2017年6月19日月曜日

和歌山で公開授業研究会


夏休みまでもう少しです。夏の研修の予定はお決まりですか?

7月22日(土),和歌山大学教育学部附属小学校で公開授業&講演会を行います。私と同じ研究会に所属する和歌山大学附属小学校の小谷先生が企画担当です。

地元和歌山の先生の公開授業やワークショップもあります。公開授業が土曜日に参観できる企画は,めったにありません。貴重な企画です。

夏休みのスタートを,和歌山でご一緒しませんか?

お申し込みは,以下のアドレスまでお願いします。

http://kokucheese.com/event/index/469859/

2017年6月16日金曜日

同じビルを探せ

算数の時間,子どもたちに次にように投げかけます。
「同じ形のビルはいくつあるかな?」
 この問題を聞いた子どもたちが,素敵な話し合いを自然に始めます。
「何が基準なの?」
「そうだよ。基準が分からないと・・・」
「正方形なら同じ大きさということ?」
「えっ,形だから大きさは関係ないよ」
「それってどういうこと?」
「大きい正方形も小さい正方形も同じ形ということだよ」
「もし,縦と横の辺の比が4:6の長方形なら,比が2:3の長方形も同じ形ということだよ」・・・。
 子どもたちは,「同じ形」という言葉の意味を上記の話し合いを通して吟味したのです。その結果,「辺の長さの比が同じなら同じ形」と判断できると子どもたちは考えました。
 
 上記の判断をした子どもたちに,右の図形を提示します。赤のビルを基準とした場合の同じ形を探させました。直感で,同じ形のビルの数を予想させます。「2種類」「3種類」「4種類」「5種類」と予想にズレが生まれます。

 同じ形は何種類あるのでしょうか。子どもたちは,「同じ形をほしい」と要求をしてきます。そこで,同じ図形が印刷されたプリントを配布し実験します。子どもたちは,定規を使って辺の長さを調べていきます。
 やがて,「3種類だ」と声があがります。赤いビルの底辺部は2㎝,高さ部分は5㎝と4㎝,上部斜めは2.3㎝です。エの図形は,底辺部3㎝,高さ部分は7.5㎝と6㎝,上部は約3.5㎝です。どの辺も1.5倍になっていることがわかります。このように辺の比が同じ図形は,ウ・エ・オの3種類あると考えました。
 ところが,ケの四角形も辺の比は全てエと同じ1.5倍になっています。実験をしながら,「ケもエと同じ長さだ。これも同じ形?」と迷う子どもの姿も見られました。

 では,ケの図形も「同じ形」と考えてもいいのでしょうか。子どもたちは,
「エは違うよ。だって角が直角じゃないよ」
「同じ形は,辺の比が同じで角が同じじゃなきゃだめだよ」
と声があげます。エとウの図形を比較することで,「同じ形」の判断基準には辺の比だけでなく,角の大きさも必要なことが見えてきました。
 
 この学習は,「拡大図・縮図」の入り口の1時間です。拡大図・縮図だと判断するためには,対応する辺の比が等しいことだけではなく,対応する角の大きさが等しくなければいけないことを,子どもたちが発見するこができました。

2017年6月14日水曜日

校舎の高さ

6年生の「比」の学習の活用場面として,木やビルの高さを求める問題が教科書などに掲載されています。教科書では,次のような課題文になっています。
「木のかげの長さから,木の高さを求めましょう。校庭に立てた0.8mの棒の影は1.2mでした。このとき,校庭の木のかげの長さは12mでした。木の高さは何mでしょう」

十分すぎるデータが含まれた課題文です。この学習で大切なことの一つは,どのようなデータを収集すれば,実測不可能な木やビルの高さを求めることができるのかを子ども自身が考えることです。十分すぎるデータがあらかじめ用意されていては,もはや考える余地はありません。

子どもたちに,次のように投げかけます。
「校舎の高さを求めることはできるかな。あなたなら,どんな方法で高さを調べますか」
先ずは自由に子どもたちに,高さの求め方を考えさせました。
「ビルの上から巻き尺をたらす」
「1階分の高さを調べて,その高さを13倍する」(校舎は13階建て)
「はしご車にのって高さを測る」など

 比を使う考えは,この時点では子どもからは生まれてきません。1階分の高さを13倍する方法は「いいね」と子どもの共感を得ました。ところが,「でも,それってどの階の高さも同じじゃないとだめだよね」と指摘を受けます。それ以外の方法は,いずれも危険を伴う測定方法です。
 そこで「もっと安全に校舎の高さを調べる方法はないかな」と投げかけます。ここが子どもたちには難問でした。やがて「影の長さを測ればいいかな?」という呟きがあがります。この呟きをきっかけに,子どもたちが動き出します。
「そうか,ビルの影の長さを測ればいいんだ」
「影の長さが分かっても,高さは分からないよ」
「だから,同じ時刻に棒を立てて,その影の長さを測るんだよ」
「そういうことか」
「どういうこと?」
「だから,棒が1mで影が0.5mだったとするでしょ。このとき,ビルの影が20mなら,高さはamでしょ。1:0.5=a:20になるから,aは40mでしょ」
「わっかた! 比が同じってことだね。比を使えばいいんだね」

子どもたちの理解には差があります。比を使う視点も,このように少しずつ時間をかけながら共通理解を進めていきました。

太陽が出たときの校舎の影の長さと棒の高さと影の長さを使うことで,校舎の高さを安全に測定できることが分かった1時間でした。その後,晴天の日,上記の考え方を使って校舎の高さを比を使って求めました。子どもたちの測定結果は,ほぼ50m前後でした。実際の高さは約55mです。ほぼ正確な高さを測定することができたと言えます。

2017年5月19日金曜日

次の角の大きさは?(比)


子どもたちに,次のように投げかけます。
「縦32㎝,横48㎝の長方形の1本の対角線に角ができます。半分に折るとその角の大きさはどうなるでしょうか」
実物の長方形(図①)を提示します。角の位置を確認します。①の長方形を半分に折ります。②の長方形ができます。同じ位置にできる角の大きさを考えさせました。

ほとんどの子どもたちは,角の大きさは変わらないと予想しました。「だって同じ長方形じゃん」「直角の部分を分けているから同じに決まっている」と,子どもたちは自分の考えに自信満々です。
そこで,実際に2つの長方形を重ねます。結果はなんと②の角の方が大きくなったのです。この事実に子どもたちも驚きです。
 さらに,この事実をもとに「だったら次はもっと大きくなる」と子どもたちは考えました。さらに折り紙をおった場合の角の大きさを予想したのです。角の大きさが「小」→「大」と出現したので,次はもっと大きくなると考えたのです。ここまでの情報をもとに,次の場面を予想する態度はすばらしいことです。

さて,実際の角の大きさはどうなってるのでしょうか。これも実際に実験します。結果は,再び子どもの予想を裏切るものでした。なんと角は小さくなりました。しかも,最初の長方形と同じ大きさになりました。
 ここまでの事実から,今度は新しい気づきが生まれてきます。
「わかった! 角は小→大→小→大が順番に繰り返す」
「小→大→小→大の順で,この後も全部分かる」
 このきまりなら,角の大きさは簡単に分かりそうです。

 そんな子どもたちに,極小の長方形を提示します。子どもたちは「何回折ったのですか?」と質問をしてきます。しかし,その回数は教えません。すると「だったら辺の長さを教えてほしい」と声があがります。辺の長さは,縦2㎝,横3㎝です。この情報があれば,子どもたちは角の大きさが大か小か判断できると考えました。
「角は小です。だって最初の長方形と比べると,縦は32㎝と2㎝だから÷16。横も48㎝と3㎝だから÷16
「2番目の長方形と比べると,縦は24㎝と2㎝で÷12だけど,横が32㎝と3㎝なので÷12になっていないから大の仲間ではない」

 子どもたちは,縦の横の長さの割合に目を付けて大の角の仲間であることを見つけていきました。この学習は「比」の見方を引き出す1時間です。素敵な視点が子どもから生まれた1時間でした。

2017年5月17日水曜日

『算数授業がもっとうまくなる50の技』目次は?



いよいよ発刊の『算数授業がもっとうまくなる50の技』の目次は次の通りです。

はじめに
序章 授業の腕前次第で子どもの学びは変わる
子どものアクティブな学びを引き出すには
算数授業は導入で8割決まる!?
つぶやきを生かせる教師生かせない教師
第1章 問いの引き出し,つなぎがもっとうまくなる4の技
1 友だちの考えとのズレを引き出す
2 予想とのズレを引き出す
3 感覚とのズレを引き出す
4 既習とのズレを引き出す
第2章 課題づくり・発問がもっとうまくなる12の技
5 先行学習で対応できないしかけをつくる
6 似て非なる問題を扱う
7 情報を整理し過ぎない
8 認識の曖昧さを自覚させる
9 安定感を崩す
10 自由実験でしかける
11 拡がりのある課題でしかける
12 大量の情報を提示する
13 見せ方を変える
14 条件不足にする
15 既習内容が使えそうで実は使えない課題を扱う
16 答えがありそうで実はない課題を扱う
第3章 子どもの見とりがもっとうまくなる4の技
17 算数が苦手な子どもに注目する
18 先行学習をしている子どもをゆさぶる
19 「わかりました」に騙されない
20 瀬戸際に立たせることで意思表示させる
第4章 話し合いの授業がもっとうまくなる10の技
21 マイチョークで参加意欲を高める
22 板書した子以外の子どもを巻き込む
23 友だちの気持ちを語らせる
24 わからなさを表現させる
25 本時のポイントを2つの方法で全員に再現させる
26 念押し発問で話し合いをまとめる
27 子どものつぶやきに食らいつく
28 価値あるつぶやきを共有する
29 一般化の考えを使わせる
30 教師が親切に解説しすぎない
第5章 ノート指導がもっとうまくなる5の技
31 「思考の検索先」という意識で指導する
32 ていねいさと自由さのバランスをとる
33 振り返りの目的を意識させる
34 振り返りでは目標数値を提示する
35 ノートはその日に返す
第6章 数学的な考え方の育成がもっとうまくなる7の技
36 相反する2つの「だったら」
37 混沌を打開する「例えば」
38 実験範囲の拡張を促す「たまたまじゃないの?」
39 表現したいことの高まり「絶対に」
40 一般性の吟味「もし…だったら」
41 素直な疑問「でもさぁ」
42 数学的な考え方への確信「やっぱり」
第7章 板書がもっとうまくなる4の技
43 検索インデックスとなる1行目にこだわる
44 めあてとまとめの扱いを工夫する
45 子どものつぶやきを色チョークで明示する
46 1時間の流れを1枚で見せる
第8章 教科書の使い方がもっとうまくなる4の技
47 教科書の見せ方を少しだけ変える
48 教科書の考え方を予想させる
49 教科書の展開を少しだけ変える
50 単元末の練習問題の扱い方を工夫する
読めば算数の授業がもっとうまくなるおすすめの20冊
おわりに

最初から読んでも構いませんが,自分が興味のあるページから読み進め,読んだ内容を早速,教室で試されることをお薦めします。1回でうまくはいかないかもしれませんが,何回もチャレンジするうちに,腕前も向上してくるはずです。教師の腕前の向上は,すなわち目の前の子どもたちの学力向上を意味します!