2016年10月24日月曜日

教科書教材から問いを引き出す

算数教科書を使って授業を進める先生は多くいます。先日,5年生の「分数と小数・整数」単元で,教科書にある問題(学校図書)をそのまま子どもたちに投げかけました。次の問題です。

「2Lの牛乳を人で等しく分けるとき,1人分は何Lになるでしょうか」

教科書では,この後,の中に順に1〜5の数字を入れて計算する展開になっています。

私のクラスの子どもたちから,先の問題に出会った瞬間,「あれ,等しく分けられない人数があるよ」と呟きがあがりました。そこで,この声をそのまま子どもたちに投げ返しました。

「等しく分けられない人数があるってどういうこと?」

子どもたちは,次のような反応をしてきました。

「偶数だと分けられるけど,奇数の人数だと分けられないんじゃないかな」
「そうかな? 5人は奇数だけど分けられるよ」
「3人は分けられないよ」
「そうだよ。計算すると0.666・・・で永遠に6が続くよ」

 そこで,この声を再び,そのまま子どもたちに投げ返します。

「3人だと2Lの牛乳は等分できないんだね」

「分けられるよ」「分けられるはずだけど,分けられないよ」と,子どもの反応にズレが生まれてきます。イメージとして2Lを3等分できることは分かります。しかし,計算すると,微妙なあまりが出てしまいうまく分けられなことに,子どもたちは違和感をもったのです。それが,先の声になります。

授業ではその後,図を使い分数を用いることで2Lを3等分できることを見つけていきます。

教科書の問題を使っても,子どもの声に耳を傾けると価値ある呟きの声が聞こえてきます。その呟きを授業の舞台に載せることで,教科書のその後の展開を超える授業を進めることができるのです。価値ある子どもの呟きや声をキャッチできる力が,算数を愉しくしていきます! 

2016年10月17日月曜日

平成29年2月 関西大学初等部研究発表会のお知らせ

毎年恒例の関西大学初等部研究発表会を,今年度も実施します。日程は,次の通りです。

平成29年2月6日(土) 午前8時20分受付開始予定

現在,1次案内を当校ホームページにアップしています。正式な申し込みは,2次案内がホームページにアップされる11月中旬以降になります。

私は,算数(5年生)の授業を公開します。5年生ですが,6年生内容につながる分数の学習場面を提案します。子どもたちが,アクティブに問題場面に働きかけ新しい方法を発見する授業を提案する予定です。詳細は,2次案内をご覧ください。

なお,お申し込みいただいた人数が規定数を超えた場合,安全確保のために参加申し込みを〆切らせていただくことがあります。お早めのお申し込みをお願いいたします。


詳細は,以下の当校ホームページをご覧ください。

http://www.kansai-u.ac.jp/elementary/2016/10/post-419.html

2016年10月16日日曜日

佐渡の学校を訪問しました

先日,新潟県佐渡市の小学校を訪問しました。佐渡は私の故郷です。

2つの小学校を訪問しました。どちらの学校の子どもたちも,とても素直でびっくりしてしまいました。低学年はもちろん,高学年の子どもたちも真剣に先生の話を聞いていました。それまでの先生方の指導の素晴らしさが実感できた時間でした。

また,授業をされた先生方の研修に掛ける意気込みも大変に高いものがありました。「授業診断」研修を両校とも行いました。全クラスの授業を参観し,先生の授業方法を評価する研修です。とてもシビアな研修です。全員の授業に対して,私が評価を行うからです。きっと先生方もひやひやして,この日を迎えられたのだと思います。しかし,研修会での先生方の学びの姿勢は本当に真剣でした。プラスの話だけではなく,厳しい内容の話にも真剣に向き合っていただけました。これなら,佐渡の子どもたちも大丈夫です。

これからも故郷・佐渡の子どもたちのために,私にできることを進めていたいと考えています!

2016年10月6日木曜日

高知の逞しい子どもたち 最高でした!

先日,高知の小学校に訪問しました。全校児童600名を超える学校です。午前中は,全クラスの算数授業を参観しました。どのクラスからも,素直で元気な子どもたちの素敵な声が聞こえてきました。このような声が生まれる背景にあるのは,4月から算数授業を指導している先生方の力量の高さにあります。教師の指導力で,子どもたちはぐんぐん成長していきます。

午後は5年生の子どもたちに,「偶数・奇数」の授業を行いました。「1~5の数字カードを全部使って,カードの間に+・-を入れて計算をしよう」と投げかけました。まずは,答えが最大になる数を尋ねます。これは「1+2+3+4+5」で15となります。次に,最小の答えを計算をせずに予想をさせました。「0」「1」「4」と予想にズレが生まれます。ズレを感じた子どもは,一気にアクティブになります。ここから先は,子どもたちに自由に実験を任せました。
「13ができた」「7ができた」と,実験開始後,声があがります。さらにしばらくすると,「4はできないなあ」「4は無理なの」と呟きがあがります。答えが見つけられた式を,子どもたちに板書させます。板書が終わると,子どもたちが次々と手をあげてきます。「きまりがある」と声があがります。「奇数の答えはあるけど,偶数の答えはないよ」「偶数の答えは出ないね」と,この問題の秘密を発見した声が生まれてきます。以前に学習した「偶数・奇数」の言葉を使って,見つけたきまりを分かりやすくまとめることができました。
実験開始前の子どもたちは,15までの答えを見つけられると考えていました。ところが実際に実験をすると,奇数の答えしか生まれないのです。予想とのズレに出会うことが,子どもたちにきまりを発見させていったと考えられます。素敵な子どもたちと,楽しい算数授業ができた1時間でした。

こんな素敵な出会いのあった高知で,12月24日(土)に全国算数授業研究会高知大会が開催されます。私も公開授業を行います。是非,ご参加ください。
詳細は,次のアドレスまで。 http://shisanken-kochi.jimdo.com  から「全国算数研究大会」をクリックして申し込みください。

2016年10月2日日曜日

『アクティブラーニングでつくる算数の授業』好評により再版決定! & 授業診断in高知・佐渡

2020年の学習指導要領改訂に向けて,「アクティブラーニング」のキーワードが教育界を席巻しています。子どもが主体的に算数の学習問題を創り出す力を育てていく授業を構成していくことが,本当の意味での「アクティブラーニング」授業です。形式的にグループ学習を進めても,子どもが新しい問題場面を創り出すことはできません。
どのように日々の授業を改善していったらアクティブな子どもが育つのかをまとめたのが,春に東洋館出版社から発刊した『アクティブラーニングでつくる算数の授業』です。好評により,再版が決定しました。ご購入いただいた皆様,ありがとうございます。

10月は,高知市,そして私の故郷・新潟県佐渡市の小学校を訪問し,全学級の算数授業を参観し,授業診断を行います。企業で行われている経営コンサルタントによる業務改善の手法を,学校現場に取り入れた企画です。アクティブな子どもを育てるためには,どのように授業を改善していけばよいのかを,訪問先の先生方とご一緒に考えていきます。

2016年9月25日日曜日

ループ理論で分数のたし算を構成する

5年生に「分数のたし算・ひき算」単元があります。教科書では,通分・約分の学習を終えてから,異分母分数のたし算の学習へと進みます。系統性を意識した展開です。しかし,この展開では分数のたし算場面で子どもが問いを感じることはありません。通分・約分は,異分母分数のたし算で子どもが困らなようにするために位置づいているからです。
アクティブな子どもを育てるためには,子どもが学習内容に必要感・問いを持つことが大切です。そこで,通分・約分と分数のたし算を同時進行で進める展開を行いました。
子どもたちに,「ブロックつかみどり大会をしよう」と投げかけます。1回戦は,1/6の大きさのブロックだけがつかみとられました。この場合は,同分母なので既習の計算で合計得点が求められます。2回戦は,1/6と1/3の大きさのブロックがつかみとられました。「分母が違うから計算できない」「さっきは基準(分母)が同じだから計算できたけど,これでは基準が違う」「基準が同じならいいのに」と,子どもたちは異分母のブロックに出会って感じたことを表現してきます。問いが生まれました。
その後,子どもたちはブロックを使って1/3が2/6と同じ大きさであることを見つけていきます。つまり,1/3を2/6に変身することで同分母同士のたし算へと変換できます。通分を学習していない子どもたちは,ここでブロックという具体物で分数を変換する方法を見つけていきます。
ブロック操作で分数を変換することを見つけた子どもたちに,「そうか,ブロックを使えば同じ分母の分数に変身することができるんだ」と念押し発問を行います。これに対して,「ブロックを使わなくても,計算でわかるよ」「だって,1/2と2/6は1/3をもとにすると,分母も分子も2倍ずつすれば2/6に変身できるよ」と,計算で同分母の分数を見つける方法にも気付いていきます。
異分母分数のたし算との出会いで感じた問いから,子どもたちは通分の必要感に気付き,その方法も見つけることができたのです。
時には,単元構成の配列を見つめ直すことで,子どもがよりよく問いを感じるアクティブな展開を進めることができますね。このように単元構成を入れ替える授業構成方法を,元聖徳大学教授・手島勝朗氏はループ理論と命名しました。

2016年9月18日日曜日

当事者意識から問いを引き出す

子どもたちに「ブロックとばしゲームのチャンピオンを決めよう」と投げかけました。4人1組でゲームを行います。ゲーム用紙の上でブロックを指ではじいて得点を競うゲームです。ゲーム用紙には,様々な大きさの円が描かれています。ブロックがそこに入れば5点獲得です。スタートラインに近い位置の円は小さく,遠い位置の円は大きくしてあります。簡単なルールのゲームです。

子どもたちは大喜びでゲームに興じました。ゲーム終了後,班のチャンピオンを発表してもらいます。「A君 10点」「B君 15点」「C君 10点」などと発表が続きます。D君の発表の時です。一瞬静まり返った教室が,あっという間に喧騒に包まれました。「D君 20点」この結果を聞いた一部の子どもたちが騒ぎ始めます。「なんで?」「それはありえない」「おかしい」「3回しかしていないのに,絶対にそれはない」・・・。実は,班によってゲームの回数が異なるように仕掛けをしておいたのです。D君の班は5回ゲームを行いました。一方,3回・4回の班もありました。彼らは,猛烈に抗議をしてきます。

「おかしい」と叫ぶ理由をクラス全体で共有します。「だって,班によってゲームの回数が違ったら不公平だよ」と説明します。もっともな理由です。そこで,どうやったら正しくチャンピオンを決められるのかを考えさせました。

「4回目以降の結果を使わない」という考えが生まれました。ところが,6回のゲーム回数だった班もあります。その班のT子は,4~6回目に得点をしていました。4回目以降を使わないと,「T子がかわいそう」という声があがります。

「公倍数を使えばいい」とう考えも生まれます。前単元で学習した内容を活用した考えです。ところが,この考えに対して「めんどうだよ」「今はいいけど,別の回数だったら大変」と声があがります。今回は,3回・4回・5回・6回のゲーム回数です。4種類の数値の公倍数を求めることは容易ではありません。さらに,「11回,19回,23回,29回とかの素数回数になったら大変すぎる」という声もあがります。見えてきた解決方法を一般化しようとする視点が,この時点で生まれてきたのです。子どもたちの鋭い視点にびっくりしました。

「倍数がだめなら減らしたらどうかな」「だったら1回あたりにしたらどうかな」「D君なら4回ゲームして20点だから20÷4=5点でしょ。1回当たり5点だね」「それなら簡単だね」と,今度は1回当たりのゲーム回数で考えるアイディアが生まれてきました。公倍数は,全体のゲーム回数を増すと仮定して考えました。ところがその方法に限界を感じた子どもたちは,逆思考で減らすことを考えたのです。この逆転の発想にもびっくりでした。

この授業は,5年生「平均」の導入です。子どもたち1人1人が取り上げられる数値(データ)の当事者であったからこそ,「不公平感」や「かわいそう」「めんどう」などと感じることができたのです。