2018年11月1日木曜日

暗算での実験

3年生のかけ算の筆算単元末に,暗算の学習が位置付いています。

「24円の飴を3個買います。代金はいくらでしょうか」
このような問題の答えを,暗算で求めさせます。多くの子どもたちは,それまでにかけ算の筆算を行っているため,筆算の手順と同じように暗算でも計算します。

①4×3=12 ②20×3=60 ③12+60=72

子どもたちの学びの履歴を考えれば,一の位から計算していくことは自然な思考の流れです。しかし,教科書では十の位から計算すると簡単であることが記述されています。実際の子どもの思いとはズレがあります。

さて,前記の計算の仕方を確認し終えた後,「別のやり方があります」という声があがります。

①20×3=60 ②4×3=12 ③60+12=72

十の位から先に計算する方法です。ところが,この方法に対して子どもたちから,次のような声があがります。

「それって,反対にしただけでしょ」
「どっちを先に計算しても同じだよ」
「一の位が先の方が,今まで通りで簡単じゃないの」

多くの子どもは,一の位を先に計算しても,十の位を先に計算しても大差ないと考えています。この趣旨の発言が続きます。ところが,ここでB男が次の声をあげます。

「十の位を先に計算する方が簡単じゃないかな。だって,大きい数に小さい数をたす方が,小さい数に大きい数をたすよりも簡単じゃないかな」

B男はかけ算の部分ではなく,たしざんの部分に目を付けたのです。たしざんに目を付けると,大きい数に小さい数をたした方が簡単だと考えたのです。これまでにはない鋭い視点です。B男の説明に納得する声もあがりましたが,多くの子どもは「やっぱり同じだよ」と考えています。

そこで,B男の考えが正しいのかを実験することにしました。次のように指示します。

「次の計算を暗算でします。答えが分かったら立ちましょう」

多くの子どもたちは,「同じでしょ」と考えています。
「500+36」
「37+400」
「600+82」
「92+800」
「350+26」
「36+250」

大きい数を先に提示,小さい数を先に提示を繰り返していきます。いずれの問題も,大きい数を先に計算する方が,子どもたちがすぐに立ち上がりました。後半の問題では,子どもから「大きい数が先の方がやりやすい」と声があがります。

頭の中では,十の位を先に計算しても一の位を先に計算しても大差はないと子どもたちは考えていました。ところが,実際に数字を使って実験を繰り返すことでその考えが間違っていたことを彼らは実感したのです。予想とのズレに出会った場面とも言えます。

その後,かけ算問題を一の位を先に計算するやり方,十の位を先に計算するやり方と交互に実験します。ここでも子どもたちは十の位を先に計算するやり方の簡便さを実感します。

予想とのズレを,実験を通して実感できた1時間でした。