2017年11月15日水曜日

第8回関西大学初等部研究会で算数授業を公開します

毎年恒例の関西大学初等部の研究会の案内が完成しました。ホームページに案内が掲載されています。以下のアドレスからお申し込みください。

http://www.kansai-u.ac.jp/elementary/2017/11/post-523.html

今年は,これまで4年間担任してきた6年生の子どもたちとの最後の研究会です。教科書の学習内容をほぼ終えている6年生ですので,ハードルの高い問題にチャレンジしてもらおうと考えています。

例年,多くの参加申し込みをいただいています。そのため会の運営の安全面から,申し込みを締め切ることもあります。早めのお申し込みをお勧めします。

2017年11月14日火曜日

データを批判的に見る

次期学習指導要領から,「データの活用」領域が新設されました。その中で,データを批判的に見ることが重視されています。これまでにも,6年生の「資料の整理」単元の中で同様の授業が行われてきたことがあります。ただ,それらの多くはデータを批判的に見させる授業でした。子どもがデータを批判的に見たくなる展開は多くはありませんでした。子どもが,データを批判的に見たくなる授業を考えてみました。

ブロック飛ばしゲームに取り組んだ子どもたちに,次のように投げかけました。
「ブロック飛ばし『1組は弱い』という2組の主張は正しいか」
 1組のゲーム結果は,右の柱状グラフの通りです。刺激的な問いかけに子どもたちは大興奮です。子どもたちは,「両方のクラスの平均を比べればわかる」と考えました。そこで,1組の平均値を求めます。1組の平均は53.1点でした。続いて,2組の平均を発表します。2組は44.1点です。この結果に,子どもたちは「やったー」と大喜びです。平均値では,圧倒的に1組の勝利です。ではなぜ,2組は「1組は弱い」と主張したのでしょうか。その理由を考えます。子どもからは,次の声があがってきました。
「最頻値と最大値が違うんじゃないかな」
「最頻値が高い」
 「最頻値が高い」は絶妙な言葉です。しかし,難解な言葉でもあります。この意味をじっくりと共有します。その過程で,新たな予想もあがってきます。
「最頻値が1組よりも高い95点。でも,0点台の人も多いんじゃないかな」
 さて,結果は子どもたちの予想通りでしょうか。2組のデータを1人ずつ提示していきます。95点→95点→95点→95点→…と次々と95点カードが登場します。1組の最大値は90点で1人です。「やばいほど多い」と声があがります。このままでは,2組圧倒的勝利です。しかし,子どもたちは「でも,きっと0点がたくさんいる」と先を予想します。その後もカードを貼っていきます。

 結果は,(右図の通り)2組の最頻値は95点で8人もいました。ところが,0点が6人,2点が1人と10点未満が7人もいます。10点未満は1組は3人です。データ全体を見渡すと,確かに2組は最頻値は1組よりも高く,人数も多くいます。しかし,20点台以下の人数もとても多くいます。そのため,多くの子どもたちは「やっぱり1組の方が強い」と考えました
。もちろん,90点台の人数の圧倒的な多さから,「2組が強く見える」いう意見もありました。視点を変えれば,データが異なって見えます。これこそ,データを批判的に見ることにつながります。

2017年11月4日土曜日

ブロック飛ばしゲームからヒストグラムへ

データの活用が,次の学習指導要領改訂の目玉の1つになっています。そこで,次のような授業を行ってみました。

子どもたちに,「ブロック飛ばしゲームをしよう」と投げかけます。様々な得点の書かれたエリアに向けてブロックを指ではじくゲームを行います。1人5回ブロックを飛ばします。その合計を求めます。

ゲームが終わった時点で,各自の得点をカードに書かせます。そのカードを黒板に順に貼らせていいきます。子どもたちは,得点カードをどのように貼るでしょうか。
当初は,黒板に出た順に端からカードを貼っていきました。ところが,「もっとわかりやすく貼ろう」という声が生まれ,0点を端にして得点順にカードを貼り直します。では,どのように子どもはカードを貼り直すでしょうか。

0点の子どもが何人もいました。すると,子どもたちは0点の隣に0点のカードを貼ります。そのまた隣に0点のカードを貼ります。こうしてカードを順に貼っていきました。0点→1点→2点→3点→4点→5点とカードを貼ります。カードは横に伸びていきました。次に7点を貼るときに,子どもたちにズレが生まれました。5点のすぐ隣に7点を貼ろうと考える子どもと,5点と7点の間に隙間を空けようと考える子どもです。子どもたちは,以前の学習でグラフの横軸の目盛りの配分の仕方を学習しています。その学習をもとにすると,5点と7点の間に隙間を空けることが必要になります。

カードの数字の幅を等間隔に空けることをもとに,カードを再度はり続けます。20点を超えるあたりから,カードが黒板に入りきらなくなります。そこで子どもから生まれてきたアイディアが,同じ得点のカードを縦に並べることでした。0点のカードを,縦に積み上げていきます。1点のカードも縦に積み上げていきます。これで,カードを貼るスペースがかなり確保できました。

しかし,横軸の目盛りは等間隔です。例えば,20点と25点の間の得点はありませんでした。しかし,その部分も空白スペースとして確保する必要があります。そのため,40点を超えると再びカードが貼れなくなってきました。
「どうしたらいいかな」
と子どもたちに投げかけます。
ここで子どもから生まれてきたのが,「10ずつカードをまとめる」「0~9,10~19,20~29・・・とまとめて,縦に貼る」というアイディアでした。これなら,一気にカードを貼るスペースが確保できます。このアイディアで生まれた貼り方こそヒストグラム(柱状グラフ)そのものです。

カードを貼るスペースに制限がある状況を意図的に設定しました。そのような状況に出会ったことで,それまで個別に貼っていたカードを,ある範囲を決めてまとめて貼ろうというアイディアが生まれてきたのです。データの活用で大切なことは,このように子どもが自らデータに働きかけていくことです。教師が無理やり子どもにデータを活用させるのではありません。

2017年10月15日日曜日

佐渡の学校で授業診断&公開授業

先日,私の故郷・佐渡の2つの小学校を訪問しました。どちらの学校も,以前から訪問させていただいる学校です。どちらの学校も,全学級が算数の公開授業を行いました。全クラスが算数の公開授業ができること自体,2つの学校のレベルの高さを物語っています。

全クラスの算数授業を参観しました。以前の授業と比べると,どのクラスの先生方の指導力も向上していました。前回の訪問で指摘させていただいた点が,着実に改善されていました。それにともない,子どもたちの呟きや考え方の質もレベルアップしていました。教師が努力を続けると,子どもの力も確実にレベルアップします。

5年生の子どもたちとの公開授業も行いました。1~5の整数の数字全部と+,−の記号を使って,いろいろな答えの式を作る授業でした。1~15までの整数の答えが全部できると考えていた子どもたちですが,実際に計算すると答えは奇数しかありません。ここで子どもたちから,「だったら6をたせば偶数の答えができる」と素敵な呟きがあがります。子どもたちが場面を拡張したのです。次期学習指導要領が求める「深い学び」の姿が生まれてきました。

そこで,1~6の数字カードで偶数の答えになる式を探します。ところが,何回計算しても偶数の答えになる式はできません。とろこが,「できました」と声があがります。その式を板書してもらいます。すると,その式には5が使われていませんでした。すると,「だったら5を抜いたら偶数ができるんじゃないかな」と,またまた素敵な呟きがあがります。1,2,3,4,6の数字で,再度実験開始です。すると今度は,「できました」というれしい声が次々とあがってきました。ここでも子どもたちが,場面を拡張して考えたのです。そして,それまでできないと考えていた偶数の答えを見つけることができました。

質の高い佐渡の子どもたちと先生方と,算数を愉しんだ2日間でした。

2017年10月4日水曜日

体積が最大の柱体は?

子どもたちに,次の問題を提示します。
「周りの辺の長さの合計が52㎝で体積が最大の柱体を作ろう」
 柱体は,円柱・三角柱・五角柱など様々です。さて,どの柱体の体積が最大になるのでしょうか。

子どもたちは,次のように考えました。
「立方体の体積が最大になると問題集に書いてあったから,立方体が最大だよ」
「そうだね。きっと立方体が最大になるね
ほとんどの子どもたちが,立方体の体積が最大になると考えました。
 
 そこで,子どもたちに具体的な辺の長さをノートの見取り図に記入させました。ところが,52㎝では立方体は作図できません。そこで,子どもたちが次に考えたのは,できるだけ立方体に近い直方体(縦4㎝・横4㎝・高さ5㎝)を作ることでした。なかなか鋭い視点をもっています。

この意見から,次の考えも生まれてきました。
「だったら三角柱も同じようにすればいいね。できるだけ立方体に近いような長さにすれば体積が大きくなる」
 立方体を基準に三角柱もそれに合わせようとしたのです。この見方も鋭いですね。底面が5㎝・6㎝・6㎝,高さ6㎝の三角柱は立方体に似た辺の長さのバランスです。
 この段階でも,多くの子どもたちは直方体の体積が最大だと予想しました。

 そこで工作用紙で2つの柱体を作図します。ペアで分担して作りました。柱体が完成すると,「あれ,三角柱が大きい?」という声が聞こえてきます。実際に作図をすると,三角柱の方が体積が大きく見えたのです。当初の予想とは大きく異なる結果です。予想とのズレを子どもたちが感じた瞬間です。このズレが,この授業の最大のおもしろさです。

 この後,実際に体積を求めます。三角柱も直方体と同じように底面積×1㎝の基準となる体積が,何個分高さ方向に積み上がるのかを考えれば求められます。この計算で求めた体積の確からしさを,子どもたちが作成した三角柱に水を入れて確認しました。

 計算でも水を入れて確認しても,結果は三角柱が大きいことがわかりました。予想と結果を大きく異なった1時間でした。

2017年9月20日水曜日

反比例はエアーホッケーで

エアーホッケーを使って,算数の問題を考えました。
「円形のエアーホッケー盤があります。ゴールに入るまで何本の線ができるでしょうか」
 このエアーホッケーは相手は邪魔しないという特別ルールです。ノートに円を作図します。先ずは,45°でパックを発射した場合を実験します。右端の壁にぶつかったパックは,同じ角度で跳ね返りゴールに入ります。従って,2本の線ができます。この作図は、かなり面倒です。実は、この面倒さを子どもたちに実感させておくことが、後半のきまり発見へとつながる布石となるのです。
 次に,30°で発射した場合を実験しました。30°では3本の線でゴールへと入ります。ここまでの結果から,
「わかった,次は6本だ。だって,45×2=9030×3=90だから」
と声があがります。2つの実験から,線の本数を見つけるきまりを見つけたのです。一方,「もう少し実験しないとわからない」という声も聞こえてきました。たった2つの情報だけで、きまりだと断定するのは速すぎるという指摘です。この視点での意見が生まれることも、すばらしい子どもたちです。

 子どもたちは、前述のきまりを使えば、「15°なら6本になる」と考えました。そこで,15°で発射した場合を作図で確かめます。すると,子どもたちの予想通り6本であることが確かめられました。この結果から,今度は新しいことが見えてきました。
「比例っぽくなっている」
30°の角が÷2になると,本数は2倍になる」
90°で発射すると1本。これを基準にしないといけない」
90°1本を基準にすると,角度は÷2、÷3…となると本数は×2,×3…となっている」
「比例の反対になっている」

 反比例の見方を子どもたちは発見したのです。この学習では、90°でパックを発射する場面を、意図的に教師からは提示していません。それは、子どもに基準となる「1本」の場面を見出してもらいたいと考えたからです。子どもたちは、発射角度と線の本数の積が90になるきまり発見から、「1本」の基準を見つけていくことができたのです。基準となる「90°では1本」が見えてくることで、反比例の見方はよりわかりやすくなります。

「だったら,10°だなら9本になる」
 見えてきたきまりを使って新しい場面を考える声も生まれてきました。

 反比例の見方・反比例の関係を示す文字式など,反比例学習3時間分の見方が,一気に生まれた1時間でした。すばらしい追求力を発揮した子どもたちです。