2021年12月30日木曜日

2021年が終わります

 2021年も終わります。今年最後の仕事は,新潟の算数愛に満ち溢れた若き先生方が主催する算数冬祭り講座でした。対面とオンラインのハイブリッド型で開催しました。

当日,新潟ではジャニーズのスノーマンのコンサートが連日開催されていたにも関わらず,会場に駆けつけてくださった先生方に頭が下がりました。スノーマンよりも算数に熱いサマーマン?を選んでいただいたのでしょうか・・・。ありがとうございます。

年末は,田中博史先生と共著で来春刊行の「算数授業の当たり前を問い直す」を執筆中です。ほぼ書きあげましたが,現在は詳細を見直しています。これはかなり刺激的な本になります。これまでに私が感じた素直な算数授業に対する違和感や疑問から出発し,新たな授業の羅針盤を実践例を交えながら提案していきます。あまりにも過激すぎて発刊禁止にならないといいなあ…。田中先生も私も,民間人ですから怖いものはありません(笑)

みなさん,よいお年をお迎えください!


2021年12月20日月曜日

関西大学初等部研究発表会(オンライン)開催のお知らせ

 2022年2月3日(土)に関西大学初等部研究発表会をオンラインで開催します。オンラインですが,生中継で4本の授業を公開します。公開する授業は,国語・英語・ミューズ学習(2本)です。講師として,筑波大学附属小学校の青山由紀先生から,国語授業のパネラーとご講演をお願いしています。

お申し込みは,以下のアドレスからお願いいたします。

https://www.kansai-u.ac.jp/elementary/2021/12/post-864.html#Contents

2021年12月19日日曜日

算数冬祭り もうすぐです!

  12月26日(日)新潟で開催される新潟算数サークルMAC主催「算数ウィンターフェスティバル」の開催1週間前となりました。

新潟は雪景色のようですが,会場は講師陣と参加される先生方の熱気で熱い講座が開催されることでしょう。

日時:12月26日(日)13時~

会場:新潟市立中央図書館(ほんぽーと)

対面30名 オンライン50名

まだ席に少しだけ余裕があるようです。新潟大学附属新潟小の志田先生をはじめ,地元新潟の力のある算数講師陣と一緒に,冬休み明けの算数授業を盛り上げていきます。お楽しみに!

お申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com/event/d12ea0eb6915067e555171d91f85cb83/


2021年12月17日金曜日

大きい方が勝ちゲームをしよう(小数)

 子どもたちに「大きい方が勝ちゲームをしよう」と投げかけます。

クラスを半分に分けます。代表の子どもが前に出て,順に裏返しに貼られた数字カードを表にします。カードは全部で10枚。0~9の数字が書かれています。その数字を,「」に入れます。一の位,小数第一位のどちらに入れるのかは,チームで相談して決めます。

1回戦を行いました。消防チームは4,救急チームは0を引きました。両チームとも,数字カードを小数第一位に入れました。

そこで,「0を小数第一位に入れた気持ちはわかる?」と尋ねます。子どもたちは,次のように考えました。

「もし一の位に入れたら,0.になって小さくなる」

「もし次に9が出たとしても,0.9では負けるよ」

「0.にしちゃうと,もう何が出ても負けちゃうよ」

「だって,数字カードは同じのはないんだから,消防チームはもう0は引かないでしょ」

「もう何が出ても負けちゃう」は,見えている数字と見えていない数字とをつなげて,論理的に考えた説明です。この説明を,ペア説明で確認し,ノートにも再現させました。論理的思考力を培うためです。

その後,ゲームを続けていきます。救急チームがカードを引く前に,「次に何が出てほしい」と尋ねます。子どもたちは,次のように考えていきます。

「9が出てほしい。9.0になるから」

「9が出れば,消防チームが8を引いても勝てる」

「8.4と9.0だから9.0が大きい」

小数の大小比較が,本時の目標です。すでに子どもたちは感覚的に小数の大小比較はできています。しかし,その感覚を数学的に整理していくために,次のように尋ねます。

「一の位は救急チームの9の方が大きいけど,小数第一位は4の消防チームが大きいよ。だから,1勝1負で引き分けじゃないの?」

すると,子どもたちは次のように説明してきます。

「違います。一の位が大きい方が勝つんだよ」

「前に,一の位と十の位の数字でゲームをしたでしょ。その時は,十の位を見れば大きい方が分かったでしょ。それと同じで,これも大きいくらいの一の位を見れば大きい方が分かるんだよ」(K子)

K子の説明は,既習の整数の大小比較と小数の大小比較が同じだと考えた説明です。対象範囲を拡張して考えていくすばらしい見方・考え方が生まれてきました。この見方・考え方を大いに価値付け褒めます。

実際にカードを引くと,5.4対3.0で消防チームの勝ちとなりました。

2回戦以降は,子どもたちに「同じ数字カードは1枚しかなかったけど,このルールで続けますか。それとも,2枚ずつに変えますか」と尋ねます。ゲームとしての面白さは,後者の方が上です。子どもたちも後者のルール変更を希望しました。

後半は,新しいルールでゲームを重ねながら,小数の大小比較を楽しんでいきました。





2021年12月9日木曜日

32個なら何点?(小数)

3年「小数」の導入場面です。


個で点ブロックゲーム」をしますと投げかけます。1人25個のブロックを持ち,ペアでジャンケンをしてブロックを取り合います。パーで勝つと3個,チョキは2個,グーは1個のブロックを相手からもらえます。ゲームは大盛況で終わります。各ペアで勝った子どもが獲得したブロックの数を,板書します。


その後,「ブロック10個で1点」というルールを伝えます。すると,子どもたちの手が次々とあがってきます。

「もし20個なら2点。でも,32個だったら3点はいいけど,2個はどうするの?」


中途半端な2個のブロックをどう点数化すればよいのか,子どもたちは悩みました。

すると子どもたちは,次のように考えていきます。

「2個はなしでもいいじゃん」

「もし29個なら,あと1個で3点。9個集めたのに損してる」

20個と29個が2点は不公平」

「それなら29個は3点にしたら・・・」

「1点より少ない点数の言い方があればいいのに」

「2点とあまり9個?」

「前に勉強した分数を使って9/10点にしたらいいよ」


分数を使えば,10個未満のブロックも点数化していくことができます。このアイディアをもとに,ゲームで勝った子どもたちの得点を点数化していきます。

「梨愛さんは2点と6/10点,森君は2点と9/10点・・・」

「なんか点ばっかりで長いなあ・・・」


既習の分数を使えば,1点よりも小さな得点を表すことはできます。ところが,整数部分と分数部分を分けて表記すると,長くなっていきます。そこに子どもたちは面倒くささを感じたのです。

ここで小数の存在を教えます。「1/10=0.1」という小数の定義を使うと,Mさんの得点は「2点と6/10点→2.6点」,H君の得点は「2点と9/10点→2.9点」と短く・すっきりとします。


1よりも小さい大きさの表し方の必要感とその表記の仕方を学んだ1時間でした。



2021年12月8日水曜日

GAKUTOセミナーIN京都 満員御礼!

2022年に2月19日(土)に開催の「GAKUTOセミナーIN京都」は,対面枠・オンライン枠とも満席になりました。早々にお申し込みいただいた先生方,ありがとうございます!

対面の方は京都で,オンラインの方は画面越しでお会いしましょう!

残念ながら今回参加が叶わなかった先生方,また,次回の「GAKUTOセミナー」でお会いしましょう。今後は,神奈川、千葉、静岡、大阪、広島でも開催します。お楽しみに!

2021年12月7日火曜日

これって1/4mなの その後

前回の分数学習のその後です。右図の色の塗られた部分が「1/4m」かどうかで,子どもの考えが分かれました。


 先ずは,全員が納得していることを確認します。「2mを4等分した内の1つ分」が,色が塗られた部分です。

ここまでは,全員が納得です。ところが,これを「1/4m」と考えるのか否かで子どもの考えが分裂しました。


 「2mを4等分した内の1つ分だから1/4m」

 これは前回も登場した「1/4m」と考える子どもたちの説明です。


1/4mでなはい」と考える子どもから,新たな説明が生まれてきます。

「2mじゃなくて1mだけ見ます」

 2mの長さの紙を半分に折ります。1mだけが見えてきます。すると,色の塗られた部分の長さが先ほどまでとは違うように見えてきます。


「1mを2等分した1つ分だから1/2mになる」

「1mをもとにして考えるから,1/2mだよ」

「そういえば,今までの問題も全部1mをもとにして考えていた」

「1mよりも小さい長さを表したいから分数を使った。だからもとにするのは1mじゃないとだめだよ」


 2mある図を半分に折ることで,1mだけに注目させます。すると,先ほどまで1/4mだと見えていた場所は,1/2mに見えてきます。1/2mの幅は変わっていないのに,図を元通りにしたからといって,1/4mになることはありません。図を半分に折るという子どものアイディアで,全員が納得をしていきました。


 単位の付く分数は,基準量は「1」なのです。従って,「2mの1/4」ではあっても,それを「1/4m」とは表現しないのです。2mのテープを半分に折ることで,基準量の「1」を意識する大切さが見えてきました。これで全員が納得しました。


最後に,「多くの人が騙された原因は何かな?」と尋ねます。

「テープの長さをよく見ないで,1/4mと考えたからだ」

「もとが1mなのに,そこをよく見ていなかったからだ」

 分数には,「分割分数」と「量分数」という2つが存在します。2年生では前者を,3年生では後者を学習します。この年代の子どもたちは,この両者の区別が混沌とすることがあります。その自然な姿から,両者の違いを子どもの力で明確化していくことができました。



これって1/4mなの?

算数の分数の学習も大詰めです。子どもたちに,「正しい長さはどれでしょう」と投げかけます。提示された長さに合う図を探します。


3問目の問題で,「1/4m」の長さを尋ね,右図を提示


します。正しいと思う図を,左手・右手・両手で指させることにしました。この問題では,子どもの意見は分裂しました。

右図は「1mを4等分した内の1つ分だから1/4m」と全員が納得しました。一方,意見が分かれたのが左図です。多くの子どもが,左も1/4mと考えました。その根拠を,子どもたちに考えさせます。

「2mを4等分した内の1つ分だから1/4m」


確かに,2mの1/4の部分に色が塗られています。それなら,「1/4m」と考えてもよさそうです。ところが,1/4mではない」と考える子どもたちもいます。彼らが主張します。

「1mの1/425㎝。でも,2mの1/450㎝だから,左は違う」

 「もし8mのテープを1/4にしたら,それは2m。1/4mは1mより短いはずなのに,1mより長いから1/4mではない」


 1/4mの長さを㎝に置き換えると25㎝です。この視点からの説明ですが,1/4mだと考える子どもたちは納得しません。「だって,2mの1/4。だから1/4m」と主張します。分割分数と量分数を混同しているのです。3年生にはよく見られる光景です。


すると,今度は次の声が聞こえてきます。

「1mは左から順に1/4m,2/4m,3/4m,4/4mとなって1mになる。でも,左の図が1/4mだとしたら,左から1/4m,2/4mとなるけど,そこは1mの場所。2/4mが1mはおかしい」

「8mの1/4は2mでしょ。1mを超えている。左の図が1/4mならこれも1/4mになるのは変だ」


 左の図が1/4mだとしたらと仮定した考えると,テープの色の部分が増えていくと不都合が生まれてくるという説明です。素晴らしい視点からの説明です。しかし,これらの説明で「えー,分かんなくなってきた」と混迷に陥る子どもも生まれてきました。残念ながらここで時間切れ。子どもの話し合いはどうなるのでしょうか・・・。




2021年12月3日金曜日

第2回 愉しい算数授業をつくる会申し込み開始!

 授業実践ビデオや講演会,Q&A講座を内容とした「第2回 愉しい算数授業をつくる会」の開催申し込みが始まりました。

日時:2022年1月15日(土) 12:15〜

会場:大阪府池田市立池田小学校

会費:3000円

本会は新型コロナ感染対策を十分に施した上での対面開催です。何と言って目玉は,授業のビデオを見て,先生方でその授業について語り合い時間帯があることです。外部から先生方を招いた研究授業は,新型コロナ感染予防対策から実施できない状況になっています。しかし,ビデオなら,参観は可能です。ビデオ見ながら,即,その授業について語り合っていきます。

また,前回も好評だったQ&A講座もあります。

会の詳細は以下のチラシをご覧下さい。

申し込みは,以下のアドレスからお願いいたします。

2021年12月2日木曜日

同じ大きさの分数にきまり?

分数の学習で,「水は何L入っているでしょう」と問題を出しました。この問題では,色の塗られた部分の水のかさを分数を使って表します。数問目の問題で,右のコップを提示します。「水が入っていない」「空っぽ」の声に続き,「分かったぞ。自分で水を入れるんだ」という声が続きます。鋭い声です。
そこで,自分で水のかさを設定し,色
を塗ることにしました。子どもたちは,様々な水のかさを考えました。


それらの中で,左のコップを紹介し「何L入っていますか」と尋ねます。

「1Lを10等分した5つ分だから,5/10Lだね」

「これって,1Lの半分だね」

「それなら,1/2Lと言ってもいいね」

「だったら,2/4Lでもいいね」


5/10Lの水が入ったコップが,見方を変えると1/2Lにも2/4Lとも表現できるという声が生まれてきました。この結果を見た子どもから,新たな発見が生まれてきます。


1/2の分母と分子を2倍すると,2/4になる」

1/2の分母と分子を5倍すると,5/10になる」

「これは,たまたまじゃないかな?」

5/10Lと同じ大きさの分母・分子の間に,比例関係があるという発見です。さて,この関係は偶然なのでしょうか。他の分数で実験することにしました。


水のかさではなく,長さで実験します。1/4mと同じ大きさは,比例関係を使えば「2/8m」だと分かります。しかし,この関係が本当に正しいのかは図で確認するしかありません。

そこで,ノートに作図をしていきます。左図の真ん中のテープは,2/8mです。間違いではありませんが,この図だと「2mに見えるからダメだよ」と子どもたちは考えました。下のテープのように1mの長さを最上段の図と揃えることで,1/4mと2/8mが同じ長さであることが見えてきました。


子どもたちの発見は,5年生の内容ですが,数に対する素晴らしい見方は3年生でも生まれてくるのです。



2021年11月27日土曜日

水は何Lから分数のたし算・かけ算へ

 3年生「分数」の学習の2時間目です。子どもたちに,次の問題を提示します。

「水は何L入っていますか?」

この問題に対して,「昨日の問題と似ている」と声が聞こえてきます。そこで,「何が似ているの?」と尋ねます。子どもたちは,次のように説明してきます。

「問題文がmとLの違いで,あとは同じだよ」

「昨日は,mと㎝だった。水のかさも,Lの下にはdLがある。小さい単位を表すというのが似ている」

子どもたちは,問題の構造が似ていることを見抜いてきました。鋭い子どもたちです。

最初に提示したのは,1Lますに3dL分だけ水が入った図です。3dLの水が入っていることは,子どもたちもすぐに分かります。しかし,「L」で答えます。子どもたちは,前時の長さの学習をもとに,次のように説明していきます。

「1Lを10等分した内の3つ分だから,3/10Lだね」

「等分ってなに?」

「公平っていうことだよ」

1Lよりも少ない水のかさも,分数を使えば「L」で表現できそうなことが見えてきました。

そこで,次の問題を提示します。今度の問題は,1Lますに7dL分


の水が入った図です。子どもたちは,この図について次のように説明を進めていきました。

「1Lを10等分した内の7つ分だから,7/10Lだね」

「あれ,これって1/10Lが7つ分っていうことだね」

ここで7/10Lに対する別の見方が生まれてきました。そこで,「1/10Lが7つ分って,どういうこと?」と尋ねます。子どもたちは,次のように説明をしていきました。

「(図を指しながら)1/10Lが1つで1/10L。2つで2/10L・・・7つで7/10Lということだね」

「だったら,1/10×7ってかけ算の式にできるね」

「でもさあ,答えは7/70Lになるよ。やばいよ」

「違うよ,分母はかけないんだよ」

「なんで?それっておかしいよ」

1/10Lの7つ分を,1/10×7という式にできるという発想が生まれてきたことは素晴らしいことです。子どもたちも,このように立式できることは納得です。しかし,立式はできても,そこから導かれる答えが7/70Lになるからおかしいと考えたのです。既習の計算手続きから考えたら,このように考えるのは当然です。

7/70Lと考える気持ちを,クラス全体で共有します。しかし,7/70Lではおかしいと考える子どもたちが,説明をしてきます。

「それなら,分数のたし算にしたらどうかな」

「1/10+1/10+・・・+1/10になるね」

「でも,やっぱり7/70Lだよ」

「図で描けば分かるよ」

「ピザの絵で考えます」

コップで水のかさを学習しているのに,ピザの図が登場してきました。2年生の分数との出会いが時計型ケーキ(円)だったので,その印象が残っているのかもしれません。

「ピザを8等分したとします。1/8が2個なら2/8です。分母もかけるというなら,2/16になります。分母も2倍するということは,ピザがもっと小さく分けられていきます。その中の2個分は2/16になります。本当の図とは違ってきます」

「分母をかけると,分け方が変わってしまうね」

「だから,分母をかけたらだめなんだ」

「いくつにわけたという話は,変えてはだめなんだ」

分母をかけてしまうと,もともとの分け方が変わってしまうことを,図を使うことで子どもたちは納得していきました。やはりピザの絵は有効だったようです!

水のかさを分数で表現する活動を通して,子どもたちは同分母分数のたし算・かけ算の考え方までたどり着くことができました。すばらしい子どもたちの発想力です!





GAKUTOセミナーIN京都 対面枠は満席です!

GAKUTOセミナーIN京都講座の申し込みが始まっています。京都近郊の先生方を対象とした対面枠は,申し込み開始2時間あまりで満席となりました。ありがとうございます。

オンライン枠は,まだ余裕があります。対面に入れなかった先生は,オンライン枠でお申し込みください。お申し込みは,以下のアドレスからお願いします。

1mよりも短いぞ・・・

3年「分数」の導入場面です。


「紙テープは何mあるでしょう」と投げかけ,右の図を提示します。子どもからは「2m」と声があがります。

そこで「本当に2m?」と念を押します。すると子どもからは,自然にジェスチャーが生まれてきます。両手を使って,次のように説明してきます。

「これで1mの1つ分」

「これで2つ分」


基にする大きさがいくつ分あるのかを考える,算数でとても大切な見方が生まれてきました。

 

次に,右の紙テープを提示します。子どもからは「あれ?」「えっ」と驚きの声が聞こえてきます。2mよりももっと長い紙テープを予想していたのに,子どもの目の前に現れたのは,それとは真逆の物だったからです。

しかし,すぐに子どもたちは再び指を左右に動かしながら,何かを数えています。そこで,「なにをしているの?」とそのジェスチャー表現の気持ちを読解します。

「小さい紙テープが,何個入るのかを調べている」

「小さい紙テープは,1,2,3,4,5個入った」

「でも,1mよりも小さいよ。なんて言えばいいの?」

「だったら分数を使えばいいよ」

「1mを5つに分けた内の1つ分だよ」

「1mの1/5だね。それなら,1/5mと言えばいいのかな」

1mよりも短い長さを,そのまま「m」の単位で表現することはできません。そこで,子どもたちが思いついたのが,2年生で学習した分数と関連づける見方です。分数を使えば,1mよりも短い長さも「m」の単位を使って表現することができるのです。

この後も,1mよりも短い長さを提示しました。その度に子どもたちは,指を左右に動かしながら短いテープが1mに何個分入るのかを一生懸命に探っていました。



2021年11月24日水曜日

GAKUTOセミナーIN京都 いよいよ申し込み開始!

 お待たせした! 2022年2月19日(土)に京都市で田中博史先生をはじめとする算数を愛する先生方が開催する「GAKUTOセミナーIN京都」の申し込みが開催されます。申し込み開始は,11月27日(土)12時~です。参加人数に対面(50名)もオンライン(200名)も定員がありますので,お早めにお申し込みください。


会の詳細は,以下のパンフレットをご覧ください。算数の達人がお届けする濃い会です!

お申し込みは,以下のアドレスからお願いします。

https://senseiyell9-gakuto.peatix.com/



2021年11月23日火曜日

新潟ウィーク!

 今日はこれから,新潟大学教育学部附属新潟小学校の秋の研究会に参加します。授業者は志田先生です。全国でも有数の授業の達人です。5年生「割合」の授業について,新潟の仲間や筑波大学附属小学校の夏坂先生と,授業について語り合います。授業動画を視聴された先生方,ご参加をお待ちしています。

明日は,新潟市総合教育センター主催の算数・数学講座です。こちらも多くの先生方に孟子身をいただいています。教育センターの毎年の恒例行事にようになっていますが・・・。

故郷新潟の先生方とお会いできることを,楽しみにしています。



2021年11月19日金曜日

暗算は十の位が先? 一の位が先?

 子どもたちに次のように投げかけます。

「1本24円のあめを3本買います。代金はいくらですか」

子どもからは,「かけ算だ」「簡単だね」「筆算でできるね」などの声があがってきます。そこで,「今日は筆算を使わずに,暗算で答えを求めることはできるかな?」と投げかけます。子どもたちは,「できるよ」「筆算と同じようにすればいいだけ」と考えます。

早速,暗算で計算をしてもらいます。多くの子どもたちが,すぐに答えを見つけることができました。そこで,「頭の中で,どうやって計算したの?」と尋ねます。

「最初に一の位の4×3で12。次に十の位で20×3で60。最後に,12+60で72」

二位数×一位数の既習は,一の位から計算をしていました。この経験値から考えれば,この手順で計算を行うのは当然です。

一方,「こんなやり方もあるよ」と声があがります。

「最初は十の位で20×3で60。次が一の位で4×3で12。最後に60+12で72」

最初のかけ算の順番を入れ替えるという考えです。ところが,「それって同じでしょ」「やりやすさも同じ」「どうせ最後にたすんだから,同じだよ」と声が続きます。

この声に対して,次の声が聞こえてきます。

「最後のたし算の一の位は,最初のは2+0でしょ。後のは0+2でしょ。2に0をたすよりも,0に2をたす方が簡単だよ」

この声に対する反応は,分裂しました。「確かに!」「同じでしょ」とズレが生まれました。

そこで,たし算の一の位の0が先にある方が計算が本当に簡単なのかを,実験することにしました。

「これから先生が言う式の答えが分かったら,3秒手をあげます」

このように説明した後,次の問題を口頭で発表します。

ア 39+30

イ 20+37

ウ 47+30

エ 40+37

4問の実験の結果,多くの子どもたちは一の位に0が先にあるイ,エの計算の答えを早く見つけることができました。すると,子どもたちも「十の位から計算した方が簡単だ」と考えが変容していきます。しかし,「アも簡単だよ」と主張する子どもも半数います。やはり,計算に慣れている方法にこだわるのも自然な姿です。

そこで,今度はかけ算問題で暗算の実験を行うことにしました。

「63×4を,一の位を先に暗算しよう」

「54×3を,十の位を先に計算しよう」

この問題は,最後のたし算が「12+240」「150+12」となっています。一の位に0がある計算です。この両タイプの計算を体験したことにより,次の声も聞こえてきました。

「十の位+百の位を計算するよりも,百の位+十の位を計算する方が簡単だよ」

最後のたし算の構造を分析的に捉えて声です。この声に納得する子どももいましたが,「同じでしょ」と捉える子どももいました。

そこで,今度も実験をして計算のしやすさを体験することにします。

④48+250

⑤350+24

暗算で答えが求められたら,手をあげてもらいました。圧倒的に⑤の問題が早く答えが求められる子どもが多くいました。

頭では今まで通りの筆算手順が暗算でも簡単だと思っていた子どもたちでしたが,実際に復習の問題を体験していく中で,十の位を先に計算するよさを実感することができた1時間でした。

家に帰ってから自主学習で両方のやり方を体験し,それらにかかった時間を計測し,十の位を先に計算するやり方の簡便さを見える化してきた子どもたちもいました。


2021年11月17日水曜日

13×2と12×3

算数の時間,,,,のカードをに入れて,答えが一番○○な式を作ろう」と投げかけます。子どもたちに「1×という式を提示します。2つのに数字を入れて答えが最小値になる式を考えさせます。先ずは,計算しないことを条件に,頭に浮かんだ式をノートに書かせました。子どもからは,12×3」「13×2」の2つの式が生まれてきました。この式に対して,「同じ」と声があがります。

そこで,「同じ」の気持ちを全員で読解します。

「2×3も3×2も答えは同じ6」

「式の2と3を入れ替えただけだから,答えは同じ」

このように考えると答えは同じになりそうです。


ところが「違うよ」という声も聞こえてきます。

「2年のたしざんでは,1,2,3の順で小さく数字を並べたから,12×3が小さい」

2年生で学習した虫食いたし算問題を思い出したのです。そのときに見つけたきまりと同じように考えればいいのだというのです。よき見方が生まれてきました。


ところが,この見方に対しても「違うよ」と声があがります。

1213はだいたい同じ数でしょ。だから,同じ数の3倍と2倍なら2倍の方が小さい」

「たしざんの筆算にしたら,だいたい同じ数を3回たす12+12+12と,2回たす13+13では2回たす方が小さい」


1213はたった1違いの近い数です。このように考えれば,この2つの数字の大きさはだいたい同じと捉えることができます。だいたい同じ数字の2倍と3倍であれば,明らかに2倍の方が小さくなります。


だいたいの数で1213を捉え直すこと,また,倍の考えをたし算の筆算に置き換えることでより見えやすくすることは,私の想定を超えた発想でした。子どもの発想は素晴らしいですね。この問題では,数字を変えて複数の問題に取り組む中で,かける数に最小値,かけられる数に2番目に小さい数を代入することで,答えが最小の式ができることを帰納的に発見していく授業が多くあります。ところが,今回は12と13をだいたい同じ見ることで,演繹的に考えていくことができたのです。


この授業では,この後でさらに新しい発見が子どもから生まれてきました。その発見がいつでも当てはまるのかを考えることで,気がついたらずっと計算に取り組んでいた1時間となりました。



 

2021年11月12日金曜日

00×8? 0×8?

 かけ算の筆算をさくらんぼ筆算で取り組んでいたときのことです。「405×8」の問題に取り組みました。一の位の計算は,5×8の答えを40と書きます。ここまでは,全員が同じ考えでした。ところが,十の位の計算をどのようにメモするのかを巡って,子どもたちの反応にズレが生まれてきました。

「00×8」

この考えに対して,「えっ?」「なにが『えっ?』」と相反する声が生まれてきたのです。そこで,「00×8」「0×8」の両者の気持ちを読解していくことにしました。

先ずは,「00×8」について読解します。

「十の位のかけ算だから,00×8だよ」

「0×8と書いたら,一の位の計算だと勘違いされてしまう」

「もし,485×8の計算だとします。十の位は80×8でした。この80には十の位と一の位の数字があります。だから,405×8だって,00×8と書いて,十の位と一の位の両方の数字を書かないといけない」(H男)

H男の説明は,既習のかけ算の計算での書き方を,405×8にも当てはめて考えようとしたのです。例示をする見方,共通点を見つけていく見方など,すばらしい視点が生まれてきました。この学習では,このような既習とつなげて論理的に考えていく見方・考え方を引き出し,鍛えていくことをねらったのです。その意味でも,よき例示が生まれてきました。

しかし,「0×8」という考えの子どもたちも,「でも,でも」と言って意見を主張しようとしています。そこで,今度は「0×8」の読解を行います。

「00と書かなくても,0で意味は分かる」

「000000なんて書かない。0は0でいい」

「405をさくらんぼにしたら,400と5でしょ。十の位は0なんだから。だから,十の位を書くなら0でいい」

「0+0=0と書くけど,0+0を00とは書かない」

0は何個集まっても,表記としては0としか書かないという説明です。この説明も,既習の0表記とつなげた見方・考え方です。

この他にも様々な論理的な説明が子どもからは,生まれてきました。いずれも既習と結びついた論理的な内容でした。授業最終版では,お互いの気持ちは分かるが,「00×8」「0×8」というのが子どもたちの思いでした。




2021年11月8日月曜日

さくらんぼ筆算は簡単!

算数の学習では,かけられる数が十の位を超えるかけ算の計算方法を考えてきました。子どもたちは,かけられる数を位毎に分ける「さくらんぼ計算」を行うことで,簡単に計算ができることを発見していきました。そこで,この時間は「百の位でも,さくらんぼは簡単に計算できるかな」と投げかけます。


364×8」「429×7」の2つの問題に取り組みました。「429×7」なら,429を「400×7」「20×7」「9×7」に分割することで,これまでに学習したことを活かして計算をしていくことができます。一方,地道に「429+429+429・・・」とたし算で求める子どももいました。たし算と比較すると,さくらんぼ計算は簡単に計算ができます。


ところが,百の位の計算はさくらんぼ計算でも「面倒」「気持ち悪い」という声も聞こえてきました。そこで,この声の理由を考えていきます。


「最後のたし算を暗算でするのが面倒」

「だったら,たし算は筆算したらいいよ」

「十の位はさくらんぼの線が少ないけど,百の位は線が多くなって大変」

「たし算・ひき算みたいに,かけ算さくらんぼも筆算できないかな」




もっと簡単にできる計算方法を求める声が生まれてきました。既習のたしざん・ひきざんでの筆算とつなげて考えられた点がすばらしいですね。


そこで,「429×7のさくらんぼ計算を筆算で計算するとしたら,どう書きますか」と左の筆算を示し,下線部以下の書き方を考えさせます。



さくらんぼ計算を活かして筆算を書くと,右のようになります。これを見た子どもたちからは,次の声があります。

「あー,そういうことか!」

「さくらんぼと同じことをしているね」

「見やすいね」

「最後のたし算したさくらんぼより簡単だね」


この筆算を「さくらんぼ筆算」と命名しました。日本では下線部下を圧縮した筆算が一般的ですが,今回ような筆算を指導している国も多数あります。計算方法は必ずしも一つではないのです。


2021年11月3日水曜日

算数ウィンターフェスティバル 申し込み開始

 12月26日(日)新潟で開催される新潟算数サークルMAC主催「算数ウィンターフェスティバル」の申し込みが始まりました。会場は新潟市立中央図書館(ほんぽーと)です。今回は,対面30名とオンライン50名のハイブリッド方式で開催します。

講師陣は新潟の算数授業を愛する熱い先生方ばかりです。寒い冬を熱い算数授業実践講座で盛り上げていきます。

お申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com/event/d12ea0eb6915067e555171d91f85cb83/







2021年10月29日金曜日

23×3はできない?

 3年生に次の問題を提示します。

「1個23円のチロリチョコを3個買います。代金は全部で何円ですか」

問題に出会った子どもからは,「たし算できる」「かけ算だ」「でも,かけ算は習っていない」などの声が聞こえてきます。

全員ができると自信があるのは「たし算」です。先ずは,たし算で計算します。

「23+23+23=69」

「たし算は簡単」

たし算なら確実に計算ができます。次に,まだ不安要素のあるかけ算に取り組みます。「23×3」の立式だけなら全員ができます。しかし,この計算方法は未習です。すると子どもから,「だったら分けらたらいい」「さくらんぼでやればいい」と声が聞こえてきます。たし算・引き算でさくらんぼを使っ経験を,かけ算にも当てはめて考えたのです。

そこで「23をどうやって分けるのですか?」と尋ねます。

「12と11に分けたらいい」

「それはきりの悪い数。10とか20のきりのいい数にした方がいいよ」

「20と3ならきりがいい数だよ」

23を20と3に分けることで,きりのよい数に分けられることが見えてきました。しかし,まだ問題が残っています。

「20×3をするけど,この計算は習っていないよ」

「だから,20の0を隠して2×3にして・・・」

「違うよ。20を10でわって,2にするんだよ」

「2×3なら計算ができる。答えは6」

「さっき10でわったから,10倍して元に戻せばいいから60になる」

「これって,どっかでやったね」

「10月4日の重さの学習でやっているよ」

20×3のかけ算九九は未習です。しかし,重さの単位変換の問題で,重さの数値が1000倍と1000分の1の関係のなっている学習を行いました。そこでの見方・考え方と,20×3の問題が似ていると考えたのです。既習を活かしたよき見方・考え方が生まれてきました。

かけ算の筆算につながるこの単元では,導入場面で20×3や30×3等の何十×になる問題だけを取り扱う事例が多くあります。その後の学習する23×3等の計算がスムーズに進むための配慮です。しかし,子どもたちの既習の中では20×3の計算の仕方につながる見方を引き出す学習は何回か経験しているのです。その見方を引き出すことができれば,20×3や30×3を取り出して指導を行わなくても授業はできるのです。

授業のその後です。

「次は,残った3と3をかけて9」

「さっきの60と9を合わせて69になる」

このように考えれば,最初はできないと考えていた23×3の計算もかけ算でもできることが見えてきました。たし算でもかけ算でも計算はできそうです。

すると今度は,次の声が聞こえてきます。

「たし算もできるけど,たす数が増えてきたら,たし算は大変になりそう」

「でも,かけ算もめんどくさそう」

たし算・かけ算の計算方法が一般化できるのだろうかという声です。この時点では,たし算にもかけ算にも不安を抱えた子どもも多く見られました。

そこで,②21×4,③11×7と順に両者の求め方を体験していきます。②21×4は,両者やりやすいという声もあがりましたが,③11×7では,たし算に悲鳴が上がりました。

「わかんなくなってきた・・・」

「7回もたすの大変」

「時間もかかる」

一方,かけ算方式には次の声が聞こえてきました。

「すごい簡単」

「すぐにできる」

「たし算はすごく式が長かったけど,かけ算は式が短いからやりやすい」

かける数が大きくなると,たし算方式は大変になることを実感した子どもたちでした。かけ算サクランボを使えば,どんなかけ算もできそうな予感がして授業が終わりました・・・。





2021年10月26日火曜日

分数倍を図で乗り越える!

 子どもたちに次の問題を提示します。

「3色の紙テープがあります。青は黒の1/2の長さです。赤は青の1/3の長さです。赤は黒の○/○の長さですか」

問題に出会った子どもからは,「図でできそう」「式は難しいね」「どれが一番長いの?」「ごちゃごちゃしてきた」などの声が聞こえてきました。

問題の構造自体は,前回学習した問題と似ています。しかし,数値が分数になることで問題場面のイメージ化のハードルが高くなったのです。当面の子どもたちの問いは,テープの長さはどの色の順で長いのかです。

そこで,「テープの長さはどの順になっているの?」と焦点化した問いを投げかけます。

「『青は黒の1/2の長さ』だから,黒の方が長い。『赤は青の1/3の長さ』だから,青の方が長い」

「2つを合わせると,黒,青,赤の順で長い」

「シーソーの図でも分かるよ。黒と青をシーソーに載せると,黒が長いから黒が下がる。青と赤をシーソーに載せると,青が長いから青が下がる。この2つのシーソーをつなげると,黒,青,赤の順に長いことが分かる」

このシーソーの説明が,子どもたちには分かりやすかったようです。「そういうことか」「分かりやすい」と声があがります。

さて,長さ比べの順位は分かりました。しかし,まだ赤は黒の○/○かは分かっていません。すると子どもからは,「図に描けば分かる」「長さを入れたらいい」などの呟きが聞こえてきました。そこで,ノートに図を描いて○/○を考えることにしました。

「黒の長さの半分が青でしょ。だから青はこの長さ(図示しながら)」

「青の長さの1/3が黒でしょ。だから赤はこの長さ(図示しながら)」

「赤は青に3つ入る(図示しながら)」

「さっきと同じことをすれば,黒も分かる」

「赤が黒の中に6つ分入る(図示しながら)」

「だから1/6になる」

テープ図で1/6という関係を見つけることができました。

また,具体的な長さを入れて考えた子どもたちもいました。

「黒が12㎝なら青は6㎝になる」

「だったら,赤は6㎝の1/3だから2㎝」

「2×6で12㎝だから1/6」

「12÷2=6でも分かるよ。1/6」

「最初は式は難しいと言ってたけど,式でもできたね。すごいね」

テープ図に具体的な数字を入れることで考えやすくなることは,前回の学習で子どもたちが発見した見方です。その見方を本時でも活用してみたのです。さらに,数値化することで,最初は難しいと考えていた式化もできることが見えてきました。

分数のかけ算につながる見方や分数倍の見方を,図を使いたくなる場面に出会わせることで引き出していくことをねらった学習です。




2021年10月23日土曜日

何倍の何倍はたしざん? かけざん?

 3年生の子どもたちに,次の問題を提示します。

「紙テープがあります。赤は青の2倍の長さです。黒は赤の3倍の長さです。黒は赤の何倍ですか」

問題に出会った子どもからは,「?」「頭の中がごちゃごちゃしてきた」などの声が聞こえてきました。問題場面が複雑で,うまくイメージができないのです。

そこで,頭の中のごちゃごちゃを解消するにはどうしたらよいのかを考えます。子どもたちは「図にすると分かりやすい」と考えました。

子どもたちは右のような図を描きます。これで,各色のテープの関係がかなり整理されてきました。

すると今度は子どもから,「5倍だね」「えっ?6倍でしょ」と,青と黒のテープが何倍の関係に当たるのかを考える声が聞こえてきます。

そこで,「5倍と考えた友だちの気持ちは分かるかな?」と,5倍の気持ちの読解を行います。

「青から赤が2倍。赤から黒が3倍。だから,これを合わせたら5倍になる」

この説明に子どもたちも納得です。しかし,「でも!」とこの論理を否定する声が聞こえてきます。一方,「5倍でしょ」という声も聞こえてきます。

いったい5倍なのか,6倍のなのか? 子どもの中から,「だったら長さを入れたらいい」と声が聞こえてきます。ここまでは具体的な長さがない状態で,青と黒の関係を考えていました。しかし,これでは5倍か6倍かがはっきりとしません。そこで,具体的な数値を入れれば分かるというアイディアです。

「もし青が1㎝なら,赤は2倍の2㎝。そうすると,黒は2㎝の3倍だから6㎝」

「だから,6÷1の計算をすれば6倍だと分かる」

具体的な数値で考えることで,子どもたちも青を黒の関係が6倍になることを全員が納得をしました。

抽象的な場面に意図的に出会わせることで,具体的な数値を使って考える良さを子どもたちは実感していくことができました。

その後,テープ図を作図しても6倍の関係が見えることも分かりました。








全国算数授業研究大会東京大会オンライン開催のお知らせ

 2年ぶりに「全国算数授業研究大会東京大会」が開催されます。算数の学びに飢えていた?全国の先生方,お待たせいたしました。今回はオンラインという形ですが,例年通りの授業公開もあります。その他にも学年別・見方考え方講座,ワークショップ,シンポジウムも行われます。

オンライン開催の申し込みは始まっています。大会の詳細や申し込みは,以下のアドレスからお願いいたします。

https://eventpay.jp/event_info/?shop_code=8349540894465184&EventCode=8926899624






2021年10月21日木曜日

長さの感覚を磨く!

 3年生の子どもたちに,次の問題を出します。

「縦18㎝,横30㎝,高さ6㎝の箱があります。この箱に,ボールが15個ぴったり入っています。ボールの直径は何㎝ですか」

この問題に出会った子どもからは,「昨日の逆だ」「わり算だね」などの声が聞こえてきます。前日のボールを1列に箱に入れる問題との違いを的確に感じた声です。

ここで,どんな箱をイメージしているのかノートに図を描いてもらいました。子どもたちのノートに描かれていた図は,下の写真にあるような2種類でした。Aの図の子も,Bの図の子も自分の図には自信満々です。

Aの図の気持ちを読解します。

「昨日の図も,横にボールが1列並んでいたから,同じように描いた」

ボールの個数も正しく15個描かれています。この図でもよさそうです。ところが子どもからは,「18㎝は無理」と声が聞こえてきます。何が「無理」だというのでしょうか?

いくつか生まれた理由の中で,長さの感覚を活かした素敵な声があがりました。

「縦の18㎝は横の30㎝のだいたい半分でしょ。だから,30㎝の半分はだいたいこの長さ(図の横の半分の場所を指さしながら)でしょ。これが縦に来るはずだから,本当はもっと縦が長くなる(図の縦部分を指さしながら)。Bの横半分はだいたいこの辺(図の横半分を指さしながら)。これが縦に来るから(縦部分に指さしながら),この図の縦の長さとだいたい合っている」

18㎝と30㎝の長さの関係が,だいたい2倍(または半分)の関係になっている感覚を持てば,Aの図の不自然さが見えてきます。

きちんと計算をしなくても,2倍や半分などの日常生活でも使う長さや数の感覚を活用して,対象を見つめ直す視点を磨いていくことも,算数授業では大切にしていきたい部分です。




2021年10月20日水曜日

ボール5個を箱に入れる

 朝学習の短い時間を使って,次の問題を子どもに出しました。

「半径4㎝のボール5個が,箱の中にぴったり入っています。箱の縦と横の長さは何㎝ですか」

教科書などにも掲載されている問題です。教科書では,問題文と同時にボールが入った箱の絵も提示さています。

この問題文を提示した際には,図は提示していません。従って,子どもたちが頭にイメージする箱の形にはズレがあることをこの時に直感しました。そこで,「どんな箱をイメージしているの?」と尋ねます。すると下の写真のような様々な並び方の箱をイメージしていることが分かりました。本当に子どもたちは,様々な箱をイメージするものです。

ボールの並びが決まらないと,縦・横の長さを決定することはできません。子どもたちは,板書にある4パターンの中で,ボールが横に5個並んでいる箱が「横も縦も簡単に求められる」と考えました。そこで,この横向きバージョンの長さを求めていくことにしました。

子どもたちの中には,「横:4×5=20(㎝),縦:4×1=4(㎝)」と式をノートに書いて,満足している子どもたちもいました。

そこで,この式を板書します。子どもからは「えっ?」「そういうこと!」と声があがります。そこで,「この式を書いた友だちの気持ちは分かるかな?」と,式の意味の読解活動を行います。

「半径が4㎝でしょ。ボールが5個あるから,その長さを5倍すれば20㎝になる」

論理的な説明です。しかし,「ちがうちがう」と声があがってきます。

「半径じゃだめです。直径です」

「直径は半径の2倍です。だから,4×2で8㎝にします。その直径が5個あるから8×5で40㎝です」

「だから,縦の長さも違います。これも直径で考えるから,4×2で8㎝。8㎝が1個分だから8×1で8㎝です」

教師はていねいに全ての条件を提示してしまうことがあります。そうではなく,問題場面の条件を一部だけ提示することで,子どもの想像力を培うことにもつながります。



2021年10月18日月曜日

算数教科書を活用した授業づくり会場,素敵です!

 昨日,「算数教科書を活用した授業づくり」講座の会場になる数研出版関西本社で会議が行われました。京都市営地下鉄丸太町駅降りてすぐの場所に会場はあります。目の前には京都御所があります。

3階建ての京都にふさわしい外観の素晴らしい建物です。会場になる地下の廊下には,高校地学の教科書発行会社にふさわしい鉱石の標本や化石などがたくさん展示されています。まるで博物館のような素敵な会場です。

地下のホールに入れる人数は限定50名です。(オンラインは200名)

私たちの講義・模擬授業だけではなく,会場の素晴らしさも堪能していただけたらと考えています。京都御所(御苑)もすぐですので,こちらの散策や観光もおすすめですよ!











2021年10月16日土曜日

算数教科書を活用した授業づくり〜活用個別最適化ってどうするの?〜

 学校図書主催の,冬の先生応援プロジェクトを2022年2月19日(土)に田中博史先生(「授業・人」塾),志田倫明先生(新潟大学教育学部附属新潟小),久保田健祐先生(兵庫県),木下幸夫先生(関西学院初等部)と私で開催します。

会場は京都市にある数研出版関西本社ですが,会場参加は50名,オンライン参加は200名のハイブリッド型での開催です。

受付開始は11月中旬を予定しています。参加をご希望の方は,それまで今しばらくお待ち下さい。






2021年10月14日木曜日

大阪府吹田市の6年生と線対称の授業!

 昨日は,大阪府吹田市の6年生と「線対称」の授業を愉しみました。

子どもたちに「何が見えるかな?」と投げかけます。「和歌山は はるか光は 山や川」「丸くなるな 車」の文を順次提示します。最初の文では「俳句」だと考えていましたが,次の文で,2つの文に共通することが回文」であることが見えてきます。回文であることを,両手を外側から内側へと移動させて表現できる素敵な子どもがいました。

次に,「11111」のデジタルで表現された数字を提示します。これに対しては「回文」「回文じゃない」と判断にズレが生まれます。「回文」に見える子どもたちの気持ちを読解していきます。「文字ではなく形で見たら,左から見ても右から見ても同じ」という見方が生まれてきました。これなら「回文」と判断できます。この気持ちを共有していきます。子どもたちは,「11111」は「回文じゃなくて,回図だね」と新たなネーミングをします。こんなアイディアが生まれるのも素晴らしい子どもたちでした。

さらに,二等辺三角形を提示し「回図かな?」と尋ねます。子どもたちは,二等辺三角形を半分に折ったり,頂点に向かって引いた垂線と底辺との交点と底辺の両端までの長さを測ったりすることで,「回図」であることを見出していきました。線対称で必要は図形の構成要素に視点を当てた見方が生まれてきました。

最後に,二等辺三角形に限りなく近い三角形を提示します。見た目では「回図」かどうかの判断にズレが生まれました。早速実験を行います。折る,底辺の長さを測るなど,前の問題で使った方法で「回図」でないことを子どもたちは見出していきました。さらに,分度器を使って両端の底角を測定している姿も見られました。底角も等しくはありませんでした。ここでも,線対称で必要な角の大きさにつながる構成要素が子どもから生まれてきました。

子どもたちは線対称図形に,オリジナルな「回図ん」と名前を付けて大喜びをしていました。

素直な発想と素敵な図形の見方ができる子どもたちと,愉しい1時間を過ごすことができました。

2021年10月13日水曜日

京丹後の4年生と授業をしました

 昨日は,京都府京丹後市の4年生と授業を行いました。100人を超える先生方に囲まれて緊張していた子どもたちでしたが,授業後半は,すっかり心もほぐれてきたようで,自由に自分の思いを語れるようになってきました。

個の点をつないで三角形を作ろう」(直線は交わらない)という授業でした。練習として,4個の点をつないだ場合を実験しました。多くの子どもたちは,2個の三角形を作っていました。先ずは,この2個の三角形ができた図だけを意図的に提示します。子どもたちは「三角形は2個できる」と考えていきました。そこで,「三角形は2個できるんだね」と子どもたちに投げかけます。すると,「えっ?私は3個ができた」と声があがります。実は,3個の三角形を作っていた子どもが3人いたのです。その子の図は,意図的に提示していませんでした。「3個できた」の声で,子どもたちが一気に動き出します。「できる」「できない」とざわめき出します。

そこで,ノートに実験します。「3個ができた」と大喜びの子どももいれば,「できない」という子どももいました。そこで,ヒントを発表してしてもらうことにしました。

「3つの点で三角形ができます。その中に点を1個打つ」

この「中に点を1個打つ」のヒントで,「3個」できる秘密が見えてきました。

3個の図形を提示していくと,「点が1個中に入ると,三角形が1個増える」というきまりが見えてきました。

そこで,今度は「点が5個に増えても,このきまりは成り立つかな?」と投げかけます。多くの子どもたちは,成り立つと予想しましたが,半信半疑の子どももいました。子どもたちは,早く実験したくてうずうずしています。

ノートに実験を始めると,「できた」「1個増えた」という喜びの表情が見えました。

最後に,子どもたちを前に集めて点が中に1個入ると,三角形が1個増える図形の確認を行います。すると,ある女の子が「私は,2個増えた」と呟きます。全員の顔が一斉に彼女を注目します。「えっ?」という表情の子どもと,「そうそう」と頷く子どもに分かります。授業時間が来たため,それ以上展開することはできませんでしたが,新たな見方が生まれたオープンエンドの授業となりました。

素直な子どもたちの反応で,愉しい1時間となりました。京丹後の子どもたち,ありがとう!

2021年10月11日月曜日

吹田市の3年生と秒の授業!

 先日,大阪府吹田市の3年生と「秒」との出会いの授業を愉しみました。

子どもたちに「大きい折り紙と小さい折り紙,どちらた早く落ちるでしょうか」と尋ねます。様々な予想が生まれたあと,実際に実験を行うことにしました。

私が小さい折り紙だけを手に持って椅子の上に立つと,目の前の男の子が「えっ?なんで」と素敵な声をあげます。男の子が抱いた折り紙を落とすイメージと,私の行動にズレを感じたのです。この男の子の思いをクラス全体で共有していきました。

思いを共有化したあと,小さい折り紙を落とします。多くの子どもたちがその折り紙が落ちる奇跡を目で追っている中,たった1人の子どもが指を折っている姿を見つけました。すばらしい姿です。

すかさず,「指を追っていた気持ちはわかる」と尋ねます。ここでは,見えない時間を数値化する意味やよさが子どもから生まれてきました。

その後,子どもたち全員を前に集めます。すると今度は,「大きいのも小さいのも同じリズムで数えないとだめだよ」と,これまた素敵な声が聞こえてきました。大小の折り紙で,数えるリズムがズレたら正しく比較はできません。普遍単位の必要性につながる声が生まれて来たのです。

そこで,クラス全員で同じリズムで数える練習をしました。「いーち,にーい,さーん」と練習を行いました。なんとこの子どもたちのリズムは,時計の「秒」のリズムともぴったりでした。

素敵な呟きや反応ができる3年生と,愉しい1時間を過ごすことができました!

2021年10月8日金曜日

お友だちを増やそう!

算数の的当てゲームでは,友だちの数を増やしていくときれいな丸(円)ができそうだと子どもたちは考えました。そこで,この時間は,友だちの数をもっと増やしたらどうなるのかを実験していくことにしました。


3年2組の人数は,私を含めると32人です。中心から半径5㎝の場所に友だちを立たせることにしました。子どもたちは定規を慎重に中心に当てて,半径5㎝を測定していきます。定規の位置を正しく置かないと,的当てをする友だちの位置に不公平が生じてしまいます。


苦労しながら,子どもたちは32人分の友だちの丸を描いていくことができました。子どもたちからは「メリーゴーランドみたいだ」「まん丸になってきた」と感動の声があがります。


そこで,その感動をさらに高めるために3年1組の32人を追加することにします。この活動に対しても,「楽しい楽しい」「100人もやりたい」と声が聞こえてきます。子どもたちの多くは,的当て作りを楽しんでいるようです。


子どもたちの声に応えて1年生66人分を追加することにします。すると今度は「イエーイ」「楽しい」と「キャー」「具合が悪くなる」という相反する声が聞こえてきました。


正確に半径5㎝を計測することは,子どもたちにとってはかなり大変なようです。友だちの数が100人を超え,200人に近づくにつれて,「手が疲れました」「もう限界です」などの声も聞こえてきました。しかし,地道に丸を描いていくと,やがてその丸が隣同士でつながっていきます。これが円周の部分に当たります。

コンパスとの出会いは,この後に行いました。苦労をした体験をあったからこそ,子どもたちはコンパスで数秒で円を作図できるすばらしさに感動をしていました。

2021年10月6日水曜日

明日から授業公開ラッシュ!

 明日(10月7日)は,大阪府吹田市で公開授業を行います。3年生「時刻と時間」の導入場念を公開します。こちらは吹田市教育センター主催の講座です。

来週12日は京都府京丹後市で公開授業です。こちらは4年生「変わり方」単元です。京丹後市教育委員会主催の研修会です。

翌日の13日は,再び大阪府吹田市で公開授業です。こちらは6年生「対称」単元です。吹田市学研算数部主催の研修会です。

実は,10月9日にも名古屋市で公開授業が予定されていましたが,こちらはコロナ感染予防のため中止となりました。指導案も作成し,主催団体に送付していたのですが…。

いずれも初めて出会う子どもたちとの授業です。どんな子どもたちと,どんな授業が展開されるのか楽しみです!


的当てで円の導入!

3年生「円と球」の導入場面です。

子どもたちに,次にように投げかけます。

4人で的当てをします。4人はどこに立たせてあげますか」

4人が立つ位置を子どもたちは様々に考えました。右のように4人を立たせると,位置によって的までの
距離が異なります。平和主義の子どもたちは,これでは不公平だと考えました。


では,どこに4人を立たせたらよいのでしょうか。子どもたちは,左のように的からの長さがどの友だちも同じになるようにすれば公平になると考えました。定規を使って長さを測ることで,公平
な的当てができることが見えてきました。



 4人の公平な立ち位置が明確になりました。そこで,今度は次の投げかけを行います。

「あとから4人やってきました。この友だちをどこに立たせてあげますか」



多くの子どもは,右(緑)のように友だちの位置を決めました。この立ち位置に対して,「そうそう!」という声と,「だめ」という相反する声があがってきました。


そこで,「そうそう」と考えた子どもたちの気持ちを読解します。

「的から緑までの長さは,どこも20㎝だから同じ長さ」


 先ほど,子どもたちがこだわった同じ長さを意識した位置です。これなら公平です。ところが「不公平だよ」と声があがります。その理由を聞いていきます。


「緑は公平。黒も同じ長さで公平。でも全員まとめてみたら不公平」

「遠い人と近い人がいるから,長さを揃えないと公平にならない」



 8人全員で考えないと,公平な立ち位置にはならないことを子どもたちは指摘をしてきました。そこで,公平になるように後から来た友だちの位置を修正していきます。すると,左の赤・青
丸のようになります。これなら,最初から立っていた黒丸と長さが揃います。これなら公平な的当ができます。



 その後,さらに友だちを8人追加していきます。子どもたちは定規を使って公平に友だちの位置を確定していきます。右のように8人(青)が追加されると,「もっと丸くなってきた」「花火みたい」という感想が聞こえてきました。



円との出会いを的当てで取り組んだ1時間でした。