2019年9月26日木曜日

正三角形と二等辺三角形

3年生の子どもたちと「三角形」の学習を進めています。

これまでに子どもたちは,2本の辺の長さが等しい三角形を二等辺三角形といいます」というところまで学習が終わっています。そんな子どもたちに正三角形を提示し,次のように投げかけます。

「この三角形は二等辺三角形ですか」

正三角形の底辺は,床とは平行にならないよ
うに提示します。子どもたちは,一斉に頭を傾けて図形を見つめます。その姿が,なんとも微笑ましい・・・。

子どもの反応は,「二等辺三角形だ」「二等辺三角形じゃない」に分裂します。この段階では,まだ見た目だけで判断しています。定規を手に持って黒板の前に出て,辺の長さを測定しようとする子どもがいました。辺の長さを調べたくてたまらなくなった姿の表出です。

そこで,提示した三角形と同じもの(縮図サイズ)を配布します。子どもたちは,定規で辺の長さを測定したり,半分に折って辺や角の大きさの関係を調べたりしました。やがて,「二等辺三角形じゃない」「全部同じだ」という声が聞こえてきます。

多くの子どもたちは,提示された三角形は二等辺三角形ではないと考えました。その根拠となったのは,次のものです。
「だって,3本の辺の長さが同じだから違うよ」
「2本じゃなくて3本が同じだから,二等辺三角形じゃない」

ところが,これらの声を聞いて不安そうな表情のS子の姿が目に入りました。S子にその不安な気持ちを説明させます。
「だって,二等辺三角形は『2本の辺の長さが等しい三角形』でしょ。これも2本の辺は等しいよ・・・」

不安な気持ちを示すように小さな声でしたが,しっかりと自分の思いを説明することができました。S子の思いを聞いた子どもたちに少し変化が生まれます。

「そうか!やっぱり二等辺三角形だよ」
「二等辺三角形の条件は,『2本の辺の長さが等しい三角形』でしょ。これはこの条件を満たしているよ」
「でも,3本とも同じだから違うよ」
「だって条件には,2本だけが同じ長さとは書いてないから二等辺三角形でいいんだよ」
「条件には2本の辺の長さが同じと書いてあって,残りの辺の長さのことは書いていないから,その長さ(残りの辺)」は関係ないんだよ」
「でも,3本とも同じだから二等辺三角形じゃない」
「二等辺三角形の条件には,2本の辺の長さだけが同じとは書いてないでしょ。だから,2本が同じなんだから二等辺三角形でいいんだよ」
「2本の辺の長さだけが同じとは条件にないんだから,3本目の辺は関係ないんだよ」

子どもたちは,二等辺三角形の定義の言葉に「だけ」が含まれてはいないことに注目したのです。「だけ」に注目することで,S子の思いがクラス全体に共有されていきました。
正三角形という言葉を先行学習している子どもは,最初から二等辺三角形と正三角形を全く別物と考えていました。しかし,二等辺三角形の定義をもとに考えたら,正三角形は二等辺三角形の仲間であることが見えてきます。正三角形は二等辺三角形の中の特殊な仲間なのです。
S子の疑問に寄り添うことで,二等辺三角形と正三角形の関係が明らかとなった活動が展開されました。

2019年9月22日日曜日

教科書活用セミナー静岡大会,次回は3月!

静岡では2回目の開催となる教科書活用セミナーが終わりました。教師をめざす大学生もたくさん参加されていました。先生方の熱い思いが伝わるセミナーとなりました。また,先生方のお悩みにもできるだけ応える講座も開催しました。先生方の切実なお悩みが,次々と生まれてきました。

次回の教科書活用セミナーの日程が決定しました。

日時:2020年3月28日(土)12時30分受付開始予定
会場:常葉大学

詳細が決まりましたらお知らせします。

半年後,再び静岡でお会いしましょう!

2019年9月15日日曜日

教科書活用セミナー静岡大会「計算指導で大切にしたいこと」もうすぐです!

教科書活用セミナー静岡大会まで,あと1週間となりました。計算指導は,答えが求められることが目的ではありません。それだけなら,塾の指導となんら変わりません。計算指導で本当に大切なことは,計算の意味を理解すること,計算の意味を論理的に考えていくことです。この視点で考えると,「はかせ」と呼ばれる算数の言葉が本当に必要なのかも見えてきます。

まだ,申し込み受付中です。計算指導の本当の意味について,静岡で学びましょう!

セミナーの詳細・お申し込みは,以下をご覧ください。

算数教科書活用セミナー・第8回(静岡大会) 
【テーマ】「計算指導で大切にしたいこと」&10月の算数授業
◆今回は、「計算領域」の単元について、考えていきたいと思います。◆子どもたちに速く、正確に計算ができるようにすることはもちろん、計算の意味を考えたり、分数や小数に発展させたり、計算指導の本質は教科書の中にあります。◆教科書教材を使った計算指導について考えましょう。◆「計算の指導で大切にしたいこと」が本大会のテーマであり、2本の模擬授業を通して提案をしていきます。◆本研究会代表の尾崎正彦の講演もご期待ください。
【プログラム】 
◆12:30 受付開始 

◆13:00~13:45 
講座『計算指導で大切にしたいこと』尾﨑 正彦 (45分) 

◆14:00~15:30 
教科書を活用した模擬授業(30分×2本) 
 ①  4年生「小数のかけ算」 杉山 俊介
 ②  2年生「かけ算」         川西 美希
 ※小グループで学びのシェア。 
 ※尾﨑正彦&松村隆年のコメント。 

◆15:45~16:30 
『10月単元攻略法』~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 

◆16:30~17:00 
算数授業づくりQ&A 

【会場】常葉大学 静岡草薙キャンパス(A210) 
【参加費】2000円(教員志望の学生は1000円) 
☆セミナー終了後、懇親会を行います☆
【場所】静岡駅 アスティ1階 日本海庄や
【時間】18時~20時ころ
【参加費】5000円
講師の先生方と直接お話ができる貴重な機会です!お気軽にご参加ください。
(先着20名)
※ 本セミナーは「学校現場の教員」と「教員志望の学生」対象です。それ以外の方は参加できません。
申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com

2019年9月14日土曜日

箱の数はいくつ?(3年あまりのあるわり算)

3年生の「あまりのわり算」学習も大詰めです。子どもたちに,次の問題を投げかけます。

「40個のボールを6個ずつ箱に入れます。全部のボールを箱に入れるには,箱は何箱必要ですか」

これまで,あまりのあるわり算の学習には十分親しんでいます。すぐに「40÷6=6あまり4」と計算することができます。ここまでは順調です。

箱の数を尋ねます。半数以上の子どもが,「6箱で4個あまる」と答えます。しかし,「それはおかしい」と声をあげる子どももいます。ところが「6箱で4個あまる」と考えた子どもは,「おかしい」と指摘されることが理解できません。「6箱で4個あまる」と考えた子どもも,そうではない子どもにもそれぞれの理由(論理)があるからです。

「6箱で4個あまる」がおかしいと考えた子どもたちが,主張します。

「全部のボールを箱に入れると問題に書いてあるから,6箱ではだめだよ」
「6箱に入れても,まだ4個あるから箱がまだいるんだよ」

問題文の「全部のボールを箱に入れる」に着目することで,箱の数が6箱ではたりないことを説明します。これで,多くの子どもが納得します。ところが,なかなか納得できない子どももいます。7箱であることを納得した子どもたちが,次々と説明します。少しずつ,7箱必要な意味が伝わっていきます。しかし,まだ全員が納得するところまではいきません。そんなとき,K子が「納得できない気持ちが分かります」と声があげます。

「問題に6個ずつ箱に入れると書いてあるから,箱にはボールを6個入れないとだめだと思っているんだよ。4個だけ入れても意味がないと思っているんだよ」

納得できない子どもたちは,K子の説明に頷いています。これが納得できない論理だったのです。この論理が見えてきたことで,新たな説明が生まれてきます。

「全部のボールを箱に入れると問題にあるのに,4個のボールを残したら条件を果たしていないよ」
「4個で箱にすきまができても,ボールを入れないと全部入らないよ」
「4個あまったら条件を果たさないから,あまりをなしにしなければいけない」
「あまりをなしにするから,4個だけでも箱に入れないとだめなんだよ」

あまりをなしにすることで,条件を果たすことでできるという新たな論理的な説明で,全員の納得を引き出すことができました。

子どもの考えにズレがあるときに大切なことは,お互いの考えの論理を共有することです。この部分を曖昧なままで話し合いを展開すると,せっかく生まれたズレによる盛り上がりが失速してしまいます。

互いの論理を共有することで,子どもたちの追求が連続した1時間となりました。

2019年9月9日月曜日

あまりのあるわり算は認められない?

3年生のわりざん学習で,あまりのあるわりざんに意味を拡張する場面があります。この場面,子どもにとってはかなりハードルの高い時間です。大人が思うほど簡単には,子どもは意味の拡張を認めることができないからです。

12人の子どもたちを前に集め,数集まりゲームを行います。
1回戦は,タンバリンを2回たたきます。子どもたちは2人組を作り座ります。全員が座った後,「2人組は何組できたかな」と尋ねます。一目瞭然「6組」と声があがります。それと同時に,「式にできる」「12÷2=6」と声があがります。式化する声が自然にあがってきます。
そこで,「式にできるなんてすごいね」と子どもたちの見方を称賛します。すると,「他の数でも式にできるよ」「3回」「4回」と声があがります。子どもたちは,式化できるタンバリンをたたく回数を発表していきます。

タンバリンを,1回・2回・3回・4回・6回・12回は式にできると説明してきます。子ども自身が場面を拡張して考えていく姿,素晴らしいですね。子どもたちが発表した回数について,1つずつ式を確認していきます。
続いて,「5回はできない」「5回だと2人あまっちゃう」と声があがります。全員が仲間ができる回数と,仲間に入れない回数があることが見えてきました。

ここで子どもから,「5回も式にできる」「12÷5」と声があがります。一方,「なんで?」「だって,12÷3は3×4で答えが見つかる。でも,12÷5だと5×2=10,5×3=15で12にはないからおかしいよ」という疑問の声があがります。あまりのわり算を式化することへの違和感です。それまでに子どもたちが経験しているわり算は,すべてわり切れる計算です。従って,わり切れないわり算を式化することに抵抗感があるのは当然の子どもの論理です。

タンバリンを5回たたく場合を,12÷5と式化しても否かが,子どもたちの問いとなりました。様々な声があがりましたが,子どもたちが納得したのは次の話し合いでした。

「12÷3は,12人いてタンバリンを3回たたくという意味でしょ。だから,これも(5回)も同じで12人いてタンバリンを5回たたくから12÷5でもいいよ」
「12÷3,12÷4,12÷6・・・・・は,全部わる数がタンバリンをたたく数になっている。だから,5回たたくのも12÷5でいい」

子どもたちは,式が表す意味をもとにあまりのあるわり算にもその意味を拡張していきました。この見方は,論理的な見方・考え方です。12÷5と式化することに違和感を抱いていた子どもたちも納得の論理でした。

あまりのあるわり算への意味の拡張は,商とあまりの扱いが話題の中心になりがちです。しかし,式の意味そのものに視点を当てることで論理的に子どもたちが納得する展開を進めることができます。

2019年9月4日水曜日

10より大きい計算

1年生の子どもたちに,次のように投げかけます。
「12個の飴があります。3個もらいました。飴は合わせて何個になりますか」

子どもたちから,「簡単」「15個」と声があがります。そこで,飴の数は何個になるのかノートに書かせます。この段階では,式を書くことは求めません。式の必要性を子どもがこの段階では感じていないからです。子どもが知りたいことは,飴の総数です。

子どもたちのノートを見て回ります。「15個」という答えの他に,式や図を描いている子どももいました。「式も書いてるんだね。すごいな」「図が描けるの。すごいね」と褒めながら子どものノートを見て回ります。

子どもたちに飴の総数を尋ねます。「15個」と自信満々の子どもたちの声があがります。そんな子どもたちに,「本当に15個なの?」と尋ねます。

子どもたちは,「だから」と言って説明を始めます。
「だから,これはたし算になるでしょ。だから12+3なの」
「12に3をたすと15でしょ」

ここで子どもから,「たし算」「12+3」という式化の考えが自然に生まれてきました。しかし,ここで安心してはいけません。さらに,「12+3は本当に15なの?」と尋ねます。再び,「だから」と子どもたちが説明します。

「だから,12の10がないとして,2と3をたすと5でしょ。この5に10をたすと15」
「最初は,2+3=5。次に,10+5=15」

ここでも式の説明が生まれてきました。子どもたちは,自然に一の位と十の位を意識した説明で,答えが15になることを説明してきました。この後,子どもたちがノートに描いた図でも,答えが15になることを確認します。

この後,「おもしろいことがある」と声があがります。

「12+3=15でしょ。これって反対から見たら,15-3=12になってる」

確かめ算的な見方で式を反対から見たのです。ひき算の発想が生まれたことを褒めます。

子どもたちに,ここでも「15-3は12で本当にいいのかな?」と尋ねます。子どもたちが説明します。

「15の10がないとして,5-2=3でしょ。これに10をたすから,10+3=13」
「あれ,これってさっきのたし算と同じだ」

ひき算もたし算と同じ考え方で計算ができることに気付いた声です。

1時間の授業の中で,位毎に計算するたし算・ひき算の両方の共通点が生まれてきました。子どもの発想は柔軟で素晴らしいですね。