2024年2月29日木曜日

「少ない」なのに「たしざん」?

 子どもたちに、次の問題を提示します。

「イチゴが何個かあります。キウイはイチゴより2個少ない10個です。イチゴは何個ありますか」

問題文を板書している途中で聞こえてきたのは,「『すくない』はできない」「前は「5個多い」だった」「『多い』と『少ない」だから反対になっている」の声です。前回の問題と比較して,その違いを鋭く指摘してきました。

「『すくない』からできない」という声が聞こえてきたので,「この問題はできないね」と子どもたちに投げ返します。すると今度は,次の声が聞こえてきます。

「図を描いたら分かるよ」

「図を描けば,次に式も分かるよ」

そこで,ノートに自分がイメージする図を描かせます。ホワイトボードには,キウイが10個ある図だけを板書させます。1年生にとって,多くの情報を一度に読解するのはハードルが高いからです。

先ずは,丸10個の図が,キウイの数であることを確認します。その後,「次はどうしたらいいのかな」と尋ねます。すると,「2個少ないから」と言いながら,キウイの7個目と8個目の間に線を引きました。「少ない」のですから,2個少ない位置に線を引いたのです。ところが,この行動に対して「そうじゃない」という声があがります。

「少なくしたらダメだよ」

「2月26日は『多い』でひきざんだった。だから今日は,『少ない』でたしざんだよ」

前回の学習から導き出された考えです。一見もっともそうですが・・・。何人かの子どもは,首をひねっています。「少ない」=「たしざん」の論理構成が理解できないからです。

子どもたちの説明が続きます。

「イチゴより2個少ない10個だからたしざんだよ」

「???」

「10+2で12個だよ」

「???」

「2個少なくて10個がキウイでしょ。だから,10個に2個たしたら元にもどるんだよ」

「!!!」

最後の説明で,首をひねっていた子どもたちの顔が笑顔に変わっていきました。しかし,すぐにではありません。この場面はゆっくりと展開しました。1年生の理解には時間がかかります。

今回の問題は,「少ない」と書いてあるにもかかわらず「たしざん」でした。そこで,この逆である「少ない」で「ひきざん」の問題文を考えさせました。

「イチゴが3個あります。1個食べたら少なくなりました。残りは何個でしょう」

この問題文なら,「3−1」のひきざんになります。

「少ない」なのに「ひきざん」「たしざん」,「多い」なのに「たしざん」「ひきざん」の両方の式が導きされることがあることが分かりました。子どもからは,「だから図で確かめたらいいんだ」と声があがります。これこそまさに,本時で培いたい見方です。問題文のキーワードだけで,単純に立式を行うのではなく,問題場面を読解し図に表現していくことが算数学習の第一歩であることに,子どもたちは気付いていきました。


2024年2月27日火曜日

子どもたち大混乱!

 子どもたちに「りんごが何個かあります。みかんはりんごより5個多い8個です。りんごは何個ありますか」と問題を提示します。この問題を見た子どもから,次の声が聞こえてきます。

「前は『りんごが3個あります』だった。でも今日は,何個か分からない」

「分からないからできないんじゃないかな」

「今までの問題と違うよ」

「図をかけば分かるよ」

「『多いが8個』ってなに?」

問題文に未知の部分があるため,子どもたちの頭には?マークが浮かんでいます。

ここまでの段階で,自分の考えをノートのまとめさせました。式を描く子ども,図を描く子どもがいました。ほとんどの子どもたちは,「3個」「8−5」と描いていました。一方,「8+5」の式も見られました。

そこで,「8+5」の式の意味を読解します。

「『おおい』と問題にあるからたしざんにした」

「前に『みかんはりんごより5個多い』と『多い」でも引き算があったから,引き算もある」

「『鳩が9羽,雀が16羽,どちらが何羽多いですか』の問題では,『おおい』ってあるけどひきざんだったよ。だからたしざんとは言えない」

一部の子どもたちの頭が,混乱状態になってきました。「どっちなの?」という「?」が頭に充満しています。この後も,「ひきざんだ」と考える子どもの説明が続きます。

「りんごから見たら,5個少ない。みかんから見たら,5個多い」

視点を変える説明でしたが,かえって「?」が増えてしまいました。ここで生まれてたのが「図を描いたらいいんじゃない」の声でした。

そこで,図で問題場面を確認します。その結果,多いのはみかんの数。りんごは,みかんよりも5個少なくなっているという図の構造が見えてきました。図が見えると,式も見えてきます。「りんごは,みかんより5個少ない」図のなので,式は「8−5」と確定します。

混乱の中から,図の有用性を実感できた時間となりました。


2024年2月22日木曜日

コピー用紙100枚の厚さは?

子どもたちに,次のように投げかけます。
「コピー用紙100枚の厚さは,何ますくらいの厚さかな?」
問題場面がイメージできる子,そうではない子に分かれました。そこで,問題文の意味を共有していきます。
「もし国語辞典なら,ノートに載せて何ますあるか調べるってことだよ」
「もし」という例示の考え方を使うことで,問題文のイメージが子どもたちに一気に伝わりました。

すると今度は,副教材の算数の力の頁を開いている子どもの姿が目に入りました。そこで,この姿の意味を全員で読解します。
「算数の力が何頁あるのかを調べている」
「51頁あった。だから2冊だとだいたい100頁。2冊合わせたのと,同じくらいの厚さになるんじゃない」

コピー用紙が目の前にはないので,それに代えて算数の力を活用しようと考えたのです。置き換えの考え方です。この考え方も,素晴らしいですね。
ここで,コピー用紙100枚の厚さを予想させました。子どもたちは,算数の力や国語辞典,アイテムなどを使って100枚の厚さを予想していきました。
算数の力を基準にした子どもは,1ますの半分と予想しました。アイテムを基準にした子どもは,1ますと予想しました。この違いの原因は,2つの副教材の紙の厚さの違いです。

ここで,授業の冒頭で聞こえてきた「コピー用紙1枚の厚さが分かったらいいのに」という声を紹介します。すると「コピー用紙1枚が分かれば,100枚の厚さも分かる」と声があがります。ここまでの場面では,子どもたちはコピー用紙を手にしていません。そこで,1人1枚のコピー用紙を子どもたちに配ります。
コピー用紙1枚を手にした子どもたちは,どんな行動をとるでしょうか。多くの子どもたちは,コピー用紙1枚と算数の力や国語辞典の紙1枚の厚さを比べ始めました。まだ長さを知らない1年生らしい行動です。

子どもたちの調査の結果,コピー用紙1枚の厚さは国語辞典・算数の力1枚と同じであることが分かりました,この結果から,子どもたちは次のように考えます。
「算数の力は51ページだから,2冊の厚さと同じ」
そこで,算数の力2冊を重ねて,ノートのマス目の上に置いてみます。結果は,ノート1ますの半分の大きさであることが分かりました。これが子どもたちの予想になります。

その後,4人1チームでコピー用紙100枚を数えます。この数え方もチームによって様々でした。1年生は本当におもしろい!

100枚数えたところで,紙をノートのマス目に当ててみます。結果は,多くのチームがノート1ます分でした。予想の約2倍でした。この原因に気付くのは,1年生にはハードルが高いようでしたが,気付いた子どもたちもいました。
「算数の力は,1ページの後ろが2ページ」
「だから,算数の力4個分で100枚になるんだ」

基準量の意識や置き換え・例示の考え方などが次々と発揮されたコピー用紙100枚の厚さ調べの学習となりました。


 

田中博史先生とのジョイント講座開催!

 3月26日(火)大阪府吹田市で,私の師匠・田中博史先生とのジョイント講座を開催します。こちらは吹田市の先生方対象の講座です。

今回は,なんと国語の模擬授業もしてみようかなと考えています。実は私,国語の授業も得意なんです。なんったて,かつての国語と算数のジョイント研究会・基幹学力研究大会では,国語の先生をぶった切った?!経験がありますので・・・。

吹田の先生方,お楽しみに!




2024年2月19日月曜日

1〜100を見つけよう!

 子どもたちに「1〜100の数を見つけよう」と投げかけます。数表をノートに書かせたあと,それに当てはまる数を教室から探させました。

「1年生の1」

「2組の2」

「時間割の数字1〜6」

「今日の日にちは19日」

「カレンダーは1〜31日」

「算数ノートは17ます」

これらの声から見つかった数字を,赤で囲んでいきます。しばらくすると,次の声が聞こえてきました。

「算数の力は1〜48ページ」

「それならアイテムは1〜120ページ」

アイテムに書かれているページ数の発見で,一気に1〜100までの数字が見つかりました。想定以上の早さにびっくりでした!



2024年2月18日日曜日

オナジン発見!

 子どもたちに次のように投げかけます。

「折り紙が50枚あります。20枚」

問題文をここで止めます。これを見た子どもから,次々と声があがります。

「問題作りだ!」

「このあとも続くから,『。』がないんだ」

「これって,2月9日の『25枚あります』の問題と似ている」

今回の問題場面と,2月9日の問題場面が似ていることをノートを検索していくことで,子どもたちは見つけてきました。

その後,続きの問題文とそれに当てはまる式と答えをノートに書かせます。それらの中のいくつかを,板書させました。

板書した問題文を,全員で考えて式化していきます。いくつかの問題を解き終えた時です。子どもから次の声があがってきました。

「50+20+100+11と50+20は最初の式が同じだ」

「オナジンだ」

「50+20ー10と50+20も最初が同じだから,オナジンだ」

算数の学習では共通点に気付くことは大切な数学的な見方・考え方の一つです。「オナジン」というキーワードを使いながら,子どもたちは共通点を進んで見つけていくことができました。

本問題は「板書シリーズ1年下」(東洋館出版社)を参照しています。また「オナジンン」は,私が編集している学校図書の算数教科書に登場する数学的な見方・考え方を象徴するキャラクターです。


2024年2月15日木曜日

見方・考え方はつながる!

 今日は,本校高等部の卒業式でした。初等部3~6年生時代を担任した子どもたちが,卒業していきました。卒業式の答辞では,初等部出身の教え子が会場全体を涙に包む感動の言葉をドラマチックに語ってくれました。すごすぎでした。

放課後,卒業生の多くの子が初等部を訪ねてくれました。多くの子どもたちが語ってくれたのは,次のことでした。

「尾﨑先生の算数のおかげで数学が今でも得意です」

「初等部の時に,『基準が』『4ます関係表が』と言うと,すばらCマークがもらえたよねえ(笑)」

「俺は先生のすばらCマークを4回もらった」

「超すばらCマークは1回だけだった」

 算数授業談義が次々と生まれてきました。算数の見方・考え方の基本となる「基準」「4ます関係表」(→つまり比例関係)などが現在も彼らの頭にしっかりと学習の痕跡として残っていることにうれしくなりました。また,私が見方・考え方を活用した際の価値付けとして使った「すばらCマーク」をもらった個数を具体的に彼らが覚えていたことにも感動しました。

その後は,彼らが手にした卒業アルバムに「超すばらCマーク」を次々とサインするサイン会の時間となりました。それを大喜びする子どもたちの姿は,初等部時代と変わらずかわいかったですねえ。皆さん大学生活も楽しんでくださいね!