2018年11月29日木曜日

3年「小数」の導入はゲームで

3年生で初めて小数に子どもたちは出会います。その出会いの場面を,ゲームで構成してみました。

子どもたちに1人25個のブロックを配ります。2人1組で「10個で点ブロックゲットゲームをしよう」と投げかけます。

ルールは簡単です。隣同士でジャンケンをします。勝ったら相手からブロックがもらえます。パーなら3個,チョキなら2個,グーなら1個もらえます。どちらかのブロックがなくなったら,そこでゲーム終了です。

子どもたちがゲームを始めます。3分ほどすると,ブロックがなくなってしまう子どももいました。この時点で,全体のゲームも終わりにします。

子どもたちに獲得したブロックの個数を尋ねます。50個,32個,41個などの獲得数が発表されます。このゲームは,ブロックの獲得数がそのまま自分の得点になるのではありません。「10個で点」なのです。子どもたちに,次のように投げかけます。
「ブロック10個で1点だよ」

ブロック50個の子どもは5点,0個の子どもは0点となります。これは子どもたちもすぐに分かりました。一方,31個や42個などの中途半端な個数を何点と表現するのか,子どもの考えにズレが生まれました。
「31個だったら十の位で3点でしょ。一の位は1より小さいからないことにすればいい」
「小さすぎるからなしでもいいよね」
「まって,小さくても得点はあるよ」
「だって,11個と19個だったら11個は1点に近くて19個は2点に近いでしょ。一の位をなしにするのはかわいそう」
「1〜9個の人にも,少しは点をあげないとかわいそうだよ」

ブロックの獲得数の一の位の処理をどのように扱うかで,子どもの考えにズレが生まれました。最後は,「かわいそう」という視点から一の位の数値も得点にしようと子どもたちは考えていきました。

では,一の位のブロック数をどのように得点に表現すればよいのでしょうか。子どもたちは次のように考えていきました。
「だったら分数にしたらいいよ」
「ピザだったら,円を10個に分けた内の1個分なら1/10点と言えばいいよ」
「2個分なら,10個の内の2個分なら2/10点だ」
「32個なら3点と2/10点だね」

2年生で学習した分数を使って,1よりも小さい得点を子どもたちは表してきました。図も子どもたちが自然に使って説明を始めました。

ここで,小数を教えます。1/10点と0.1点は同じ大きさの数であることを教えます。子どもたちは,先ほどまでの話し合いでピザの図を使って1より小さい大きさを表現してきました。10等分をもとにして話し合ってきたので,1/10と0.1が同じ大きさであることは簡単に理解できました。

小数の学習は10等分の大きさを使って考える必然性を子どもから引き出すことが一つのポイントです。十進位取り意識を活用したくなるブロックゲームは,この見方を引き出すには絶好の教材です。

2018年11月27日火曜日

教科書活用セミナー豊中大会のご案内

教科書活用セミナー・大阪豊中大会のご案内です。詳細は以下をご覧下さい。今回も,教科書を使った愉しい授業作りのあり方を学んでいきましょう。


算数教科書活用セミナー・第3回(豊中大会) 

【テーマ】教科書を活用した「授業のめあて」のつくり方 

◆算数授業で子供たちが問題解決をするとき、「問いを持たせる」ことが大切です。「なぜだろう」「モヤモヤを解決したい」。動き始めた子供たちの「問い」を、「授業のめあて」として位置付けるのです。◆しかし授業の冒頭で、教師が一方的に与えた「めあて」は、子供の「問い」ではありません。思考は、まったく主体的ではないのです。こういった授業を繰り返しても算数学力はつきません。◆子供たちの思考が動き始めるような「問い」はどうすれば生まれるのでしょうか。教科書の使い方のコツを知ることで子供の「問い」を生むことができます。◆今大会でも、2本の模擬授業を通した提案です。先生方と議論をして明らかにしていきましょう。講演は、本研究会代表の尾崎正彦です。 

【プログラム】 
◆12:30 受付開始 

◆13:00~13:45 
講座『教科書を活用した「授業のめあて」のつくり方』尾﨑 正彦 (45分) 

◆14:00~15:30 
教科書を活用した算数模擬授業(30分×2本) 
 ①「円と正多角形」(5年) 授業者:小谷祐二郎 
 ②「分数」(2年) 授業者:木下幸夫 
 ※小グループで学びのシェア。 
 ※尾﨑正彦のコメント。 

◆15:45~16:30 
『3学期単元攻略法』~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 

◆16:30~17:00 
算数授業づくりQ&A 

【会場】豊中市立労働会館(集会室・3階) 
【参加費】2000円 

※ 本セミナーは学校現場の教員対象です。教員以外の方は参加できません。

申し込みは以下のアドレスからお願いします。
https://kokucheese.com/event/index/535519/

2018年11月22日木曜日

グラフの「その他」を子どもから引き出す

3年生に「表とグラフ」単元があります。グラフにするとき、少ないデータは「その他」としてまとめます。この必要性、子どもに実感させるにはどうしたらいいでしょうか?
好きな食べ物調べを事前に行いました。その結果を発表します。子どもはまだどんな食べ物が発表されるか知りません。そこで、ゆっくりと結果を発表します。

「御寿司」「ラーメン」など,子どもたちは自分の好きなメニューが発表されるたびに,喜びの声をあげてきます。

全部の発表が終わった後,アンケート状況を尋ねます。

1位 お寿司  7人
2位 肉    3人
   ラーメン 3人
3位 スパゲティ― 2人
   ピザ     2人
   ハンバーグ  2人

ここまで発表すると,子どもから「残りは全部1人だよ」「1人が12個あるよ」と声があがります。さらに,N男が次の声をあげます。
「横が15マスしかないから入らない」
N男の声の意味を共有します。
「ノートのマスは15マスしかないでしょ。これじゃあ,全部が入らない」
「全部書いたら,横には18マスいるでしょ。3ます分足りなくて書けない」

これまで子どもたちは,棒グラフをノートに描いてきました。ノートは横に15ますしかないのです。これまで通りに1ます(行)に1つの項目を記入すると,今回のアンケート結果は溢れてしまいます。N男は,ノートのマスの数とアンケートの項目数を比較したのです。すばらしい視点です。

すると今度は,次の解決策が生まれてきます。
「だったら,1人を全部まとめちゃえばいいよ」
「その他でまとめればいいよ。その他で12人」
「それなら横は7ますで足りるよね」

マスがたりないという状況に出会ったことが,その他を使う必要感を引き出したのです。そこで,1~3位とその他を使って棒グラフを作成することにしました。

縦軸を完成した後,横軸を書きます。それまでに子どもたちは,横軸はデータを多い順に書くことを学んでいます。子どもは,横軸に何を書くでしょうか。ここは2つにわかれました。
「お寿司」と「その他」です。データの数では「その他」が圧倒的多数です。すると,次の声があがります。
「その他はおかしいよ。だって,その他は1人が集まっただけでしょ。お寿司はお寿司だけで7人だよ」
「1人を集めてその他だから,本当は1人だけのグラフだから左には書かないよ」

「その他」の必要性と位置を子どもの問いをもとに構成した1時間でした。

2018年11月20日火曜日

4年小数のわり算を子どもが拡張する

4年生「小数÷整数」の導入場面です。子どもたちに次の問題場面を提示しました。

mのうまうま棒があります。4人で等しく分けます。1人分は何mでしょう」

実は,この問題状況と似た場面を小数のかけ算でも学習しています。従って,子どもたちは「が整数なら簡単。でも,小数になったら計算ができない」と声をあげてきました。小数のかけ算の学習がうまくつながっていることが実感できました。

そこで,が2.4mだったら1人分は何mになるのかを考えました。子どもたちは,小数×整数のかけ算で,小数を整数値に置き換えることで計算ができることを学習しています。そのため,この場面でも同様の考え方が生まれてきます。

「小数のかけ算と同じにすれば計算ができるよ」
「2.4÷4では計算ができないでしょ。でも,2.4を10倍して24にすれば24÷4になって計算ができる。これなら答えは6」
「でも,最初に2.4を10倍しているから,最後に答えを10でわらないとだめだから,答えは6÷10で0.6」
「確かめ算をすると,0.6×4=2.4だから答えは合ってるね」

小数のわり算の筆算形式も,同様の考え方で子どもたちは説明していくことができました。2.4を10倍して24÷4と考えて筆算を行います。このまま筆算を行うと答えは6です。しかし,先ほど10倍しているので,答えをここで10でわります。わり算の筆算も,かけ算の筆算と同じように子どもたちは考えました。

ここまでは,小数のかけ算での学びをわり算にも当てはめて子どもたちは考えていきました。ところが,子どもたちに学びの意欲はここではとどまりませんでした。
「あまりが出てきたらどうなるの?」
「あまりだって,同じようにすればいいよ」
「小数÷小数になったらどうなるの。これも同じようにできるのかな?」

子どもたちが場面を広げて,これまでと同じ考え方でできるのかどうかを考え始めました。深い学びの世界へと入っていきました。

先ずは,あまりのある計算に挑戦します。

4.9÷5

これも,先ほどまでと同じように考えます。4.9を10倍して49÷5と計算します。答えは,9あまり4となります。子どもたちは,ここから次のように考えます。
「だから,答えも10でわって,あまりも10でわればいいよ。0.9あまり0.4」
「たしかめ算でも大丈夫だよ」

小数÷整数であまりのある場合のあまりの大きさについて,子どもたちは確かめ算を通して計算方法を見つけていきました。すると,今度は次の声があがります。

「小数÷小数であまりが出たらどうなるの?」
「それだって,さっきと同じで方法でいいよ。同じ数でわればいいよ」
「整数だって同じだったよね」
「60÷40だって,そうだよ」

ここで整数の計算方法を想起する声が生まれてきました。そこで,子どもから生まれてきた60÷40を例に整数の場合のあまりを考えます。

「60÷40を両方10でわります。式は6÷4で答えは1あまり2」
「だから,答えは10倍します。10あまり20です」
「あれ,おかしい。確かめ算をすると違う」
「答えは1だ。あまりだけ20だ」
「なんでだ?」

小数÷小数のあまりを考えるつもりが,整数÷整数で子どもたちは壁にぶつかってしまいました。するとここで,次の声があがります。

「9月14日,似た勉強をしています。わる数とわられる数に同じ数をかけてもわっても答えは変わらないという勉強をしました。だから,答えは変わらないんです」

約2ヶ月前のわり算のきまりの学習を想起してきたのです。すばらしい学びの姿です。このきまりは学習済みですが,子どもの学びはなかなかつながらないものです。このような姿が生まれた時に,点と点をつないだ姿を価値づけていきます。

さて,この説明に対して今度は次の声があがります。
「整数のわり算でのルールが,小数のわり算にもそのまま当てはまるとは限らないと思うんだけど」

この指摘で,子どもの考えが揺らぎます。
翌日,小数÷小数の計算を考えます。先ずは,3.6÷0.4の計算を考えました。この計算は,整数と同じように答えはそのままでいいことが分かりました。この問題は,整数のわり算のきまりが当てはまりました。

次に,あまりのある場合を考えます。3.7÷0.4を考えました。整数に直すと,37÷4=9あまり1です。3.7÷0.4に直すと,答えは9あまり0.1となります。前回の整数と同じように,商(答え)はそのままであまりだけ10でわることが見えてきました。整数と同じルールが当てはまることが見えてきました。

ところがここで,「なんであまりだけ10でわるの」と疑問の声があがります。子どもらしい自然な疑問です。これを乗り越えるために,確かめ算で説明する声が多数あがりました。最も子どもたちが納得したのは図を使う方法でした。それは,370÷40を37÷4に置き換える式と図を使った説明でした。

「37は10の固まりが37個でしょ。これを4個ずつ分けていきます。すると4個が9セットできます。残りは10の固まりが1個。この1個は本当は10だから,あまりだけを10倍する」

この見方・考え方も実は8月の学習で行っていました。この学びの履歴を見つける姿も生まれてきました。

小数÷小数の計算は5年生の内容です。しかし,子どもの発想は自然に学年の枠を超えて小数÷小数の世界へも拡がっていきました。その中で子どもたちは,過去の学びの履歴を次々と活用しながら問題を乗り越えていくことができました。




2018年11月19日月曜日

佐渡 算数科教育研修会開催のお知らせ

前回お知らせしました佐渡での研修会の詳細が決まりました。

日時  12月22日(土)14時~16時30分
会場  佐渡市金井コミュニティーセンター (佐渡市金井千種240)
       佐渡両津港から30分ほどです
演題 「主体的・対話的で深い学び」を実現するための授業創り
会費  500円(なんとワンコイン!)

2020年,学習指導要領が改訂されます。そこでの最大のねらいは「主体的・対話的で深い学びの授業改善」を行うことです。では,そのためにはどのように授業を創っていけばよいのでしょうか。
今回は,教科書を使った授業改善方法の演習や,もう少しレベルアップした授業の創り方を演習形式で参加される先生方と学んでいきます。また,ノート指導や対話的な学びの進め方についても学んでいきます。

新採用の先生方からベテランの先生方まで,また算数専門でない先生方まで大歓迎です。佐渡島外の先生ももちろん大歓迎です!

参加された先生方には,スペシャルプレゼントがあるかも・・・。

冬休みのスタートを,愉しい算数を愉しみましょう!


●問い合わせ先●

  北川 禎(佐渡市立真野小学校)

 TEL 0259-55-2009(学校)


1 メールでの申込

(1)申込先  j255619h@myjuen.jp ※真野小北川宛のメールです。

(2)申込内容
  【件名】 12.22算数科教育研修会申込

  【本文】 次の①~④の内容を,本文に書いて送信してください。
   ①所属先(学校名)
   ②役職
   ③氏名
   ④研修会・懇親会の参加について


<メール送信例>

  件名:「12.22算数科教育研修会申込

  本文:① ○市立○○○学校
     校長,教頭,教諭等をお書きください。
      ○○
   ④ 研修会  参加    懇親会 参加(または欠席)

  ・準備の関係で,12月12日(水)までにお申し込みください。(締切を過ぎても参加は受け付けます。その場合は,電話にてお申し込みください。)
  ・研修会終了後,○○○店にて尾﨑正彦先生を囲んで懇親会(18:00~20:00 ※会費4,000円)を行います。尾﨑先生よりたくさんのお話を伺うことができるまたとない機会ですので,あわせてご参加ください。
・どなたでも参加できる研修会です。お近くの先生方にもこの研修会のことをお知らせしていただきお誘い合わせの上ご参加ください。
・当日,ジェットフォイルやカーフェリーが欠航した場合は,開始時間が変更になったり研修会が中止になったりする場合があります。ご了承ください。(不明な場合は,北川までお問い合わせください。)


2018年11月13日火曜日

教科書活用セミナーツアー決定!

毎回,100名を超える先生方にお集まりいただいている教科書活用セミナー。算数専門以外の先生方が圧倒的多数を占めています。毎回,教科書をどのように使って子どもを愉しませるのかを探る先生方のパワーに圧倒されています。

この公表をいただている教科書活用セミナーのツアー日程が決まりました。詳細は,決まり次第,お知らせします。

2019年
1月12日(土) 大阪府豊中市 労働会館3階
2月24日(日) 三重県津市
3月30日(土) 静岡県静岡市 常葉学園大学
4月21日(日) 京都府京都市

お近くの先生方,今から日程を空けておいてくださいね。教科書の使い方を勉強しましょう!



冬休み佐渡算数講座開催

冬休みを待ちわびている先生方に緊急速報です。佐渡で算数講座を開催することが決まりました。まだ,詳細は決まっていませんが日程は次の予定です。

日時 12月22日(土)午後の2〜3時間程度
会場 佐渡市内(詳細会場は未定)

佐渡島内の先生方,是非,愉しい算数の創り方を学びましょう。
佐渡島外の先生方,冬の佐渡は美味しいものがたくさんあります。特に冬のカニは絶品です。グルメツアーのついでに講座にお越し下さい。

詳細は決まり次第,お知らせします。