2017年2月15日水曜日

比例の見方を引き出す

子どもたちに,「ひし形を組み合わせていくと・・・」と投げかけます。先ずは,ひし形1つを提示します。次に,その横にひし形を4枚組み合わせて作った大きなひし形を提示します。
 

2種類の図形を見た子どもから,「面積が変わっている」と声があがります。変わるものが見えたのです。そこで,他にも変わるものをあるのか尋ねます。「辺の長さ」「もとのひし形の数を基準にしたとき,それが何個分か」と,変わるものを見つけた声があがりました。一方,「変わらないものもあります」という声もあがりました。子どもたちが見つけた変わらないものは,「角の大きさ」「ひし形の形」「頂点の数」「辺と角の数」でした。図形を見ただけで,2つの見方ができる子どもたちの感性の良さには驚きでした。

 さて,変わるものを考えていたとき「比例している」という声があがりました。そこで,何が比例しているのかを考えました。当初は,「面積が1㎠→4㎠→9㎠・・・と差と差の差が2㎠ずつ増えている面積の増え方」を比例ととらえていました。ところが,辞書で比例の意味を調べた子どもがいました。辞書には「2つの数量が同じ割合で増えたり減ったりすること」と説明されていました。つまり,2つの数量が同じ割合で増えることが条件となります。面積は増えてはいますが,その視点だけで考えるだけでは比例と断定できません。

 そこで,比例関係にある2つの数量はあるのかを探しました。その結果,「1辺の辺の長さと周りの辺の長さ」「段の数と周りの辺の長さ」が,それぞれ比例関係であることが分かりました。いずれも,片方が2倍・3倍になると周りの長さも2倍・3倍になっています。また,「1段目のひし形の数と面積」も比例関係でした。


 増える変化には,このように2つの数量を比較することで比例という特別なきまりがあることが見えた1時間でした。

2017年2月13日月曜日

算数授業作り講座IN西宮 増員しました

以前お知らせしました兵庫県西宮市で開催される「算数授業作り講座」ですが,好評につき定員を増員しました。申し込みいただいた先生方,ありがとうございます。

4月のスタートは,1年間のクラス作りの点でも,子どもたちの思考力を育てていく点でも重要です。何を,どのように提示し,価値づければ,子どもたちはアクティブに動き出すのでしょうか。私の他にも3名の現場の先生方を講師として,みなさんといっしょに考えていく1日にしたいと考えています。

詳細・申し込みは,以下のアドレスからお願いいたします。春の西宮でお会いできることを楽しみにしています。

【日 程】2017年4月15日(土) 10:30~17:00
【会 場】西宮市立教育会館(兵庫)
【参加費】3000円 (学生さん、春から教壇に立つフレッシュ先生は1000円)
【講 師】
 尾崎正彦(関西大学初等部)
 直海知子先生(大阪府公立小学校)
 松井恵子先生(兵庫県公立小学校)
 榎並雅之先生(姫路大学)special guest

 http://kokucheese.com/event/index/443764/
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 (お申込みアドレス・こくちーず)
 

かけ算とわり算をつなげる

2月の公開研究会には,北海道から九州までの多くの先生方に参観いただきました。窮屈な教室でしたが,子どもたちの活躍はいかがだったでしょうか。

分で6/8Lジュースを作るマシンがあります。1分では何Lのジュースを作ることができますか」という問題を提示しました。この問題に出会った子どもたちから,「逆だ」「わり算だ」と声があがりました。前時までに子どもたちは,分数のかけ算の問題に取り組んでいました。その問題との違いに,問題文を分析することで感じたのです。これだけでも十分にすばらしい感覚です。

この「逆だ」の声を,クラス全体で共有していた時のことです。「もしが1よりも大きかったら,答えは小さくなるし,1よりも小さかったら答えは大きくなる」という声があがってきました。に入る数の大きさで商の大きさが異なることを指摘する声です。さらに,「もしが0.1なら・・・」「もしが2なら・・・」と具体的数値を代入して説明する声も生まれてきました。このような見積もりのできる子どもたちに姿にもびっくりしました。

その後,に2/4を入れて問題を考えます。子どもからは,6/8÷2/4と2/4÷6/8の2つの式が生まれました。どちらの式が正しいのかを,今度は4ます関係表を使って子どもたちは,説明していきました。この姿にも,参観の先生方から驚きの声があがっていました。

4ます関係表を使って,6/8÷2/4の式であることがわかりました。この式を見た子どもから,「今までと同じでいいじゃん」「分子同士,分母同士でわればいいんじゃないの」と声があがります。分数のかけ算での計算の仕方を,分数のわり算にも当てはめることができるだろうと考えたのです。このような見方は,一般化につながる見方です。よい考え方が生まれました。

この考え方で計算すると,分子は6÷2,分母は8÷4となり,答えは3/4となります。この計算の確かめを,図で行います。図でも同じ答えになることが確認できました。しかし,子どもから「でもさあ,われない数だったらどうするの」と声があがります。一般化の限界を指摘する声です。例外を探そうとする見方が生まれることも素敵な考え方です。
子どもから生まれてきたのは,6/8÷2/3という式です。この場合,分子は6÷2=3とわりきれます。しかし,分母は8÷3=2.666・・・となりわりきれません。先ほどの方法では,確かにうまくいきません。

ここで生まれてきたのは,倍分の考え方です。「だったらわれるようにすればいい」「倍分すればいい」「分母と分子を3倍ずつして18/24なら2/3でわれるよ」と子どもたちの声が続きます。倍分の考え方は,分数÷整数で学習しました。その時の学びが,この場面とつながったのです。このような単元を超えた見方ができる点も,子どもたちの素晴らしい姿でした。

授業では,図で答えの確かめをしていた時に,「あっ,図から見える式が逆になっている」「6/8÷2/4が6/8×4/2になっている」という,次の時間につながる逆算の見方も生まれてきました。

既習の学習内容を使いこなす子どもたち,さらには新しいことを発見する子どもたち,様々な数学的見方が発揮された1時間となりました。

2017年2月7日火曜日

「だったら・・・」の向こう側ー分数のわり算ー

子どもたちと,分数÷分数の計算のやり方を考えていたときのことです。先日の公開研究会で公開した授業と同じ場面を,別の場所で行った一こまです。

最初に,6/8÷2/4の計算を考えました。子どもたちは,それまでに学習した分数×分数と同じ考え方で,分数÷分数も計算ができると考えました。分母同士・分子同士をわり算するのです。分数のかけ算の計算方法をわり算にも適用しようとする子どもらしいアイディアが生まれてきました。
この問題は,分子が6÷2=3,分母が8÷4=2なので3/2となります。この答えが正しいかどうかは,このままでは検証できません。そこで,図を描いて確認します。結果は,3/2となりました。この結果から考えると,分数÷分数の計算は,分母同士・分子同士をわり算すれば計算ができそうです。

ところが,答えの確かめを図で考えているときに「でも,われない計算だったらどうするの」と声があがってきました。「例えば,9/10÷2/3だとわれない」と具体例をあげて説明する声が生まれてきました。割り切れない具体例を挙げられる点が,すばらしい発想です。
さて,このままわり算すると,先のわり算は 4.5/3.333・・・ となります。この結果を見て,次の声があがってきました。
「だったら,四捨五入したらどうかな。約5/3と答えを書けばいいよ」
概数の考えと関連づけて考えたのです。とても子どもらしい発想です。概算を使えば,わりきれない中途半端さを解決することができます。私の予想を超えた反応でした。私も「そうか。おもしろいなあ。四捨五入すれば,割り切れない計算もできるね」と子どもたちに投げ返しました。「だったら」から見えてきた子どもらしい発想の背景を理解し共感することも大切です。

この発想,子どもたちから「それでは正確じゃないよ」「分数は正確に計算できるんだよ」と声があがってきて,正確に計算できる方法へと子どもたちの追究は向かっていきました。つまり,分母・分子を6倍ずつします。54/60なら2/3でわることができます。倍分を使った計算方法です。分数同士のわり算は,倍分を使えばどのような式でも計算ができるのです。これなら正確に答えを求めることができます。

「だったら」の向こう側にあるのは,目の前の課題を乗り越えようとする子どもらしい発想です。その発想のよさに共感し,価値づけることも大切です。

2017年2月1日水曜日

子どもの考えと教師の考えのズレ

算数の授業を始める前,「きっと子どもは〜と考えるだろう」とついつい思い込んで授業をスタートしてしまうことがあります。

5年生の子どもたちに,次の問題を提示しました。
「1分間で4/5Lのジュースを作るマシンがあります。分では何Lのジュースを作ることができますか」
 子どもたちは,の中が整数なら計算できると主張します。が整数の場合は,既に学習を終えています。この声と同時に「分数ならどうやって計算するのだろう」という問いが生まれました。が分数になると,分数×分数の計算になります。この計算は,未習です。そこで,2/3の場合を考えることにしました。

 子どもたちは,既習の学習の考え方を使って,何とか計算しようとしました。

  4/5×2/3=12/15×10/15=12×10/15=24/3=

 この式の意味を読解します。「分数のたし算のように,分母を倍分して揃えた」「次に,分数のたし算のように,分子をかけて計算した」と子どもたちは考えました。倍分するアイディアは,分数のたし算からの発想です。分母を揃えたくなる気持ちは,子どもらしい発想です。私は,分母を揃えた後は,その分母同士もかけると考えていました。とこころが,子どもたちは分母はそのままで,分子だけをかける計算を考えたのです。これも,分数のたし算と同じ手続きで計算ができると考えたのです。子どもらしい発想です。子どものノートを見ながら,「そんな風に考えるのか」と感心をしました。分数のたし算の計算方法を活用した,よいアイディアでした。教師が事前に予想した子どもの姿と,実際の姿にズレが生まれた瞬間です。
 ズレに出会うと,何とか教師の想定していた世界に強引に子どもたちを連れて行こうとすることもあります。しかし,多くの場合,その強引な展開はうまくいきません。そんなときは,少し展開を子どもに任せてみます。

 先の考えに対して,次の指摘の声があがってきました。
2/3をかけているのに,答えがかけられる数の4/5Lよりも大きくなるのはおかしい」
かける数と積の大きさの関係からの指摘です。さらに,次の声もあがってきました。
「今の考え方だと,12/15×10/15の計算と12/15×10の計算が同じことになります。最初の式が違うのに,その後の式も答えも同じになるのはおかしい。だから12/15×10/15の計算の仕方は違うと思う」
分数のたし算のように考える方法の矛盾点を指摘する声です。この説明は分かりやすい説明でした。①の計算方法では,うまく計算ができないことが見えてきました。

4/5=12/15 12/15÷3=4/15 4/15×2=8/15

 2番目の式は,1/3分で何Lのジュースを作れるかを求める式です。この意味が読解できた瞬間「あー,分かった」という声がわき起こりました。1/3分当たりのジュースの量を2倍すれば,2/3分のジュースの量が求められます。この考え方は,わかりやすい方法でした。

4/5×2/3=4×2/5×3=8/15

 この式を考えた背景を考えさせました。「分数×整数では,分子だけをかけた。今度は分母があるので,同じように考えて分子と分母をそれぞれかけた」と,子どもたちは考えました。子どもにとっては,理解しやすい計算方法です。
 この考え方を使うと,①の計算は4/5×2/3=12/15×10/15=12×10/15×15=120/225=8/15となります。③の手続きで計算すれば,①の通分する考え方も偶然?にも同じ答えとなりました。


 既習の考え方を活用することで,何とか新しい計算場面を乗り越えることができました。しかし,これらの計算の答えが正しいかどうかはこのままではわかりません。図を描くことで,答えの確かめをしていきます。