2020年10月30日金曜日

7の段は4パターン?

 2年生「かけ算」の学習です。次の問題を子どもたちに提示します。

「7の段のかけ算も,2つのかけ算の合体でできるかな」

6の段のかけ算は,右のような2つのかけ算を合体することで答えを見つけることができました。

この結果を,次のように子どもたちに確認します。

「6の段のかけ算は,3つのパターンの式があるんだね」

すると,次の声が聞こえてきました。

「それじゃあ,7の段は4つのパターン?」

この声を時間をかけてクラス全体で共有していきます。

「6の段から7の段は1増えるでしょ。だから,パターンの数も1増える」

「今までも,増えたら,もう一つが増えるというのがあったから,きっと4つのパターンになる」

「9月3日の虫食い算で,似た問題があったよ。虫食いの数字が4の時は式が4つできた。虫食いの数字が1つ増えて5になったら,式も1つ増えて5になったよ」

「本当だ!」

2年生でもこれまでの学習では,片方が増えればもう片方も増えるという経験を多くしています。その経験値が,上記のような子どもたちの発想を引き出すきっかけとなったのです。また,具体的な9月3日の学びと関連付けられる見方も,驚くべき発想力です。

さて,子どもたちが考えた変化のきまりは本当でしょうか。この段階では,子どもたちはまだ半信半疑です。そこで,7×2が何パターンの式にできるのかを実験します。

その結果は,残念ながら4パターンではなく3パターンでした。すると今度は別の見方が生まれてきます。

「2,4,6,8の段だけ変わるんじゃない?」

「半分にできる段だけ変わるんじゃないかな」

「1,3,5,7,9の段は変わらないんだよ。前の段のままだね」

子どもたちは,段数が偶数になると式のパターンが1つ増えると考えたのです。最初のきまりが当てはまらないことが分かっても,そこで諦めるのではなく,新たなきまりを探そうとする前向きな姿が素敵な子どもたちです。

さて,この新たな予想についても,子どもの考えは半信半疑でした。

新しいかけ段の学習を,式の組み合わせ数の変化で考えるという新たな追求目標ができました。





2020年10月28日水曜日

1セットは6個? 1セットは2個?

 2年生「かけ算」6の段の導入場面です。子どもたちに次のように投げかけます。

「チョコは全部で何個でしょう」


次の画像を提示します。子どもたちは,見えたチョコの数をノートに書いていきます。多くの子どものノートには,6×2という式が書かれていました。

すると,ここでY子が「よくわからないところがあった」と呟きます。

「青いチョコは2個あったでしょ。でも,上の茶色のチョコが何個かよく分からなかった」

この声をきっかけに,子どもたちが動き出します。

「茶色のチョコは4個あったよ」

「だから,1セットは6個あるよ」

「1セットは2個だよ」

「えーっ?どういうこと?」

「1セット」という主語に続く言葉が2種類生まれてきました。それぞれの言葉の意味を,子どもたちが説明します。しかし,すぐにはその違いを理解できない子どももいました。すると今度は,次の声が生まれてきます。

「だったら,青と茶色のチョコを別々に式にしたらいいよ」

「茶色は4×2で8個」

「青は2×2で4個」

「2つを合わせたら12個になるよ」

「1つの式にできるよ。6×2だよ」

「4の段と2の段を合わせたら6の段になる」

「たし算の筆算みたいだね」

「それなら,5×2と1×2を合わせてもできるよ」

6×2の答えを求めるには,既習のかけ算を合体すれば答えを見つけることができそうだということが分かりました。一方,「まだ,他のかけ算はわかんないよ」という声も聞こえてきます。子どもらしい声です。

そこで,6の段の他のかけ算も既習のかけ算を合体することで答えを見つけることができるのかを実験していきます。

その結果,6の段のどのかけ算も既習のかけ算を合体することで答えを見つけることができることが見えてきました。かけ算の学習は,中盤を過ぎると中だるみになる傾向があります。しかし,今回のように6の段を既習の2つのかけ算の組み合わせでも構成することができるという新しい見方を引き出すことで,かけ算学習も再び活性化していきます。

今回は,提示するチョコの色を2つに塗り分けた上で,「チョコ全部の数は何個?」と尋ねることで,6の段で全体を捉える見方と,色に応じて部分と部分で捉える見方の2つを引き出すことができました。この学習では,「1セットは6個」「1セットは2個」という子どもの声がきっかけとなり,この目的へと子どもたち自身の手で進んでいくことができました。

もちろん,これまでに子どもたちが見つけた「かけられる数ずつ答えが増える」というきまりでも,6の段の答えを見つけることもできます。このきまりも,授業の中で確認していきました。

さて,6の段のかけ算が完成したところで,「でも,他の段も筆算のように合体してできるのかなあ」という不安の声が聞こえてきました。多くの子どもは,他の段も合体でできそうだと考えていますが,不安そうな子どももいます。このような子どもたちに素直な気持ちのズレの存在が,他の段のかけ算を学習していく目的意識にもつながるのです。





2020年10月26日月曜日

愉しい算数授業をつくる研修会,間もなく満席!

以前お知らせしました「愉しい算数授業のつくる研修会」,間もなく満席です。参加を検討されている先生は,お早めに申し込みください。

期日:2020年11月14日(土)12時30分~16時

会場:大阪府池田市立池田小学校

後援:池田市教育委員会

詳細は,以下の大会チラシをご覧ください。申し込みは以下のアドレスからお願いいたします。

morimoriaki504-tanosiisansuu@yahoo.co.jp




2020年10月24日土曜日

7×4,4×7?

 2年生に次の問題を提示します。

「7つの袋があります。袋の中には,4個ずつ飴が入っています。飴は全部で何個ありますか」

問題を書いている途中から,「かけ算だね」「分かった。今日は7の段だ」「7×4だね」という声が聞こえてきます。予想通りの声です。

子どもから生まれた式は,次の2通りです。

「7×4」

「4×7」

多くの子どもは,7×4だと考えました。今日の学習はかけ算7の段だと勝手に思い込んでいる子どももいました。7×4だと考える子どもが,その理由を説明します。

「だって,問題が7が最初で,次に4が来るから7×4だよ」

「式は問題の順番通りだから,7×4だよ」

多くの子どもたちは,問題文の数字の順にその根拠を求めていました。一方,4×7だと考える子どもたちは,異なる理由を発表します。

「7×4は7が4個でしょ。4×7は4が7個でしょ。だから4×7だよ」

とてもよい説明が生まれてきました。しかし,まだ全員は納得しません。別の説明が続きます。

「知りたいことは,飴の数でしょ。だから4×7だよ」

「袋に飴が4個入っているってことでしょ。だから4×7」

この時点では,子どもたちの考えはまだ分かれています。すると,次の声があがってきます。

「図を描くと分かるよ。このお話の絵は袋に飴が4個ある。その袋が7個ある絵になる」

絵が完成すると,「あっ,そういうことか」という納得の声があがります。一方,同じ絵を見ているのに,「それなら7×4でしょ」と考える子どももいます。なかなか子ども全員が納得するところまではいきません。

すると,次の声が聞こえてきます。

「もし,7×4だとすると別の図になるよ」

1つの袋の中に7個ずつ飴が入った図が4袋完成します。7×4の図を見ることで,それまで「でも,7×4だよ」と言っていた子どもたちも納得しました。

4×7の図だけでは納得しなかった子どもを変えたのは,彼らが正しいと信じていた7×4の図が目の前に現れたことでした。言葉だけではなかなか子どもの考えは変わりません。特に低学年では,言葉と図がセットで議論されることが,クラス全員の子どもの納得へとつなげるために必要であることが見えてきます。





2020年10月22日木曜日

0でリセット!(かけ算4の段)

 2年生「かけ算」の学習です。次の問題を提示します。

「車のおもちゃを作ります。1台に4個ずつタイヤをつけます。タイヤは全部で何個ですか」

この問題文は,板書シリーズ(東洋館出版社)2年下の山本良和先生の実践を引用しています。

問題文を見た子どもから,声があがります。

「車が何台かわからないと,タイヤの数がわからない」

「かけ算になるよね」

「例えば,車が2台なら4×2で8個だね」

「例えば」を使うことで,具体的な問題場面をイメージする声もあがってきました。そこで,車が1台の場合,2台の場合と順にタイヤの数を求めていきます。

3台目までタイヤの数が求められたとき,子どもたちが「おもしろいことがあります」と声をあげてきます。

「4ずつ増えている」

「だって,2の段は2ずつ,5の段は5ずつ,3の段は3ずつ増えたでしょ。だから,4の段も4ずつ増えていくんだよ」

これまでのかけ算の学習で学んだことをもとに,答えの増え方がかけられる数と同じ数だけ増え続けることが説明できました。

さらに,次の声もあがってきます。

「一の位が繰り返すんじゃないかな」

「4,8,2だから,この後に数字がいくつか続いて繰り返すよ」

「絶対に繰り返すよ。だって,今までも0が来たら繰り返してたよ」

「5の段は5,0,5,0だった。2の段は,2,4,6,8,0,2,4だった。3の段も3,6,9,2,5,8,1,4,7,0,3だった。だから,0がきたら繰り返す」

「0が来たら一の位がリセットされるんだ」

答えの一の位が繰り返すことを,ここでも既習のかけ算の一の位の繰り返しのきまりから類推しています。素晴らしい見方・考え方が生まれてきました。「0でリセット」という説明も,子どもらしくて素敵ですね。

しかし,4の段も一の位が繰り返すのかは,この段階ではまだ確かめられていません。子どもの中には,まだ不安そうな表情を浮かべる子もいます。そこで,4台目以降のタイヤの数をかけ算で求めていきます。

その結果,子どもたちの予想通りに一の位が繰り返すこと,さらには0でリセットされることが確かめられました。すると,さらに子どもたちは考えを拡張していきます。

「きっと,他の段も0でリセットされるね」

「でも,10の段は違うよね」

「そうかなあ。10,20,30,40だから,0が繰り返すってことじゃない?」

既習のかけ算学習で見つけた決まりを,目の前の新しいかけ算に類推的に当てはめて考えようとする姿は,深い学びそのものです。しかも,類推的に考えることを子ども自らが進んで行っていけることに価値があるのです。素晴らしい子どもたちです。




2020年10月19日月曜日

繰り返しは長くなる?

 2年生「かけ算」の学習です。この日は,3の段のかけ算九九を暗唱することが授業当初の目標でした。

最初に,3×1=3から3×13=39まで,順に3の段のかけ算を書き出していきます。この途中で,子どもから次のような呟きがあがってきます。

「答えの一の位が繰り返している」

「3.6.9.2.5.8.1.4.7.0.3.6・・・と繰り返すよ」

3の段の答えの一の位が繰り返す発見は,前時にも生まれてきたものです。ところが,今回は,この声をきっかけに子どもの声がさらに続きます。

「繰り返すのは5の段にも,2の段にもあった」

「5の段は,5.0.5.0・・・だった」

「2の段は,2.4.6.8.0.2.4・・・と繰り返した」

「5の段は繰り返す数が2個だ」

「2の段は繰り返す数が5個で,3の段は10個だ」

「だったら,まだ勉強していないけど,9の段になると繰り返す数字の数が一番長くなるかもしれないよ」

 子どもたちは,答えの一の位の数字が繰り返されるおもしろさを感じています。この繰り返しは,9の段になると繰り返しに至るまでの数字の数が長くなるのではないかと考えたのです。子どもらしいおもしろい発想が生まれてきました。この時点の多くの子どもたちは,この予想が正しいのではないかと考えています。一方,半信半疑の子どもたちもいます。

かけ算の学習は,後半になるとワンパターンになりがちな傾向がありますが,このように子どもがきまりを見出し,さらにそのきまりが他の段にも当てはまるのかと考えていくことで,他の段を学習する目的意識も生まれてきます。




2020年10月16日金曜日

3の段も・・・

 算数の時間,次の問題を子どもたちに提示します。

「串に刺さった団子を食べました。食べた団子の数は何個ですか?」


 「答えが出せない」「団子は何個?」と声があがります。さらに「団子は3個串に刺さっている」「3個で1個になっている」と声が続きます。

 「3個で1個」とはどういう意味でしょうか? 3個は3個のはずです・・・。そこで,この言葉の意味を子どもたちに問いかけます。


「3個で1セットということだよ」

「5セットなら3×5になるんだよ」

「何セットか分かればできるよ」


 「セット」という言葉が生まれてきたことで,団子の問題をかけ算で表すことができることが見えてきました。


 その後,セット数を増やして団子の数をかけ算を使って求めていきます。セット数が増えていくと,子どもから「おもしろいことがある」と声があがります。


3の段も3ずつ増えていく」

「だって,5の段は5個ずつ増えて,2の段は2個ずつ増えていたからだよ」


 これまでに子どもたちが学習したかけ算は52の段です。そこで子どもたちが見つけたきまりをもとに,3の段にもそのきまりが当てはまると考えたのです。類推的な見方が生まれてきました。


 さらに次の声も生まれてきました。


3×5のかけられる数とかける数を反対にすると,5×35の段が見える」

「だったら,3×11の段,3×22の段,3×44の段が見える」

「答えの一の位が3692581470と繰り返す」


 一の位が繰り返す声は,実際に確かめないと検証することができません。授業前半で子どもたちが見つけた「答えが3ずつ増える」決まりを使えば,3×の答えは永遠に求めることができます。答えを順に書き出していくと,一の位のきまりが正しいことも見えてきました。


 かけ算を作り出す場面でも,子どものアイディアがあふれる時間となっていきました。




2020年10月15日木曜日

新潟県小学校教育研究大会2次案内



 以前お知らせした新潟県・新潟市小学校教育研究会の2次案内ができましたのでお知らせします。〆切りは10月20日(火)です。もうすぐです。参加される方はお急ぎ下さい。

 詳細は以下をご覧下さい。





 

2020年10月8日木曜日

5の段のかけ算

算数のかけ算の学習は,九九と呼ばれるかけ算作りとその暗唱場面に入っています。最初に取り組んだのは5の段のかけ算作りです。

5×1〜5×9までのかけ算が完成すると,子どもたちの手があがります。

「おもしろいことがある!」

 最初は数人の手があがるだけでしたが,この声に刺激されたのでしょうか次々と「私も見つけた!」と次々と手があがってきます。子どもたちが見つけたおもしろいこととはどんなことでしょうか? 


「一の位が5,0,5,0・・・となっている」

「だって,5とびの数だから5,0,5,0・・・となるんだよ」

「でも,6の段だと6飛びだから,5,0,5,0とはならいない」


 一の位の数の繰り返しがあるおもしろさに気付いた子どもたちは,繰り返しの根拠や他の段ではこのおもしさが成り立たないことを見出しました。しかし,6の段のかけ算は未習です。そこで,6×1の答えから順に書き出していきます。答えは「6,122430」なので一の位には5の段のような繰り返しはありません・・・。(実は6×9まで書き出すと新たな繰り返しが見えてくるのですが,この時間はここまででした)


 この他にも,次のような声があがりました。

「十の位が1,1,2,2,3,3,4,4となっている」

「でも,6の段だと十の位は1,1,2,3だから,6の段には当ては  

ならない」

「これは,かける数と答えに関係があるんだよ」

「かける数が1,2,3,4・・・9と順番になっている」


「これは,他の段も一緒」

「かけられる数は全部5になっている」

「他の段も,同じ数だけになる」

「5×5の反対にしても同じ式がある」

「他の段にも6×6みたいに反対の式がある」

「でも,反対にしても同じ式の場所は5の段とは違う場所になる」

「5×5以外は,反対にすると別のかけ算ができる。例えば,5×4なら4×5ができる」

 

5の段で発見したおもしろさが,他の段のかけ算にも当てはまるのかを進んで考えていく姿が生まれてきました。このように子ども自身が対象場面を拡張して考えられる姿は素晴らしいですね!

2020年10月6日火曜日

かけ算の式で表せるものを見つけよう!

 子どもたちに,次のように投げかけます。

「かけ算の式で表せる場所を探そう」

 かけ算学習の目的は,かけ算九九を暗唱することだけではありません。最も大切なことは,同じ場面を複数のかけ算の見方で表現する数の多面的な見方ができることや,日常生活の中にかけ算で表現できる場面を見出す見方・考え方を培うことです。この学習では,この目的の後者の部分を培おうと考えました。


 最初に子どもから生まれてきたのは,ホワイトボード下のロッカーの小部屋の数でした。この小部屋は,2×3と表現することができます。当初は,この小部屋の数が2×3に見えない子どもが多数いました。2年生には,具体的場面を抽象化して考えることは時間がかかります。


 その後,子どもたちは教室にある様々なものをかけ算の


式で表現していきました。

「窓の下の小さな窓は,2×4」

「窓の上の大きな窓は,2×2」

「窓にあるカーテンは,2×4」

「天井のエアコンは,2×2」

「教室の後ろのロッカーは,3×3」


 様々なかけ算の式が教室から見えてきました。こ


れらのものがかけ算の式に見えることは,私も想定内でした。私の想定外のかけ算の式は,右の消毒液でした。コロナ感染対策用に廊下に置かれているものです。この消毒液は,常に右のように配置されています。これは「3×2」と表現できます。

 こんなところにもかけ算の式を見つけることができるなんて,子どもの視点は鋭いですね。

2020年10月5日月曜日

新潟県・新潟市小学校教育研究会 公開実践事例報告会Zoom開催のご案内

 11月13日(金)に新潟県関川村立関川小学校で実践事例報告会が開催されます。例年は,対面で開催していましたが,今回はZoomを使ったオンライン開催となります。

公開授業もZoomでの参観となります。私も,Zoomで公開授業や全体指導に参加します。詳細は以下の案内をご覧下さい。



2020年10月1日木曜日

算数プレミアム講座に落選の方への朗報!

 算数プレミアム講座にお申し込みいただいたのに,先着枠から惜しくも漏れてしまった先生方へ朗報です。


追加講座の案内を10月5日に学校図書からお送りさせていただきます。内容はお楽しみです! こちらも先着順の案内になります。メールチェックをこまめにお願いします!