2022年2月25日金曜日

答えが一番大きい式は?

 子どもたちに次のように投げかけます。

「0.1.2.3.4の5枚の数字を全て使った,百の位×十の位のかけ算の式を作ろう」

式のイメージはすぐにつきます。そこで,「答えが一番大きくなる式を作ろう」と投げかけます。計算をしないで,頭の中に答えが最大値になる式として浮かんだものをノートに書かせました。

頭に浮かんだ式を,発表させます。

「ア:321×40」「イ:210×43」「ウ:310×42」

「エ:420×31」「オ:320×41」

5つの式が発表されました。この中で子どもたちが大きくなりそうだと考えたのは,エとオの式でした。

「かけられる数・かける数の左の数字がどちらも4と3だから,同じになる?」

「でも,かけられる数を大きくした方が答えが大きくなるよ」

「十の位のかけ算だけ見ると,エが2×3でオが2×4だからオが大きくなる」

新しい理由が発表される度に,子どもたちの心も揺れていきます。「わかんなくなってきた」という素直な声も聞こえてきました。

最後は計算で最大値の式を確かめます。その結果,「オ:320×41=13120」で最大値の式なることが分かりました。

実は,この答えになる式はもう1つあります。その式を,この後探していきます。

「カ:410×32」も答えが13120で最大になることが分かりました。答えが最大の式が2つあることが見えてきました。すると今度は,新しい発見が生まれてきました。

「おもしろいことがあります。カのかけられる数の320を10でわると,オのかける数の32になる。カのかける数の41を10倍すると,オのかけられる数の410になる」

「÷10して×10したら答えは同じになる」

「だったら最初の式もそうなっている。210×43と430×21も同じ答え」

「310×42と420×31も同じ」

「÷10して×10をすると同じになるんだ」

「エレベーターになっているんだ」

「でも,これって一の位に0があるからできるんだね」

答えが最大になる式探しを進めながら,答えが同じになる式の秘密にも気が付いていくことができました。気がついたら,随分とたくさんの計算練習をしていたことになった1時間でした。目的意識のある計算練習は,子どもたちも喜んで取り組みます。


2022年2月24日木曜日

教科書問題から発展

 学校図書のかけ算単元末にある問題を提示して,授業をスタートします。

「21×24の筆算にチャレンジしよう」

子どもたちはノートに計算を進めていきます。答えは「504」です。

2問目を提示します。今度は,「12×42」の計算です。この段階では,まだ子どもたちは何も気がついていません。

計算を進め,答えが求められた時点で「同じだ」「反対になっている」などの声が聞こえてきました。何かに気がついたようです。答えが「504」になることを確認したあと,その声を聞いていきます。

「式が反対になっている」

「一の位の数字と十の位の数字が反対になっている」

「反対になるけど,答えは同じになっている」

「それはたまたまでしょ」

「いつでもかもしれないよ」

子どもたちは,式の一の位と十の位が入れ替わっても答えは等しくなることに気付いてきました。この発見は,この問題だけの偶然なのでしょうか。この段階では,偶然だと考える子どもが多数を占めました。

そこで,別の式で実験を行うことにします。「23×64」と「32×46」です。式の一の位と十の位が入れ替わった式です。計算が始まってしばらくすると,「同じだ」「すげー」と声が聞こえてきます。この問題の答えも,両者「1472」で等しくなりました。1問目の発見は,この問題でも当てはまりました。まだ,この発見を怪しんでいる子どももいましたが,「秘密が分かった」という声が聞こえてきました。この声を共有していきます。

「この問題の式の一の位の3と4をかけると12。十の位の2と6をかけると12」

「どちらもかけた答えが同じになっている」

「あっ,だったら最初の問題もそうなっている。一の位の1×4=4。十の位の2×2=4で同じ」

「一の位と十の位の数字をかけて答えが同じなら,かけ算の答えも同じになるんだ」

子どもから,答えが同じになる式の新しい視点が生まれてきました。そこで,この視点の正しさを別の式で確かめます。「12×84」と「21×48」を計算します。式は,前述の視点に合致したものです。計算が始まってしばらくすると,「やっぱり同じだ」「1008にどっちもなった」と声があがります。それと同時に,この視点を使って別の式の計算を始める子どもの姿も見えてきました。子どもたちが勝手に式作りへと動き出した姿です。

そこで,残りの時間は答えが同じになる式探しを子どもたちがそれぞれ行うことにしました。答えが同じ式を発見した子どもには,その式を発表してもらいます。「48×42」「84×24」や「12×63」「21×36」などの多数の式が発表されました。この場面は,個別指導の部分とも言えますね。

最初はさせられていた計算問題でしたが,途中から子どもたち自らが問いを見出し,目的意識を持って計算に取り組んでいった1時間となりました。




2022年2月22日火曜日

暗算VS筆算 どちらが簡単?

2けたをかけるかけ算の学習の一コマです。子どもたちに次のように投げかけます。

「暗算と筆算,どちらが簡単ですか」

子どもからは,「使い分けたらいい」という声が聞こえてきました。鋭い指摘です。そこで,どのように使い分けたらよいのかを考えさせます。

「繰り上がりのない計算は暗算。繰り上がりのある計算は筆算」

「かける数が小さい数の時は暗算。大きい数の時は筆算」

「筆算はどんな数でも大丈夫だから,最初から筆算にしておいた方がいい」

「かけられる数・かける数の一の位が5より小さいときは繰り上がらないから暗算。5より大きいときは繰り上がるから筆算」


子どもたちなりに,計算式を分解して2つの計算方法を使い分ける方法を考えていくことが出来ました。鋭い考え方が子どもでもできるのですね。


その後,いくつかの問題を解き進めていきました。23×3の問題場面です。これは暗算が簡単そうです。ところが,暗算での計算順にズレが生まれました。「3×3+20×3」と「20×3+3×3」です。一の位の計算が先か,十の位の計算が先かの違いです。

筆算の計算方法を適用すれば一の位を先に計算します。ところが実際に計算を行うと,違う感覚が生まれてきます。

「60に9をたした方が,9に60をたすより簡単」

「一の位が0に9をたすのは簡単。一の位の9になにかをたすのは難しい」

「5月27日にも似た勉強をした。35+46では,70に11をたす方が11に70をたすより簡単だった」

「他の式でも実験したら,一の位から計算した方     

が簡単だたよね」

「やっぱり一の位が0だとたしやすいんだね」


9ヶ月以上前の学習と関連付ける子どもたちの見方にびっくりしました。

その後,24×4,25×4で本当に十の位を先に計算する方が簡単かを実験します。その結果,ほとんどの子どもたちが一の位を先に計算する方法に簡便さを実感しました。




2022年2月21日月曜日

きまり発見で計算練習

 東洋館出版社から発刊されている板書シリーズの3年生下巻にある問題を使って,授業をスタートしました。この日の私の想定は,板書シリーズの流れを作ることでした。

最初に,次のように投げかけます。

「2×2の計算をします。には同じ数が入ります」

子どもたちに数字を選択させます。「7」をに入れることになりました。従って,計算は27×27という式になります。この計算を筆算で行います。

「27×27=729」

答えが出ました。今度は,この式をもとに次のように投げかけます。

「かけられる数の27を1増やします。かける数の27を1減らします。28×26に式を変身します」

すると,子どもからは「答えは同じ」という声が聞こえてきます。よい声が生まれてきました。この声の意味をクラス全体で読解します。

「式の数が1増えて1減ったんだから,答えは同じだよ」

「たし算でも同じことがあったよね。だから,これも同じだよ」

「でもさあ,それはたし算でしょ。これはかけ算だから違うんじゃない?」

「同じ」を巡って両者の声が生まれてきました。こうなると,子どもたちは早く計算をして確かめたくなります。

計算の結果は,「728」となりました。答えは「729」よりも1小さくなったのです。想定外の結果になった子どもたちもいました。

さて,この結果を見た子どもたちは,次の問題場面を創り始めます。

「だったら,式の数をまた1増やして1減らしたら,答えはまた1減るね」

「だから,29×25なら727になるんじゃないなか?」

多くの子どもは,この予想に自信満々です。そこで,実際に計算で確かめます。

すると,答えは「725」となり,またまた子どもの予想を裏切る結果となりました。ところが,子どもはこの結果をもとに,新しい予想をしていきます。

「わかった!答えの減り方は,ー1,ー3,ー5となるんだ」

「減る数の差は,2ずつになるんだ」

「だから,ー7,-9と続いていく」

答えの数の減り方に新しいきまりを発見したのです。そこで,このきまりが本当なのかを確かめていきます。

「30×24=720」

「やっぱり,5減った」

「31×23=713」

「おー,7減った」

子どもたちのきまりの予想は正しかったようです。

授業当初に感がていたプラントは異なる展開となりましたが,子どもたちはきまりを発見しながら楽しく計算に取り組むことができた1時間でした。








2022年2月18日金曜日

明日はGAKUTOセミナー!

 明日2月19日(土)はGAKUTOセミナーです。すでに満席の企画です。

当初は対面とオンラインのハイブリッド型の予定でしたが,新型コロナ感染拡大中の状況を踏まえ,オンラインで全てを行うこととなりました。対面枠を確保するために時計とにらめっこして申し込まれた先生方,申し訳ありませんでした。次回の対面開催をお待ちください。

さて,オンライン開催ではありますが,盛り上げていきますからね! オンラインでも,いかに対面のような臨場感を醸し出せるのか,なんとか工夫をしていきます。楽しみにされてください。明日,お会いできることを楽しみにしています。


2022年2月12日土曜日

筆算を使わずに計算する

 3年生「2けたをかけるかけ算」の学習場面です。これまでに筆算を使わずに計算する方法を考えて取り組んできました。かけられる数を位毎に分解する「片方サクランボ」方式と,かけられる数・かける数の両方を位毎に分解する「両方サクランボ」方式の2つの方法が子どもから生まれてきました。

子どもたちに,次のように投げかけます。

「両方サクランボ・片方サクランボは,どんな計算でもできるのかな」

先ずは,42×35を両方の方法で計算してみます。計算を終えが子どもからは,次のような声が聞こえてきました。

「両方サクランボは,(サクランボで分けた数字を結ぶ)線が多くなってごちゃごちゃする」

「かけ算を4回もするから,難しい」

「十の位の計算と一の位の計算が混じっていてごちゃごちゃする」

「数字が多くて,計算ミスをしそう」

「でも,両方サクランボは正確にできるんじゃないかな」

「片方サクランボは,(数字を結ぶ)線の数が少ないから分かりやすい」

「かけ算が2個しかないから分かりやすい」

「でもさあ,42という中途半端な数をかけるからやりにくい」

子どもからは,2つの計算方法についての長所と短所を指摘する声があがってきました。全体としては,片方サクランボが分かりやすいという声が多数を占めました。

そこで,「他の式で,片方サクランボと両方サクランボを実験しよう」と投げかけます。すると,この声に対して「だったら,使い分けたらいい」と声があがってきました。「使い分ける」の意味をクラス全体で読解していきます。

「速く計算したいなら片方サクランボ」

「でも,数字が中途半端だと計算を間違えるかもしれない」

「だったら正確にやりたいなら,両方サクランボがいい」

「両方サクランボは間違えないもんね」

「でもさあ,線がごちゃごちゃする」

「だったら,線を色分けしたらいいよ」

「計算は間違えたら意味がないから,両方でやればいいんじゃないの」

使い分けのアイディアに対しても,両面の声が聞こえてきました。

ここで,97×86の式を提示します。数字を見た子どもから「100に近い数だ」「大変そう」との声があがります。子どもたちは,今度の計算は難しそうだと直感したようです。

その後,計算に取り組みます。正確に計算ができると考えていた両方サクランボですが,実際に計算をすると計算間違いをする子どもが続出しました。一方,片方サクランボは速く,しかも間違えずに計算できる子どもが多くなりました。

計算後の子どもたちに,取り組んだ気持ちを聞いてみます。

「片方は速くて正確にできた」

「両方は時間もかかるし,間違えてしまう」

「百の位の計算になったらどうなるのかなあ?」

「そうなると両方とも難しくなりそう」

子どもたちから,考える数値の範囲を百の位に拡張する声が生まれてきました。子どもが対象範囲を自ら拡張するよき姿が生まれてきました。



2022年2月7日月曜日

たこ焼きは何個?

「たこ焼きは全部で何個ありますか」と尋ね,右の画像を提示します。


子どもたちは,一生懸命に縦と横のたこ焼きの数を調べていきます。

23個,横12個のたこ焼きが並んでいることが分かります。では,ここから先はどのようにしてたこ焼きの数を求めるのでしょうか。

「かけ算で計算する」と声があがります。しかし,これまでに子どもたちが学習しているのは,かける数が一の位のかけ算のみです。


そこで聞こえてきたのが,「サクランボにしたらいい」という声です。位毎に数字を分ける計算方法です。1年生のたしざんの学習から取り組んでいるアイディアです。これなら計算できそうだと子どもは考えたのです。



最初に子どもから生まれたサクランボ計算は,2312も分解する方法です。左のように位毎に分解し,20×10+3×2=206となります。「両方サクランボ」と子どもたちが名付けた分かりやすい方法です。


 一方,「片方サクランボでも計算できる」という声も聞こえてきました。かけられる数が二位数のかけ算は既習です。従って,その数は分解しなくても計算は出来ます。かける数の12だけ分解すると,23×2+23×100276となります。

 先ほどの両方サクランボとは,答えが異なります。一体これは,どういうことでしょうか。子どもたちの頭の中も混乱してきます。


 やがて子どもから,「両方サクランボは,全部の位をかけないとダメなんじゃないのかな」と声があがります。先ほどの計算では,まだ計算していない場所があるという声です。全部の位の数をかけると,3×2+20×2+3×1010×10276となります。全部の位の数字をかけることで,片方サクランボと同じ答えになることが見えてきました。


 この後,37×1715×42を「片方サクランボ」「両方サクランボ」で計算していきます。「片方サクランボは計算が早くできる」「式が短くていい」と声があがります。両方サクランボに対しては,「時間がかかるけど正確」と声があがります。


未習の計算を,既習の計算方法を活用することで乗り越えることができた1時間でした。



2022年2月6日日曜日

個別最適化で本当に大丈夫?

次の学習指導要領のキーワードは個別最適化になりそうです。この話題は,昨日の新潟大学教育学部附属新潟小学校の志田先生の公開授業の協議会後の自由ディスカッションでも話題になりました。

志田先生の授業に対して,「教師が出過ぎている」「もっと子どもに個別に考えさせるべき」などの声が事前アンケートで生まれてきたそうです。個別最適化を意識した声です。

志田先生の授業では,子どもが困っている場面で,その声を授業の舞台に載せ,クラス全体の問いとして位置付けました。この部分を個別最適化したらどうなるでしょうか。子どもの困りはそのままになります。そこに,教師が個別に指導を進めれば,困ったことは解決するかもしれません。しかし,志田先生の授業では困った子どもの人数はクラスの半分以上でした。これを個別最適化の名のもとに展開していたら大変なことになります。

授業では,クラス全体で考えたり話し合ったりする時間帯は必ず必要です。現在の学習指導要領でも重視している見方・考え方は,クラス全体での学び合いの中から引き出され,そのよさが実感されるのです。個別最適化で,見方・考え方を引き出していくことはかなり難しいのではないでしょうか。

個別最適化の発想はどこからきているのでしょうか。もとは企業の発想です。子会社を個別に競わせる個別最適化で,グループ企業全体の業績が向上すると考えられ取り組まれてきました。しかし,実際に運用していくと,マイナス面が多く見れることが明らかとなってきました。無駄な部分や同じことを子会社同士が取り組んでいることにより,結果としてグループ全体の業績が向上しないことが見えてきたのです。ある1兆円企業では,現在は全体最適に舵を切っています。企業としての運営方針を子会社全体で共有した上で,適切に仕事を進めていく全体最適に舵を切っています。その結果,業績が再向上しているのです。

学校教育にこの企業論理が周回遅れで取り入れられようとしています。すでに,企業では個別最適化のマイナス面が明らかとなっているのにです。文部科学省と経済産業省の力関係を考えると,そうなってしまうのでしょうか・・・。

知識・技能の習熟では,個別最適化は有効です。しかし,思考力・判断力・表現力を培うためには,全体最適での学びが必要なのです。

教師は,キーワードに簡単に躍らされないことが大切ですね。

2022年2月3日木曜日

朝ドラ「カムカムエブリバディ」と全国学力状況調査

 NHK朝ドラで「カムカムエブリバディ」が,放送されています。その中で,小学生のひなたちゃんが夏休みの宿題をすっぽかして遊び過ぎるストーリーなどが放送されています。

ドラマの中で,ひなたちゃんの部屋や,ひなたちゃんの通う小学校の教室の光景が何度が映し出されました。その中に,黄色いリュックサックのような物が壁に掛けられていたり,ひなたちゃんたち小学生がそれを背負っている光景が出てきます。あの黄色いリュックサック,なんだか分かりますか?

あれはランドセルです。京都で開発されたランドセルと同じ機能を持ちつつも,軽くて安価な「ランリック」と呼ばれる通学カバンです。朝ドラで,この部分も忠実に再現されていることに驚きました。このランリックは,現在も京都の一部の市で使われています。私もランリックを背負って通学する子どもたちを見かけます。ランドセル重たい問題がしばらく前に話題になりましたが,ランリックなら軽くて楽ちんそうです。

さて,私はかつて全国学力状況調査問題作成委員をしていました。そこで作成された問題の中に,ランドセルを扱った問題が候補になりました。しかし,前述の京都の子どもにとってはランドセルは身近なものではありません。テレビなどで見たことはあっても,自分が使った経験はないのです。その意味で,ランドセルを日本の子ども全員が使っていると考えて問題を作成することは危険なのです。従って,このランドセル問題は採用にはなりませんでした。使った経験知がないのですから,問題そのものに答えることはできないからです。公平性が担保できません。

それぞれの地域で当たり前だと思っていることが,実はローカルであることはよくあることです。別の会議では,「8時10分に学校が始まります」の問題に「そんなに学校は早く始まりません。8時半以降が大半です」と声があがったことがあります。学校の始業時刻も地域で違います。本校は8時10分開始です。以前,勤務していた新潟県も8時5分〜8時15分の間でした。

自分が当たり前だと思っていた常識を,一度疑ってみることも,授業作りにも必要ですね。

角の大きさと時計

 3年生「三角形」学習も大詰めです。子どもたちに,次のように投げかけます。

「角の大きさが大きいのは,どちらでしょう」




大型テレビに,2つの角(青と赤)を順次提示します。先ずは,直感でどちらの角が大きく見えたのか判断させます。「青」「赤」「同じ」に子どもの判断は分裂します。それと同時に,「もう1回見せてほしい」と声があがります。
そこで,角の画像を再度提示します。画像が提示された瞬間,手を使って見えている角の大きさに合わせている子どもの姿が見られました。そこで,この姿を再現させ,このようなジェスチャーを行った気持ちを読解させます。
「角を手で表している」

「青は直角で,赤は直角より小さかったから,青が大きい」

「青は直角より少し小さくて,赤は青よりももっと小さい」

「それって,時計の針みたいだね。直角だったら3時に見えるよ」

手を使ったジェスチャー表現の気持ちを読解する活動を通して,角の大きさがアナログ時計の長針と短針に見えるという子どもらしい視点が生まれてきました。そこで,この視点でそれまでに発表されたジェスチャー表現を時刻に置き換えていきます。

「赤の直角が3時なら,青は3時10分くらい」

「赤が3時5分なら,青は3時13分くらい」

「時刻の分が少ない方が,角が大きいということだね」

角度の学習は4年生です。しかし,子どもたちは角の大きさを時計を使って数値化したくなったのです。すばらしい発想力です。

時刻が少ない方が角の大きさは大きいのでしょうか。分度器はまだ使えません。最後は,2つの角を重ねることで,両者の大きさを比較しました。結果は,子どもたちの予想通りに青の角が大きいことが確かめられました。角の大きさを時刻に置き換える見方の正しさが証明されました。

では,この方法は他の角の大きさ比べでも使えるのでしょうか。多くの子どもたちは,使えると考えました。そこで,黄色と緑の2つの角を提示します。同じように時刻に置き換えます。

「黄色は9時55分,緑は9時53分。時刻が少ないのは緑だから,緑が大きい」

先ほどの決まりを使えば,このように考えられます。果たして,子どもたちの予想は正しいのでしょうか。2つの角を重ねて確かめます。すると・・・

「あれ,黄色が大きい」

「なんで?」

「分かった!30分を境にして,それより前なら(時刻の)数字が小さい方が角が大きくて,30分より後ろなら,数字が大きい方が角も大きいんだ」

「12の数字との差で見たらいいんだ」

「長い針が12時に近い方が大きいんだ」

子どもたちは,角の大きさを時刻に置き換えて考える見方を,時計の30分を境にして場合分けして考えていくことができました。この視点も鋭い物があります。