先日,私の故郷・佐渡の2つの小学校を訪問しました。どちらの学校も,以前から訪問させていただいる学校です。どちらの学校も,全学級が算数の公開授業を行いました。全クラスが算数の公開授業ができること自体,2つの学校のレベルの高さを物語っています。
全クラスの算数授業を参観しました。以前の授業と比べると,どのクラスの先生方の指導力も向上していました。前回の訪問で指摘させていただいた点が,着実に改善されていました。それにともない,子どもたちの呟きや考え方の質もレベルアップしていました。教師が努力を続けると,子どもの力も確実にレベルアップします。
5年生の子どもたちとの公開授業も行いました。1~5の整数の数字全部と+,−の記号を使って,いろいろな答えの式を作る授業でした。1~15までの整数の答えが全部できると考えていた子どもたちですが,実際に計算すると答えは奇数しかありません。ここで子どもたちから,「だったら6をたせば偶数の答えができる」と素敵な呟きがあがります。子どもたちが場面を拡張したのです。次期学習指導要領が求める「深い学び」の姿が生まれてきました。
そこで,1~6の数字カードで偶数の答えになる式を探します。ところが,何回計算しても偶数の答えになる式はできません。とろこが,「できました」と声があがります。その式を板書してもらいます。すると,その式には5が使われていませんでした。すると,「だったら5を抜いたら偶数ができるんじゃないかな」と,またまた素敵な呟きがあがります。1,2,3,4,6の数字で,再度実験開始です。すると今度は,「できました」というれしい声が次々とあがってきました。ここでも子どもたちが,場面を拡張して考えたのです。そして,それまでできないと考えていた偶数の答えを見つけることができました。
質の高い佐渡の子どもたちと先生方と,算数を愉しんだ2日間でした。
2017年10月15日日曜日
2017年10月4日水曜日
体積が最大の柱体は?
子どもたちに,次の問題を提示します。
「周りの辺の長さの合計が52㎝で体積が最大の柱体を作ろう」
柱体は,円柱・三角柱・五角柱など様々です。さて,どの柱体の体積が最大になるのでしょうか。
子どもたちは,次のように考えました。
子どもたちは,次のように考えました。
「立方体の体積が最大になると問題集に書いてあったから,立方体が最大だよ」
「そうだね。きっと立方体が最大になるね」
ほとんどの子どもたちが,立方体の体積が最大になると考えました。
ほとんどの子どもたちが,立方体の体積が最大になると考えました。
そこで,子どもたちに具体的な辺の長さをノートの見取り図に記入させました。ところが,52㎝では立方体は作図できません。そこで,子どもたちが次に考えたのは,できるだけ立方体に近い直方体(縦4㎝・横4㎝・高さ5㎝)を作ることでした。なかなか鋭い視点をもっています。
この意見から,次の考えも生まれてきました。
この意見から,次の考えも生まれてきました。
「だったら三角柱も同じようにすればいいね。できるだけ立方体に近いような長さにすれば体積が大きくなる」
立方体を基準に三角柱もそれに合わせようとしたのです。この見方も鋭いですね。底面が5㎝・6㎝・6㎝,高さ6㎝の三角柱は立方体に似た辺の長さのバランスです。
この段階でも,多くの子どもたちは直方体の体積が最大だと予想しました。
そこで工作用紙で2つの柱体を作図します。ペアで分担して作りました。柱体が完成すると,「あれ,三角柱が大きい?」という声が聞こえてきます。実際に作図をすると,三角柱の方が体積が大きく見えたのです。当初の予想とは大きく異なる結果です。予想とのズレを子どもたちが感じた瞬間です。このズレが,この授業の最大のおもしろさです。
この後,実際に体積を求めます。三角柱も直方体と同じように底面積×1㎝の基準となる体積が,何個分高さ方向に積み上がるのかを考えれば求められます。この計算で求めた体積の確からしさを,子どもたちが作成した三角柱に水を入れて確認しました。
計算でも水を入れて確認しても,結果は三角柱が大きいことがわかりました。予想と結果を大きく異なった1時間でした。
計算でも水を入れて確認しても,結果は三角柱が大きいことがわかりました。予想と結果を大きく異なった1時間でした。
2017年9月20日水曜日
反比例はエアーホッケーで
エアーホッケーを使って,算数の問題を考えました。
「円形のエアーホッケー盤があります。ゴールに入るまで何本の線ができるでしょうか」
このエアーホッケーは相手は邪魔しないという特別ルールです。ノートに円を作図します。先ずは,45°でパックを発射した場合を実験します。右端の壁にぶつかったパックは,同じ角度で跳ね返りゴールに入ります。従って,2本の線ができます。この作図は、かなり面倒です。実は、この面倒さを子どもたちに実感させておくことが、後半のきまり発見へとつながる布石となるのです。
次に,30°で発射した場合を実験しました。30°では3本の線でゴールへと入ります。ここまでの結果から,
「わかった,次は6本だ。だって,45×2=90で30×3=90だから」
と声があがります。2つの実験から,線の本数を見つけるきまりを見つけたのです。一方,「もう少し実験しないとわからない」という声も聞こえてきました。たった2つの情報だけで、きまりだと断定するのは速すぎるという指摘です。この視点での意見が生まれることも、すばらしい子どもたちです。
「わかった,次は6本だ。だって,45×2=90で30×3=90だから」
と声があがります。2つの実験から,線の本数を見つけるきまりを見つけたのです。一方,「もう少し実験しないとわからない」という声も聞こえてきました。たった2つの情報だけで、きまりだと断定するのは速すぎるという指摘です。この視点での意見が生まれることも、すばらしい子どもたちです。
子どもたちは、前述のきまりを使えば、「15°なら6本になる」と考えました。そこで,15°で発射した場合を作図で確かめます。すると,子どもたちの予想通り6本であることが確かめられました。この結果から,今度は新しいことが見えてきました。
「比例っぽくなっている」
「30°の角が÷2になると,本数は2倍になる」
「90°で発射すると1本。これを基準にしないといけない」
「90°1本を基準にすると,角度は÷2、÷3…となると本数は×2,×3…となっている」
「比例の反対になっている」
反比例の見方を子どもたちは発見したのです。この学習では、90°でパックを発射する場面を、意図的に教師からは提示していません。それは、子どもに基準となる「1本」の場面を見出してもらいたいと考えたからです。子どもたちは、発射角度と線の本数の積が90になるきまり発見から、「1本」の基準を見つけていくことができたのです。基準となる「90°では1本」が見えてくることで、反比例の見方はよりわかりやすくなります。
「だったら,10°だなら9本になる」
見えてきたきまりを使って新しい場面を考える声も生まれてきました。
「だったら,10°だなら9本になる」
見えてきたきまりを使って新しい場面を考える声も生まれてきました。
2017年9月16日土曜日
比例のグラフの必要性を引き出す
子どもたちに次の問題を出します。
「年速5億㎞でボイジャー1号は太陽系の外へ向かって飛んでいます。その7年後,スーパーボイジャーは年速8億㎞で出発しました。スーパーボイジャーが1号に追いつくのはいつでしょうか」
この問題に出会った子どもからは「速さ?」「比例?」と声があがります。そこで「ボイジャー1号は比例しているの?」と尋ねます。子どもたちは,「比例しているよ」「表を描けばわかるよ」と声をあげます。そこで,表を描いて確かめます。飛行年数が2倍・3倍になると,距離も2倍・3倍になることが分かりました。従って,ボイジャー1号は比例していることが表から分かりました。
子どもたちはこの表をもとに,「その下にスーパーボイジャーの表を付け足せば,いつ追いついたかがわかる」と考えました。子どもたちは,ノートに表の続きを描いていきます。ところが,「18年と19年の間」「19年寄り」であることは表から分かりますが,正確な部分は分かりません。
子どもからは「計算する」「グラフに描く」と2つのアイディアが生まれてきました。しかし,計算に対しては「どうやるの」「大変そう」と声があがります。そこで,簡単そうなイメージのあるグラフで調べることにしました。
年数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
1号(億㎞) | 5 | 10 | 15 | 20 | 25 | 30 | 35 | 40 | 45 | 50 | 55 | 60 | 65 | 70 | 75 | 80 | 85 | 90 | 95 |
スーパー(億㎞) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 | 16 | 24 | 32 | 40 | 48 | 56 | 64 | 72 | 80 | 88 | 96 |
子どもからは「計算する」「グラフに描く」と2つのアイディアが生まれてきました。しかし,計算に対しては「どうやるの」「大変そう」と声があがります。そこで,簡単そうなイメージのあるグラフで調べることにしました。
グラフにボイジャー1号とスーパーボイジャーのデータを,折れ線グラフとして描いていきます。2つのグラフの交点が追いついた瞬間となります。正確にグラフを描いていくと,18年と8ヶ月当たりに追いつくことが分かりました。
2種類のデータをグラフにすることで,計算をしなくても追いつく経過年を見つけることができたのです。グラフの良さを実感することができました。
比例の学習では,グラフ化する場面が,どうしても教師主導になります。子どもにとっては,グラフにする必要感がないまま,教師の指示でグラフを描かされるだけの展開です。今回は,グラフを使いたくなる展開で授業を進めてみました。
比例の学習では,グラフ化する場面が,どうしても教師主導になります。子どもにとっては,グラフにする必要感がないまま,教師の指示でグラフを描かされるだけの展開です。今回は,グラフを使いたくなる展開で授業を進めてみました。
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