2020年2月29日土曜日

3月29日(日)に開催予定でした「授業の流儀」セミナーは,コロナウィルス対策の観点から中止させていただくこととなりました。すでに参加を申し込みいただいた先生方,申し訳ありません。

コロナウィルスが落ち着いたら,時期を改めて開催する予定でいます。決まりましたら,再度お知らせいたします。

2020年2月28日金曜日

教科書活用セミナー静岡大会中止のお知らせ

3月28日(土)の静岡・常葉大学で予定していました「教科書活用セミナー静岡大会」は,新型肺炎予防の観点から中止することとなりました。すでにお申し込みの先生方,申し訳ありません。

また,落ち着きましたら開催を検討していきます。それまでお待ち下さい。

2020年2月19日水曜日

答えがぞろ目になる式〜その3〜

かけられる数の十の位が0以外で,答えがぞろ目になるかけ算さがしを,隣のクラスでも行いました。

子どもたちの式探しが始まってしばらくすると,「ないんじゃない?」「絶対にないよ」という妙な確信に満ちた声が聞こえてきました。

5分後のことです。M子が「あれ?できた・・・?」と首を捻っています。ノートを確認します。答えが11111になる式が書かれていました。そこで,その式だけを板書させます。

271×41

計算は子どもたち全員に取り組ませます。計算が終わった子どもから,「本当だ」「すごい」「できた!」と驚きの声があがります。271×41=11111になることが確認できました。

この式の存在が確認できたところで,子どもたちが動き出します。

「わかった!倍にすればいいんだ」
「そうか。それなら他もできる」

1以外のぞろ目の式の見つけ方に気付いたのです。子どもたちは,一斉にノートに向かって計算を進めていきます。その結果,次の式が生まれてました。

271×82=22222

この式は,確かに2のぞろ目になります。そこで,次のように子どもに投げかけます。

「どうやってこの式を考えたと思う。気持ちは分かるかな」

この段階では,式を見つけた論理をクラス全体で共有することが大切なのです。この論理が見えてくると,他の式の作り方も見えてくるからです。

「かける数の41を2倍にすると82になる」
「かける数を2倍したから,答えも2倍になる」

271×82の式を作った論理が見えてきました。これが見えると,3のぞろ目シリーズも簡単にできます。子どもからは,次の式が生まれてきました。

271×123=33333

これも2シリーズと同じ論理で作られています。しかし,「123は百の位だよ。十の位を超えているよ」という指摘も聞こえてきました。百の位×十の位でぞろ目を探すというルールから生まれた声です。そのルールを一部変えれば,3シリーズのぞろ目の式も作ることができることが見えてきました。

子どもの中には,百の位×十の位でぞろ目を見つけようと実験する子どもたちもいます。4シリーズを,このルールで見つけた子どもがいます。

542×82=44444

百の位×十の位で4シリーズの式を作ることができました。この式を考えた論理も共有していきます。子どもたちが説明していきます。

「41を2倍して82にしました。271も2倍にして542にしました」
「2倍と2倍だから,2×2で4倍になりました」

かけれられる数・かける数の両方を2倍ずつにすることで,4シリーズのぞろ目を見つけることができました。これまでとは異なる,新しい求め方です。その後,子どもたちはこれらのルールを使いながら,その他のぞろ目の式を見つけていきます。

子どもたちは,7以外のぞろ目シリーズの式を見つけることができました。「7はないのかな」と考える子どもたちもいます。そこで,次の式を取り上げます。

1626×41=66666

この式を考えた論理を読解していきます。(かけられる数を千の位に拡張することは,ルールとして認めることにしました)7のぞろ目シリーズを見つけるヒントとするためです。

「さっきは,271と41の両方を倍にしたでしょ。でも,この式は271だけ6倍にしている」
「271を6倍にしたから,答えも6倍になって66666ができる」

この論理が読解できると,ぞろ目7シリーズの作り方も見えてきます。

「わかった。だったら7は簡単だ」
「7倍すればいいだけだ」

かけられる数の271を7倍すれば,ぞろ目6シリーズと同じようにぞろ目の式を作ることができることに気付いたのです。

1897×41=77777

M子の1シリーズのぞろ目になる式の発見をもとに,1〜9までのすべてのぞろ目になる式を見つけることができた1時間となりました。ぞろ目かけ算の奥深さが見えた1時間ともなりました。



答えがぞろ目になる式〜その2〜

答えがぞろ目になるかけ算の式探し,その2です。かけられる数の十の位が0ではない式はあるのでしょうか。

多くの子どもたちは,「絶対にない」と考えています。一方,「まだ計算をしていないから,ないとは言い切れないよ」と主張する子どももいます。さて,本当にぞろ目になる式はないのでしょうか。

子どもたちがノートに向かって,ぞろ目の式探しに取り組みます。しかし,かけられる数の十の位が0以外の式探しは難航しました。やがて,「答えの一の位と,かけられる数とかける数の一の位のかけ算の答えの一の位は同じになる必要がある」という解決へのヒントに気付く声があがってきました。ところが,このヒントでも式探しは難航しました。

そこで,私からヒントを提示します。
「271×□□で答えがぞろ目になる式を考えてみよう」

しばらくして,「あった!」とK男が声をあげます。K男が見つけた式だけを板書させます。K男が見つけた式は,「271×82」です。子どもたちは,この計算をノートに進めていきます。やがて,「本当だ!」「できた」「すごい」と驚きの声が次々とあがります。答えは「22222」です。ぞろ目の答えの式があったのです。多くの子どもたちは,ぞろ目の答えの式はないと思い込んでいただけに,式が発見されたときの感動は一層大きなものとなりました。

1つ目の式が見つかると,あとはこの式をベースにした別の式が見つかっていきます。

542×41=22222

この式は,271×82のかけられる数を2倍に,かける数を1/2にして見つけた式です。このように,それまでに見つけた式をベースに,他の式探しが加速していきます。

813×41=33333
271×41=11111
813×82=66666

これらの結果を見た子どもたちは,自然に次のように話し始めます。

「まだ,数字が4,5,7,8,9のぞろ目の式がないね」
「計算すれば4,8シリーズはできるよ」
「5,7,9はできなかもしれないね」

その後,子どもたちはまだ見つかっていない式探しに取り組みます。「271×41=11111」の式をもとに,式変形を進めていくことですべてのぞろ目の式を見つけていくことができました。

子どもたちはぞろ目になる式探しを通して,実に多くのかけ算に取り組みました。実は,この学習そのものは計算練習にもなっているのです。単なる計算練習も,このような目的意識を持って取り組むと,子どもが進んで取り組む時間へとレベルアップすることができるのです。

答えがぞろ目になる式〜その1〜

3年生のかける数が二位数のかけ算学習の終末段階です。子どもたちに,次のように投げかけます。

「答えがぞろ目になる百の位×十の位のかけ算は作れるかな」

子どもたちは,ノートに向かって計算を進めていきます。しばらくすると「ありました」と声があがってきます。しかし,ここではすぐにその式は発表はさせません。式探しにもっとじっくりと取り組ませたいと考えたからです。

それからしばらくした後,ぞろ目の答えになったという式を板書させます。次の式が板書されました。

404×22=8888
707×11=7777
101×77=7777

いずれもぞろ目の式です。この板書を見た子どもたちが,「きまりがあります」と声をあげます。3つの式の共通点に気がついたのです。

「かけられる数の百の位と一の位が同じ数になっている」
「かけれられる数の十の位は全部0」
「かける数は,どれもぞろ目」

いずれの指摘も,3つの式に当てはまります。一方,このきまりの声に対して次の声があがります。

「でもね,くり上がりがあったら,ぞろ目ではなくなります」
「707×33は23331になるからぞろ目にならない」
「一の位のかけ算は7×3で21。十の位にくり上がるからぞろ目にならない」

きまりが当てはまらない反例を見つけてきたのです。この指摘によって,子どもたちが見つけた3つのきまりは,繰り上がりがない式を作る時にのみ当てはまることが見えてきました。しかし,このきまりを使えば,繰り上がりのないぞろ目の式を作ることはできます。そこで,子どもたちにぞろ目になる式探しに取り組ませます。

101×11=1111
202×11=2222
303×11=3333
202×22=4444
505×11=5555
303×22=6666
909×11=9999
303×3=9999

ぞろ目を構成する数が1〜9まですべての式を見つけることができました。

子どもが見つけたきまりを活用すれば,数が1〜9のぞろ目の式を作ることが見えてきました。それと同時に,子どもから「真ん中(十の位)が0じゃないぞろ目になる式は,絶対にできない」と声があがってきました。さて,本当にぞろ目の式はないのでしょうか・・・。





2020年2月14日金曜日

0は何個かく?(3年2けたの筆算)

3年生の子どもたちは,かける数が二位数のかけ算の計算方法を考える学習を進めています。単元前半は,筆算を使わずに計算する方法を考えていきました。子どもたちは,かけられる数・かける数の両方を位毎に分ける方法と,かける数だけ位毎に分ける方法を考えていきました。いずれの方法でも計算はできます。しかし,前者の方法はかけられる数の位が大きくなると,式の数が多くなり大変になります。ただし,245×43なら,1本1本の式は200×40などシンプルな式なので,この部分の計算自体は簡単です。一方,後者の方法は,答えに至るまでの式の総数は3本で終わります。しかし,245×3などの計算に大変さを感じている子どももいました。

これらの学習を経て,子どもたちは筆算と出合います。前者の方法は,外国式と呼ばれる写真左側の式につながります。
後者の方法は,日本式と呼ばれる写真右側の式とつながります。

2つの筆算の簡便さを,子どもたちは話題にして単元後半の授業が進んでいきました。

609×70の計算に取り組んだときです。日本式はどの子どもたちも,同じように計算を進めていくことができました。
一方,子どもたちの考えにズレが生まれたのは外国式の筆算です。左の黄色い部分は,(十の位の)0×70の答えを書く部分です。この場所に,0を何個書くのかで子どもたちの考えにズレが生まれました。

「0は2個でしょ」
「えっ,3個だよ」
「違うよ,4個だよ」

多くの子どもたちは,この段階ではほぼ直感で考えていました。しかし,ズレを感じた子どもたちは,再度,0の数を見直す活動に入ります。しばらくすると,「やっぱり3個だ」という声が多くあがってきました。一方,なぜ0が3個なのかがはっきりとしない子どもたちもいました。

0が何個なのか,本当に3個なのか子どもたちが話し合いを進めます。

「ここは,00×70の答えでしょ。0が3個あるから,000」
「本当の式は,00×70で,この答えを書く。00×70を筆算でしたら,0が3つになることが分かる」
「0×0の答えは0。十の位の0×0は答えの十の位の0・・・」

黄色い部分の答えは,00×70の式の答えを書く欄です。そのことをもとに考えると,000と書くことの妥当性が見えてきます。0も000も,数としての大きさは同じです。しかし,式の論理を大切に考えていくと,000と考えることの意味が見えてくるのです。

3年生の子どもたちの,論理展開の奥深さを実感した時間となりました。




2020年2月2日日曜日

教科書活用セミナー「深い学びのある算数授業をつくる」大会のご案内

4月25日(土)に教科書活用セミナー(池田大会)を開催します。

今回のテーマは,「『深い学び』のある算数授業を作る」です。「深い学び」は学習指導要領改訂の最大のキーワードともいえます。では,子どもがどんな姿になれば「深い学び」が具現できたといえるのでしょうか。また,「深い学び」を具現するには,授業のどこを変えればよいのでしょうか。今回は,この「深い学び」について先生方と考えていくセミナーにしたいと考えています。

セミナーの詳細・申し込みは以下からお願いします。

算数教科書活用セミナー・第12回 (池田大会)

【テーマ】「深い学び」のある算数授業をつくる

◆新学習指導要領の完全実施の年です。「主体的な学び」や「対話的な学び」も大切です。しかしそれらはすべて、「深い学び」のためといっても過言ではありません。算数学習が好きな子どもたちは、教科の本質の世界を愉しんでいるはずだからです。◆「深い学びのある算数授業とは、これまでとどう違うのか…。」2本の模擬授業を通して考えましょう。森谷明夫先生(第5学年)と江嶋綾先生(第6学年)の模擬授業です。◆講演は、本研究会代表の尾﨑正彦先生です。

【プログラム】
◆12:00 受付開始

◆12:30~14:00
教科書を活用した模擬授業(30分×2本)
① 森谷明夫先生の算数授業(第5学年)
② 江嶋綾先生の算数授業(第6学年)
※ 小グループで学びのシェア。
※ 尾﨑正彦先生のコメント。

◆14:15~15:00 (45分)
講座・尾﨑正彦先生
『“深い学び”のある算数授業をつくる』

◆15:15~16:00
『1学期単元.攻略法』 ~全6学年の教材研究会~
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加)

◆16:00~16:30
算数授業づくりQ&A

【会場】『池田市保健福祉総合センター』(4階・大会議室)

【参加費】2000円

※ 本セミナーは学校現場の先生方対象です。それ以外の方は参加できません。

申し込みは以下のアドレスからお願いします。
https://kokucheese.com/event/index/591121/

一番〇〇な数

本校の研究会が終わりました。3年生の子どもたちに「1番〇〇な数」の学習を行いました。

子どもたちに,次のように投げかけます。
「1~8の数字を全部使った,千の位同士の計算を作ろう」

先ずは,答えが一番大きい計算を作ろうと投げかけます。子どもからは,「簡単」と声があがります。そこで,ノートに計算をさせます。
子どもたちの考えは,大きく2つに分かれました。先ずは,「8765+4321」を取り上げ,「この式を書いた友だちの気持ちは分かるかな」と投げかけます。

「答えを大きくするには,千の位を大きくするでしょ。だから8を千の位に書いて,あとは順番に7,6,5・・・と書いた」

この説明に子どもたちも納得です。それと同時に,「でも」と声があがります。もっと答えが大きくなる式があるという声です。

「8642+7531の方が大きくなる」
「千の位を大きくするから,千の位の8の下に次に大きい7を書く」(筆算形式で説明)
「百の位は次に大きい6で,その下に5を書く・・・」

8~1の数字をどの位にどの順で位置付けると答えが最大になるのかを,子どもたちは論理的に説明してきました。

続いて,「今度は,答えが一番小さくなる計算はできるかな」となげかけます。子どもから,「簡単」「逆だ」と声があがります。子どもたちは,すぐにノートに向かって計算式を書いていきます。

多くの子どもが作った答えは「1111」でした。この答えを出して,安心している子どもがほとんでした。「2468-1357」の式で「1111」を求める子どもがほとんどでした。先ほどの「逆」の意味を,千の位~一の位の数字の配置を反対にすると考えたのです。一方,「8642-7531」の式を考えた子どももいました。そこで,この式を取り上げ「8642-7531の式を考えた友だちの声はわかるかな」と,式の読解を行います。

「各位の数字の差が小さくなるようにすれば答えが小さくなると考えた」
「差が1になるように考えた」
「8と7は差が1違い。でも,8と6なら差は2になる。だから,(同じ位は)1違いにした」

同じ位の差に目を付けたすばらしい説明が生まれてきました。この式の反対の意味は,たしざんをひきざんに反対にするという意味だったのです。

「8642-7531」も「2468-1357」も答えが最大のたし算探しで見つけたきまりを,ひき算にも当てはめて考えたのです。考え方を類推する見方・考え方は,これまでの算数学習でも繰り返し経験したことです。この見方・考え方には価値があります。
しかし,「もっと小さい答えの式がある」という声があがってきます。何人かの子どものノートには,「1111」よりも小さな答えの式が書かれています。つまり,答えが最大になるたし算の式探しのきまりが,ひきざんには当てはまらないのです。子どもたちの式探しが再スタートです。

1111よりも小さい答えを見つけた子どもたちが,その式を板書していきます。板書された式の中で,答えが最小になったのは「5123-4876=247」になりました。この時間では,この答えよりも小さい式は見つかりませんでした。この式の答えが最小なのか疑問をもったところで時間となりました。また,子どもからは「式にパターンがある」「きまりがある」とあらたなきまりに気付く声が生まれてきました。次の時間にも子どもの問いが連続していく形で授業を終えることができました。