2021年2月25日木曜日

1/3を子どもが創り出す!



時計型ケーキ問題のその後です。時計型ケーキの1/4の大きさの表現の仕方を前回学習しました。その時に,「だったら,1/31/2もできるかも・・・」という声が聞こえてきました。


この声を今回は取り上げて,授業をスタートします。先ずは,次のように投げかけます。

1/4以外の分け方,どんな数なら簡単にできそうですか?」


 子どもからは,次の声があがってきました。


1/2」「1/3」「1/8」「1/5」「1/12


1/2は,ほとんどの子どもたちが「簡単にできそう」と考えました。「だって,半分だもん」とその理由を説明します。

一方,それ以外の数は「難しそう」と子どもたちは考えました。中でも,1/12は分母が10を超えます。「これはできないよ」という声が多数聞こえてきます。ところがここで,次の声が聞こえてきます。

「5分ずつ切ったら簡単だよ」

「そうか,だったらできる」

「簡単だ」

「えっ,どういうこと?」


 2年生は,まだ図形感覚が十分に発達していません。「5分ずつ」の言葉から,その先がイメージできる子どもと,それが難しい子どもがいるのは2年生では自然な姿です。頭だけで考えても難しいので,実際に時計型ケーキを5分ずつ分割することにしました。

 

分割作業が始まってしばらくすると,「本当だ」「1/12ができた」と喜びの声が聞こえてきます。実際に実験することで,5分という時間に目を付けて分割することで,1/12が作れることが見えてきました。


 5分ずつ分割がうまくいったことを体験した子どもたちは,勝手に動き出します。


「だったら,10分ずつもできるよ」→1/6

20分ずつもできるね」→1/3

30分ずつもいけるね。これは半分だね」→1/2


子どもたちは,分割する時間を10分ずつ増やしていきました。このように変化に目を付けてその先を考えることも,算数では大切な考え方です。


この活動の中から,子どもたちは指導が難しいと言われている1/3の大きさの世界へも自然に入っていくことができました。


 時計の時間に目を付けることで,それまで難しいと感じていた1/31/12が簡単にできることを発見していくことができました。



日経DUALインタビュー データの活用の取り組み方

 日経DUALに,小学校高学年で重視されているデータの活用の取り扱い方についてのインタビュー記事が掲載されました。

今回の学習指導要領から,高学年でデータの活用が重視されています。それに伴い,「最頻値」「中央値」などのそれまで中学校数学で扱われていた用語が小学校でも扱われるようになりました。

用語を含めて,データの活用領域の内容は教え込み形式になってしまう傾向があります。しかし,それでは内容は子どもたちの納得するものとはなりません。

では,どのようにこの場面を取り扱えばよいのか,学校でできること,保護者としてできることをインタビュー記事としてまとめたものです。

詳細は,以下のアドレスからご覧下さい。


■高学年算数「データ活用」の内容変化 興味どう持たせる

https://dual.nikkei.com/atcl/column/17/101900012/021800152/

2021年2月24日水曜日

「問いをつくり出す力」を育てる算数の授業開発13の視点 予約開始!

私が教師人生を歩み始めた頃,理想の教師がいました。社会科の授業名人,有田和正先生です。有田先生は社会科の授業名人,教材開発の名人と呼ばれていました。有田先生の教材開発力は,本当に驚くばかりで当時の私の憧れの先生でした。

算数でも有田先生の社会科のような教材開発を行い,子どもがわくわくする授業を創りたいと考え,日々教材開発を進めてきました。


あれから時が流れました。現在の私は多くの先生から「どうしたら尾﨑先生のような教材開発のアイディアが思いつくのですか?」というご質問を多く頂戴するようになりました。そこで,今回はそのご質問に答える本を作成してみました。

東洋館出版社から発刊です。タイトルは,次の通りです。

『「問いをつくり出す力」を育てる算数の授業開発13の視点』


算数版,教材開発の視点を13個に整理して提案しています。
13の視点は何か,その視点からどのように授業を創り上げればよいのか。具体的な授業場面を数多く取り上げながら,その方法を提案しています。是非,お求め下さい。

目次は以下の通りです。

序 章 子どもに問いがなければ主体性は生まれない

第1章 子どもに問いをもたせる 教材研究の4つのポイント
 教材研究のポイント1 教科書教材のねらいを探る 
 教材研究のポイント2 1時間単位ではなく単元単位で捉える
 教材研究のポイント3 別の教科書と比較する
 教材研究のポイント4 教育書籍を参考にする

第2章 子どもが自然と問い出す 教材に仕込む5つのギャップ
 教材に仕込むギャップ1 友だちの考えとのズレ
 教材に仕込むギャップ2 教科書と子どものズレ  
 教材に仕込むギャップ3 予想とのズレ
 教材に仕込むギャップ4 感覚とのズレ
 教材に仕込むギャップ5 既習とのズレ

第3章 子どもの問いを引き出す 授業展開の4つのアプローチ
 授業展開のアプローチ1 真偽を問う
 授業展開のアプローチ2 同じと思わせる
 授業展開のアプローチ3 子どもに任せる
 授業展開のアプローチ4 できないと思わせる

終 章 授業開発のレベルを上げるステップ


お求め,予約は以下のアドレスからお願いします。







分数は時計から

算数の時間,次のように子どもたちに投げかけます。

「時計型ケーキがあります。赤いところは,ケーキ全体のどれだけですか」


 右のようなケーキの赤い部分の表現の仕方を考えさせました。多くの子どもが考えたのが,「4個分の1つ」という表現でした。


 「4個分の1つ」は,ふわっとした表現です。そこで,この言葉の意味を読解していきます。


「部屋が4つあるってことだよ」

「赤いのは,その中の1つ分」

「4つ分は,全部同じ形になっている」


 時計を分割している4つの形が,全て同じ形・大きさだと子どもたちは考えました。そこで,「どうして絶対に同じ大きさといえるのか」を尋ねます。


「だって,全部15分になっている」

「青も15分,紫も15分,緑も15分,赤も15分。だから,4つとも同じ大きさ」

 


 子どもたちが
「4個分の1つ」と表現したのは,4等分した1つ分という意味だったことが,15分という時計の学習と関連付けることで見えてきました。時計型ケーキを題材とすることで,子どもたちの視点は分割された部分の時間(分)を数値化することへと向かいます。数値化することで,4等分されていることが明確になります。


この読解活動をきっかけに,子どもたちの発想はさらに広がっていきます。


「他にも4つに分けた1つ分ができる」

「十字架でなく,×でもできる」

「3つに分けた1つ分もできる」

「それなら,2つに分けた1つ分もできる」

 

 前半の声は,他の分割方法でも「4等分した
1つ分」が作れることへの気付きです。

後半は,他の数でも等分割ができることへの気付きです。


いずれもよい発見です。この時間は,前半の声を子どもたちと確かめていきました。左のような4等分の形を発見することができました。




2021年2月16日火曜日

算数「割合」苦手な子 分数で表す方法でイメージ楽に

 小学校算数の最難関単元が「割合」だと言われています。各種学力テストでの通過率も50%前後です。「割合」問題を苦手としているのは子どもだけではなく,実はそれを教える先生の中にも苦手に感じている方が多いのではないでしょうか。

そんな苦手な「割合」指導のアプローチの仕方を,先生方目線だけではなく,保護者目線でも捉え直した私のインタビュー記事が日経DUALに掲載されています。ご興味のある方は,以下のアドレスからご覧ください。

日経DUAL   https://dual.nikkei.com/atcl/column/17/101900012/020900151/

2021年2月15日月曜日

辺を何本切ればいいの?

 教育開発出版社「アイテム2年」にある右の教材を,


子どもたちに提示します。そして,次のように投げかけます。

「あと何本の辺を切ったら,展開図は完成しますか?」

子どもたちからは,「2本」と切る本数の声が聞こえてきます。それと同時に,「切る場所が違う・・・」という声も聞こえてきました。展開図にするためには,辺の切り方が1パターンではないと考え始めた声です。

どこを切ったら簡単に展開図ができそうかを尋ねます。多くの子


どもが考えていたのは,右図のように,縦の辺2本を切る方法です。この場所で切ると,t字型の展開図ができます。

展開図が出来上がっていくイメージは,2年生にはかなりハードルが高いのです。この部分はていねいに展開していきました。


すると今度は「まだあるよ」と声があがります。「縦があるなら横もある」という声も続きます。1つ目の切り方をもとに,別の切り方のパターンが見えてきたのです。

右のように横の辺2本を切る方法が発表されます。


この場所で切っても,t字型の展開図ができます。先ほどと同じ展開図のようですが,子どもたちが「羽」と名付けた飛び出した2面の位置が,先ほどの展開図よりも1つ左へと移動します。その部分の違いに子どもたちはこだわりました。

これで切り方が2パターン生まれてきました。多くの子どもは,これで満足しています。

ところが,「まだ,あるよ」という声が聞こえてきます。一方,「もうないよ」という声も聞こえてきます。

そこで,「まだ,あるよ」という子どもに,1本だけ


切る辺に色を塗らせます。塗った場所は手前の横の辺です。「それって,さっきと同じだよ」と声があがる一方,図形をよく見直す子どもの姿も見えてきます。

やがて,「わかった」「今度は縦だ」と喜びの声が聞こえてきます。縦切りと横切りの組み合わせです。この切り方でも展開図になることを,ていねいに確認していきました。

これで展開図ができるのであれば,「だったら,横と縦でもできる」


と子どもは考えていきます。右のように切ることで,4つ目の展開図を作ることができます。

2年生は,立体の感覚がまだ十分に育っていない発達段階です。だからこそ子どもたちは,平面の展開図と立体を行き来しながら,4つのパターンの切り方を見つけていくことができました。



2021年2月10日水曜日

箱の骨組みを作ろう!

2年生「はこの形」の学習も大詰めです。子どもたちに


次のように投げかけます。

「ストローを粘土でつないで,箱の骨組みを作ろう」

(完成すると,右のような形になります)

 

 封筒に入ったストローと粘土玉を,子どもたちに配布します。封筒を開ける前から,「きっと何かが足りないんだ!」と中身を怪しむ声が聞こえてきます。


 中身を出した子どもたちが,骨組みを作り始めようとします。ところが,しばらくすると「足りない」という声が聞こえてきます。封筒の奥に足りない部品が隠れていないか,何度も確認する姿も見られました。

 

 「足りない」と声をあげる子どもたちに,何が足りないのかを確認します。

「粘土が足りない。7個しかない」

「平らな長方形は粘土は4個でいい。でも,箱になると粘土は上に4個,反対側の下に4個で8個いる」

 箱形には頂点が8カ所あることが見えてきました。

 

 他にも「足りない」と声をあげる子どもたちがいました。

「ピンクのストローが足りません。3本しかありません」

「箱にはピンクのストローは4本あります」

「全部で12本ストローがいるよ。青が4本,黄色が4本だからだよ」

「4×3で12本の辺があるんだよ」

 箱形には辺が12本あることも見えてきました。

 

 最後は,足りなかった部品を補充して箱を完成させていきました。


 必要な部品の一部が足りなくなると,本当の姿が見えてくる1時間でした。

箱作の一工夫

 2年生「はこの形」の学習です。箱の面を紙に写し取り,それらを組み立てていくことで,箱を完成させる学習があります。直方体,立方体の2つのタイプの箱作りに取り組みます。

箱を作る活動はそれだけでも子どもたちは,喜んで取り組みます。しかし,それだけでは十分に図形の構成要素に子どもが目を向けることができません。

そこで,完成した箱が何かに見えるように(例えば「列車」),展開図状態の時に模様を描くことを子どもたちに投げかけます。目的意識をより明確に持たせるのです。

すると,子どもたちは展開図状態の時に向かい合う面がどこに位置付くのかを意識して模様を描いていきます。例えば電車であれば,天井のパンタグラフがある反対側は,車輪のある面になる必要があるからです。

展開図状態のままでも,完成した面の位置関係がイメージできる子どももいれば,1つの面に模様を描いたあと,展開図を簡単に組み立てて反対の面がどこに位置付くのかを慎重に確認する子どももいました。このような活動を繰り返していくことで,図形の構成要素をイメージ化していくことができるのです。

実際に手を動かし,目でしっかりと観察し,頭でじっくりと考えることで,面の位置関係をじっくりと把握していくことを,模様作りを通して愉しみながら取り組むことができました。









2021年2月5日金曜日

明日は新潟大学教育学部附属新潟小学校研究会・志田先生公開授業に参戦!

 明日,2月6日は新潟大学教育学部附属新潟小学校研究会の志田先生公開授業協議会です。すでに,公開授業は参加者限定でネット公開済みです。ご覧になられた先生は,どんなことを思われましたか?

公開授業には中核的内容はあったのか?

あったとしたら,その中核的内容はクラス全員に身についたのか?

対話的な学びはあったのか?

一般論ではなく,公開された志田先生の授業をもとに,パネラーの笠井先生(国立教育政策研究所),二瓶先生(新潟市立浜浦小学校)の先生に斬ってもらいたいと考えています。私は司会ですので,静かに進行しようと考えていますが,静かにしてられるかな・・・。

明日をお楽しみに!


同じ箱を作ろう!

 2年「はこの形」の導入場面です。子どもたちに,右の箱


を提示し,次のように投げかけます。

「この形と同じ大きさの箱を作ろう」

グループ毎に材料となる面が入った封筒を配布します。封筒に入っている面は,全て使います。また,面を切ったり折ったりすることはできません。

子どもたちは,封筒から材料の面を取りだし,テープでつなげようと活動を開始します。ところが,封筒の中をのぞき込む子ども,面を手に持って「これじゃあできない」と声をあげる子ども・・・,様々な姿が見えてきました。どの子どもたちも,明らかに不満そうな表情を浮かべています。

そこで,「たりない」と声をあげた子どもたちの右の


材料を提示します。材料をじっくりと観察させ,次のように投げかけます。

「『たりない』と言っている人たちの気持ちは分かりますか?」

すると,子どもたちの手が次々とあがってきます。

「もう1枚いるんだよ」

「面は6こいる」

「お向かいさんが2枚ある」

「2×3で6こいるんだよ」

「横,縦,前が2つずついるんだよ。だから6ついるんだよ」

向かい合う面が2枚あり,それが3セットあるので合計6枚の面が必要なことが見えてきました。


面が6枚あるのにもかかわらず,「作れない」と声をあげる子どもたちがいました。右の面が配られた子どもたちです。「作れない」という気持ちを読解


させます。

「直角三角形では作れない」

「形が違うからだめなんだよ」

「同じ形が2枚いるんだよ」

大きな長方形が1枚と直角三角形の組み合わせでは,箱が完成しないことが見えてきました。同じ長方形が2枚セットで必要だということです。


ところが,配られた面が全部長方形なのにも関わらず,「できない」と声をあげる子どもたちがいました。それは右の材料です。ここでも


「できない」気持ちを読解していきます。

「長方形だけど,大きさが違うからできないんだよ」

「2枚を重ねると隙間ができるでしょ。これだけ短いからだめだよ」

「全く同じ大きさの形が2枚いるんだよ」

向かい合う形が単に同じだけではなく,大きさも同じでないと箱が完成できないことが見えてきました。

条件不備の材料に子どもたちを向き合わせることで,この単元で大切な図形の構成要素に気付かせるだけけではなく,自然にそれらについて数値化することもできた1時間となりました。

残り時間は,正しい面の材料を追加し,箱を完成させていきました。



2021年2月4日木曜日

ラッキーナンバーは誰?

 2年生の子どもたちに,次のように投げかけます。

「1〜9999の中からラッキーナンバーを探そう」


 子どもたちは,上記の中から1つの数字をカードに書きます。それをホワイトボードに貼ります。ラッキーナンバーがどの数字になるのかは,全員のカードが貼られた後に発表します。


 今回のラッキーナンバーは,

「大きい方から14番目の数」

と発表します。


 最初に子どもたちが考えたのは,最も大きい数字カード探しでした。ホワイトボードには31枚のカードらバラバラに貼られています。その中から最大値を探すのは一苦労でした。ようやく見つかった最大値は「9988」でした。

 しかし,これだけではラッキーナンバーを決めることはできません。次に子どもたちが考えたのは,2番目に大きい数字カード探しです。その際,次のような声があがります。


「千の位を見て探せばいい」

「もし,千の位が9で同じなら,百の位の数字で比べればいい」

「百の位も同じなら十の位,十の位も同じなら一の位で比べればいい」


 数字カードの大きさを比べていく視点が生まれてきました。子どもたちが見つけた視点で,2番目に大きい数字カードを探していきます。「9730」が見つかりました。


 しかし,ラッキーナンバーは大きい方から14番目です。まだまだ先は長いのです。カードはバラバラのままでホワイトボードに貼られたままです。すると,

「千の位が同じカードをまとめると簡単」

と声があがります。


そこで,代表の子どもにカードをまとめさせることにしました。最初にまとめたのは,九千台と八千台のカードです。これに該当するカードは3枚。最初は単に3枚を集めただけでしたが,途中から915788888181の順にカードを並べ替えます。大きい順に整理した方が,ラッキーナンバーを見つけやすくなると気がついたのです。

その後,この気付きをもとに全てのカードを順に並べ替えていきます。「7777」とカードに書く子どもがたくさんいましたが,これは残念ながら14番目ではありませんでした。大きい方から14番目のラッキーナンバーは「2468」でした。

数の大きさ比べの視点を,ラッキーナンバーゲームを通して見つけ整理していく時間となりました。

本実践は,「板書で見る全単元・全授業のすべて 2年下」(東洋館出版社)を参考にしています。