2017年5月11日木曜日

半円をつなぐと・・・


直径が20㎝の半円を右図のようにつなげ,「端から端までは何㎝ですか」と尋ねます。
ここで子どもから,「端から端ってどこ?」と声があがります。端から端と言っても,縦方向もあれば横方向,さらには斜め方向もあります。子どもたちは問題文にきちんと向き合って,そこで感じた素直な思いを表現してきました。この場合の「端から端」は,左端から右端までの長さでであることを伝えます
さらに,「はみ出している長さを教えてほしい」という声もあがります。その部分が分からないと,端から端の長さは分かりません。はみ出している部分は8㎝です。

これらの情報をもとに,子どもたちは長さを求めます。「式も書ける」という声もあがります。この場合は,「8+20」又は「20+8」で28㎝になります。図をよく見れば,式で端から端までの長さを求めることができます。
 
 最初の長さを求めているとき,「どんな風につながるの?」という声が聞こえました。半円がさらに続く状態をイメージしているのです。子ども自らが,場面を拡張する姿もすばらしい気づきです。

そこで,右のように半円をつなげていきます。この場合は,「8+20×2」「20×2+8」で48㎝と求められます。
 計算をしながら「きまりがある」「きまりがわかった」と声をあげる子どもたちが生まれてきました。もう,子どもたちには,簡単に長さを求められそうです。

そこで,半円が合計26個つながった長さを考えさせました。子どもたちは,数字の式を作るだけではなく,「言葉の式も作れる」と考えました。この問題を言葉の式に置き換えると,次のようになります。
「半円の長さ×上の半円の数+ずれの長さ」
 実は,言葉の式に置き換えるときに子どもたちがこだわった部分があります。それは「ずれの長さ」です。この問題でのずれは8㎝です。しかし,「ずれはいつでも8㎝とは限らない」と子どもたちは考えました。ずれが9㎝や10㎝になれば,「ずれの長さ」の言葉の部分の数字も変わってきます。変わるものと変わらないものの存在にも,子どもたちは気付いたのです。

 この時間は「文字と式」の入り口の学習です。変わるものをaxなどの文字に置き換えて式を作る学習です。上の問題では,ずれの長さを8㎝と固定すれば,「20×a+8」という文字式になります。

2017年5月10日水曜日

2020年東京オリンピックエンブレムの秘密

算数の時間,「対称図形か調べよう」と子どもたちに投げかけます。

子どもに提示したのは,2020年東京パラリンピックのエンブレムです。これは見た目で線対称らしく見えます。しかし,きちんと調べないとその真偽は分かりません。多くの子どもたちは,エンブレムを構成する大小の長方形の辺の長さを調べ始めました。しかし,長方形はたくさんあります。「大変」「最後まで調べるの?」という悲痛な声が聞こえてきます。確かにこれは,大変な作業です。
そこで登場してきたのは,対称の軸を境に対応する点同士を結び,その長さを測定する方法です。この方法なら,全ての長方形のサイズを調べるよりは簡単です。全員で調べる部分を分担し,対応する点と対称の軸までの長さを測定しました。
結果は,どの部分も同じ長さでした。すなわち,パラリンピックのエンブレムは線対称図形であることが見えてきました。
 
次に,2020年東京オリンピックエンブレムを提示します。見た目では,点対称と考える子どもが多くを占めました。そこで,実際に実験で確かめます。しばらくすると,「これは違う」「重ならない」という声が聞こえ来ました。オリンピックマークは,点対称でも線対称でもないようです。
ところが,「3つに分けると・・・」という素敵な呟きが聞こえてきました。この呟きの意味を,今度は全員で考えます。
「同じマークが3つあるから,3等分する」
「円を3つに分けると120°ずつになる。120°回すと,そのマークが重なる」
「長方形3本の扇形みたいなマークが3個ある。120°回転すると重なるね」
「長方形2本の扇形みたいなマークも3個あるよ。これも120°回転すると重なるよ」
「本当だ! 点対称みたいだ」


 点対称は180°回転します。しかし,東京オリンピックエンブレムは120°回転することで模様が重なります。東京オリンピックエンブレムに隠された不思議な秘密を発見した1時間となりました。

2017年4月25日火曜日

回文から対称図形へ

「何が見えるかな?」と言って,次の文を板書します。
「①若山や はるか光るは 山や川」
 子どもたちは,「俳句かな」「でも,季語がないよ」などと呟いています。

 さらに,次の文を板書します。
「②丸くなるな 車」
 「字足らずの俳句かな」という声も聞こえてきますが,どう見ても俳句や川柳の仲間ではありません。やがて「回文?」という声が聞こえてきます。①②とも平仮名に置き換えると回文になります。回文という共通点が見えてきました。

 そこで,「これは回文かな」と言って,今度はデジタル数字を提示します。
「③11111」
 数字の形だけに注目すると,これも回文と見ることができます。さらに,
「(百の位の)1を中心に同じ形が並んでいる」
「(百の位の)1で折ると,ぴったり重なる」
という新たな視点も生まれてきました。この視点を使うと,4番目に提示したデジタル数字(2115)も回文と見ることができます。

 回文の見方が深まったところで,今度は二等辺三角形を提示します。そして,「これは回文かな?」と尋ねます。
子どもからは,「文じゃないよ」という声も聞こえてきました。一方,「回文じゃないけど,回図だよ」という声があがります。回文の図形版ということです。子どもはおもしろいネーミングをするものですね。底辺の中心と上の頂点を結んだ直線で折ると,ぴったり重なります。回文と同じ視点が,図形にも当てはまることが見えてきました。この回図という視点で見ると,等脚台形なども回図の仲間になります。


 この授業は,線対称の見方につながる1時間です。回文から線対称へと子どもたちが見方を拡張した点が優れた1時間となりました。

2017年4月14日金曜日

新刊本「算数の授業がもっとうまくなる50の技」のご案内

明治図書から発刊
4月が始まりました。先生方は新しいクラスの子どもたちと充実した1年のスタートを切られているのではないでしょうか。

さて,新刊本が明治図書より発刊されます。タイトルは,
『算数の授業がもっとうまくなる50の技』
です。

昨年,ご好評をいただいた『算数授業はじめの一歩』の続編とも呼べる本です。新学習指導要領がめざす「主体的・対話的で深い学び」のある算数授業をどのように構築していくのかにつながる授業の創り方を,具体的場面を通して提案しています。

 また,板書や教科書の使い方,ノート指導の進め方についても紹介しています。

 今よりも算数授業のレベルをアップしたいと考えている先生方のお役に立てる本だと考えています。5〜6月頃店頭に並ぶ予定です。もう少しだけお待ち下さい。