2018年11月29日木曜日

3年「小数」の導入はゲームで

3年生で初めて小数に子どもたちは出会います。その出会いの場面を,ゲームで構成してみました。

子どもたちに1人25個のブロックを配ります。2人1組で「10個で点ブロックゲットゲームをしよう」と投げかけます。

ルールは簡単です。隣同士でジャンケンをします。勝ったら相手からブロックがもらえます。パーなら3個,チョキなら2個,グーなら1個もらえます。どちらかのブロックがなくなったら,そこでゲーム終了です。

子どもたちがゲームを始めます。3分ほどすると,ブロックがなくなってしまう子どももいました。この時点で,全体のゲームも終わりにします。

子どもたちに獲得したブロックの個数を尋ねます。50個,32個,41個などの獲得数が発表されます。このゲームは,ブロックの獲得数がそのまま自分の得点になるのではありません。「10個で点」なのです。子どもたちに,次のように投げかけます。
「ブロック10個で1点だよ」

ブロック50個の子どもは5点,0個の子どもは0点となります。これは子どもたちもすぐに分かりました。一方,31個や42個などの中途半端な個数を何点と表現するのか,子どもの考えにズレが生まれました。
「31個だったら十の位で3点でしょ。一の位は1より小さいからないことにすればいい」
「小さすぎるからなしでもいいよね」
「まって,小さくても得点はあるよ」
「だって,11個と19個だったら11個は1点に近くて19個は2点に近いでしょ。一の位をなしにするのはかわいそう」
「1〜9個の人にも,少しは点をあげないとかわいそうだよ」

ブロックの獲得数の一の位の処理をどのように扱うかで,子どもの考えにズレが生まれました。最後は,「かわいそう」という視点から一の位の数値も得点にしようと子どもたちは考えていきました。

では,一の位のブロック数をどのように得点に表現すればよいのでしょうか。子どもたちは次のように考えていきました。
「だったら分数にしたらいいよ」
「ピザだったら,円を10個に分けた内の1個分なら1/10点と言えばいいよ」
「2個分なら,10個の内の2個分なら2/10点だ」
「32個なら3点と2/10点だね」

2年生で学習した分数を使って,1よりも小さい得点を子どもたちは表してきました。図も子どもたちが自然に使って説明を始めました。

ここで,小数を教えます。1/10点と0.1点は同じ大きさの数であることを教えます。子どもたちは,先ほどまでの話し合いでピザの図を使って1より小さい大きさを表現してきました。10等分をもとにして話し合ってきたので,1/10と0.1が同じ大きさであることは簡単に理解できました。

小数の学習は10等分の大きさを使って考える必然性を子どもから引き出すことが一つのポイントです。十進位取り意識を活用したくなるブロックゲームは,この見方を引き出すには絶好の教材です。

2018年11月27日火曜日

教科書活用セミナー豊中大会のご案内

教科書活用セミナー・大阪豊中大会のご案内です。詳細は以下をご覧下さい。今回も,教科書を使った愉しい授業作りのあり方を学んでいきましょう。


算数教科書活用セミナー・第3回(豊中大会) 

【テーマ】教科書を活用した「授業のめあて」のつくり方 

◆算数授業で子供たちが問題解決をするとき、「問いを持たせる」ことが大切です。「なぜだろう」「モヤモヤを解決したい」。動き始めた子供たちの「問い」を、「授業のめあて」として位置付けるのです。◆しかし授業の冒頭で、教師が一方的に与えた「めあて」は、子供の「問い」ではありません。思考は、まったく主体的ではないのです。こういった授業を繰り返しても算数学力はつきません。◆子供たちの思考が動き始めるような「問い」はどうすれば生まれるのでしょうか。教科書の使い方のコツを知ることで子供の「問い」を生むことができます。◆今大会でも、2本の模擬授業を通した提案です。先生方と議論をして明らかにしていきましょう。講演は、本研究会代表の尾崎正彦です。 

【プログラム】 
◆12:30 受付開始 

◆13:00~13:45 
講座『教科書を活用した「授業のめあて」のつくり方』尾﨑 正彦 (45分) 

◆14:00~15:30 
教科書を活用した算数模擬授業(30分×2本) 
 ①「円と正多角形」(5年) 授業者:小谷祐二郎 
 ②「分数」(2年) 授業者:木下幸夫 
 ※小グループで学びのシェア。 
 ※尾﨑正彦のコメント。 

◆15:45~16:30 
『3学期単元攻略法』~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 

◆16:30~17:00 
算数授業づくりQ&A 

【会場】豊中市立労働会館(集会室・3階) 
【参加費】2000円 

※ 本セミナーは学校現場の教員対象です。教員以外の方は参加できません。

申し込みは以下のアドレスからお願いします。
https://kokucheese.com/event/index/535519/

2018年11月22日木曜日

グラフの「その他」を子どもから引き出す

3年生に「表とグラフ」単元があります。グラフにするとき、少ないデータは「その他」としてまとめます。この必要性、子どもに実感させるにはどうしたらいいでしょうか?
好きな食べ物調べを事前に行いました。その結果を発表します。子どもはまだどんな食べ物が発表されるか知りません。そこで、ゆっくりと結果を発表します。

「御寿司」「ラーメン」など,子どもたちは自分の好きなメニューが発表されるたびに,喜びの声をあげてきます。

全部の発表が終わった後,アンケート状況を尋ねます。

1位 お寿司  7人
2位 肉    3人
   ラーメン 3人
3位 スパゲティ― 2人
   ピザ     2人
   ハンバーグ  2人

ここまで発表すると,子どもから「残りは全部1人だよ」「1人が12個あるよ」と声があがります。さらに,N男が次の声をあげます。
「横が15マスしかないから入らない」
N男の声の意味を共有します。
「ノートのマスは15マスしかないでしょ。これじゃあ,全部が入らない」
「全部書いたら,横には18マスいるでしょ。3ます分足りなくて書けない」

これまで子どもたちは,棒グラフをノートに描いてきました。ノートは横に15ますしかないのです。これまで通りに1ます(行)に1つの項目を記入すると,今回のアンケート結果は溢れてしまいます。N男は,ノートのマスの数とアンケートの項目数を比較したのです。すばらしい視点です。

すると今度は,次の解決策が生まれてきます。
「だったら,1人を全部まとめちゃえばいいよ」
「その他でまとめればいいよ。その他で12人」
「それなら横は7ますで足りるよね」

マスがたりないという状況に出会ったことが,その他を使う必要感を引き出したのです。そこで,1~3位とその他を使って棒グラフを作成することにしました。

縦軸を完成した後,横軸を書きます。それまでに子どもたちは,横軸はデータを多い順に書くことを学んでいます。子どもは,横軸に何を書くでしょうか。ここは2つにわかれました。
「お寿司」と「その他」です。データの数では「その他」が圧倒的多数です。すると,次の声があがります。
「その他はおかしいよ。だって,その他は1人が集まっただけでしょ。お寿司はお寿司だけで7人だよ」
「1人を集めてその他だから,本当は1人だけのグラフだから左には書かないよ」

「その他」の必要性と位置を子どもの問いをもとに構成した1時間でした。

2018年11月20日火曜日

4年小数のわり算を子どもが拡張する

4年生「小数÷整数」の導入場面です。子どもたちに次の問題場面を提示しました。

mのうまうま棒があります。4人で等しく分けます。1人分は何mでしょう」

実は,この問題状況と似た場面を小数のかけ算でも学習しています。従って,子どもたちは「が整数なら簡単。でも,小数になったら計算ができない」と声をあげてきました。小数のかけ算の学習がうまくつながっていることが実感できました。

そこで,が2.4mだったら1人分は何mになるのかを考えました。子どもたちは,小数×整数のかけ算で,小数を整数値に置き換えることで計算ができることを学習しています。そのため,この場面でも同様の考え方が生まれてきます。

「小数のかけ算と同じにすれば計算ができるよ」
「2.4÷4では計算ができないでしょ。でも,2.4を10倍して24にすれば24÷4になって計算ができる。これなら答えは6」
「でも,最初に2.4を10倍しているから,最後に答えを10でわらないとだめだから,答えは6÷10で0.6」
「確かめ算をすると,0.6×4=2.4だから答えは合ってるね」

小数のわり算の筆算形式も,同様の考え方で子どもたちは説明していくことができました。2.4を10倍して24÷4と考えて筆算を行います。このまま筆算を行うと答えは6です。しかし,先ほど10倍しているので,答えをここで10でわります。わり算の筆算も,かけ算の筆算と同じように子どもたちは考えました。

ここまでは,小数のかけ算での学びをわり算にも当てはめて子どもたちは考えていきました。ところが,子どもたちに学びの意欲はここではとどまりませんでした。
「あまりが出てきたらどうなるの?」
「あまりだって,同じようにすればいいよ」
「小数÷小数になったらどうなるの。これも同じようにできるのかな?」

子どもたちが場面を広げて,これまでと同じ考え方でできるのかどうかを考え始めました。深い学びの世界へと入っていきました。

先ずは,あまりのある計算に挑戦します。

4.9÷5

これも,先ほどまでと同じように考えます。4.9を10倍して49÷5と計算します。答えは,9あまり4となります。子どもたちは,ここから次のように考えます。
「だから,答えも10でわって,あまりも10でわればいいよ。0.9あまり0.4」
「たしかめ算でも大丈夫だよ」

小数÷整数であまりのある場合のあまりの大きさについて,子どもたちは確かめ算を通して計算方法を見つけていきました。すると,今度は次の声があがります。

「小数÷小数であまりが出たらどうなるの?」
「それだって,さっきと同じで方法でいいよ。同じ数でわればいいよ」
「整数だって同じだったよね」
「60÷40だって,そうだよ」

ここで整数の計算方法を想起する声が生まれてきました。そこで,子どもから生まれてきた60÷40を例に整数の場合のあまりを考えます。

「60÷40を両方10でわります。式は6÷4で答えは1あまり2」
「だから,答えは10倍します。10あまり20です」
「あれ,おかしい。確かめ算をすると違う」
「答えは1だ。あまりだけ20だ」
「なんでだ?」

小数÷小数のあまりを考えるつもりが,整数÷整数で子どもたちは壁にぶつかってしまいました。するとここで,次の声があがります。

「9月14日,似た勉強をしています。わる数とわられる数に同じ数をかけてもわっても答えは変わらないという勉強をしました。だから,答えは変わらないんです」

約2ヶ月前のわり算のきまりの学習を想起してきたのです。すばらしい学びの姿です。このきまりは学習済みですが,子どもの学びはなかなかつながらないものです。このような姿が生まれた時に,点と点をつないだ姿を価値づけていきます。

さて,この説明に対して今度は次の声があがります。
「整数のわり算でのルールが,小数のわり算にもそのまま当てはまるとは限らないと思うんだけど」

この指摘で,子どもの考えが揺らぎます。
翌日,小数÷小数の計算を考えます。先ずは,3.6÷0.4の計算を考えました。この計算は,整数と同じように答えはそのままでいいことが分かりました。この問題は,整数のわり算のきまりが当てはまりました。

次に,あまりのある場合を考えます。3.7÷0.4を考えました。整数に直すと,37÷4=9あまり1です。3.7÷0.4に直すと,答えは9あまり0.1となります。前回の整数と同じように,商(答え)はそのままであまりだけ10でわることが見えてきました。整数と同じルールが当てはまることが見えてきました。

ところがここで,「なんであまりだけ10でわるの」と疑問の声があがります。子どもらしい自然な疑問です。これを乗り越えるために,確かめ算で説明する声が多数あがりました。最も子どもたちが納得したのは図を使う方法でした。それは,370÷40を37÷4に置き換える式と図を使った説明でした。

「37は10の固まりが37個でしょ。これを4個ずつ分けていきます。すると4個が9セットできます。残りは10の固まりが1個。この1個は本当は10だから,あまりだけを10倍する」

この見方・考え方も実は8月の学習で行っていました。この学びの履歴を見つける姿も生まれてきました。

小数÷小数の計算は5年生の内容です。しかし,子どもの発想は自然に学年の枠を超えて小数÷小数の世界へも拡がっていきました。その中で子どもたちは,過去の学びの履歴を次々と活用しながら問題を乗り越えていくことができました。




2018年11月19日月曜日

佐渡 算数科教育研修会開催のお知らせ

前回お知らせしました佐渡での研修会の詳細が決まりました。

日時  12月22日(土)14時~16時30分
会場  佐渡市金井コミュニティーセンター (佐渡市金井千種240)
       佐渡両津港から30分ほどです
演題 「主体的・対話的で深い学び」を実現するための授業創り
会費  500円(なんとワンコイン!)

2020年,学習指導要領が改訂されます。そこでの最大のねらいは「主体的・対話的で深い学びの授業改善」を行うことです。では,そのためにはどのように授業を創っていけばよいのでしょうか。
今回は,教科書を使った授業改善方法の演習や,もう少しレベルアップした授業の創り方を演習形式で参加される先生方と学んでいきます。また,ノート指導や対話的な学びの進め方についても学んでいきます。

新採用の先生方からベテランの先生方まで,また算数専門でない先生方まで大歓迎です。佐渡島外の先生ももちろん大歓迎です!

参加された先生方には,スペシャルプレゼントがあるかも・・・。

冬休みのスタートを,愉しい算数を愉しみましょう!


●問い合わせ先●

  北川 禎(佐渡市立真野小学校)

 TEL 0259-55-2009(学校)


1 メールでの申込

(1)申込先  j255619h@myjuen.jp ※真野小北川宛のメールです。

(2)申込内容
  【件名】 12.22算数科教育研修会申込

  【本文】 次の①~④の内容を,本文に書いて送信してください。
   ①所属先(学校名)
   ②役職
   ③氏名
   ④研修会・懇親会の参加について


<メール送信例>

  件名:「12.22算数科教育研修会申込

  本文:① ○市立○○○学校
     校長,教頭,教諭等をお書きください。
      ○○
   ④ 研修会  参加    懇親会 参加(または欠席)

  ・準備の関係で,12月12日(水)までにお申し込みください。(締切を過ぎても参加は受け付けます。その場合は,電話にてお申し込みください。)
  ・研修会終了後,○○○店にて尾﨑正彦先生を囲んで懇親会(18:00~20:00 ※会費4,000円)を行います。尾﨑先生よりたくさんのお話を伺うことができるまたとない機会ですので,あわせてご参加ください。
・どなたでも参加できる研修会です。お近くの先生方にもこの研修会のことをお知らせしていただきお誘い合わせの上ご参加ください。
・当日,ジェットフォイルやカーフェリーが欠航した場合は,開始時間が変更になったり研修会が中止になったりする場合があります。ご了承ください。(不明な場合は,北川までお問い合わせください。)


2018年11月13日火曜日

教科書活用セミナーツアー決定!

毎回,100名を超える先生方にお集まりいただいている教科書活用セミナー。算数専門以外の先生方が圧倒的多数を占めています。毎回,教科書をどのように使って子どもを愉しませるのかを探る先生方のパワーに圧倒されています。

この公表をいただている教科書活用セミナーのツアー日程が決まりました。詳細は,決まり次第,お知らせします。

2019年
1月12日(土) 大阪府豊中市 労働会館3階
2月24日(日) 三重県津市
3月30日(土) 静岡県静岡市 常葉学園大学
4月21日(日) 京都府京都市

お近くの先生方,今から日程を空けておいてくださいね。教科書の使い方を勉強しましょう!



冬休み佐渡算数講座開催

冬休みを待ちわびている先生方に緊急速報です。佐渡で算数講座を開催することが決まりました。まだ,詳細は決まっていませんが日程は次の予定です。

日時 12月22日(土)午後の2〜3時間程度
会場 佐渡市内(詳細会場は未定)

佐渡島内の先生方,是非,愉しい算数の創り方を学びましょう。
佐渡島外の先生方,冬の佐渡は美味しいものがたくさんあります。特に冬のカニは絶品です。グルメツアーのついでに講座にお越し下さい。

詳細は決まり次第,お知らせします。

2018年11月12日月曜日

関西大学初等部研究会のお知らせ

2019年2月2日(土)の関西大学初等部研究会が開催されます。

今年度の研究テーマは,
「思考力育成を支える主体的学びを引き出す授業デザイン
 〜ズレを引き出す具体的手立てを探る〜」
です。主体的学びを引き出すことができれば,新学習指導要領がめざす主体的・対話的で深い学びは自然に具現できると考えています。

思考力を育てるためには,子どもが主体的に学びの場面に向かうことが前提条件です。解決したいと考える強烈な問いを子どもに持たせることができれば,その解決の過程で子どもは思考力を発揮するはずです。そこにはもう形式は必要ないのです。それまでに子どもが学んだ内容を総動員して,問いを乗り越えていくと考えています。

今年度は,強烈な問いを持たせるために授業のどこかで子どもがズレを感じるような授業デザインのあり方を探っています。子どもたちがズレを感じる場面,またズレから浮き彫りになった問いを乗り越える場面を公開します。

今年は,午前に3時間の公開授業を行います。私の授業は3時間目です。体育館で3年生に授業を公開します。
午後は,それぞれの授業の協議会と,私の授業のパネルディスカッションを行います。

研究会の最後は,田中博史先生(筑波大学附属小学校)からご講演いただきます。思考力を育てるための授業のあり方について,ご講演いただきます。

申し込みは11月14日(水)から始まります。申込者が1000名を超えた時点で申し込みを修了とさせていただきます。お早めにお申し込み下さい。

詳細・申し込みは以下のアドレスからお願いします。

http://www.kansai-u.ac.jp/elementary/2018/11/post-632.html#Contents

小数のかけ算の筆算形式を任せる

4年生の子どもたちに,次のように投げかけます。
「1mの重さがgのうまうま棒があります。このうまうま棒4mの重さは何gですか」

先ずは,の中がどんな数なら計算しやすいかを考えさせます。子どもからは,1,10,20,100などの数字が発表されました。これらの数字なら,これまでの子どもたちの学習内容の範囲です。

続いて,の中がどんな数なら計算しにくいのかを考えさせました。まず,生まれてきたのは桁数が億や兆の数です。しかし,これらの数字も計算は大変ですが,子どもたちの学習範囲で解決することはできます。
一方,解決できない数字も発表されました。1.5や0.3などの小数です。小数のかけ算は未習です。これらの数値は解決できません。そこで子どもたちに,「これは解けないね」と投げかけます。「できない」とあきらめ顔の子どももいましたが,「だったら」と声をあげる子どもも大勢いました。

「だったら整数にすればできるよ」
「1.5を10倍して15にすれば,15×4になって計算できる」
「答えが出たら,さっき10倍したから10でわって戻せばいいよ」
「これなら他の小数も計算ができるね」

小数を整数に置き換えることで計算ができることを,子どもたちは見つけていきました。さらに,この考え方を使えば他の小数でも計算できることも見つけていきました。

そんな子どもたちに,「この計算を筆算でしたら式をどう書きま
すか」と尋ねます。1行目の1.5まで板書し,その続きを考えさせました。小数のかけ算の筆算形式を子どもに任せたのです。
子どもからは右のような2つの筆算形式が生まれました。左を考えた子どもの考え方を予想させます。
「1.5の1と4は一の位だから,位を揃えた」
 これまでの筆算では,位を揃えて計算を行いました。それと同じ考え方を,この計算にも当てはめたのです。
 一方,この筆算形式に対する反論があがります。
「これだと,計算がややこしくなりそうだ」
「5の下が数字がないから,0とすればいいのかな」
「0を書くということは2段になるのかな。面倒だな」

位を揃える形式は理解できても,その後の計算を考えると面倒な形式だという声です。

5と4の位置を揃えるという考え方の気持ちを予想します。
「1.5では計算できないから10倍して15にした。だから,計算は15×4だから5の下に4を書く」
この説明は,整数に置き換えた後の数字として筆算することをイメージしています。

そこで,2つの筆算形式で実際に計算を行ってみることにしました。
右の筆算は,10倍して15×4を計算します。かけられる数を10倍しているので,答えを10でわります。これが小数点の移動になります。
左の筆算は,1.5×4を1.5×4.0と考えることで,計算の面倒さを乗り越えることができることが見えてきました。
「1.5×4.0と考えて,両方の数を10倍します。15×40と考えます。これで計算します。答えは600です。さっき,10倍と10倍したから合わせて100倍です。だから,600を100でわります。だから,答えは6です」

1.5×4を15×40に置き換えて考えることで,一気に計算のハードルは下がりました。この考え方を理解した子どもから,今度は次の声があがります。
「だったら,小数×小数もできる」
「1.5×0.4なら,両方を10倍して15×4で計算ができる。答えは600。最初に10倍,10倍しているから100でわればできる」

小数×整数の筆算形式を考えることを通して,子どもたちは小数×小数のかけ算も同じように考えることで計算できることを発見することができました。形式を一方的に与えていたら,このような発見はなかったでしょう。子どもに任せることで,新しい計算の世界を子どもたちが発見した1時間でした。









2018年11月10日土曜日

11月17日は和歌山で公開授業!

11月17日(土),和歌山大学附属小学校を会場に開催される「第7回ワカヤマス公開授業研究会」に授業者&講演者として登壇します。和歌山では,来年の12月に全国算数授業研究大会が開催されます。その前哨戦も兼ねた研究会です。和歌山は算数授業の改革に向けて燃えている先生が多々がたくさんいらっしゃいます。地元和歌山の先生方の授業もお楽しみください。

私の算数授業は4年生,講演は「主体的・対話的で深い学びのある算数授業」の創り方を演習形式で行います。

日程や会の趣旨は,以下をご覧ください。

学習指導要領が改訂され,そのキーワードとして登場した「主体的,対話的で深い学び」。私たちはこのキーワードを授業で具現化していく必要があります。しかし,これまでも,子どもが主体的になるような授業,対話を大切にした授業,そして深まりのある授業づくりに取り組んできたはずです。となると,これまでの授業づくりをそのまま続ければいいのでしょうか?

 今回のソリッソワカヤマスでは,「主体的,対話的で深い学びのある算数授業」をテーマとし,開催いたします。午前はメンバーによる授業とワークショップ,午後からは尾﨑正彦先生(関西大学初等部)をお迎えして,尾﨑先生に授業と講演をしていただきます。

 ともに,子どもが主体的に対話しながら学びを深めていく姿を創造しましょう。


今年のソリッソ×ワカヤマスには尾﨑正彦先生をお迎えします!
大会テーマ「主体的,対話的で深い学びのある算数授業」
9:00~9:30 受付
9:30~10:15 公開授業Ⅰ 4年 授業者 向井大嗣(田辺市立芳養小学校)
10:20~11:50 協議会
11:00~11:50 ワークショップ
11:50~13:20 昼休憩
13:30~14:15 公開授業Ⅱ 4年 授業者 尾﨑正彦先生(関西大学初等部)
14:30~15:30 講演「主体的,対話的で深い学びのある算数授業の作り方」

        講師 尾﨑正彦先生


申し込みは以下のアドレス(コクチーズ)からお願いします。和歌山でお会いしましょう!




2018年11月9日金曜日

数学的な見方・考え方を高める研修

京都府向日市第2向陽小学校で「学力向上システム開発校」の研究発表会が行われました。「数学的な見方・考え方を養う」ことを研究主題にした発表会でした。

4年生と5年生の公開授業7クラスが行われました。どのクラスからも,子どもたちの素敵な呟きが聞こえてきました。また,先生たちが子どもの呟きに耳を傾け,授業の舞台に載せていこうとする姿も見られました。参加された多くの先生方も驚かれるレベルの高さでした。


学校研修の難しいのは,学校全体で研修レベルが高まらないことです。一部の先生だけががんばるものの,その他の先生がなかなかついてこないということがよくあります。
しかし,第2向陽小学校は先生方の質が違います。どの先生方も,研修に対するモチベーションが高いのです。研修で学んだことをすぐに実践に移すスピードの速さに,質の高さの要因があるのです。すぐに学んだことを実践することで,子どもの変化がすぐに実感できます。すると,もっと子どもの質を高めたいと先生方に研修に対するやる気が生まれます。
これは,2020年学習指導要領がめざしている主体的・対話的で深い学びの授業改善の姿と同じです。主体的・対話的で深い学びは,子どもではなく教師にこそ必要な姿勢なのです。

第2向陽小の先生方は,研修を愉しんでいます。それは子どもの変化を実感できるから楽しめるのです。スピード感や研修内容を全ての先生方で共有するシステムもあります。これらの手だてで,教師が研修を愉しんでいます。そのことで,子どもも算数を愉しむようになるのではないでしょうか。

すぐにやる・できるまでやる・納得するまでやるという

2018年11月5日月曜日

3年「重さ」は微妙な図形でスタート

 3年生「重さ」の学習は,子どもたちが目に見ない重さを数値化することで見えるようにすることが目的です。しかし,g(グラム)の発想自体は子どもから生まれてはきません。しかし,重さを数値化ようとする発想であれば引き出すことができるのではないかと考え,次のような授業を行いました。

 右のような3種類のブロックを用意します。これらのブロックの重さの差はかなり微妙です。ほぼ7gずつの差です。これらを見せて,次のように投げかけます。

「一番重いブロックと一番軽いブロックはどれでしょう」

班に1セットのブロックを配布します。子どもたちは,班の子どもと協力しながら重さを調べます。先ずは,手に持って重さを感覚で調べます。しかし,これは班のメンバーで結果が異なり曖昧過ぎることに彼らは気づきます。すると子どもたちは,別の調べ方を模索します。

同じ高さからブロックを落とす実験をする班がありました。一番早く落ちたブロックが一番重いと考えたのです。ところが何回実験しても,3つのブロックはほぼ同時に落下します。

ブロックの大きさを頼りに,重さを比較できると考える班がありました。2つのブロックをくっつけて,はみ出した部分が多い方が重いと考えたのです。ところが,子どもから次の指摘があがります。
「大きさは関係ないよ。だって,小さい鉄の玉と大きい綿だったら重いのは鉄の玉でしょ。だから大きさは関係ない」
大きさと重さに比例関係がないことが見えてきました。

多くの班は,定規をシーソー代わりにして3つのブロックの重さを測定していました。ところが,測定している子どもからは「微妙」「ほぼ一緒」と声があがりました。ブロックの重さが,シーソーを使った実験ではほぼ一緒に見えたのです。そのことに,彼らは困ったのです。微妙な重さの違いをどのようにはっきりさせるのかが,子どもたちの問いとなりました。
そこで子どもたちが考えたのが,微妙なブロックをシーソーの載せた時の,地面とブロックまでの高さを測定することでした。すると,次のような声が聞こえてきました。
「2㎜の差で円のブロックが重たいよ」
「1㎜の差で長方形のブロックが軽いよ」

微妙な重さの違いを,シーソーの高さの違いという長さに置き換えることで見えるようにしようとしたのです。これは,重さを数値化しようとする発想です。この発想の素晴らしさを価値づけました。

数字に置き換えることで,それまで見えなかった重さが見えるようになってきたのです。素晴らしい発想力をもった子どもたちです。




2018年11月1日木曜日

第5回マスラボ講座のご案内

第4回マスラボが終わりました。今回は深い学びをテーマに,参加の先生方と愉しい研修時間を過ごしました。なんとなくイメージしていた深い学びを,くっきりと思い描くことができた研修となりました。

次回は第5回マスラボです。マスラボシリーズの最終回です。これまで大好評をいただいていたこの企画もラストです。これまで参加を逃していた方も,是非,おいで下さい!

日程 2019年1月26日(土)13時〜17時
会場 京都テルサ(予定)

内容は以下の予定です。

タイムスケジュール
1300~1320 受付
1320~  オープニングトーク
1325~1350 Math Labo!メンバー授業ビデオ参観
          ○年「 未定 」 西村祐太(京都市立醍醐西小学校)
1355~1415 グループに分かれて授業について検討
1415~1440 協議会 (尾崎先生、樋口を交えて協議していきます。)
1445~1515 講座①「クラス全員をアクティブな思考にする算数授業のつくり方」
              樋口万太郎(京都教育大学附属桃山小学校)
1520~1620 講座② 「 未定 」
              尾崎正彦(関西大学初等部)
1625~1640 質問コーナー
申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com/event/ml5/

暗算での実験

3年生のかけ算の筆算単元末に,暗算の学習が位置付いています。

「24円の飴を3個買います。代金はいくらでしょうか」
このような問題の答えを,暗算で求めさせます。多くの子どもたちは,それまでにかけ算の筆算を行っているため,筆算の手順と同じように暗算でも計算します。

①4×3=12 ②20×3=60 ③12+60=72

子どもたちの学びの履歴を考えれば,一の位から計算していくことは自然な思考の流れです。しかし,教科書では十の位から計算すると簡単であることが記述されています。実際の子どもの思いとはズレがあります。

さて,前記の計算の仕方を確認し終えた後,「別のやり方があります」という声があがります。

①20×3=60 ②4×3=12 ③60+12=72

十の位から先に計算する方法です。ところが,この方法に対して子どもたちから,次のような声があがります。

「それって,反対にしただけでしょ」
「どっちを先に計算しても同じだよ」
「一の位が先の方が,今まで通りで簡単じゃないの」

多くの子どもは,一の位を先に計算しても,十の位を先に計算しても大差ないと考えています。この趣旨の発言が続きます。ところが,ここでB男が次の声をあげます。

「十の位を先に計算する方が簡単じゃないかな。だって,大きい数に小さい数をたす方が,小さい数に大きい数をたすよりも簡単じゃないかな」

B男はかけ算の部分ではなく,たしざんの部分に目を付けたのです。たしざんに目を付けると,大きい数に小さい数をたした方が簡単だと考えたのです。これまでにはない鋭い視点です。B男の説明に納得する声もあがりましたが,多くの子どもは「やっぱり同じだよ」と考えています。

そこで,B男の考えが正しいのかを実験することにしました。次のように指示します。

「次の計算を暗算でします。答えが分かったら立ちましょう」

多くの子どもたちは,「同じでしょ」と考えています。
「500+36」
「37+400」
「600+82」
「92+800」
「350+26」
「36+250」

大きい数を先に提示,小さい数を先に提示を繰り返していきます。いずれの問題も,大きい数を先に計算する方が,子どもたちがすぐに立ち上がりました。後半の問題では,子どもから「大きい数が先の方がやりやすい」と声があがります。

頭の中では,十の位を先に計算しても一の位を先に計算しても大差はないと子どもたちは考えていました。ところが,実際に数字を使って実験を繰り返すことでその考えが間違っていたことを彼らは実感したのです。予想とのズレに出会った場面とも言えます。

その後,かけ算問題を一の位を先に計算するやり方,十の位を先に計算するやり方と交互に実験します。ここでも子どもたちは十の位を先に計算するやり方の簡便さを実感します。

予想とのズレを,実験を通して実感できた1時間でした。