2018年9月5日水曜日

子どもの長さ感覚

3年生の子どもたちに,次のように投げかけます。

「学校から高槻駅までの道のりは何mくらいあるでしょう」

高槻駅から学校までは,子どもたちの通学路です。予想の道のりをノートに書かせます。その結果を,板書させます。

実に様々な道のりが板書されました。

2m,20m,100m,200m,240m,300m,400m

板書を見ながら,子どもたちがつぶやきます。
「2mは絶対にありえない」
「だって,廊下の長さが36mでしょ。駅までは,絶対に廊下よりも長いよ」

子どもたちは,廊下の長さを10m巻き尺を使って測定しました。廊下は36mでした。この廊下の長さを基準に,子どもたちは駅までの道のりが2mはあり得ない状況であることを説明してきたのです。前回の学習の廊下の長さを基準にして考えている点が,とても素晴らしいアイディアです。このような長さの感覚は,とても大切にしたいことですね。

この基準意識の素晴らしを価値づけました。すると子どもたちは,他のデータにも目を向けてきます。
「20mもありえないよ」
「だって廊下が36mでしょ。駅までは,絶対に廊下よりも長いよ」
「そうだよ。駅までは廊下の3倍はあるよ」
「そうかなあ。もっとあるよ。廊下の10倍はあるんじゃないかな」

廊下の3倍なら約100m,10倍なら360mです。子どもたちは,廊下の長さを基準とすることで,データ全体を見直したのです。そこで,最初の予想の長さを見直すことにさせました。
その結果,子どもたちの予想は,300m台,400m台が多くを占めました。

ここで子どもたちに,次のように投げかけます。
「もし400mだったとしたら,10m巻き尺で何回測ればいいかな?」
子どもたちが,答えます。
「40回!」
「40回も!」
「大変すぎるし,時間もかかる」
「歩いている人の迷惑になる」

駅までの道のりが長くなるほど,それを巻き尺で実測することが大変になることに子どもたちは気づきました。この気づきが,新たな道具の必要感へとつながります。

駅までの道のりは,車輪式測定器を使えば簡単に測定できます。苦労の気持ちに気づいた子どもたちに,車輪式測定器に出会わせます。子どもたちは,大感激です。

この後,新しい長さの単位1㎞にも出会わせていきます。

2018年9月3日月曜日

4年「2けたのわり算」の指導順を考える

4年生に「2けたでわるわり算」単元があります。この学習の大きなねらいの一つには,百の位÷十の位のわり算を筆算でできるようになることがあります。しかし,これはねらいの一つです。筆算を形式的に暗記して,それで計算ができるようになることがだけがねらいではありません。

教科書では,次のような展開順になっています。

① 80÷20を10の固まりをもとに計算する
② 84÷21を筆算で計算する。商の見積もりで,80÷20の見方を活用する
③ 96÷33を筆算で計算する。商の見積もりから,仮商の修正を行う
④ 170÷34を筆算で計算する。商は一の位にのみ立つ
⑤ 322÷14を筆算で計算する。商は十の位から立つ

②以降は,筆算の計算練習が中心になります。①では10の固まりの図をもとに,計算の仕方を考えます。しかし,②以降はそれは活用されません。見積もり場面でも,図を直接活用することはありません。
また,②〜④の計算の問題を筆算で計算する必要性はあるでしょうか。いずれも商は1桁です。わり算の筆算を使わなくても,かけ算を使って考える方が簡単かもしれません。
教科書では,筆算の計算手順をていねいにていねいに順序よく教える展開です。しかし,そこにはその必要性はないのです。

そこで,①のあとに⑤を位置づける展開を行いました。子どもたちは,それまでに,10の固まりの図やサクランボ算などを使って答えを見つける方法を発見しました。子どもたちは,「でもさあ,何十÷何十ならできるけど,中途半端な数のわり算だと計算できないんじゃないかな」と考えました。

この子どもの声をもとに,⑤の問題場面を提示します。「322枚の色紙を14人で等しく分けます。1人分は何枚ですか」と教科書と同じ問題を取り上げます。

子どもたちは,図やサクランボ算を使って考えます。ところが,うまくできません。「無理だよ」「サクランボは絶対に無理」などの声があがります。
そこで,百の固まりを3個,十の固まりを2個,1の固まりを2個作図した子どもの図を提示します。
百の固まりを14人で等分することはできません。子どもたちは,「だったら,百を十にして十にプレゼントすればいい」と考えます。この時点で,十の固まりは32個になりました。十の固まり32個なら,14人で等分できます。これをノートに実験で確かめます。十の固まりが1人に2個ずつ配れ,4個余ることが見えてきます。子どもたちは,「だったら,余った十の固まりは1にして一の位にプレゼントすればいい」と声があがります。

一の位は42個です。これを14人で等分します。子どもたちは,図で確かめます。一の丸を42個作図します。子どもたちは,「大変」「丸が多すぎる」と悲鳴をあげています。時間はかかりましたが,1人に3個配れることが見えてきます。
以上のように考えれば,1人分は20+3=23枚であることがわかります。図を使えば,それまで「できない」と思っていたわり算ができることが見えてきました。

子どもたちに「図を使えば,どんなわり算もできそうだね」と投げかけます。ところが子どもたちは,「めんどう」「丸をたくさんかくのが大変過ぎる」「時間がかかって大変だよ」と声をげてきます。

この場面で,私は筆算と出合わせました。ここまでに子どもたちが図を使って考えた計算方法は,筆算のそれと全く同じです。同じ計算を筆算で行うと,子どもからは「簡単」「すぐできた」と喜びの声があがります。筆算のよさを実感できたのです。教科書にようにていねいすぎる展開だったら,これほどまでに筆算のよさを実感するこはなかったのではないでしょうか。

筆算との出合いをどう演出するのかを考えて,教科書の授業順を見直すことも時には大切ですね。




2018年9月2日日曜日

第4回Math Labo! 講座のご案内

9月,いよいよ2学期が始まります。夏休み前の最終日曜日に,第3回Math Labo!講座を開催しました。この会も,子どもを愉しませる算数の授業の創り方について,先生方と愉しい学びができました。参加された先生方,ありがとうございました。

次回の4回目の講座の案内です。次回のテーマは「深い学び」です。難しい問題に子どもがチャレンジすれば学びが深まったと言えるでしょうか?

実は,深い学びの意味は前述の姿ではありません。では,どのような学びの姿を引き出せば,学びが深まったと言えるのでしょうか。実際の授業ビデオをもとに,先生方と学ぶ会にしていきたと考えています。また,学級創りの話題も組み込んでいきます。


講座の詳細は,以下をご覧ください。



算数教科書の著者で、算数授業名人である尾崎正彦先生とMath Labo!がコラボし、算数授業づくりについて、授業ビデオ(もしくは模擬授業)・協議会・講座を通して、1年間(全5回)考えていくセミナーです。
4回目のテーマは「深い学び」
1300~1320 受付
1320~  オープニングトーク
1325~1350 授業ビデオ参観 ○年「 未定 」 齊藤仁教(大阪市立公立小学校)                                   
1355~1415 グループに分かれて授業について検討
1415~1440 協議会 (尾崎先生、樋口を交えて協議していきます。)
1445~1515 講座①「子どもがアクティブになる算数授業のつくり方」
              樋口万太郎(京都教育大学附属桃山小学校)
1520~1620 講座② 「尾崎流 算数で学級づくりの仕方」尾崎正彦(関西大学初等部)
1625~1640 質問コーナー

申込は,以下のアドレス(コクチーズ)からお願いします。
https://www.kokuchpro.com/event/96071645fa522d188e04a0fc9b1aa320/

2018年8月23日木曜日

佐渡真野小学校授業診断公開研修

校内研修のあり方に悩んでいる研究主任の先生も多いのではないでしょうか。校内研修の最大の目的は,全ての担任の授業力を高めることです。

では,そのためにはどのようなアプローチが必要でしょうか。私は,全ての担任の先生が授業公開を行い,その授業について成果と課題を客観的に診断し,その結果をもとに授業を改善していくことだと考えています。20人の先生がいれば,その成果と課題が同じであるはずはありません。一人一人違うのです。それを明確にすることが,学校全体の質を高めるのです。これは,医療現場では当たり前のことです。ところが学校現場では,これができていなのが実情です。代表の先生だけが授業公開しても,他の先生の授業の質はほとんど高まりません。医療現場で,一部の患者さんだけを医師が診断し,他の患者さんにも同じ薬を処方したら大変なことになります。しかし,それが当たり前のように行われているのが学校の校内研修です。

新潟県佐渡市立真野小学校では,全クラスの先生が授業を公開し,それぞれの授業に対して私が成果と課題を診断する「授業力診断」を7年前から進めています。今年度は,その授業診断のあり方を公開します。一人一人の先生の授業と各先生に対する指導の進め方を,
是非,ご覧いただきたいと考えています。

ついで?ですが,私も3年生に授業公開を行います。こちらもよければご覧ください。

日程は次の通りです。

2018年10月9日(火)
新潟県佐渡市立真野小学校

1 授業診断(1梅,1松)         9:2510:10
2 授業診断(2梅,まゆみ梅,まゆみ松) 10:3011:15
 授業診断(3梅,4梅,4年少人数)   11:2012:05
            ~休憩・給食~

4 授業診断(5梅,6梅,6松)     13:2514:10
 尾﨑先生による師範授業           14:2015:05

            ~移動・休憩~

6 尾﨑先生によるご指導及び講演会        15:3516:45

お問い合わせは,真野小学校 ☎(0259)55-2009 北川先生まで

佐渡島内の学校以外の先生方も,佐渡観光を兼ねてご参加ください。秋の佐渡は,果物も海の幸も最高においしいシーズンですので!



2018年8月18日土曜日

2019年度 全国算数授業研究会和歌山大会が開催決定

平成とともに歩んできた第30回全国算数授業研究大会が終わりました。台風が接近する気象状況の中にもかかわらず参加いただいた全国の先生方,ありがとうございました。

さて,この会の理事会で2019年度の冬の大会会場が決定しました。

2019年12月26日(木) 全国算数授業研究会和歌山大会
                 会場 和歌山大学附属小学校

関西地区で全国算数授業研究会の冬の大会が開催されれるのは初めてのことです。この会は,和歌山大学附属小学校の小谷先生の熱い想いと志で開催が決定しました。和歌山の先生は熱いです! 地元・和歌山の先生方の公開授業も多く行う予定です。

和歌山大会を通して,「主体的・対話的で深い学びのある授業の改善」のあり方を和歌山,さらには関西地区に発信できたらと考えています。開催まで,まだ1年以上ありますが,どうか日程を空けておいてください!

全国学力状況調査と授業改善

夏休みも,残り2週間あまりとなりました。7月末には,全国学力状況調査結果が発表されました。発表後,全国の先生方とお会いする機会が何度もありました。多くの先生方が,その結果に一喜一憂する姿が見られました。

ある県の校長先生と,学力状況調査について話をしていた時,次のようなことを話されていました。
「全国学力状況調査結果は,県内の市町村でかなりの差があります。また,一つの学校の中でも,クラスによる差があります。あるクラスは突出してよい結果を出しています」

ここまでは,よくある話です。クラスによる差があるのは,当然です。さて,先の校長先生の話は続きます。

「突出して結果がよいクラスの授業を見たんだけど,まったく普通の授業なんだよね・・・」

この話は,果たして一部のクラスだけの話なのでしょうか・・・。全国学力状況調査の目的は,授業の改善です。その改善のゴールは,「主体的・対話的で深い学びのある授業の改善」です。ところが現実は,授業の改善と全国学力状況調査の結果が比例していない事実があるのかもしれません。

現在の全国学力状況調査で,教師の授業改善の質を測定することはかなり難しいと私は考えています。本当に大切なことは,「主体的・対話的で深い学びのある授業の改善」を進めることです。この趣旨の授業を夏休み明け,子どもたちに提供できるように残りの2週間,作戦を練っていきましょう。

「主体的・対話的で深い学びのある授業の改善」を進めるための具体的授業創りのスッテプを12の視点にまとめて,来年,単著として発刊したいと考えています。現在,執筆中です。もうしばらくお待ちくださいね!

2018年8月4日土曜日

ようこそ先輩!佐渡高校編

私の母校は,日本海の離島・佐渡ヶ島にある佐渡高校です。佐渡高校では,毎年,卒業したOBの中から各方面で活躍している方を招聘し,在校生に講演会を開催しています。来年度のOB講師として,私が登壇することとなりました。

これまでは大学教授,オーケストラ指揮者,自動車エンジニア,市長など多方面で活躍されているOBが講師として登壇されています。高校生にとっては,小学校教師の私では,興味がないかもしれません…。

そんな佐渡高校生の思い出に残る話をしたいと,今から作戦を練っています。後輩のみなさん,お楽しみに!

この講座は,保護者や佐渡在住の学校の先生方の参加できるように調整中です。日程は,まだ最終決定はしていませんが,10月を予定しています。詳細が決まりましたら,お知らせします。

母校佐渡高校は,離島佐渡ヶ島の中核を担う進学校です。人生の進路に役立つ1時間にしたいと考えています。