2021年4月28日水曜日

明治図書連載「算数授業の“当たり前”を問い直す」読者投稿締め切りました

 明治図書でこの4月号から「算数授業の“当たり前”を問い直す」連載を,田中博史先生とご一緒に進めています。この連載は,「めあて・まとめ・ふりかえり」や「問題解決の5段階」などの型式に子どもを当てはめることで,本当に子どもは算数を愉しむことができているのであろうかという疑問から出発した企画です。前述のような型式ではなく,もっと子どもに寄り添った,現場感覚の柔軟な算数授業の進め方のパターンを様々に提案していく企画です。

4月号で,現場の先生方に原稿募集の依頼を行ったところ,想定を超える先生方が立候補していただけました。すでに,本年度分の連載枠を超えてしまいました。そのため,原稿の募集を締め切らせていただきます。熱き志の先生方多いことに感謝いたします。

雑誌連載では原稿締め切りの関係で,この告知が早急にはできません。そのため,ブログでのお知らせとなりました。ご了承下さい。


2021年4月24日土曜日

包含除への違和感を引き出す

子どもたちに,右の8個のチョコの絵を提示し


「わり算の問題を作ろう」と投げかけます。これまでわり算を学んできた子どもたちは,すぐにノートに問題を書き始めます。子どもから,次の問題が発表されます。


「8個のチョコがあります。2人で分けると,1人分は何個でしょうか」


子どもたちは,「8÷2=4だから4個」と答えも求めていきます。この問題の,「2人」の部分を「4人」に変えてもわり算の問題を作ることができます。


さて,ここで子どもから「まだ,問題があります」と声があがります。「もうないよ」と考える子どももいます。果たして,まだわり算の問題を作ることはできるのでしょうか?


「8個のチョコがあります。2個を箱に入れます。箱は何箱できますか」


大人はこれがわり算の問題であることを知っています。ところが,子どもからは素直な声が聞こえてきます。


「かけ算じゃないの?」→分け方を見るとかけ算に見えます

「分けるって書いてないよ」

「箱の問題?」


箱に入れる問題に対して,違和感を抱いたのです。多くの子どもは,モヤモヤしています。


そこで,この問題の答えの出し方を図で確認します。


すると右のように,チョコを2個ずつ順に囲む(箱に入れる)ことになります。一見すると,かけ算のイメージが浮かびます。


一方,最初の問題はお皿に1個ずつチョコを順に配るのです。左の写真のようにトランプと同じ配り方です。箱に入れる問題とは異なります。



ここに多くの子どもたちは違和感を抱いたのです。このように感じられることに価値があります。子どもたちは,この問題の分け方を「まとめて配り」と名前を付けました。


わり算には,「トランプ配り」の分け方(等分除)と「まとめて配り」の分け方(包含除)の2種類があるのです。これらは元々は別の計算として取り扱われていました。従って,子どもたちが違和感を抱くのは自然な姿なのです。

問題作りから新しいわり算の分け方が見えた1時間となりました。



2021年4月22日木曜日

式が2種類しかないわり算はあるの?

わり算の式の種類調べシリーズの続編です。自主学習で,式の種類が2つしかない数値があることを調べてきた子どもがいました。そこで,この問題を子どもたちに投げかけます。


「式が2パターンしかないわり算はあるのかな?」


子どもたちは,

「中途半端な数ならある」

「最初の勉強でやった7が2つだった」

「5もそうだ」

11もそうだ」

と声をあげてきます。そこで,子どもから生まれてきた数字でできるわり算の種類数が2つしかないのかを,順に調べていきます。その結果,「7÷□,11÷□,5÷□」は式が2種類しかできないことが分かりました。一方,当初は2種類しかないと思っていた「81÷□」は3種類の式ができることが分かりました。


するとここで,子どもたちから大発見が生まれます。


「式が2つしかない7,11,5は,最初のかけ算九九表で勉強した緑で塗られた数になっている」

「同じ答えが2つしかない九九に緑がついているからだ」


 かけ算九九の答えの種類数に応じて,数字を色分けする学習を行いました。緑は同じ数字が2組しかないものです。その学習とわり算の種類数の学習を結びつけたのです。学習場面を超えて2つの学びをつなげる子どもたちの発見にびっくり!


 この大発見をもとに,他の緑の数で実験を行います。

「3÷」は「3÷1」「3÷3」の2種類しか式ができません。

ところが,緑数字の「54÷」は「54÷1」「54÷54」の他に「54÷6」「54÷9」の4種類の式ができてしまいました。


 九九表の大発見はここで終わりかと思われましたが・・・。ここで天の声が聞こえてきます。

「九九だけじゃなくて,かけ算全部と考えたらいいんだよ」


 九九表の枠をもっと広げて考えると,緑数字が新しく塗り直されたり,新しく発見されたりするという声です。13の段は九九表にはありません。しかし,九九表を拡大したらこれは緑数字になります。

13÷」は「13÷1」「13÷13」の2種類しかありません。同様に,「17÷」「19÷」も2種類です。


 九九表の学習から学びを発展させて考えた子どもたちの発想力,すばらしいですね。


2021年4月21日水曜日

わられる数とわり算の式数の関係はいかに?

わり算の学習を進めています。前回もお伝えした通り,わられる数が増えると,そこからできるわり算の式の種類も増えるのではないかと子どもたちは考えていました。それまでに子どもたちが見つけた,わられる数と式の数は次の通りです。

8÷→4パターン    

10÷→4パターン

16÷→5パターン

20÷→6パターン


式の総数は,順調に増えていきます。この活


動の中で,子どもたちはわる数が右のような虹の関係になっていることを発見していきました。数の関係に目を付けた素敵な発見です。数に働きかけられる子どもたち,よき見方が育っています。

ただし,16÷4の4だけは虹で結ぶ相手がいません。これも,「4×4で同じ数をかけるからだ」と相手がいない理由を考えました。


その後,わられる数増やして式の種類が増えるのかを実験します。


最初に試したのが,22÷です。に入る数は,1,2,1122です。4つしかありません。子どもからは,「あれ?」「少なくなってる」と驚きの声があがります。子どもたちの予想は裏切られました。

しかし,今度は式数が少ない理由を考え始めます。

22は,九九にない数字だから少ないんだよ」

「前にやった8,101620は九九に答えがあるから式が多い」

予想が裏切られても,ただでは起きないすごい子どもたちです。

 

この理由が正しいとしたら,九九に答えがある24÷□の式数は多いということになります。そこで,この式数を調べます。1,2,3,4,6,8,1224と8種類も式が生まれてきました。それまではなかった,わる数が3も登場してきました。

この後,九九にはない26÷□の式の種類も調べます。これは,1,2,1326の4種類のみ。やはり少ない種類数となりました。

 

わられる数とわり算の式の種類数を考えることを通して,様々な発見ができた1時間となりました。


わられる数と式数の関係

わり算に出合った子どもたちに,「他の数でもわり算はできるかな」と投げかけます。


これだけで,子どもからは「中途半端な数はわり算のパターンが少ない」と声があがります。わられる数によって,式のパターン数に違いが生まれるという考えが生まれてきました。


そこで,中途半端ではない数でパターン数を考えることにします。最初に取り組んだのは,「8個のあめを□人で分ける」場合です。何人なら分けられそうなのかを考えます。子どもたちは,1人・2人・4人・8人と予想します。4パターンのわり算の式が作れそうです。



2人で分ける場合は,右のように図を描くことで1人分が求められます。図を描き1人分を求める方法について,子どもは「分かりやすい」「面倒」と正反対の反応をしていました。

さらに「数が増えたら,線がごちゃごちゃになって大変なる」と,あめの数が大きくなった場合を予想する声もあがってきました。先を見通したよい見方です。

 

そこで,あめの数を10個に増やした場合を考えます。10個のあめを2人で分ける場合を,図で描いてみました。子どもからは,「線がごちゃごちゃ」「なんだかわからなくなった」と声があがります。一方,「楽しい」という声も聞こえてきましたが,ほとんどの子どもたちは図を描く方法にアレルギー反応を示していました。


あめが10個の場合は,1人・2人・5人・10人で分けることができます。式のパターン数は,先ほどと同じでした。すると,「もっと数を増やせばパターンも増える」と声があがります。


今度は16個に飴の数を増やします。ここまで飴が増えると,もう図で描きたいと思う子どもは皆無になります。16個を等分できるのは,1人・2人・4人・8人・16人です。パターン数は5に増えました。


その後,20個の飴の場合も考えます。等分できるのは,1人・2人・4人・5人・10人・20人となり,パターン数は6です。


子どもの予想通り,飴の数が増えると式のパターン数も増えてきました。果たして,子どもたちが見つけたきまりは,もっと数が増えても当てはまるのでしょうか・・・。


わられる数とそこからできるわり算の式数の関係を考えるという目的意識を子どもに持たせることで,わり算の問題に向き合う意識を前向きに高めることができました。

2021年4月20日火曜日

3年生「わり算」の導入を素数から入ると?

算数の時間,子どもたちに次の問題を出します。

「7個のビー玉があります。何人で分けたいですか」


敢えて素数を提示します。子どもたちのこの数に抱く感覚的な違和感を引き出したいと考えたからです。

問題を見た子どもから,「分けられない」「中途半端な数だから」と声があがります。感覚的に7個を分けることは難しいと感じているようです。分けるという視点で見たときの素数に対する違和感は子どもたちには備わっているようです。


そこで,「『分けられない』ってどういくこと?」と尋ねます。すると,次の声があがってきます。

「2人だと4個と3個になる」

「これは不公平」

「多い・少ないがあるのはだめだよ」

等分できないことに視点を当てた考えが生まれてきました。もちろん,1人・7人なら等分はできます。しかし,子どもたちは等分できる組み合わせが「これしかない!」と怒っています。


すると,今度は次の声があがってきます。

「4人,6人,8人なら,もっと分けられる」

「2跳びの数ならいいのに」

ビー玉の数を変えて考えたいという新たな視点が生まれてきました。公平性の視点から問題文を変えようと提案できる子どもたち,逞しいですね。

 

そこで,12個のビー玉なら何人に分けられるのかを考えることにしました。7個の時よりも,多くの組み合わせがあるのでしょうか。子どもたちは,1人・2人・3人・4人・6人・12人なら公平に分けられると考えました。


そこで,前述の人数なら本当に等分できるのか順に確かめます。先ずは,3人で等分できるのかを考えます。子どもたちは,ビー玉を1つずつ3人の子どもに分けていきます。すると,本当に1人分が4個で等分できることが分かりました。その後,4人や6人などの人数でも等分できるのかを確かめます。いずれの人数でも,等分できることが分かりました。分け方を考える中で,子どもからは,

「かけ算でも答えが分かるよ」

「確かめ算もかけ算でできるよ」

と声があがりました。

さらに,次の声もあがってきます。

「トランプの配り方と同じだ」

よい気付きがあがってきました。子どもたちも納得の声でした。今回の問題は等分除問題です。それを「トランプ配り」に例えることで,一気に共通のイメージ化が図れました。


わり算との出合いの授業です。子どもたちが感覚的に等分できないと考える7という数値に意図的に出合わせることで,多くの人数で等分できる数字を子どもたちが創り上げる授業ができました。これは教科書とは全く異なる展開です。しかし,教科書以上の発想が子どもから生まれてきました。



2021年4月17日土曜日

「わっしょい」主催研修会延期のお知らせ

 兵庫県西宮のサークル「わっしょい」の研修会が,延期になりました。

7月22日(木)

会場は未定です。なんとこの日は,東京オリンピックの開会式と前日です。オリンピックの前夜祭も兼ねて,派手に,しかも役に立つ研修会にしたいと主催する「わっしょい」のメンバーが語っていました。聖火点灯式もあるかもしれません⁉

前夜祭の日程,あけておいてくださいね!

新型コロナ感染状況によっては,延期もありますのでご承知おきください。


2021年4月16日金曜日

3年「答えはぞろ目になるの?」かけ算

算数の時間,「11の段のかけ算を作ろう」と呼びかけました。11×1から順にかけ算を作っていきます。


11×3まで答えが求められたとき,「おもしろいことがある」


「ぞろ目だ」と声があがります。かける数の数字が,答えの部分にぞろ目として登場しています。子どもたちは,この発見をして大喜びです。そして,答えがぞろ目になるきまりがこの後も続くと考えていました。


そこで,11×4以降のかけ算も答えを見つけていきます。答えは,前のか


け算の答えに11ずつたしていけば求められますので,計算自体は簡単です。計算が始まってしばらくすると,「9になるとぞろ目にならない」という声が聞こえてきました。

11×10の答えは,110です。ぞろ目になるのであれば,1010となるはずです。ぞろ目のきまりは,かける数が9までの限定された世界の発見だったのでしょうか?


ここで子どもから,ぞろ目になるはずの10の並び方を,1010ではなく,


右のように変えれば本当の答えの110が見えると声があがります。十の位にぞろ目の重なりを作るのです。そうすると,確かに110ができます。同様に考えると,11×1111のぞろ目から121が見えてきます。発想の転換が,子どもたちが限界だと考えていた扉をこじ開けたのです。


この発見に触発され,自主学習で授業では扱わなかった数値にもぞろ目のきまりが当てはまるのかを実験してきた子どもたちが何人もいました。学校での学びを,その後もつなげられる姿は素敵ですね。



2021年4月12日月曜日

3年「隠れた数はいくつかな?」(かけ算)

算数の時間,「隠れた数はいくつ」と尋ね,かけ算九九表の一部を隠します。


最初に見せたのは右の表です。子どもからは「簡単」と声があがり


ます。

見えた数をノートに書かせます。「4と6」が隠れていますが,今回はその合計数を求めることにします。

すると,答えは「10」となります。


 続いて,左の表を見せます。答えは「15」になります。すると,子どもから「5の段」という声が聞こえてきます。隠された数字は,2の段と3の段です。ところが5の段の話題が子どもからは生まれてきたのです。そこで
,なぜ5の段の話題をしているのか,その理由を尋ねます。



「だって,4と6をたすと,10でしょ。これは,5×2の


答えと同じ」

「次に隠れていた6と9をたすと,15でしょ。これは,5×3の答えと同じ」

「だから,その隣も隠れたら8と12で,それを20でしょ。これは,5×4の答えと同じ」

「2と3の段をたすと,5の段ができるんだよ」


 この発見をきっかけに,子どもたちの追究の視点はさらに広がっていきます。

「他の場所もそうなっているよ」

「8(2×4)と12(3×4)で20だから5×4で5の段だ」

10(2×5)と15(3×5)で25だから5×5で5の段だ」


 これまでに子どもたちが見えていた2の段と3の段の隠された世界を,他の2の段と3の段にも広げていく見方が生まれていきました。


さらに,次の見方も生まれてきました。


「だったら,他の段でもできるよ」

「3の段と4の段なら,7の段ができるよ」

「3(3×1)と4(4×1)で7だから7×1で7の段だ」

「1の段と2の段なら,3の段ができるよ」

「4段と5の段なら,9の段ができるよ」

「離れていてもできるんじゃないかな?」

「1の段と5の段なら6の段になるよ」

「1(1×1)と5(5×1)で6だから6×1で6の段だ」

「6段と8の段なら,14の段ができるよ」

 

 複数の段を合体することで,新しい算を創り出すことができるが見えてきました。子どもは,きまりを見つけること,そしてそのきまりを活用して新しいものを見つけることが大好きです。その一端が顕著に見えた1時間でした。


本実践は,「板書で見る全単元・全時間の授業3年上」(東洋館出版社)に掲載されたものを修正して追試したものです。「板書で見る全単元・全時間の授業」シリーズは使えますよ!



2021年4月9日金曜日

「『問いをつくり出す力』を育てる算数の授業開発13の視点」再版決定!

 

3月に発刊しました,「『問いをつくり出す力』を育てる算数の授業開発13の視点」(東洋館出版社)が早くも再版が決定しました。多くの先生方からお求めいただきありがとうございます。
お求めいだだいた先生からは,「実践を元に説明がされているので,読みやすかった」「教材作りのノウハウがよく分かりました」などの声が寄せられています。ありがとうございます。

お求めは,以下のアドレスからお願いします。


第2回愉しい算数授業をつくる研修会のお知らせ

 新型コロナ感染拡大が止まらない状況になっています。初夏には,この感染状況が下火になっていることを願っています。コロナの感染が下火になった場合に限り,第2回愉しい算数授業をつくる研修会の実施を考えています。

本講座では,私の講演の他に,2本の授業ビデオの公開があります。生の授業を見ることはまだまだ難しい状況ですが,ビデオであれば参観が可能となります。しかも,2本の公開授業と授業討論会が実施します。詳細は,以下のちらしをご覧下さい。

いずれも新型コロナ感染拡大が下火にならない場合は実施いたしません。そのため,申し込みされても,中止になる場合があることをご承知おき下さい。

お申し込みは,以下のアドレスからお願いします。