2019年6月19日水曜日

合併と増加違い(1年生「たしざん」)

1年生「たしざん」の学習は,合併場面から始まります。その後,増加場面へとたし算の対象を拡張していきます。

子どもたちに次の問題を提示します。
「花瓶に花が3本入っています。あとから2本の花を入れました。花は合わせて何本でしょう」

問題を書き終えると同時に,「(今までと)違う」という声が聞こえてきました。問題文の違いに気付いた声です。ところが,今度は「同じだよ」という声も聞こえてきました。

「同じ」だと考える子どもは,「だって,問題に『合わせて』と書いてあるから同じだよ」と主張します。「合わせて」の部分は,合併も増加も同じ投げかけです。
そこで,「『合わせて』と書いてあるから,前と同じなんだね」と投げかけます。すると,「同じじゃないよ」という声があがります。

「だって,『あとから』って書いてあるから違うよ」
「3本に2本があとから来たから違うよ」

増加の問題文であることを,的確に指摘した発言です。しかし,1年生とっては合併と増加の違いを明確に理解することは難しいのです。すぐには違いを理解することはできませんでした。そこで,もう1つの問題文を提示します。

「花瓶に花が3本入っています。別の花瓶に花が2本入っています。花は合わせて何本でしょう」

この問題の花瓶の数を尋ねます。上記の合併の問題では,花瓶は2本です。一方,最初に提示した問題の花瓶の数は1本です。2つの問題文を比較し,花瓶の数を考えることで,合併と増加の違いを子どもたちは理解することができました。

その後,3+2と式を作り,答えを見つけていきます。子どもたちは,ノートに丸の図を描いて合計数を求めていきます。ところが,ほとんど子どもが作図したのは,合併の図でした。
一方,問題文に忠実に増加の図を作図した子どももいます。ところが,その図を見た子どもからは「なんで?」という声があがります。増加の問題文を理解したはずなのに,その場面を作図すると合併の図から意識が離れられないのです。

子どもたちは増加の図について,次のように説明してきます。

「こっち(右)から家族になるから,こういう図(左向き矢印)になる」
「右の赤丸2個が,左の丸3個に引っ越してくるからこういう(左向き矢印)になる」

「家族になる」「引っ越す」という言葉を使って,必死に説明する姿が1年生らしさを物語っています。これらの言葉で,増加の意味も図の意味も理解していくことができました。

2019年6月16日日曜日

問題の先が見える

1年生とたし算の勉強を進めています。先日は,「こんなたし算はできるかな」と子どもたちに投げかけて授業をスタートしました。

1問目に提示しのは「5+1=6」です。ノートに丸の図を描いて,答えが6になることを確認します。
2問目は「5+2=7」です。これも図で答えを確認します。

2問目の答えの確認が終わると,子どもから「次の問題がわかります」と声が上がります。この声の中身をすぐには尋ねません。「そんなはずはないでしょ。気のせいだよ」と子どもに投げ返します。時間のワンクッションを置くのです。これで,それまで3問目の問題を教師から提示されるのを待つだけの姿勢でいた子どもたちが,「3問目ってなんだろう」と考え始めるのです。子どもたちは,1・2問目の式を見直します。これで一気に「次の問題がわかります」という声が広がります。

「次は5+3です」
「だって,左の数は全部5だったから次も5です」
「右の数は1,2,3と順番になるからです」

3問目のたす数が3になることは,1年生にとっては実は簡単に理解することができないのです。1年生の理解には思いのほか時間がかかります。ていねいに展開することが大切です。

「右の数は1ずつ増えてるでしょ。1から2は1増えたでしょ。次も2から1増えるから3だよ」

「順番」という言葉を「1ずつ増える」と置き換えることで,3問目のたす数が3になることが見えてきました。
3問目を予想できた子どもたちの見方・考え方を絶賛しました。すると,3問目の問題を終わると,勝手に次の問題をノートに書き出す姿があちらこちらで見られます。

「次の問題もわかります。5+4です」
「そのあともわかります。5+5です」
「もっと先もわかります。ぼくは14問目まで考えました」

子どもたちが,目の前に提示された情報からきまりを見つけること,さらにはそのきまりか,まだ見えていない情報を類推する見方・考え方を培うことは算数授業では非常に大切です。この見方・考え方を培うために,1・2問目の式の数値を意図的に設定したのです。きまりを見つけた1年生が,一気に動き出した1時間でした。

熊本県算数教育研究会夏期研修会のご案内

今年の大河ドラマの主人公はマラソンで有名は金栗四三です。彼の生誕の地で,夏休みの7月31日に熊本県算数教育研究会夏期研修会が開催されます。

この研究会は,実際の授業を通して授業改善の方策を探る実践的な会です。夏休み中ですが,子どもたちを集めて3本の公開授業と協議会が行われます。熊本の先生方の授業改善に対する熱い思いがひしひしと伝わる会です。
午前中は熊本の先生の授業が2本行われます。午後の公開授業は私が担当します。

期日 7月31日(水) 8時30分受付開始
会場 熊本県玉名市民会館

申し込みはFAXで長洲町立腹赤小学校・増藤先生までお願いします。

詳細は以下をご覧ください。大河ドラマの旅のついで?!にお会いしましょう!



2019年6月11日火曜日

たしざんできまり発見!

1年生「たしざん」の2時間目の授業です。次の問題を投げかけます。

「左側にリスが4匹います。右にはリスが1匹います。合わせて何匹でしょう」

たしざんの学習は前時で終わっています。子どもたちは,4+1と式を作ります。答えも5と求めることができました。そこで,本当に5の答えでよいのかを,ノートに図を描いて確かめます。多くの子どもたちは,○○○○ の図をノートに描きました。丸の総数を数えれば,リスが5匹になることが分かります。

その後,同様に問題に取り組みました。

② 3+1=4
③ 1+4=5

3問目までの計算が終わった時点で,Y子が「気づいたことがあります」と声をあげます。Y子が気づいたことを発表します。

「1+4と最初の問題の4+1は反対になっている」

Y子は,たしざんの交換法則に気づいたのです。1年生なりの言葉で,その発見を伝えようとしたのです。しかし,この気づきをすぐには理解できないのが1年生です。交換法則の意味が見えてきた子どもたちが,少しずつその意味を説明していきます。たされる数・たす数に当たる部分を,「右の数」「左の数」という言葉に置き換えるなどして説明を進めていきました。

5分程の時間を使って,交換法則の意味を1年生なりに理解することができました。そこで,今度は次のようになげかけます。

「右と左を入れ替えて答えが同じになるのは,たまたまでしょ」

交換法則の一般性を問うたのです。多くの子どもたちは,「たまたまではない」と考えました。一方,「たまたまだと思う」という子どももいます。異なる考えが生まれてことで,子どもたちは不安になります。そこで,②3+1の反対の式で実験することにしました。3+1の反対は,1+3です。この答えを計算していきます。

やがて,「やっぱりだ」という声があがってきます。答えは,この計算も同じになります。交換法則の一般性を見つけていくことができました。

1年生でも,きまり発見をきっかけに交換法則についての学びを深めていくこととができるのです。


2019年6月7日金曜日

1年生「たしざん」はカニで?

1年生「たしざん」の導入場面です。子どもたちに次のように投げかけます。

「左のお家にカニが3匹います。右のお家にカニが2匹います。2つのお家のカニを合わせると何匹になりますか」

子どもからは,「5匹」と声があがります。そこで,「本当に5匹なの」と投げかけます。子どもたちは,「だから…」と言いながら説明を始めます。

「左に1,2,3でしょ。右にもカニがいるから4,5で5匹」

「左のカニを真ん中のお家に引っ越します。右のカニも真ん中のお家に引っ越します」
「真ん中のお家には,1,2,3,4,5で5匹です」

子どもたちの目の前には,3匹のカニと2匹のカニが見えています。そのカニを数えていけば,5匹であることは分かります。この段階では,教科書などにあるようなブロックを使って3+2の場面を再現する必要感は子どもにはありません。

5匹という答えが見えてきました。そこで,次のように子どもに投げかけます。

「5匹だとわかったね。では,黒板の絵をノートに写してください」

この瞬間,子どもからは「はーい」という返事と同時に,「カニなんてかけない」という声があがってきました。カニには手が何本もあります。ノートにカニの絵を描くのは大変です。すると,その声を聞いたT子が,「だったら,(カニを)〇でかけばいいじゃん」と声をあげます。より簡便な図にするよいアイディアが生まれてきました。そこで,T子のアイディアのよさを投げかけます。

「T子さんが『カニを〇にすればいい』と言ったね。〇にすると何がいいかな?」

T子のアイディアのよさは,1年生にはすぐには伝わりません。このように時間をかけて共有していくことが大切です。

「〇にすると,時間があまりかからない」
「〇にすると簡単にできる」

〇のアイディアのよさが共有できました。そこで,カニを〇に置き換えてノートに写させました。
黒板通りにノートに写す子どももいましたが,そうではない子どももいました。
「〇〇〇●●」(A)
「〇〇〇 ●●」(B)
このように〇を並べて図をかく子どももいました。これらの図を描いた気持ちの読解活動も進めてきます。

読解活動の結果,子どもたちは「〇〇〇 ●●」タイプの図が分かりやすいと考えました。
「右のカニと左のカニの間が空いていた方が分かりやすい」
「〇がくっついていると,左と右のカニが違っていることがわかりにくい」

この後,左の〇3個と右の2個を合わせることを3+2と表現することを教えていきました。

ノートに板書を写す場面をきっかけに,子どもたちは簡略な図を描く必要性を感じていきました。〇を使いこなしながら,子どもたちはたし算場面を考えていくことができました。