2018年2月5日月曜日

アートギャラリーの定理

子どもたちに次の問題を提示しました。
「□角形の美術館があります。頂点にカメラを設置します。最低何台のカメラがあれば,完璧に監視できるでしょう」
 三角形は,カメラを1台で完璧に監視できます。作図して台数を確かめます。この結果を見た子どもから,「四角形も1台じゃないかな」「えっ,ブーメラン型は2台じゃない」と声があがります。子どもたちが,場面を拡張して考えた瞬間です。
 四角形は,ブーメラン型でも凹の頂点にカメラを設置すると1台で監視できます。五角形も1台で監視できます。ところが,五角形の実験が終わった時点で,「六角形だと2台かも」「えっ、六角形も1台じゃない」と声があがります。子どもの予想にズレが生まれたのです。実験でカメラの台数を確認します。結果は2台でした。
 すると今度は,「わかった! 1,1,1,2,2,2になってるんだ」と声があがります。きまりに気づいた声です。この声をきっかけに,子どもたちは「3つで1パックになっている」「三角形〜五角形は1台,六角形〜八角形で2台,九角形〜十一角形は3台だ」と考えていきます。カメラの台数が3つの図形毎に1台増加すると考えたのです。一方,「そうじゃなくて,1,1,1,2,2,2,2かもしれないよ」という声もあがりました。カメラの台数と図形の関係が3つ,4つと1つずつ増加するという視点でです。このパターンでの変化も,子どもたちはこれまでに経験しています。どちらも良い視点できまりを見つけてきました。
 子どもたちが考えたきまりを検証するには,本来ならまだ実験をしていない七〜九角形を調べる必要があります。ところが子どもたちは,「九角形を調べればいいじゃん」と考えました。九角形が2台か3台かが分かれば,自分たちが予想したきまりの真偽が効率的に確かめられると考えたのです。この考え方も驚きでした。
 ノートに九角形を作図してカメラの台数を実験します。「あれ,2台にしかならない」の声がたくさん生まれます。カメラの台数は後者のきまりと思いかけたとき,「3台ができた」という声が生まれます。その図形を全員で確認します。すると3台なければ監視できない九角形であることが確認できました。この結果から,カメラの台数は3つの図形で1パックのセットになることが見えてきました。

 今回,子どもたちが取りくんだのはアートギャラリーの定理と呼ばれる問題です。大学数学で取り組まれている問題を学生版にアレンジしたものです。

2018年2月1日木曜日

トイレットペーパーの芯のくるくる

子どもたちに,次の問題を投げかけました。
「トイレットペーパーの芯の模様(くるくる)の長さは何㎝でしょう」
 子どもたちは,
「半径か直径を教えてほしい」
「模様がくるくる何周しているのか教えてほしい」
と考えました。
 そこで,直径は10㎝,模様は3周していることを教えました。この2つの情報で模様の長さを求められるのか実験しました。
 子どもたちは,なんとか計算で模様の長さを求めようと考えました。しかし,2つの情報だけではうまくいかないことに気づきます。

 次に生まれてきたのは,
「芯の高さを教えてほしい」
という声でした。高さが分かれば,円柱状の芯の展開図が描けます。計算の限界への気付から,展開図を作図することで模様の長さを求めようと考えたのです。芯の高さは,19.8㎝。再びノートに実験します。

 さて,子どもたちが作図した展開図は平行四辺形と長方形に分かれました。円柱の側面をどこで切るかで形が異なります。ところが,平行四辺形は斜辺の長さは模様部分と一致しています。模様の長さが分かっていないのに斜辺部分を作図することはできません。
 実際に作図できるのは,円柱を長方形状に開いたパターンになります。この中のくるくるの線のイメージは,子どもによって異なりました。くるくるしているから,曲線をイメージする子ども。展開図状態にしたら直線になるとイメージする子ども。くるくるの線は3本斜めに引かれます。実際のくるくるの線は直線になります。
 ここまでイメージができれば,あとは作図でくるくるの長さが求められます。実際の大きさで作図する子ども,縮図を使って作図をする子どもがいました。どの方法でもくるくるの長さは96㎝になることが分かりました。


 最後に,くるくるの線に沿って組み立てた図形を分解しました。とてつもなく斜辺の長い平行四辺形が誕生しました。想像以上の長さに,子どもたちも驚いていました。

マスラボ全日程決定!


 4月から私と樋口先生(京都教育大学附属桃山小)・西村先生(京都市立醍醐西小)の3人で開催する算数連続講座・マスラボの全5回の日程が決定しましたのでお知らせします。


1回目 4月21日(土)
2回目 6月30日(土)
3回目 8月26日(日)
4回目 10月27日(土)
5回目 1月26日(土)


会場は,京都市の京都テルサの予定です。5回,それぞれにテーマ別の開催になります。授業ビデオを見ながらの授業検討もあります。演習もあります。算数の授業力をアップされることを目指されている先生の参加をお待ちしています。

すべての会に参加される場合は年間パスポートを購入されると割引価格になります。もちろん,ご都合のつく会だけに参加されても大丈夫です。申込み・会の詳細は以下のアドレスからお願いします。

http://www.kokuchpro.com/event/mathlabo1/

2018年1月30日火曜日

ーとーなら+?

 「中学へのかけ橋」という学校図書の教科書を使ってすごろくゲームを行いました。

 1回目のゲームでは,−6〜+6の数字カードを使ってすごろくを行いました。例えば,+2のマス目にいるときに,−3が出たとします。この場合は,(+2)+(−3)で−1に移動します。出た数字カードの数値をたして,ゴールをめざしました。

 2回目は,サイコロを振って,偶数の目が出たら「+(たす)」,奇数の目が出たら「−(ひく)」の計算をするというルール変更を行いました。1回目はすべての数字カードの数値をたしていました。今回は,サイコロの目によりひく場合もあります。
 ルール変更を受けて,子どもからは「1−(−5)になったら答えはいくつなの?」という疑問が生まれてきました。この計算の答えは,中学数学では6とすぐに答えを求められます。ところが,小学生の子どもたちにとっては「−5をひいているのに,なぜ増えるの」という素直な疑問が持ち上がります。小学生なら当然の疑問です。この疑問を子どもたちと考えました。

 話し合い当初は,意見が発表されればされるほど「頭がこんがらがってきた」という声があがりました。その混乱を解消へと向けたのが,数直線と方向を使った説明でした。
「たすは右,ひくは左向きを表す」
「プラスはたす方向に進めという命令。マイナスはたす方向とは逆に進めという命令」
「プラスは計算の記号の方向に進めという命令。マイナスはその逆方向に進めという命令」
「−(−5)のひくで左向きになる。プラスならその方向に進むけど,マイナスだから向きが反対になる。反対向きで5進むから答えは6」
 
 これらの説明に合わせて,代表の子どもに実際に動き方を実演してもらいました。これで子どもたちにも,1−(−5)の計算の動きの意味が見えてきました。
 その後の実際のゲームでも,「ひくだから左向きだよね。そこにマイナスをするから向きが変わるから,数が増えていくね」と言いながら駒の動きを考えている子どもがたくさんいました。たす,ひく,プラス,マイナスの動きを,体で表現したことが,子どもたちの理解を一層深めたようです。


 「−と−は+になる」というのは数学の約束です。しかし,その約束にはこのような論理的な理由が隠れています。その理由を論理を使って追求した1時間でした。

2018年1月12日金曜日

当日受付はありません

関西大学初等部研究会が2月3日(土)に開催されます。申込み詳細は,以下のアドレスからお願いします。

http://www.kansai-u.ac.jp/elementary/pdf/dai8kai_annai2-1.pdf

本校研究会は,事前申込み制です。申込み〆切は,1月19日(金)16時です。

当日受付はありません。参加される方は,〆切り日までの申込みをお願いいたします。すでに多くの先生方からの申込みをいただいています。ありがとうございます。当日,お会いできることを楽しみにしています。

2018年1月1日月曜日

2018年 Math Labo連続講座のお知らせ

あけましておめでとうございます。

2018年最初の企画は,Math  Labo連続算数講座開催のご案内です。京都教育大附属桃山小の樋口先生,京都市立醍醐西小の西村先生とのコラボによる算数連続講座です。この2人は,私が属する算数サークルのメンバーです。算数に対する熱い思いをもっている先生です。私とこの2人の先生,そしてご参加いただいた先生たちと参加型の算数講座を開催します。

会の詳細は以下の通りです。会の案内文を転載します。

算数教科書の著者で、算数授業名人である尾崎正彦先生とMath Labo!がコラボし、算数授業づくりについて、授業ビデオ(もしくは模擬授業)・協議会・講座を通して、1年間(全5回)考えていくセミナーです。
第1回目のテーマは「算数の授業づくり はじめの一歩」です。
タイムスケジュール
1300~1320 受付
1320~  オープニングトーク
1325~1350 Math Labo!メンバー授業ビデオ参観
          ○年「         」 西村祐太(京都市立醍醐西小学校)
          (学年・単元名は新年度になり次第報告します。セミナー直前に撮った授業を使い
           ます。)

1355~1415 グループに分かれて授業について検討
1415~1440 協議会 (尾崎先生、樋口を交えて協議していきます。)
1445~1515 講座①「クラス全員をアクティブな思考にする算数授業のつくり方
              〜4月に気をつけていること!〜」
              樋口万太郎(京都教育大学附属桃山小学校)
1520~1620 講座② 「算数の授業づくり はじめの一歩」
              尾崎正彦(関西大学初等部)
1625~1640 質問コーナー
1600~     ふりかえり

【講師】
尾崎正彦・・・
Math Labo!・・・樋口万太郎(京都教育大学附属桃山小学校)が中心となり、facebook上で算数を中心にお互いの実践を紹介したり、意見を交流したりしている。興味のある方はfacebookでMathLabo!を検索してください。

【日  程】 2018年4月22日(土) 13:00~17:00
【会  場】 京都テレサ(京都)
【参加費】 ・2500円(1回)
       ・年間パスポート10000円 (1回分がお得!)

【今後のセミナー予定】 テーマは変更になる可能性もあります。
第2回テーマ 尾崎学級の学級経営を丸裸!(算数の視点)     
第3回テーマ 教材づくり~子どもの問いを作り出すコツ~     
第4回テーマ 子どもがアクティブになる指導言のコツ       1
第5回テーマ 学力差にどう立ち向かう!?  

申込は,以下のアドレスからお願いします。

http://www.kokuchpro.com/event/mathlabo1/