2023年10月31日火曜日

たし算ピラミッド!

 東洋館出版社「板書シリーズ1年下」に掲載されている「たし算ピラミッド」問題を,子どもたちに提示しました。ところが,子どもたちの反応は,板書シリーズとは大きく異なり,導入場面から大爆発。子どもの発想に寄り添いながら,展開を大きく変えていきました。

最初に,空白の3段のピラミッドを提示します。その後,「9+8」「18」を四角に記入します。この2つの情報だけで,子どもから様々な発想が生まれてきました。

「9+8の答えは17だ」

「(上から見ると)1ずつ減ってる」

「でもさあ,たし算ピラミッドなのに減るのは変だ?」

「だったら,下から見たら1ずつ増えてるよ」

「だったら,3段目は16になるね」

数の変化のきまりに気付く声が生まれてきました。そこで,3段目左端の四角の中が「16」になることを提示します。これで,先ほどの子どもたちが予想した数の変化のきまりが検証されたことになります。

その後,2段目の右側が「8+9」,3段目右端が「16」になることを提示します。すると,ピラミッドの右側にも,左側と同様の数の変化のきまりがあることに子どもたちは気付いていきます。

残る空白の四角は3段目の真ん中です。この場所が「16」になることは,子どもたちもすぐに予想ができました。しかし,この四角には式が入ることを告げます。子どもからは,「8+8」「9+7」「7+9」の3つの式が発表されます。さて,真ん中に入る式は,どれなのでしょうか。

当初,子どもたちは式を特定することがうまくできませんでした。ところが,ピラミッド最上段の18が「9+9」の式になることが分かると,一気に動き出します。

「分かった。9+9は9と9が同じ数だ」

「だから,その下も同じ数の8+8になる」

たされる数・たす数の同じ部分を見つけることで,その見方を3段目にも適用して考えていったのです。この見方は,3段目の左右の四角にも波及します。

「左は9+7。9+8のたされる数が9になっているから,ここも9になる」

「それなら,一番上もたされる数が9になっている」

「右は7+9。1段目も2段目もたす数が9になっているから」

この時間は,複数の情報の中の共通点に気付くこと,また,その気付きを他の場面に適用することで,学びを深めていくことができました。



2023年10月27日金曜日

奇跡のカードゲーム!

 「答えが大きい方が勝ちゲームをしよう」と子どもたちに投げかけます。

クラスを2つに分けます。代表の子どもが前に出て,箱の中の計算カードを1枚取り出します。答えが大きい方に1ポイント入るゲームです。

1回戦は,6+7=13が先ずは引かれます。子どもからは,「中途半端な数だ」「結構大きい数だ」と,声があがります。その後,8+4=12が引かれます。「勝った」「負けた」の声と同時に,「3と2を見たら分かる」「一の位を見たら分かる」と声があがります。数の大小比較を行う視点が子どもから生まれてきました。

2回戦は,8+7=15が引かれます。それと同時に,「結構できない」「16,17,18,19,20なら勝てる」と,反対チームが勝つための声が生まれてきました。しかし,子どもたちが使っている計算カードの答えの最高値は18です。子どもたちも,途中でそのことに気がつきます。その気づきから,「9+9が最高」という式を見極める声が生まれてきました。

その後もゲームを続けていきます。4+7=11のカードが引かれました。すると,「これより少ないのはない」と声があがります。計算カードの最小値は11です。従って,「もう負けた」という思いから生まれてきた声です。ところが,この声に対して次の声が生まれてきます。

「11になる式は,他にもあるよ」

「もう出てるよ。3+8も2+9も11だよ」

「他にまだあるよ。6+5もそうだよ」

「5+6もそうだよ」

これらの声は,「11だから負けた」と諦めなくてもいいという思いから生まれた声です。最低でも引き分けになる可能性があるという声です。しかし,その可能性はかなり低いと考えられます。

さて,反対チームの子どもがカードを引きます。カードは,なんと4+7=11が引かれます。教室は大騒ぎになりました。奇跡の一瞬でした。

実は,答えが11になる式の種類が最多なのですが,そこまでの気づきはまだ1年生には難しかったようです。

計算ゲームを通して,数の大小比較や答えが同じ式を予想することなどができた1時間でした。


2023年10月26日木曜日

国語力と算数

「答えが10より大きくなる式を作ろう」と,子どもたちに投げかけます。

最初に提示したのは,1+の式です。の中には,0〜9の数字を入れます。この条件提示で,「無理」「できない」という声が聞こえてきました。一方,それらの声にきょとんとした表情の子どももいます。子どもの中から,「1+9はできる」と声があがります。

この声をきっかけに,様々な考えが生まれてきました。

「1+9は10にぴったりになる」

「ぴったりはだめだよ」

「10より大きいと問題に書いてあるから,10はだめだよ」

「11,12はいいけど,10はだめだよ」

「10より大きくだから,10より上じゃないとだめだよ」

「10を超える数じゃないとだめだよ」

「10より大きくなる」という問題文の意味を読解する時間を十分に設定しました。1年生にとっては,この問題文の捉えにズレが生まれるのが実情です。しかし,「○○より大きい」などの問題文は,今後も出てきます。そのため,問題文の意味をじっくりと読解する時間を大切にしたのです。

「10より大きくなる」は答えが11以上であることを,クラス全体で共有しました。すると子どもから,また新たな声が生まれてきます。

「1じゃなくて,2なら10より大きくなる」

「2+なら11ができる」

子どもたちは,たされる数に自ら働きかけました。本当にたされる数が2になると,答えが11を超える式ができるのでしょうか。ノートで確かめます。その結果,子どもたちの予想通り2+9が11になることが分かりました。

次に,3+□の式を提示します。この式は,3+9=12,3+8=11と2つの式ができます。10より大きくなります。

するとここで,「わかった,4になったら3こできる」と声があがります。2+,3+の式から,その先の世界を予想する声が聞こえてきました。

「たされる数が4になったら,式は3つできる」

「だって,たされる数が2の時は式が1つ。3の時は,式が2つ」

「式が1つずつ増えているから,次に4になったら,また1増える」

たされる数が4の時の式数や,そのように考えた理由が発表されました。果たして,子どもたちが見つけたきまりは当てはまるのでしょうか。たされる数が4の場合を実験します。結果は,子どもたちの予想通り3つの式ができました。その後も,たされる数を変えて実験を続けます。きまりの一般性が当てはまることが見えてきました。

問題文の意味をじっくりと読解する国語的な展開からスタートした1時間でした。 


2023年10月24日火曜日

京都の小学校を訪問しました

 昨日は,京都の山間部にある小学校を訪問しました。全クラスが算数授業を公開しました。今年で2年連続の訪問になります。昨年よりも,先生方の授業レベルが高まっていることが実感できました。

やはり継続して同じ学校を訪問することで,先生方の変化が見えてきます。成長した面はもちろんですが,課題も見えてきます。

教育委員会等が学校訪問で指導に入ることがありますが,同じような授業場面なのに昨年の指導主事と今年の指導主事が真逆ことを述べることもあります。これでは現場の先生は戸惑います。やはり,同じ指導者が同じ目線で継続して授業を指導することが大切ですね。

2023年10月22日日曜日

授業テラスメンバーと指導案検討会!

 昨日は,授業テラスメンバーと代表授業者の指導案検討会を行いました。授業テラスでは私をはじめとする専任講師と参加メンバーがチームを組んで,授業伴走というプログラムを進めています。これは,代表者の指導案検討,公開授業,授業後の協議会の3点セットを,チームメンバーと協働でオンライン形式で進めるものです。従って,全国どこからでも参加が可能です。

今回は3年生「分数」単元の授業でした。授業者の意図をどのようにしたら具現できるのかを考えながら,検討会が進められました。次回は,この検討会をもとにした授業公開が行われます。さて,どんな授業が展開されるのか楽しみですねえ。

この企画に参加ご希望の方は,以下のアドレスからお入りください。会員制の教師の学びサイトです。

https://www.nijin.co.jp/jugyoterrace

2023年10月20日金曜日

数字がないけど・・・

 「答えが14になる問題を作ろう」と投げかけます。これと同時に,次の声が生まれてきました。

「昨日と同じだ」

「同じもの同士じゃないと,たせないよ」

「種類が同じじゃないとたせないよ」

「種類が違うとたせなかったね」

前の学習では,単位と種類の異なるものはたせないことを学習しました。その学習が,子どもたちから自然に想起されてきました。既習学習とつなげるよき見方が生まれてきました。

その後,問題作りに各自で取り組みます。多くの子どもは「車が7台止まっています。7台きました。合わせて何台ですか」のような,「種類」と「単位」を意識した問題を作りました。

さて,子どもたちが作った問題文の中に,Y子が作ったおもしろい問題がありました。その問題文を,Y子に読んでもらいます。

「Kさんと遊んでいました。そこに,12人やってきました。全部で何人になりましたか。」

問題文は板書しません。耳だけで聞いて,式を発表させました。子どもから生まれたのは,「12+1」「1+12」「2+12」「4+10」「1+13」とバラバラの式でした。さて,一体どの式が正しいのでしょうか。

「Kさんと遊んで12人来たから,1+12だ」

実は,このように考える子どもたちが半数以上いました。耳だけの情報で判断することは,1年生には難しいのですね。その後,次の声があがります。

「『Kさんと遊んでいました』と言ってたよ。だから2人だよ」

「『と』があるからKさんとYさんの2人だよ」

問題文に含まれる「と」の一文字に着目できるか否かで,式が異なるのです。その違いを指摘した声です。この声を聞いた子どもたちからは,「そうか」「そういうことか」と納得の声が聞こえてきました。

一般的な問題文は,「子どもが2人遊んでいました。あとから子どもが12人やってきました。全部で子どもは何人になりましたか」のように,問題場面に必要な情報が数値として提示されています。ところが,Y子が考えた問題文には「2人」という数値表現はないのです。しかし,文意を読み解けばそこに「2人」という数値が隠れていることが見えてきます。

問題作りを通して,子どもの発想の柔軟さに驚いた1時間となりました。



2023年10月19日木曜日

本+本はいいの?

子どもたちに「みつお君が,8+7になる問題を作りました」と問題文を提示します。しかし,これだけではまだなんのことやら分かりません。
そこで,みつお君が作成した問題文を提示します。最初に作問したのは「みかんが8個あります。7個もらいました。みかんは全部で何個になりましたか」です。これは全員が「8+7」になることに納得です。

次に作成したのは,「車が8台あります。花が7本咲いています。合わせていくつですか」でした。この問題文を提示するのと同時に,「ダメ」「本と台はだめ」「合わせられない」などの声が聞こえてきました。子どもたちは,この問題文では8+7の式はできないと考えました。
「だって,車と花は違う物だからたせないよ」
「本と台は違うから,たせない」
「前にも似たのをやったよ」
「アイテムにも書いてあったよ」
単位が異なる物はたせないことに,子どもたちは気付いていきました。それと同時に,「たせないものは他にもある」と声が聞こえてきました。ここから思わぬ展開になっていきます。
「みかんと車はたせない」
「花とみかんもたせない」
「花と鼻もたせない」
「同じ言い方でも,意味が違うとたせないね」
「橋と箸もたせない」
「箸と花はたせる。だって,本と本だから」

箸と花は,どちらも数え方の単位は「本」です。だから,この2つはたせるという考えです。なるほど,そう考えるのかと思いました。
さて,子どもたちはこの件についてどう考えるのでしょうか。
「違うよ。たしちゃだめだよ」
「箸と花は違うよ」
「でも,本と本だからいいよ」
「でもさあ,箸の本と花の本は種類が違うからだめだよ」

単位が同じでも,その種類が異なればたせないという見方が生まれてきました。この「種類」という言葉の登場で,前述の子どもも納得をしました。たせる数の単位と種類の関係が,箸と花が生まれることで,より明確になりました。
異種の比較対象物があることで,そのよさや意味はより明確になっていくことを実感した時間となりました。