥なら,0.3と0.7をたすと1.0点。次に一の位の1と3と繰り上がりの1をたすと5。5点になるから引き分けなんだ」
N男の声をきっかけに,子どもたちに視点が広がっていきます。
「③④も同じだ。2.2点と2.8点をたすと5点になっている」
「⑦⑧もそうだね。①②も5点だよ」
子どもたちは,引き分けになる理由を探していきました。その結果,辿り着いたのが1回目,2回目のペアの合計点が5点になるという共通点の発見でした。子どもたちの発見は,引き分けになる理由としては完全なものではありません。しかし,複数のデータを比較する中から,共通する部分を見つけ出そうとした見方・考え方には価値があります。彼らの発見を聞いた多くの子どもからは,「本当だ」「すごーい」と驚きの声があがってきました。

子どもたちの発見は,さらなる学びの広がりへとつながります。S男が「あのね」と言いながら説明を行います。
「あのね。もし,5.1点だとしたらで考えました。T君が1回目5.1点で2回目4.2点,G君が1回目0点で2回目0.9点とったとします。すると,T君は0.9点でG君は0.9点で,やっぱり引き分けです」

S男は,最初の持ち点が5点の時にだけ引き分けになるのではないかと考えたのです。5点が特殊な事例なのか否かを調べたくなったのです。そこで,5.1点の場合を確かめたのです。その結果,5点は特殊な事例ではなく,一般的なものであったことが見えてきたのです。S男の発見に,子どもたちからも驚きの声があがりました。場面を自ら拡張して考えたS男の見方・考え方も優れています。

この時間は,小数の引き算として位置付いています。単に引き算を考えるのではなく,ゲームを通して驚きと発見がある引き算場面をデザインし,さらに子どもの見方・考え方を培うことにもつながる1時間となりました。

勝ったと喜んでいた子どもたちは,単なる計算間違いでした。結果は全ペアが引き分けになりました。





2019年12月17日火曜日

第22回 冬季全国算数授業研究大会 和歌山大会満員御礼

12月26日,全国算数授業研究会和歌山大会が和歌山大学附属小学校で開催されます。私も,3年生に公開授業を行います。

さて,おかげさまで大会申し込みの定員を超えたため,申し込みを〆切らせていただきました。多くの申し込みをいただきありがとうございました。12月26日,和歌山でお会いしましょう!

2019年12月12日木曜日

大きな数の数え方

1年生に「りんごの数は何個でしょう」と投げかけます。右のリンゴの画像を提示します。子どもたちは,「20個」「35個」などとリンゴの予想数を発表していきます。それと同時に,「よくわからないから,同じ紙がほしい」と声をあげてきます。そこで,同じリンゴが印刷された紙を配布します。

子どもたちがリンゴの数を数えていきます。数え方は様々です。

「1,2,3・・・」
「2,4,6・・・」
「5,10,15・・・」
「10,20」

多くの子どもは10ずつまとめて数えていました。そこで,「10ずつ数えるお友だちが多いんだけど,その気持ちは分かるかな」と尋ねます。

「だって,10でまとめたほうが分かりやすい」
「前の勉強で10の固まりで考えると簡単というのをやったでしょ。それと同じ」
「10月16日の勉強で,10を作って考えると簡単に計算ができるのをやったでしょ。だから,10でまとめると簡単」

子どもたちは,既習の10のまとまりのよさを想起することができました。1年生でも,過去のノートを探しながら,どの学習とつながっているのかを具体的に指摘していくことができるのです。すばらしい1年生です。

10ずつ数えるよさを引き出すことができました。この気付きをもとに,20を超える数の表記の仕方も指導していきます。

さて,今回のリンゴの数は28個です。1ずつ数えても,2ずつ,5ずつ数えても,それほど大変ではありません。そのためか,「2ずつがいいよ」と考えている子どももいました。

そこで,今度は右のリンゴを提示します。見ただけで子どもからは,「うわー」「多過ぎ」と声があがります。
同じ紙を子どもたちに配布し,リンゴの数を数えさせます。リンゴの数が多すぎることもあり,ほとんどの子どもは10ずつの固まりを作って数えていました。一方,1つずつ,2ずつ数える子どももいました。

1ずつ数えた紙,2ずつ数えた紙をテレビに投影し,子どもたちに数えさせます。いずれの数え方も,途中で「あれ,どこまで数えたっけ?」「ここ,まただぶった?」と分からなくなってしまいました。それを見ていた別の子どもが,「そうじゃないよ!」と元気よくテレビの前に登場してきます。ところが,その子どもたちも途中で何個まで数えたのかが分からなくなってしまいました。1年生らしい微笑ましい光景です。

今回のリンゴの数は80個です。10の固まりで数えれば,10が8個。従って,10,20,30・・・80と一気に数えることができます。

ある程度大きな数を数える体験を通すことで,子どもたちは10ずつ数えるよさを実感していくのです。最初に提示した28個程度では,そのよさを実感することは難しいのです。10ずつ数えるよさを子どもたちにすぐに実感させることは簡単ではありません。2段構えで教材を提示し,体験をさせていくことが大切です。

2019年12月7日土曜日

1mを超える分数

3年生の分数学習の後半です。子どもたちに,「次の大きさを図で表そう」と投げかけます。

「1mと1/5m」と大きさを板書し,右の図も板書します。図を見た子どもからは,「えっ?」「どういうこと」「意味分からない」という声が聞こえてきます。

「問題の意味が分からない」という声も聞こえてきました。そこで,問題の意味をクラス全体で考えていきます。

「1mの長さと,あと1/5mの長さがあるってことだよ」
「でも,それを図でどう表すかがわからないんだよ」
「だから,1mの長さをかいて,あと1/5mをかけばいいんだよ」


このように子どもたちは説明してきます。再度,子どもたちはノートに作図を始めます。子どもたちのノートには,2種類の図が描かれていました。そこで,まずは右の図を提示します。

1m分を青で色を塗ります。さらにその図の上に,残りの1/5m分を赤で重ね塗りをしたのです。この図に対して,「そうそう!」「わかる」と納得の声が多数あがります。一方,神妙な表情で首を捻っている子どももいます。首を捻っている子どもに,その理由を尋ねます。

「重ねて塗るのは,なんか変な気がする・・・」

1mと1/5mを分割するのではなく,重ねているので,全体としては1mに見えてしまうことに違和感を抱いたのです。この違和感を共有していきます。すると,「だったら,別の塗り方がある」「『と』だよ」と声があがります。

「問題は1mと1/5mでしょ。『と』と書いてあるんだから,1m分とあと1/5m分を分けてかくんだよ」

右手で1m分を,左手で1/5m分を表現しながら説明をしていきました。この説明をきっかけに,右の図が生まれてきました。この図であれば,前述の違和感は解消されます。「『と』はたすってことだね」という声も生まれてきました。

基準量である1mを超える分数を表現するのは,この時間が初めてでした。「と」の1文字に着目していくことで,分数表現の仕方の概念を拡張していくことができた1時間でした。

2019年12月3日火曜日

量分数と分割分数の壁を乗り越える

3年生の「分数」学習もいよいよ大詰めです。子どもたちに「□mの図はどれでしょう」と投げかけます。

1問目は,「2/3m」を提示します。子どもたちは,一斉に左の図を指さします。理由を説明してきます。

「だって,1mを3つに分けたわけたうちの2つ分だからです」

的確に説明ができました。
第2問目は,「1/4m」で,提示したのは右の図です。左の図は,全員が1/4mだとして指さします。1問目と同じように,「1mを4つに分けたうちの1つ分」と説明してきます。
一方,意見が分かれたのが右の図です。2mを4等分した図です。この図を1/4mと考える子どもの論理を,全員で考えます。

「2mを4つに分けた1つ分だから」

1問目の説明を活用した見方です。この見方は,高学年でも混同が見られるものです。さて,この見方について「でも,それは違う」と声があがります。

「それは1/4mじゃなくて,2/4mだよ」
「もし,青の長さが1/4mだとします。そうすると,その隣は,2/4mになる。その隣は,3/4m。最後は4/4mになる。でも,本当は2mだから8/4mにならないとおかしい」(S男)

このS男の説明に,「そういうことか!」と声があがってきました。しかし,この説明は1回ではクラス全体には伝わりません。時間をかけて,クラス全体に共有していきました。
S男の説明は,敢えて青のテープの長さが1/4mだとしたらと仮定した上で論を進めていったのです。1/4mと考える友だちの論理をいったん認めたのです。しかし,その論理でその先を考えていくと,最終的に矛盾する場面(本当は8/4mなのに4/4mになっている)に出会うことを説明したのです。子どもにとっては,このように相手の論理を正しいと仮定して,その後の展開を進める矛盾に気付かせる展開が納得しやすいのかもしれません。

量分数と分割分数の混同は,高学年でもよく見られます。その解決方法の1つが見えた1時間でした。


分数と重さがつながる

3年生「分数」の1コマです。子どもたちに,「何mですか」と投げかけ図を提示します。

右の図であれば,2/9mと子どもたちは答えます。その理由を,「1mを9つに分けた2つ分だから」と説明してきます。

後半,右の図を提示ます。「わかる」と声があがります。そこで,ノートに何mかを書かせます。この活動の中で,「式も書ける」と声があがります。右の図から,式が見えたのです。そこで,どのような式が見えたのかを尋ねます。

「9/9-2/9=7/9」
「9/9は1mのことでしょ」
「2/9は色の塗っていない白いところ」

式の意味を図とつなげながら説明していきます。1mが複数に分割された図を目にしたことで,式化したくなったのです。この式の意味が理解できたところで,今度は次の声があがってきました。

「これって,重さと同じだ」

この声を聞いて,「あー」と納得の声があがります。一方,「どういうこと?」という声もあがります。そこで,この声の意味をクラス全体で共有していきます。

「〇月〇日のノートを見てください。重さの勉強ではかりの目盛りを読んだでしょ」
「1350gは,1000gから350gをたし算するよりも,1500gから150gをひき算をした方が速かったでしょ。それと同じだよ」
「目盛りの近い方から計算した方が,簡単だったもんね。これも(長さ)も,近い目盛りを読むのと同じだね」
「テープの長さは,青いマスを7つ分数えるよりも,白いマスが2つしかないから,白をひき算した方が速いよ」

分数と重さは別の領域です。しかし,この2つの領域には考え方の視点では共通する部分があることに子どもたちは気付いたのです。すばらしい見方・考え方が生まれてきました。

2019年11月24日日曜日

量分数の誤答を乗り越える

3年生「分数」2時間目です。前時は1mを基準量にした量分数を取り扱いました。本時は,1Lを基準量として取り上げます。さらに,内部を前時は10分割でしたが,本時は5分割としました。

右の図を提示し,「青い水は何Lですか?」と尋ねます。前時の分数を使えば,簡単だと思っていました。しかし,子どもの学びは簡単に一直線には進みません。子どもの考えはバラバラになりました。ズレが生まれました。

まずは,「1/1000L」の考えを取り上げます。「絶対に違う」という声が多数あがります。しかし,この声を取り上げる前に,「なんで1/1000Lと考えたか,気持ちは分かるかな」と1/1000Lの論理を読解します。

「1Lは1000mLでしょ。そして,青いところは1つ分だから,1/1000Lと考えたんだよ」

子どもたちは,鋭く1/1000Lの論理を読み解いていきます。そこで,「だったら,1/1000Lでいいんだね」と投げかけます。子どもたちは,この論理をどのようにして乗り越えていくのでしょうか。子どもたちは,次のように説明してきました。

「もし,1/1000Lだったとします。すると,次の目盛りは2/1000L,その次は3/1000L,その次は4/1000L,最後は5/1000Lになる」
「本当は一番上は1000/1000Lになるはずなのに,5/1000Lだから違うよ」

子どもたちが考えたのは,友だちの考え方が正しいとしたらと「仮定」して,場面を拡張していく説明でした。「仮定」を使った説明は,子どもたちには分かりやすかったようです。「そういうことか」という納得の声が多数あがりました。

この他にも,「2/1000L」「1/10L」「2/5L」の考え方がありました。これらも,「仮定」を使った説明を用いることで乗り越えていくことができました。誤答を乗り越える際,正しい答えを説明することで相手を納得させることがあります。しかし,この方法ではうまく納得を引き出せないことがあります。しかし,今回のように相手の論理が正しいとする「仮定」の立場をとり,場面を拡張してその論理通りに考えていきます。その結果,その論理の矛盾に気付かせることも有効な話し合いの手だてとなることが見えた1時間でした。


3年「分数」の導入

3年生「分数」単元の1時間目の授業です。右上図を提示し,次のように投げかけます。
「赤いテープの長さは,何㎝ですか」

これは簡単です。「5㎝」と子どもたちがノートに答えを書きます。そこで,「本当に5㎝ですか」と尋ねます。子どもたちは,次のように説明します。

「だって,10㎝の半分だから5㎝だよ」

次に,右下図を提示します。同様に赤のテープの長さが何㎝か考えさせます。子どもたちは,「10㎝」とノートに長さを記述します。そこで,「本当に10㎝でいいの」と尋ねます。子どもたちが説明します。

「40÷4で10㎝だよ」
「だって,40㎝の中が4つに分かれているよ」
「4個に分けた1つ分だから40÷4なんだよ」

ここで引き出したい見方は,この「4個に分けた1つ分」という説明でした。この説明は,他の子どもたちからも納得の声があがります。これで,赤いテープが10㎝であることが見えてきました。

今度は,右の図を提示します。しかし,尋ね方を変えます。
「赤いテープは何mですか?」

私の質問と同時に,「えっ?」「できない」という声があがります。先ほどまでの問題とのズレを実感した声です。そこで,「なんで『えっ?』と言った友だちがいるのかな?」と気持ちを読解させます。

「だって,さっきまでは㎝で答えていた。でも,今度はmで答えるから」
「mでは答えられないよ」
「だって1mないんだよ」
「㎝なら言えるけど」
「㎝なら,ますが1mの中に10個あって3つ分が赤いから30㎝」
「100÷10で1ますが10㎝と分かるよね」
「でも,mでは言えないよ」

赤にテープを30㎝とは表現できても,mの単位では表現できないと多くの子どもたちは考えました。ところがここで,「できるよ」「さっきのを使えばいいよ」という声があがります。「さっき」というのは2問目の問題のことです。

「だからね,1mを10個に分けた3つ分と言えばいいんじゃない」(N男)
「そうか,2問目も『4個に分けた1つ分』と言ってたもんね」

N男の説明は,量分数の見方そのものです。しかも,N男の見方が2問目の考え方を活用していることにも価値があります。このN男の見方を大いに褒めました。

N男の「1mを10個に分けた3つ分」の言い方に対して,「なんか長すぎるなあ」という声もあがります。それをきっかけに,2年生の分数表記を想起する声があがってきました。N男の説明は,「3/10m」と表現することができます。

子どもたちが知っている表現方法の限界に出会わせることで,新たな表現方法(量分数)に気付かせる展開を構成してみました。



2019年11月13日水曜日

「ひきざん」と「たしざん」がつながる

1年生の繰り下がりのあるひきざんの導入場面です。

「どんぐりが12個あります。リスが9個食べました。残りは何個でしょう」

子どもたちは,「わかった!」と元気に声をあげます。そこで,「答えをノートに書きましょう」と投げかけます。ノートに向かい始めた子どもから,「式も書けるよ」「図も描けるよ」という声があがります。式や図をかくことを教師が指示しなくても,子どもから式や図をかきたくなる気持ちを引き出すことが大切です。
さて,子どもの呟きをもとに「式も図もかけるの?すごいね」と褒めていきます。子どもたちは,式や図もノートにかいていきます。

子どもたちが求めた答えは「3個」でした。式は「12−9」でした。そこで,「どうやってどんぐりが3個と分かったの?」と尋ねます。

「図を描きました。12個の丸を描いて,食べたどんぐりが9個だから丸に9個×をつけます。残った丸を数えたら3個と分かります」
「私は,1個ずつ引いていきました。12,11でまず2個引きます。次に残った10個から,10,9・・・5,4と引いていくと,残りが3個だと分かります」

図を描いて考える,指を使って考えるの2つの方法が発表されました。いずれの方法も,子どもたちは納得です。そこで,次のように投げかけます。

「答えを出すには,図を描くか指を使えばいいんだね」

この投げかけに,「そうだよ」という声と同時に,「式でもできるよ」「指なんていらないよ」「図もいらないよ」と声があがります。様々な式が子どものノートには書かれていました。その中の右の式を板書します。
式を見た子どもの反応は,2つに分かれました。「えっ?」という反応と,「あー」という反応です。前者の反応は,この式を作った論理が見えていないことが原因です。
そこで,1つずつ式の意味を読解していくことにしました。まずは,「10−9」についてです。

「12を10と2に分けるでしょ」

この説明に対して,「なんで10と2にするの?」という反応が生まれます。まだ,上記の式の論理が見えていないからです。

「10から食べた9を引くと1でしょ」
「だから10−9=1」
「10から9を引くと簡単だ」
「10+も簡単だったもんね」
「だから,10+も10−も10の固まりで考えるといい」
「その1に,残った2をたせば残りがわかる」

「1+2」の式の意味もここで説明されました。子どもたちは,10の固まりを基準にたし算をしたりひき算をしたりする考え方が簡単だと説明してきました。この考え方は,3口の計算で学んだ考え方です。3口の計算や既習のたし算とつなげた見方・考え方が生まれてきたのです。多くの子どもが,10−も10+と同様に簡単だと考えました。一方,10−は簡単ではないと考える子どももいました。

そこで,10−はそれ以外のひき算よりも簡単なのか実験することにしました。子どもたちに,次のように投げかけます。
「これから言う式の答えが分かったら,黙って手をあげましょう」
10−7,13−7,10−9,14−9などとの式を提示していきます。10からひく計算は,どの子どももすぐに手があがりました。一方,13や14からひく計算に対しては,「えっ?」と声をあげる子どもや,10からひく計算よりも時間がかかる子どもが多く見られました。

10からひく方が計算が簡単だということを,子どもたちは実感していきました。繰り下がりのあるひき算で,10の固まりを作って考えるよさを子どもから引き出すことができただけでなく,既習のたし算での10の固まりを作るよさともつなげて考えることができた1時間となりました。

2020年2月関西大学初等部研究会申し込み開始

2020年2月1日(土)に,関西大学初等部第10回公開研究会が開催されます。申し込みが始まりました。

今回の研究テーマは次の通りです。
「思考力育成を支える主体的学びを引き出す授業デザイン
 〜質の高いズレを主体的学びにつなげる授業展開を探る〜」

私は,3年生の公開授業を行います。子どもの論理的思考力をどこまで引き出し,共有できるのかを考える1時間にしたいと考えています。

事前申し込み制です。1月15日(水)16時で申し込みは〆切ります。当日受付はありません。参加予定の方は,お早めに以下のアドレスから申し込みください。尚,先着1000名に達した場合はそこで〆切りとなりますので,ご承知おきください。

http://www.kansai-u.ac.jp/elementary/education/conference/index.html

2019年11月9日土曜日

1年「かたち」と「たしざん」

1年生に「かたち」の学習があります。その1コマです。

子どもたちに次のように投げかけます。

「三角形4枚で,次の形はできるかな」

ダイヤ型が2つ横に並んだシルエットを提示します。このシルエットを見た子どもたちは,「こんなの簡単だよ」「幼稚園レベルだよ」と声をあげてきます。

三角形4枚を使って,ダイヤ型2枚が本当にできるのか子どもたちは,実験していきます。できた図形は,そのままノートに貼り付けていきます。

子どもたちがノートに貼り終えたところで,「どんな形ができたかな」と投げかけます。

「三角を横にしたのをつなげるとできるよ」
「三角を縦にしてもできるよ」

最初に発表されたのは,右の図形です。しかし,「まだあるよ」「あと2つあるよ」という声があがってきます。

そこで生まれてきたのは,右の図形です。縦型と横型を組み合わせたものです。全部で4つのパターンがあることが見えてきました。

ここでO男が,「(縦型と横型の組み合わせは)あれと同じだ」と声をあげます。この時点で,他の子どもたちにはO男の気持ちは分かりません。O男の「あれ」とはなんなのか?

O男が1週間程前のノートを開いて説明します。そこには,答えが17になる式探しをしたときの式が書かれていました。「9+8」「8+9」「10+7」「7+10」・・・などの式とその種類数を調べた学習場面です。その学習では,式の種類を探すときに,「10+7」が最初に見つかったときは,次の式はその式のたたされる数とたす数を入れ替えれば式がすぐに見つかるという発見があったのです。
つまり,O男はそこでの式探しの考え方と同じ形の図形探しの考え方が共通していると考えたのです。交換法則が式だけではなく,図形にも当てはめられると考えたのです。

全く関係がないように見える数と計算領域と図形領域に,考え方の共通点があることを見いだしたのです。1年生でも素晴らしい見方・考え方ができることを実感した1コマでした。






重さの学習で大切な視点

3年生「重さ」の学習の導入場面です。

子どもたちに,右の3つのブロックを提示し,次のように投げかけます。
「重たい順に順位をつけましょう」

4人1グループに,ブロックを配布します。子どもたちは,手に持って重さを判別しようとしますが,これでははっきりとしません。
そこで,次に子どもたちが考えたのは定規を使ってシーソーを作ることでした。定規の両端にブロックを載せて,重たい方が下がることで順位を判断しようとしました。子どもたちの日常経験から生まれてきた実験方法です。ブロックが定規から滑り落ちないように,ブロックを定規に両面テープで貼り付けるグループもありました。

測定終了後,実験結果を板書させます。結果は,右のようにグループでバラバラになりました。正方形型が一番重たいことは,どの班も共通していましたが,丸型と長方形型の順位はバラバラになりました。

子どもたちは,この原因を測定方法の不正確さにあると考えました。
「ブロックを中心から同じ長さに置いていないんじゃないかな」
「ブロックを片方は寝かせて置いて,もう片方は立てて置いたら重さが変わるよ」

そこで,これらの注意点を意識しながら再実験を行います。しかし,結果はバラバラのままでした。

ここで,ある写真を提示します。それはあるグループの測定の様子を写した写真です。そこには,シーソーの上に置かれた片方のブロックの横に定規を立て置き,何かを測定している様子が写っています。子どもたちに,「なにをしているのか分かるかな」と投げかけます。定規でなにをしようとしているのか,その行動の意図を読解させました。

「地面からの高さを測っている」
「高さを測れば重さの違いが分かる」
「左のブロックまでの高さが3㎝だとします。右が4㎝だとします。この場合は,左の方が重たいことが分かります」

3㎝・4㎝という具体例が説明に加えられたことで,子どもたちは「あー,そういうことか」と納得をしました。

重さの学習で大切な見方・考え方は,目には見えない重さを数値化することで見えるようにすることです。それは,このように長さを重さを置き換える見方・考え方でも構わないのです。子どもたちは,既習の範囲内で重さを数値化できる方法を考えたのです。「g」「㎏」などの重さの単位自体は教える内容です。しかし,いきなりその単位を教えるのではなく,数値化することで見えなかった重さの世界が見えるようになるよさを実感させることが,重さ単元の重要な見方・考え方なのです。

2019年11月7日木曜日

第10回教科書活用セミナー募集開始〜算数授業で育てる見方・考え方〜

お待たせしました。第10回教科書活用セミナーの募集が始まりました。今回のテーマは,「算数授業で育てる見方・考え方とは何か」です。

見方・考え方は新学習指導要領の目玉の1つでもあります。見方・考え方とは,そもそもなにか,見方・考え方を活用する授業とは具体的になにをすればいいのかなど,先生方とともに考える1日としたいと考えています。

詳細は,以下をご覧ください。

期日:2020年1月18日(水)


算数教科書活用セミナー・第10回 (吹田大会) 

【テーマ】算数授業で育てる見方・考え方とは何か 

◆新学習指導要領の完全実施が迫ります。「数学的な見方・考え方」は汎用的な力を育てる重要な視点であり、授業改善に欠かせません。単に「分かること」をゴールにするのではなく、学んだことが他の場面に転移する力を育てるところまでねらいます。2本の模擬授業を通して、見方・考え方について学び合いましょう。◆模擬授業は、第5学年「割合」と、第3学年「表とグラフ」の、単元導入場面です。「割合学習」は新要領改定の目玉です。「表とグラフ」は新領域「データの活用」としても注目を浴びます。これらの単元で育てたい「見方・考え方」とは何でしょうか。◆講演は、本研究会代表の尾﨑正彦です。 

【プログラム】 
◆12:00 受付開始 

◆12:30~13:15 
講座 『算数授業で育てる見方・考え方とは何か』尾﨑正彦 (45分) 

◆13:30~15:00 
教科書を活用した「数学的な見方・考え方を育てる」模擬授業(30分×2本) 

① 有吉克哲先生の「割合」(5年)の導入授業 
② 内田英樹先生の「表とグラフ」(3年)の導入授業 

※小グループで学びのシェア(参加者全員)。 
※尾﨑正彦のコメント。 

◆15:15~16:00 
『3学期単元.攻略法』 ~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 
1年「大きいかず」 
2年「簡単な分数」 
3年「表とグラフ」 
4年「分数」 
5年「割合」 
6年「資料の整理」 

◆16:00~16:30 
算数授業づくりQ&A 

【会場】『吹田市勤労者会館』(大研修室1) 
【参加費】2000円 

申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://kokucheese.com/event/index/584417/

2019年10月29日火曜日

倍を図にするのは難しい

3年生の子どもたちに,次の問題を提示します。

「赤と青のテープがあります。赤のテープの長さは27㎝です。青のテープの長さが赤のテープの長さの6倍のとき,青のテープの長さの何㎝ですか」

子どもたちは,「簡単」と声をあげてきます。計算をして,青のテープの長さを求めていきます。計算をしている中から,「図にできるよ」という声が聞こえてきました。そこで,「図にもできるの?」と子どもたちに投げかけます。全員が,「できるよ」「簡単」と声をあげます。

ノートに図を描かせました。「簡単」と言っていた子どもたちですが,ノートに描かれた図は同じではありませんでした。正しく6倍を表現している図と,そうではない図です。

右の図を黒板に提示します。そして,「この図を描いた友だちに気持ちは分かるかな」と尋ねます。

「赤が青の図の中に,1,2,3,・・・6個分あるってことだよ」
「6個あるからいいね」

ほとんどの子どもたちが,この図に納得しています。ところが,「あれ,なんかおかしい」「7倍」という声が聞こえてきます。しかし,「7倍」という声に対して,「なんで7倍」という声もあがってきます。上の図が7倍に見える理由を,子どもたちが説明します。

「青の1個目と2個目の境目をスタートと考ると,(黒板の図が)6倍に見えてしまう。でも,境目はそこじゃない」
「赤と青が同じなら,それが1個分」
「青の1個分と赤の1個分は同じ長さ」
「青の1個分は1倍,2個分は2倍・・・,6個分は6倍だから,右端は7個分だから7倍になる」
「7個分はいらない」

多くの子どもたちは,赤の真下の青のテープ図の部分を0倍と考えたのです。しかし,その部分は1倍と考えることを,子どもたちは話し合いを通して見いだしてきました。子どもたちが,話し合いを進めるたびに,「そういうことか」「わかった」という納得の声が次々とあがってきました。

この問題の答え自体は,全員が計算で求めることができていました。ところが,それを図に表現するとズレが生まれたのです。図と式の理解度に差が見えた1時間でもありました。

8+8はできない?

1年生は繰り上がりのあるたしざんの学習を進めています。これまで子どもたちは,たされる数かたされる数のいずれか一方を分解し,10を作ってから残りの数とたすという学習を進めてきました。8+3であれば,3を2と1に分解します。その上で,8+2=10と10の固まりを作ります。その後,10+1=11と計算します。このような計算方法について,子どもたちは次のように感じていました。

「だって,10の固まりを作ってから計算した方が簡単だよ」
「10+いくつ は簡単に計算できる。9+いくつ 8+いくつ はわかりにくい」
「7+3+5の3つのたしざんでも,7+3=10を作ってから残りの5をたしたでしょ。10に5をたすと簡単だから,同じように考えたんだ」

10の固まりを基準に考える良さをこれまでの学習で実感しているからこそ,上のような声が生まれてくるのです。

10の固まりの計算を作る過程で,多くの子どもは小さい方の数を分解した方が計算が簡単だと考えました。9+3であれば,10の固まりを考えるときに,「9はあといくつで10ができる」と考える方が,「3はあといくつで10ができる」と考えるよりも簡単に残りの数が見つけられると実感しているからです。

さて,そんな子どもたちに「8+8」を提示します。すると,「えー」「できない」と声があがります。たされる数もたす数も同数です。このタイプの問題とは初めての出会いです。「できない」の声を受けて,「8+8の答えは出せないんだね」と投げかけます。

「答え出せるよ」
「そうだよ。どっちかを分ければいいんだよ」
「私は最初の8(たされる数)をわける」

子どもたちは,たされる数かたす数のどちらかを2と6に分解して,計算を進めていきます。このように考えれば,8+8もこれまでと同じ方法で計算ができます。

ところが,T男がニコニコしながら計算する姿が見られました。T男のノートには8+8の下に7+9の式がかかれていました。7と9では7が小さい数です。そこで,その7を6と1に分解し10を作っていました。小さい数を分解するという前時までの学習に当てはまるように,8+8の式を変身したのです。すばらしい視点です。

T男の式を板書し,次のように投げかけます。

「8+8の式なのに,7+9に変身した気持ちは分かるかな」

子どもたちが説明します。

「8から1ひくと7。8に1をたして9」
「8から1をひいて7にしたから,8に1をたさないとだめなんだよ。だから8+1で9にした」
「1をひいたから1をたさないと答えが変わってしまうよ」
「1をひいて1をたせば,ちょうどよくなる」

1年生なりに,T男の式変形のきまりを説明することができました。8+8の計算を行うだけなら,7+9に変身する必要はありません。しかし,T男の見方は「計算の工夫」などの単元で学習する見方につながるものです。例えば,99+99は(100+100)−2と考えれば暗算でも計算ができます。このような学習につながる見方がT男の見方なのです。1年生でも,式変形につながる見方ができたことに驚きました。

目の前の学習内容とは直結していないけれども,価値ある見方が子どもから生まれることがあります。それらの見方をキャッチし授業の舞台に載せていくことも教師の大切な役目です。

2019年10月28日月曜日

冬の先生応援プロジェクト募集開始!

昨日の秋の先生応援プロジェクトのは,全国各地から多くの先生方に参加いただきました。全国各地のスタンダード模様に一喜一憂する先生方の実態が見えてきました。

さて,次回の先生応援プロジェクトの冬企画の募集が始まりました。詳細・申込先は次の通りです。

●日時
 2019年1月25日(土)10時〜16時

●スケジュール
10:00 ~ 11:00  樋口万太郎先生(京都教育大学附属桃山小学校)
11:10 ~ 12:10  木下幸夫先生(関西学院大学初等部)
13:30 ~ 14:40  尾﨑正彦先生(関西大学初等部)
14:50 ~ 16:00  田中博史先生(「授業・人」塾主宰)

●大会テーマ
 「そのやり方でいいの? 『めあて・まとめ・ふりかえり』」

●会 費
4,000 円(当日会場にてお支払いください)


●募集人数 300名

●会 場
大和大学 講義棟 3 階大講義室B(C302) (〒564-0082 大阪府吹田市片山町 2-5-1)
JR 吹田駅から徒歩7分 阪急吹田駅から徒歩10分


申し込みは次のアドレスからお願いします。

https://gakuto.co.jp/lecture-2/

2019年10月25日金曜日

秋の先生応援プロジェクト満員御礼

10月27日(日)に東京で開催の秋の先生応援プロジェクト,いよいよ開催までわずかとなりました。1日日程ですが,お申し込みいただいた先生方,東京でお会いしましょう。今回のテーマは,次の通りです。

テーマ

「スタンダードに沿う授業づくりは、本当に子どもの思考力を育てられるか」
~対話で子どもの状態をよみとり展開を変えていく勇気を持つ教師を増やすために~

◇講師:
田中博史 先生 前筑波大学附属小学校副校長/授業・人塾主宰
小松信哉 先生 元国立教育政策研究所教育課程研究センター 学力調査官・教育課程調査官/福島大学准教授
尾崎正彦 先生 関西大学初等部教諭

今回の
秋の先生応援プロジェクト,好評により満席となりました。ありがとうございます。


残念ながら申し込めなかった先生方,ご安心ください。次回は冬のプロジェクトの開催が決まっています。日程,内容は次の通りです。


●日時

 2019年1月25日(土)10時〜16時


●スケジュール
10:00 ~ 11:00  樋口万太郎先生(京都教育大学附属桃山小学校)
11:10 ~ 12:10  木下幸夫先生(関西学院大学初等部)
13:30 ~ 14:40  尾﨑正彦先生(関西大学初等部)
14:50 ~ 16:00  田中博史先生(「授業・人」塾主宰)

●大会テーマ
 「そのやり方でいいの? 『めあて・まとめ・ふりかえり』」

●会 費
4,000 円(当日会場にてお支払いください)


●募集人数 300名

●会 場
大和大学 講義棟 3 階大講義室B(C302) (〒564-0082 大阪府吹田市片山町 2-5-1)
JR 吹田駅から徒歩7分 阪急吹田駅から徒歩10分


申し込み開始は,10月27日以降になります。もうしばらくお待ちください。
こちらへの参加もお待ちしております。

2019年10月19日土曜日

1年生の9+4

1年生に次の問題を提示します。
「どんぐりを,K君が9個,S子さんが4個とりました。どんぐりは合わせて何個ですか」

式は簡単に「9+4」と立式できると考えていました。しかし,1年生はそう簡単に授業を先へと進めることを許してはくれません。「絶対に9-4だ」という声が聞こえてきます。なぜ,ここでひき算の式?子どもの論理を理解できますか。

「K君が9個どんぐりをとりました。そのK君のとったどんぐりから4個とった」と考えたのです。1年生は手ごわいですね。

さて,問題場面の共通理解を図ります。その後,「答えは出せるかな」と投げかけます。子どもたちは,「できるよ」「式もかけるよ」「図も描けるよ」と声があがります。

図で考えた子どもたちの思いを読解します。右の図を板書します。9+4の図になっていますが,これも1年生はすぐには全員が理解できません。時間をかけて共有していきます。

その中で,「10の固まりを作る」と説明がありました。そこで,「なんで10の固まりを作ったの?」と問います。

「だって,9のままだとわかりにくいよ。10の固まりだとわかりやすい」
「10と3なら,すぐに13ってわかる」
「10月11日の勉強で,6+4+3の計算をした時も,6+4=10にしてから,10+3をすると簡単だったよ」
「10+□ならすぐに答えがわかるよ」

子どもたちは,既習の3口の計算で10の固まりを作ったことと今回の学習を関連付けて考えたのです。10の固まりで考えるよさを,別の単元でも子どもたちは実感するだけではなく,その関連性を具体的に説明することもできたのです。

1年生も,複数単元にまたがる価値ある見方・考え方が存在することやその有効性に気付くことができるのです。

かけ算の筆算は必要?

3年生の子どもたちに,「1個21円のお菓子を3個買いました。合計はいくらですか」という問題場面を提示します。立式はすぐに21×3とできます。答えも,全員が求められます。

素直に考えれば,21+21+21で求められます。しかし,この求め方に対しては,「かける数が3の時はいいけど,×9とかに大きくなったら大変だよ」と声があがります。具体的事例をあげて,たし算方式の限界を指摘する声です。

かけられる数の21を20と1に分解する考えが生まれてきます。20×3と1×3の計算を行い,それぞれの答えをたすのです。低学年でサクランボ計算などで,位毎に分ける計算を経験しています。その時の見方・考え方が,ここでも生きてきます。
ところが,20×3の計算を巡ってズレが生まれます。(何十)×(一位数)の計算は,この段階では未習です。

「20×3は習ってないからできない」
「簡単だよ。20の0をとって2×3=6でしょ。6にさっきとった0をつければ60になるよ」
「0をつけるって?」
「だから,6に0をたすんだよ」
「6に0をたしても6だよ」
「そうだよ,6+0=6だ」
「だから,たすんじゃなくてつけるの」
「つける・・・?」

(何十)×(一位数)の答えの求め方を形式的に先行学習している子どもによくみられる説明です。「0をつける」という説明は算数にはありません。また,国語的にも誤った表現です。その言葉の意味が理解できない子どもがいるのは,きわめて自然な姿です。この場面は,「0をつける」が理解できない子どもに寄り添い,ていねいに展開していきます。
子どもたちに,「0をつけるってどういうことなの?」と尋ねます。形式だけを理解している子どもは,説明に行き詰ります。一方,素直に考える子どもは別のアプローチをしてきます。

「20×3を10円玉で考えたらどうかな。20円は10円玉2枚でしょ」
「そうか。10円玉2枚なら2×3=6だね」
「6は10円玉が6枚。でも,本当はその10倍だから6×10=60円だ」
「20のままでは計算できないから,20÷10=2と考えるんだね。2×3=6。でも,さっき10でわったから,本当の答えにするために10倍するってことだ」

これらの考え方は,形式を知らない子どもの方がすぐに理解できる傾向が高い事実があります。これからの算数で大切なことは,答えを出すことではなく,答えを導き出すための論理を鍛えることです。20円を10円玉に置き換えるような考え方が大切なのです。

さて,さくらんぼ算のように位毎に分けることで,二位数のかけ算が計算できることが見えてきました。21×3以外の計算も,この求め方で答えを求めることができました。「かけ算は簡単」と子どもたちは考え始めています。

そんな子どもたちに,「もうかけ算は大丈夫だね?」と投げかけます。子どもたちは,元気に「大丈夫」と答えます。それと同時に「百の位でも大丈夫」という声も続きます。子ども自らが計算範囲を拡張してきたのです。このような見方・考え方ができることも大切です。

その後,百の位のかけ算も子どもたちは実験してみます。これも,先ほどと同様に位毎に分けることで計算できるのです。もう,こうなると筆算を今さら使う必要感は子どもたちにはありません。なぜなら,筆算で行っている計算手続きと同じことを,子どもたちは位分け計算で行っているからです。早い段階で筆算の形式を教えるのでなく,筆算と同じ考え方を子どもたちに十分に浸らせることも大切な授業創りの視点です。



2019年10月17日木曜日

人生の夢へ向かって羽ばたこう!

私の母校,新潟県立佐渡高校で全校生徒を対象とした講演会を行いました。高校生相手の講演は初めてです。いろいろ考えた結果,算数の授業を45分ほど行い,15分は講演としました。

算数授業は,私が小学6年生に行った「アートギャラリーの定理」と呼ばれる監視カメラの台数を考える内容です。この素材は,もともとは大学数学でも取り上げられる内容です。高校生も頭を悩ませながら取り組んでくれました。うまくいかなくなると,すぐに近くの友だちと相談する姿や,正しい図形が発見できるとニコニコと喜ぶ姿は小学生と同じでした。高校生もとても素直でかわいいですね。

後半は,学歴社会はすでに崩壊している現実や,社会に出てから活躍する人の能力と大学の学歴は全く相関関係がないことを,日本の社長が選ぶベスト社長に選ばれたことがある永守重信会長の日本電産での事例を紹介しながら話しました。
しかし,学歴社会が崩壊したからといって,学生時代をだらだらと過ごしてもよいのではありません。最終的に社会で活躍する人には,「グリット」と呼ばれる共通の力が身に付いていることがアメリカでの研究で明らかとなりました。その力をこれからの人生の夢を実現するために身に着けてほしいことを述べて講演を締めくくりました。

佐渡高校生,本当に真剣に,かつ楽しく授業と講演に参加してくれました。頼もしき後輩の姿にうれしくなりました。佐渡高校生のみなさん,人生の夢に向かってグリットの力をつけて羽ばたいてくださいね!

2019年10月8日火曜日

2020年1月の講座案内

まだ少し早いですが,2020年1月に開催予定の講座をお知らせします。

1月18日(土) 教科書活用セミナー(午後)
         会場:大阪府吹田市勤労者会館
1月25日(土) 冬の先生応援プロジェクト(1日)
         会場:大阪府吹田市 大和大学(JR吹田駅前)
         講師:田中博史(教師人塾),木下幸夫(関西学院大初等部)
            樋口万太郎(京都教育大附属小)

詳細はまだ未定です。決まりましたらお知らせします。参加ご希望の方は,日程をあけておいてくださいね!

10月16日は佐渡高校講演会

10月16日,新潟県立佐渡高校の講演会に登場します。佐渡高校は私の母校です。大学時代に佐渡高校の文化祭に遊びに行って以来の訪問になります。本当に久しぶりの訪問です。佐渡高校の教室の窓から見える真野湾の海の風景や,大佐渡山地の山並みの美しさは感動ものです。日本の多くの学校をこれまでに訪問してきましたが,佐渡高校から見える風景は全国屈指ですね。

そんな素敵な佐渡高校で行う講演テーマは,「NEW TYPEの時代に必要な力」です。単なる講演では高校生も飽きてしまうかもしれないので,高校生でも愉しめる算数授業を行おうと考えています。

本講演会は保護者の方も参加可能です。佐渡高校にお子さんが在学されている保護者の方でご興味のある方は,是非,ご参加ください。お待ちしています。

1年「3口の計算」での素直な子どもの疑問

1年生の子どもたちに次の問題を提示します。
「バスに10人乗っていました。バス停で6人降りました。次のバス停で3人乗ってきました。バスには何人乗っていますか」

これまでに子どもたちは,3口のたし算の学習は終わっています。その経験から,「式にできるよ」「図も描けるよ」と声をあげます。式や図に表現することを教師から提示するのではなく,式や図にしたくなる思いを引き出すことが大切です。
子どもたちは,ノートに式や図をかいていきます。しばらくした後,答えを確認します。

答えは全員が7人と求めました。そこで,「本当に7人なの?」と尋ねます。子どもたちは,「だから…」と言って7人になる理由を説明していきます。
多くの子どもたちは,前時までの3口のたしざんの学習を生かして「10-6+3」の式を発表します。問題文と式が対応していることを確認します。

ところがW子が,「その式はおかしい」と声をあげます。その理由を聞いていきます。
「だってね,6+3を先に計算するでしょ。答えは9。10から9をひくと1になるから答えが違うからおかしい」

3口のたしざんは,計算の順序を変えても答えは変わりませんでした。ところが,今回の式は計算の順番を変えると答えが異なります。W子は3口のたしざんでの考え方を,今回の計算にも当てはめて「答えが同じになるはずだ」と考えたのです。ところが順番を変えて計算すると答えは異なります。そこに違和感を抱いたのです。W子の違和感を聞いた子どもたちの中には,「10-6+3」と立式してもいいのか不安になった子どももいます。

W子の呟きをもとに,「10-6+3」の立式自体が正しいのかどうかが新たな問いとなりました。「6+3を先に計算すると,答えが変になるからだめだよ」などの発表が続きます。最終的に,立式に不安を抱いていた子どもたちが納得したのは,次の説明でした。

「10月4日の勉強で,7+3+4をやったでしょ。計算の順番を変えると,お話が変わるからだめだと勉強したでしょ。だから,この問題も順番を変えたらだめだよ」
子どもたちは,一斉に10月4日のノートを開きます。この姿,1年生ならがすごいですね。さらに,次の説明が続きます。
「6+3を先に計算すると,バスに6人乗っていました。バス停で3人乗ってきました。次のバス停で10人降りました…? 問題が変わっちゃう」

3口のたし算の学習とつなげていくことで,計算の順序と問題文の関係を改めて見直すことができました。子どもから生まれた素直な疑問の声を取り上げ,じっくりと考えていくことで,子どもたちが燃えた1時間ともなりました。

2019年10月2日水曜日

大きさくらべ(1年生)

1年生に「大きさくらべ」の単元があります。長さ,広さ,水のかさ,箱の大きさを比べる学習です。1年生ですので,いずれも任意単位いくつ分で大きさを比べるよさに気づくことが目標です。
例えば,長さを比べる学習では,クラス全員が同じブロックを並べて「ブロック9個分」などと長さを表現していきます。

箱の大きさ比べを行いました。最初は,見るからに大きさが異なる2つの箱を提示します。「どちらの箱の中身が大きいかな」と投げかけます。子どもたちは,「重ねれば分かる」と声をあげます。大きな箱の中に小さな箱を入れることで,大きさの違いが一目瞭然となります。「重ねれば分かるんだね」と子どもたちの発想を褒めます。

次に,大きさが似ている2つの箱を提示します。子どもからは「重ねればいい」と声があがります。大きさが似ているため,どちらをどちらに重ねてみても,互いにはみ出してしまいます。従って,重ねる方法ではうまく大きさ比べができません。そこで,次のように投げかけます。
「重ねる方法では比べられない。だから,2つの箱の大きさ比べはできないね」

子どもからは,箱を壊した大きさをそろえるという大胆な提案も生まれました・・・。1年生の発想はすごい!
子どもたちが納得した方法は,次のものでした。
「箱の中に大きさが同じものを入れればいい」
「それが何個あるかで比べればいい」

任意単位で比較するアイディアが生まれてきました。「同じ大きさ」という視点は,これまでの長さや広さの大きさ比べでも生まれてきた視点でした。よき視点が,この場面でも生まれてきました。1年生もしっかりと考えをつなげることができることが見えてきました。
さらに,ここでR子が次のように説明します。
「これは9月18日の勉強と似ています。広さを比べるとき,四角何個で調べたから,それと同じ」
 R子の気づきは,任意単位で比較するよさと視点の共通点への気づきです。数日前の学習とつなげて共通点に気づく視点の鋭さに感心しました。この気づきを時間をかけて共有していきます。

1年生でも,任意単位のよさや大きさを数で比較できるよさの共通点に気づくことができた1時間となりました。

2019年9月26日木曜日

正三角形と二等辺三角形

3年生の子どもたちと「三角形」の学習を進めています。

これまでに子どもたちは,2本の辺の長さが等しい三角形を二等辺三角形といいます」というところまで学習が終わっています。そんな子どもたちに正三角形を提示し,次のように投げかけます。

「この三角形は二等辺三角形ですか」

正三角形の底辺は,床とは平行にならないよ
うに提示します。子どもたちは,一斉に頭を傾けて図形を見つめます。その姿が,なんとも微笑ましい・・・。

子どもの反応は,「二等辺三角形だ」「二等辺三角形じゃない」に分裂します。この段階では,まだ見た目だけで判断しています。定規を手に持って黒板の前に出て,辺の長さを測定しようとする子どもがいました。辺の長さを調べたくてたまらなくなった姿の表出です。

そこで,提示した三角形と同じもの(縮図サイズ)を配布します。子どもたちは,定規で辺の長さを測定したり,半分に折って辺や角の大きさの関係を調べたりしました。やがて,「二等辺三角形じゃない」「全部同じだ」という声が聞こえてきます。

多くの子どもたちは,提示された三角形は二等辺三角形ではないと考えました。その根拠となったのは,次のものです。
「だって,3本の辺の長さが同じだから違うよ」
「2本じゃなくて3本が同じだから,二等辺三角形じゃない」

ところが,これらの声を聞いて不安そうな表情のS子の姿が目に入りました。S子にその不安な気持ちを説明させます。
「だって,二等辺三角形は『2本の辺の長さが等しい三角形』でしょ。これも2本の辺は等しいよ・・・」

不安な気持ちを示すように小さな声でしたが,しっかりと自分の思いを説明することができました。S子の思いを聞いた子どもたちに少し変化が生まれます。

「そうか!やっぱり二等辺三角形だよ」
「二等辺三角形の条件は,『2本の辺の長さが等しい三角形』でしょ。これはこの条件を満たしているよ」
「でも,3本とも同じだから違うよ」
「だって条件には,2本だけが同じ長さとは書いてないから二等辺三角形でいいんだよ」
「条件には2本の辺の長さが同じと書いてあって,残りの辺の長さのことは書いていないから,その長さ(残りの辺)」は関係ないんだよ」
「でも,3本とも同じだから二等辺三角形じゃない」
「二等辺三角形の条件には,2本の辺の長さだけが同じとは書いてないでしょ。だから,2本が同じなんだから二等辺三角形でいいんだよ」
「2本の辺の長さだけが同じとは条件にないんだから,3本目の辺は関係ないんだよ」

子どもたちは,二等辺三角形の定義の言葉に「だけ」が含まれてはいないことに注目したのです。「だけ」に注目することで,S子の思いがクラス全体に共有されていきました。
正三角形という言葉を先行学習している子どもは,最初から二等辺三角形と正三角形を全く別物と考えていました。しかし,二等辺三角形の定義をもとに考えたら,正三角形は二等辺三角形の仲間であることが見えてきます。正三角形は二等辺三角形の中の特殊な仲間なのです。
S子の疑問に寄り添うことで,二等辺三角形と正三角形の関係が明らかとなった活動が展開されました。

2019年9月22日日曜日

教科書活用セミナー静岡大会,次回は3月!

静岡では2回目の開催となる教科書活用セミナーが終わりました。教師をめざす大学生もたくさん参加されていました。先生方の熱い思いが伝わるセミナーとなりました。また,先生方のお悩みにもできるだけ応える講座も開催しました。先生方の切実なお悩みが,次々と生まれてきました。

次回の教科書活用セミナーの日程が決定しました。

日時:2020年3月28日(土)12時30分受付開始予定
会場:常葉大学

詳細が決まりましたらお知らせします。

半年後,再び静岡でお会いしましょう!

2019年9月15日日曜日

教科書活用セミナー静岡大会「計算指導で大切にしたいこと」もうすぐです!

教科書活用セミナー静岡大会まで,あと1週間となりました。計算指導は,答えが求められることが目的ではありません。それだけなら,塾の指導となんら変わりません。計算指導で本当に大切なことは,計算の意味を理解すること,計算の意味を論理的に考えていくことです。この視点で考えると,「はかせ」と呼ばれる算数の言葉が本当に必要なのかも見えてきます。

まだ,申し込み受付中です。計算指導の本当の意味について,静岡で学びましょう!

セミナーの詳細・お申し込みは,以下をご覧ください。

算数教科書活用セミナー・第8回(静岡大会) 
【テーマ】「計算指導で大切にしたいこと」&10月の算数授業
◆今回は、「計算領域」の単元について、考えていきたいと思います。◆子どもたちに速く、正確に計算ができるようにすることはもちろん、計算の意味を考えたり、分数や小数に発展させたり、計算指導の本質は教科書の中にあります。◆教科書教材を使った計算指導について考えましょう。◆「計算の指導で大切にしたいこと」が本大会のテーマであり、2本の模擬授業を通して提案をしていきます。◆本研究会代表の尾崎正彦の講演もご期待ください。
【プログラム】 
◆12:30 受付開始 

◆13:00~13:45 
講座『計算指導で大切にしたいこと』尾﨑 正彦 (45分) 

◆14:00~15:30 
教科書を活用した模擬授業(30分×2本) 
 ①  4年生「小数のかけ算」 杉山 俊介
 ②  2年生「かけ算」         川西 美希
 ※小グループで学びのシェア。 
 ※尾﨑正彦&松村隆年のコメント。 

◆15:45~16:30 
『10月単元攻略法』~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 

◆16:30~17:00 
算数授業づくりQ&A 

【会場】常葉大学 静岡草薙キャンパス(A210) 
【参加費】2000円(教員志望の学生は1000円) 
☆セミナー終了後、懇親会を行います☆
【場所】静岡駅 アスティ1階 日本海庄や
【時間】18時~20時ころ
【参加費】5000円
講師の先生方と直接お話ができる貴重な機会です!お気軽にご参加ください。
(先着20名)
※ 本セミナーは「学校現場の教員」と「教員志望の学生」対象です。それ以外の方は参加できません。
申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com

2019年9月14日土曜日

箱の数はいくつ?(3年あまりのあるわり算)

3年生の「あまりのわり算」学習も大詰めです。子どもたちに,次の問題を投げかけます。

「40個のボールを6個ずつ箱に入れます。全部のボールを箱に入れるには,箱は何箱必要ですか」

これまで,あまりのあるわり算の学習には十分親しんでいます。すぐに「40÷6=6あまり4」と計算することができます。ここまでは順調です。

箱の数を尋ねます。半数以上の子どもが,「6箱で4個あまる」と答えます。しかし,「それはおかしい」と声をあげる子どももいます。ところが「6箱で4個あまる」と考えた子どもは,「おかしい」と指摘されることが理解できません。「6箱で4個あまる」と考えた子どもも,そうではない子どもにもそれぞれの理由(論理)があるからです。

「6箱で4個あまる」がおかしいと考えた子どもたちが,主張します。

「全部のボールを箱に入れると問題に書いてあるから,6箱ではだめだよ」
「6箱に入れても,まだ4個あるから箱がまだいるんだよ」

問題文の「全部のボールを箱に入れる」に着目することで,箱の数が6箱ではたりないことを説明します。これで,多くの子どもが納得します。ところが,なかなか納得できない子どももいます。7箱であることを納得した子どもたちが,次々と説明します。少しずつ,7箱必要な意味が伝わっていきます。しかし,まだ全員が納得するところまではいきません。そんなとき,K子が「納得できない気持ちが分かります」と声があげます。

「問題に6個ずつ箱に入れると書いてあるから,箱にはボールを6個入れないとだめだと思っているんだよ。4個だけ入れても意味がないと思っているんだよ」

納得できない子どもたちは,K子の説明に頷いています。これが納得できない論理だったのです。この論理が見えてきたことで,新たな説明が生まれてきます。

「全部のボールを箱に入れると問題にあるのに,4個のボールを残したら条件を果たしていないよ」
「4個で箱にすきまができても,ボールを入れないと全部入らないよ」
「4個あまったら条件を果たさないから,あまりをなしにしなければいけない」
「あまりをなしにするから,4個だけでも箱に入れないとだめなんだよ」

あまりをなしにすることで,条件を果たすことでできるという新たな論理的な説明で,全員の納得を引き出すことができました。

子どもの考えにズレがあるときに大切なことは,お互いの考えの論理を共有することです。この部分を曖昧なままで話し合いを展開すると,せっかく生まれたズレによる盛り上がりが失速してしまいます。

互いの論理を共有することで,子どもたちの追求が連続した1時間となりました。