2024年10月2日水曜日

だまされた!

子どもたちに「3mのテープを渡します。3/4mを切り取りましょう」と投げかけます。4人1組に3mの紙テープを渡します。4人で協力して,テープを折り始めます。子どもたちは,切り取ったテープを貼っていきます。
結果は,全ての班が同じ長さのテープを切り出しました。
「全員,同じになったね」
この私の問いかけに,多くの子どもたちが頷いています。ところが,じっくりとテープを見つめ子どもが数人います。その後,「あれ?」という疑問の声が聞こえてきます。
「3/4mは1mよりも短いよ」
「あっ!」
この指摘で,子どもたちがテープの長さを見直します。子どもたちの気づきが広がっていきます。
「1mの3/4を作るんだ」
「ぼくたちが作ったのは,3mの3/4だ」
「1mの3/4なら75㎝になる」
「3÷4で0.75mだ」
「だから,分けるのは1mを分ける」
「3mを分けると間違う」
3/4mと3/4の違いを,時間をかけてゆっくりと共有してきました。
その後,1mを基準にした3/4mを作りました。

量分数と分割分数の混同は,中学年から頻繁に見られる姿です。5年生も同様に騙されてしまいました。しかし,「3/4mは1mよりも短い」という気づきをきっかけに,作ったテープを見直すことにつながっていきました。



 

2024年10月1日火曜日

「2Lのジュースを□人で等分します。1人分は何Lですか」

この問題を提示し,「□がどんな数なら簡単ですか」と尋ねます。子どもたちからは,「2人」「4人」と偶数を指摘する声があがります。

そこで,□が2人の場合を実験します。これは「2÷2=1」なので1Lと分かります。

その後,「□がどんな数なら難しいかな」と尋ねます。子どもからは奇数の値が発表されます。そこで,□が3人の場合を実験します。式は「2÷3」です。ところが,計算が終わった子どもからから「割れない」「四捨五入したらいい」「あまりを出したらいい」などの声があがります。そのまま計算すると,「0.666...」となり割り切れません。つまり,きちんとした数では表現できないことが見えてきました。では,2Lを3人では分けられないのでしょうか。

子どもからは,次の声があがってきます。

「3つのカップにジュースを入れたら,分けられるよ」

「確かに!」

「でも,どうするの?」

「分数にしたら?」

「分数?」

「分数」という言葉が生まれてきましたが,クラス全体にはこのイメージは共有されません。そこで,「分数?」と投げかけます。

すると,指で円を描く姿が見えました。そこで,このジェスチャーの意味を読解します。

「コップを描いて,3つに分ける」

「もう1個コップを描いて,3つに分ける」

「1つのコップを赤く塗ると,これは1/3L」

「もう1つのコップも赤く塗ると1/3L」

「1/3Lと1/3Lで2/3Lになる」

1Lのジュースを1つの円で表現することで,1人分を求めるアイディアが生まれてきました。式を図に置き換えることで,分けられないと思っていた数値が分けられることが見えてきました。

2/3Lという分数ならすっきりした数で表現できます。

この方法が他の奇数でも使えるのか,実験します。7人の場合,9人の場合を実験します。いずれも図で1人分を確認します。9人の場合は,図で2/9Lと分かりました。

この9人分の図を描いているとき,「きまりがある」「くるっ」という声が聞こえてきました。そこで,今度はこの声を読解します。

「きまりがあるよ。もし2÷7なら,式の7は分母になっている」

「式の2は分子になっている」

「本当だ」

この発見に,多くの子どもが驚いています。そこで,「それはたまたまでしょ」と投げかけます。すると,次の声が続きます。

「たまたまじゃないよ。他もそうなっている」

「2÷3も3が分母で2が分子になっている」

「2÷9も分母が9で分子が2になっている」

「たまたま」の投げかけから,子どもたちは対象範囲をホワイトボード全体に広げて検証をしていくことができました。

帰納的な考え方を発揮して,わり算の商のきまりを発見した1時間でした。’



全国算数授業研究会関西算数セミナー開催

全国算数授業研究会関西ブロックが主催する算数セミナーを,12月8日(日)に大阪府高槻市で対面形式で開催します。詳細は以下をご覧ください。


 

2024年9月29日日曜日

今週末は新潟でGAKUTO新潟セミナー!



  今週末の10月5日(土)は,新潟市の新潟テルサを会場にGAKUTOセミナーIN新潟が開催されます。講師は,私の師匠・田中博史先生と私の同志・間嶋哲先生です。教科書をベースに,どのように子どもの主体性を伸ばしていくのかを学ぶ会です。

私は5年生の模擬授業を行います。参加者の先生方に悩んでもらう展開を考えています。一緒に悩み?ましょう!

以下のサイトから,お申し込みください。

 申込サイト
https://gakuto-sansu-seminar2024niigata.peatix.com









2024年9月25日水曜日

同じ大きさなら当たりゲーム!


 子どもたちに,「同じ大きさなら当たりゲームをしよう」と投げかけます。

裏返したカードを2枚表にします。そこに書かれた数の大きさが同じなら当たりです。トランプの神経衰弱のルールです。

最初に引かれたのは1/4と9/36です。この分数を見た子どもからは,「通分したらいい」と声があがります。それと同時に,分母・分子を変身する計算をジェスチャーで示す子どもの姿見えてきました。しかし,その動きは微妙に違います。

そこで,代表の子どもが分数を変身させていきます。その子は,9/36を「÷6」する矢印を板書します。それを見た子どもから「あー」「約分の方がやりやすいんだ」と声があがります。

9/36を1/4に変身します。これなら2枚の数字の大小比較ができます。

一方,別の動きをしていた子どもたちはどのように考えたのでしょうか。彼らは,1/4を変身させる方法を考えています。分母・分子を4倍して9/36に変身します。この方法でも2枚の数字の大小比較ができます。こちらが一般的な通分の方法です。

この時点での子どもたちは,「わり算よりもかけ算が簡単だから,かけ算のやり方がいい」と考えています。

次に引かれたのは,3/21と4/12です。多くの子どもたちは通分しようと考えます。最小公倍数が分母になるのですが,この数値がすぐに子どもからは聞こえてきません。21と12の最小公倍数をすぐに見つけるのは難しいようです。すると,「約分したらいいじゃん」と声が聞こえてきます。

「3/12を約分して1/7」

「4/12を約分して1/3」

「1/7と1/3なら公約数は21と分かる」

「約分した方が,通分が簡単にできる」

21と12の最小公倍数が簡単には見つからないという事実に出合ったからこそ,子どもたちはより簡単な方法を見つけ出そうと考えたのです。その計算方法が,約分をしてから通分するというやり方でした。

その後に引かれた2/7と4/8でも,子どもたちは2/7と1/2に数字を約分してから通分を行う手順で,大きさを比べていきました。

「簡単にしたいのが人間の本能だから,約分をしてから通分するのがいい」

このように約分→通分の方法のよさを説明する子どももいました。

これまでに学習してきた約分と通分を思う存分に使いこなした1時間となりました。


2024年9月24日火曜日

さっきはたせたのに・・・

パターンブロックつかみどりを行いました。教室を2つに分けて、代表の子どもが指2本を使って、袋の中のブロックをつかみ出します。その合計が得点になります。

1回戦は、1/2オザと1/6オザが取り出されました。この合計は、1/2を3/6に変身することで、3/6+1/6で4/6と計算を進めていくことができます。

2回戦は袋の中のブロックを変えました。取り出されたのは、4/4と1/3です。しかし、このたし算に対して「できない」と声があがってきました。そこでこの声の意味を読解します。

「さっきは、分母の2を倍にしたら計算ができた」

「でも、今のは2を倍にしても3にはできない」

「3を倍にしても2にはできない」

1問目はたされる数を倍分することで、分母を揃えることができました。ところが、今回の場合はたされる数を倍分しても、分母を揃えることはできません。だから「できない」と声があがったのです。では、この場合のたし算はできないのでしょうか?

子どもから次の声があがりました。

「最小公倍数にしたらいいんだよ」

「2と3だから6にしたらいいんだよ」

「12/6と2/6にしたら計算できるよ」

「たしたら2と2/6になるね」

「でも、小さくできるよ。2/6は1/3にできるよ」

「分母と分子を2でわればいいね」

両方の分母を計算しないと、分母が揃わない分数の計算の仕方を考えていきました。この過程で、通分の考え方だけではなく約分の考え方も生まれてきました。分数つかみどりゲームを通して、倍分・通分・約分の見方が生まれてきた1時間となりました。


2024年9月20日金曜日

体感で学びを想起する

 朝学習で算数のプリント問題に取り組んでいました。約数・倍数の練習問題です。

ある2人の子ども同士の会話です。

「ねえ,その問題は倍数の問題だよ。約数を書いているよ」

「あれ,倍数って何だったけ?」

「トントンパンてリズムうちをしたでしょ。あれだよ」

「そうかあ。分かった! じゃあ,約数ってなんだったっけ?」

「ビルを作ったじゃん。何階建てのビルが約数だったでしょ」

「そうだった!思い出した。ありがとう」

知識・技能を一方的に学んだだけであれば,このような会話は生まれなかったでしょう。体感を通して倍数・約数を学んだからこそ,そのシチュエーションが倍数・約数の意味を瞬時に想起することにつながったのではないでしょうか。

この子どもの様相から,学びに至るイメージ化をその後の学びの継続性にまで大きく影響することが見えてきます。体感したことは長く記憶にも残ることが分かりますね!