2021年8月31日火曜日

歩幅でバイバイゲーム!

「 10歩歩いたらどれだけ進むか」を前日に実験しました。自分の一歩分を長さの基本単位として身に付けてほしいからです。多くの子どもの一歩分は,50〜70㎝前後となりました。

この日の算数は,「一歩分の歩幅でバイバイしたら,どれだけ進むかな」というゲーム問題です。

最初の持ち点(長さ)は,昨日の自分の一歩分の歩幅です。2人1組でジャンケンをします。パーで勝つとその長さが10倍,チョキで勝つと100倍,グーで勝つと2倍に変わります。ジャンケンは全部で5回勝負です。

子どもたちは,長さをなんとか100倍にしようと「チョキ」を出しますが,相手も「チョキ」を出すために,なかなか思い通りには進みません。

ゲーム終了後,5回のジャンケン全てに勝ち続けた子どもの長さの計算過程を,全員で確かめることにしました。

K子の最初の長さは40㎝です。1回戦は「チョキ」で勝ったので100倍です。長さは一気に4000㎝になります。この長さは40mに置き換えられます。2回戦も「チョキ」で勝ったので100倍です。長さは,4000mです。3回戦は「パー」で勝ったので10倍です。長さは40000mです。4回戦は「チョキ」で勝ったので100倍です。長さは4000000mです。最後の5回戦は「パー」で勝ったので10倍です。従って,最終結果は40000000mです。

この結果を見た子どもから「新しい単位がほしい」と声があがります。そこで,「新しい単位がほしいと言っている人の気持ちは分かるかな?」と気持ちの読解活動を取り入れます。

「だって,0が多すぎるからだよ」

「0が7個もあるよ」

「0が多くて,0を数えるのが大変だよ」

子どもたちは,40000000mの結果が表す数字の面倒くささを的確に説明することができました。面倒さの実感が,新しい単位の必要感の源泉となっているのです。

さて,今度は次の声が聞こえてきます。

「一番小さい㎜を10倍すると㎝になったでしょ。次に,㎝を100倍したらmになったでしょ。だから,次の新しい単位は1000倍したらできると思う」

新しい単位の必要感だけではなく,新しい単位の出現の仕方のきまりへの気付きが生まれてきました。「1000倍すると新しい単位が出現する」は価値ある見方です。しかし,この意味はすぐには全員に理解はされません。時間をかけて,クラス全員に共有をしていきます。

新しい単位は「㎞」です。これは1mの1000倍に当たる大きさです。まさに子どもの予想通りになりました。

K子の最終の長さは「40000000m」は,「40000㎞」と変換することができます。子どもからは,「0が少なくて分かりやすい」と声があがりました。

m表記の限界に気付かせることから,新しい単位の必要感を引き出し,さらにその新しい単位が出現するきまりも子どもたちが発見することができた1時間となりました。



2021年8月27日金曜日

長い長さを測る

前回の算数では,「1年生でも安全な歩き方で1分間歩いた長さ」を,班ごとに測定をしました。ところが,班による差が最大5mもあり,結果がバラバラになりました。


そのときに子どもから生まれてきたアイディアが,「10m定規がほしい」でした。子どもたちからは,この10m定規について声があがります。


「ガムテープで1m定規をくっつけても,折れちゃうんじゃないかな?」

「つなげるときに,真っ直ぐにしにくいよ」

「5mつなげると,教室を飛び出す長さになっちゃうよ」


簡単そうな「10m定規」のマイナス面が見えてきました。すると今度は,「だったら巻き尺がほしい」と声があがります。国語辞典で「巻き尺」の意味を探す子どももいました。算数でも国語辞典を活用するなんてすごいですね! 


さて,国語辞典には次のように説明が書かれています。

「鋼や布などで作られた,テープのような物差し。多くはケースの中に巻き込んである」

この説明をきっかけに,次の声があがってきます。


「そうそう,テープが中に入っているんだよ」

「くるくるしているんだよ」

50m位あるんだよ」

「長い長さを測るときにいいんだよ」

「力を入れすぎると血が出るんだよ」

「大工さんが持っているよ」

「工事の人が使っているよ」・・・


少しずつ,巻き尺のイメージが見えてきました。


ここで20m巻き尺を提示します。子どもからは「それそれ!」とうれしそうな声が聞こえてきます。巻き尺を使って,班ごとに長さを再測定することにしました。

測定を終えた子どもたちは,「1m定規だと40回も動かすけど,巻き尺なら5回で終わるから簡単」「定規みたいにつなげるときにズレたりしないから簡単」と,巻き尺を使うよさに気付いた声があがりました。

1m定規を使って苦労した体験と比較することで,巻き尺のよさを実感することができた時間ともなりました。


2021年8月26日木曜日

1年生に安全な歩き方で1分進んだら?

 算数の時間,次のように子どもたちに投げかけます。

「1年生でも安全な歩き方で1分間歩きます。どれくらい進むでしょうか」

先ずは,進む長さを予想させました。40m」「60m」「20m」「30m」「70m」と子どもたちの予想はバラバラです。60mの予想には「進みすぎ」と声があがります。

子どもからは「歩いて調べてみたい」と声があがります。そこで,「入学してから一度も廊下を走ったことのない人に代表で歩いてもらいます」と投げかけます。すると数人の子どもの手があがりますが,周りからはブーイング。さすがに一度も走ったことのない子どもはいません。

走った経験の少ない代表の子どもに,実際に廊下を歩いてもらいます。3階廊下の端(トイレ側)からスタートして,1分後には4年教室脇まで進みました。「こんなに進むの!」と子どもたちはびっくりです。さて,実際の長さはどれくらい進んだのでしょうか。

想定よりも長く進んだことで,子どもたちは「どうやって長さを調べたらいいんだろう」と考えます。「みんなの持っている定規をつなげばいいよ」などの声があがります。しばらくすると,筆箱の中からくるくる巻かれた紙テープを取り出し,「この1mの定規があればいいよ」と声があがります。2年生で1mの紙テープを作ったのです。そのときの紙テープを,きちんと筆箱にしまっていたのです。とても素晴らしい子どもの出現です。この気付きをきっかけに,子どもの声が続きます。

「1mをつなげば30㎝定規よりも正確にできるよ」

「その方が,30㎝定規をつなげるよりも簡単」

効率的な調べ方のアイディアが生まれてきました。そこで,列ごとに協力して歩いた長さを測定することにします。すでに1m紙テープがない子どもたちが多数でしたので,各列に3〜4本の1m定規を配布しました。しかし,実際に測定を始めるとそれだけでは足りません。子どもたちは1m定規を交互に動かすなど工夫をしながら長さの測定を進めました。


各列の測定結果は,次の通りになりました。

① 47534㎜  ② 4794㎝    ③ 44625

④ 49501㎜  ⑤ 45606㎜    ⑥ 45787


この結果を見た子どもからは,「全然違う」「もっと正確に測りたい」と声があがります。すると次のようなアイディアが生まれてきました。


「もっと長い10m定規がほしい」

10m定規なら4回か5回で測れるから簡単だよ」

「一気に測れるから簡単そうだね」


1m定規は短すぎて手間が掛かりすぎることへの気付きです。いいところに視点が向かっていきました。もっと長い定規を使えば測定にズレが生まれないのか・・・。巻き尺につながるよいアイディアが生まれてきました。さて,実際の測定は次回のお楽しみです。


2021年8月19日木曜日

田中博史先生&尾﨑の算数講座開催

 2022年2月頃,田中博史先生と私で算数講座を京都で開催します。コロナ感染もありますので,ハイブリッド型での開催予定です。京都会場に対面で50人,オンラインで200人を予定しています。

当日は,田中博史先生と私の講座の他に,兵庫の久保田先生・新潟の志田先生の模擬授業も予定されています。

詳細が決まりましたら,お知らせします。お楽しみに!

原文で「いかにして問題をとくか」を読めたなら・・・

 ポリヤの「いかにして問題をとくか」について述べました。私が読んだのは日本語に翻訳したものです。翻訳を担当したのは物理学の先生です。算数・数学教育に携わった方ではありません。そのためかどうかはわかりませんが,日本語としての表現が「?」の部分があります。出版社サイドでの校正チェックが不十分だったのでしょうか。1954年初版の本です。当時はそこまで校正が厳密ではなかったのかもしれませんね。

田中博史先生は,原文をお読みになられたそうです。私にはそこまでの語学力がないのでできませんが・・・。田中先生によると,この翻訳本にはかなりの原文とはことなるかなりの間違いがあるそうです。やはり算数・数学の専門家でない人が翻訳を行うと,作者の意図とは異なる部分が出てきてしまうのでしょうか。

語学力のある先生は,是非,原文で読破されてみてください!

ポリヤ「いかにして問題をとくか」から見えること

 

問題解決学習の出発点と呼ばれている本があります。ポリヤが書いた「いかにして問題をとくか」です。かつて向山洋一氏がお薦めしていた本です。その当時,この本を読みましたが,正直,難しすぎて「?」が頭に浮かびました。

この夏,外出も思うようにできないので久しぶりにこの本を読んでみました。読んでいて気になったのは,「・・・させる」という指導方法の多さでした。「(既習を)思い出させる」「〇〇に直させる」などです。

ポリヤのこの本は,大学生に数学を教授することを想定して書かれた本です。大学生相手なら,このような展開もあってもいいのかもしれません。

この本に書かれている指導法を,そのまま小学校算数に当てはめるのは,かなり無理があるなあと何度も思いました。現在の算数授業は,子どもの主体性を培うことを軸に置いています。例えば,教師が指示をして既習を振り替えさせるのではなく,子ども自身が既習を振り返りたくなるように授業を展開することが大切なのです。

ポリヤが伝えたいことは,数学の問題解決で困った場合は既習に帰ること・類似の問題に置き換えること・簡単な場合に置き換えることなど,問題を解いていくために必要な考え方です。この考え方自体は,大変に参考になります。

小学校算数を教える教師は,この考え方をバックボーンに置きながら,「いかにして考え方を子どもから引き出すか」を意識した授業を展開を構想するのかが大切になります。

2021年8月11日水曜日

志を同じくする仲間を見つけよう!

 「どうやったら尾﨑先生のような教材開発力を身に付けることができるのですか?」

「どんな勉強をしているのですか?」

こんな質問を研修会で受けることがあります。一言で答えることができないレベルの質問ですが,その中の一つが「志を同じくする仲間を見つける」ことです。

先日,私が新潟で教員を務めていたころから勉強会をしている仲間とZoomを使った勉強会を実施しました。この会のメンバーは,算数人だけではありません。国語・英語,ICT,道徳・家庭教育と専門分野は様々です。算数人とは異なる専門分野をもつ仲間からの指摘は,算数人のそれとは視点が異なります。「なるほど」「そんな見方もあるのか」と思うことが何度もあります。だからこそ,彼らと一緒に学び続けることに意味があると思っています。

また,算数人ではない先生からの提案にも,新たな学びがあります。「そんな実践をしているんだ。すごいなあ」「算数でもこの視点は活かせるぞ」などと感じることも多々あります。

先日の研修会では,提案の中で紹介された山口周さんのある本に,大変に興味が引かれました。早速,今日は本屋で探して立ち読み?してみます。

同じ専門分野の仲間と勉強を行うことも大切です。しかし,敢えて専門分野は異なるものの,「子どものためによい授業をしたい」「子どもの学力を伸ばすためのマネジメントを探りたい」という志が同じ仲間と学び合う機会を設定することも大切だと考えています。

オンラインを誰でも使える現在であれば,遠く離れた先生同士でもつながり合うことはできます。是非,同志の仲間を見つけて学び続けてみてはいかがでしょうか。

2021年8月10日火曜日

個別最適化×ICTが次の教育課題・・・?

夏休み,オンラインでの研修会にいくつか参加しています。そこでの話題の一つが「個別最適化」でした。次の指導要領改訂の目玉とも言われているものです。一人一人の子どもの学びの実態に合った最適な学習を保障するというものです。この個別最適化を展開するうえで欠かせない道具がICT機器であり,それをもっと活用していこうという話題が大きくなっているというものでした。ざっくりとしたイメージでは,なんとなく分からなくはない主張です。

一方,別の研修会では今回の学習指導要領の目玉である主体的・対話的で深い学びを引き出す授業改善が,コロナ禍やICTの影響で後退しているという話題もありました。これは,コロナ禍でも行われている授業を拝見させていただく機会がありましたが,私も実感しています。

大学受験などを目的として現在の塾業界は,完全に「個別最適化」にシフトしています。私が講師を務めるスタディーサプリを筆頭に,東進ハイスクール や河合塾マナビスなどでは,生徒一人一人が自分の学びのペースで,神授業の動画を視聴しています。自分のペースですから,ゆっくり見たり,飛ばしてみたり,繰り返し見たりすることもできるのです。授業動画につながるドリル問題は,AIドリルです。個別最適化に特化した塾業界は,目的とする大学受験でも華々しい成果を出しています。

学校教育は塾業界のスタイルを後追いすることになるのでしょうか? そうだとしたら,もはや学校には先生が必要なくなるかもしれません。神授業の動画を自分のペースで子どもがタブレットで視聴し,その後は教室にいるチューター役の先生(もはや先生とは呼べないかもしれませんが・・・)がフォローすればいいのです。塾は完全にこのスタイルです。

学校と塾では目的が異なります。学校は大学受験だけが目的ではありません。特に小学校では,現在の学習指導要領にも明記されているように,授業を通して子どもたちの見方・考え方を培うことが大きな目的です。この部分は,動画視聴だけでは十分に進めることはできません。

見方・考え方を培うためには,子どもたちがそれを使って考えたくなるような授業を教師が展開できることが必要です。さらには,授業の中で生まれきた見方・考え方を教師が即座にキャッチし,クラス全体へと共有化し価値づけていくことも大切です。これらの一連の活動は,動画視聴だけでは絶対にできません。だからこそ,主体的・対話的で深いを引き出す授業展開を進める教師の授業技量を高める必要があると考えています。

夏休みも残り半分ほどになりました。コロナの影響で対面の研修講座はほぼありませんが,先生方もオンラインや書籍などを通して,見方・考え方を培うことにつながる授業の在り方を学び,よい2学期のスタートを切っていただきたいと考えています。


2021年8月8日日曜日

10月は公開授業4本開催!

 新型コロナの感染拡大が止まりません。コロナ感染が収まってくれば,10月には公開授業が4本予定されています。

大阪府吹田市 6年生(市算数部主催) 3年生(市教育センター主催)

愛知県名古屋市 3年生(名進研小学校主催)

京都府京丹後市 4年生(市教育委員会主催)

例年の夏休みは,各地で公開授業の機会をいただくのですが,コロナ禍の現在はそれが全くできません。早く夏休みが終わって授業がしたくてたまならい今日この頃です…。

10月の公開授業も,各地の子どもたちとどんな授業ができるのか楽しみです。しかし,これも新型コロナの感染が収まらないと実現できません。早くコロナの感染が落ちつことを願うのみです。

2021年8月5日木曜日

名進研小学校研究会 申し込みスタート

 名古屋市にある名進研小学校の研究会の申し込みが始まりました。詳細は,以下の通りです。

開催日:2021年10月9日(土)

概要 :本校の授業を広く公開いたします。また、10周年を記念して本校国語科顧問の岩下修と関西大学初等部の尾崎正彦先生に特別授業及び記念講演をしていただきます。

定員 :200名

参加費:3000円(大学生:2000円)

後援 :愛知県教育委員会、名古屋市教育委員会

詳細・申し込みは以下からお願いします。

https://www.meishinken.ed.jp/news/3767/





2021年8月2日月曜日

愉しい算数授業をつくる会延期のお知らせ

 9月4日に予定していました「愉しい算数授業をつくる会」は,会場の大阪府に緊急事態宣言が発出されましたため,延期させていただくこととなりました。既に申し込みをされていた先生方,申し訳ありません。

新しい日程は,決まり次第連絡いたします。