2017年9月16日土曜日

比例のグラフの必要性を引き出す


子どもたちに次の問題を出します。
「年速5億㎞でボイジャー1号は太陽系の外へ向かって飛んでいます。その7年後,スーパーボイジャーは年速8億㎞で出発しました。スーパーボイジャーが1号に追いつくのはいつでしょうか」

 この問題に出会った子どもからは「速さ?」「比例?」と声があがります。そこで「ボイジャー1号は比例しているの?」と尋ねます。子どもたちは,「比例しているよ」「表を描けばわかるよ」と声をあげます。そこで,表を描いて確かめます。飛行年数が2倍・3倍になると,距離も2倍・3倍になることが分かりました。従って,ボイジャー1号は比例していることが表から分かりました。

 子どもたちはこの表をもとに,「その下にスーパーボイジャーの表を付け足せば,いつ追いついたかがわかる」と考えました。子どもたちは,ノートに表の続きを描いていきます。ところが,「18年と19年の間」「19年寄り」であることは表から分かりますが,正確な部分は分かりません。



年数12345678910111213141516171819
1号(億㎞)5101520253035404550556065707580859095
スーパー(億㎞)000000081624324048566472808896

  
 子どもからは「計算する」「グラフに描く」と2つのアイディアが生まれてきました。しかし,計算に対しては「どうやるの」「大変そう」と声があがります。そこで,簡単そうなイメージのあるグラフで調べることにしました。

 グラフにボイジャー1号とスーパーボイジャーのデータを,折れ線グラフとして描いていきます。2つのグラフの交点が追いついた瞬間となります。正確にグラフを描いていくと,18年と8ヶ月当たりに追いつくことが分かりました。

 2種類のデータをグラフにすることで,計算をしなくても追いつく経過年を見つけることができたのです。グラフの良さを実感することができました。
 比例の学習では,グラフ化する場面が,どうしても教師主導になります。子どもにとっては,グラフにする必要感がないまま,教師の指示でグラフを描かされるだけの展開です。今回は,グラフを使いたくなる展開で授業を進めてみました。

2017年9月7日木曜日

比例と文字式をつなげる


 
 6年生「比例・反比例」の比例場面を,次のようにして導入しました。

 子どもたちに目をつぶらせて「周りの辺は何本あるでしょう」と投げかけました。目を開けた子どもの前に現れたのは,右の図形です。子どもたちは,必死で周りの辺の数を数えます。意図的に,数えにくい形に組み合わせています。
 本数は12本です。

 続いて,右下の図を提示します。周りの辺の数を数えると,本数は18本です。

 この結果を受けて,子どもから
「次も分かる」
「六角形が右に4つ増えるはず」
「4つになったら24本になる」
と声があがりました。ここまで六角形が右側に1列ずつ増えていました。子どもたちは,次はさらに右に六角形が4つ分増えると考えたのです。目の前の対象場面を拡張して考えることは,とても素晴らしい見方です。

 そこで,六角形が4つ増えた場合を実験します。辺の数は,子どもたちの予想通り24本となりました。この結果に子どもたちは,大喜びです。それと同時に,今度は
「6ずつ増えている
「全部6×1,6×2,6×3の式になっているよ」
「だって,最初は六角形が1つでしょ。その時は,周りは6本でしょ」
「だから,全部6の段のかけ算になっている」
と声があがってきました。
 子どもたちは,辺の本数を式化できると考えたのです。6×1は,六角形が1つの場合の辺の数を求める式です。六角形が1つの場合の図は,私は意図的に提示していません。ところが,子どもたちはその場合も自分たちで取り上げて,式化へと導いたのです。
 さらに,
「これって言葉の式にできる」
「6×X=yになるよ」
と,文字式とつなげる声もあがってきました。6年生で学習した文字式とつなげる声が子どもから生まれてきたのです。教科書などでは,「比例の関係を式にしましょう」と教師側から指示することで,文字式を使わせる展開が見られます。ところが,前述のような手順で教材を提示することで,子どもから文字式を使う視点が生まれてきました。




 また,「比例になっている」という声もあがりました。
「表に書くとわかる」
「列が2倍,3倍になると,辺の数も2倍,3倍になっているから」
と,表を使った説明も続きました。2つの関係を,教師の指示で表にまとめる展開もよく見られる実践です。ところがこの授業では,表にまとめるアイディアも子どもたちから生まれてきました。

 「比例」の学習で子どもたちが獲得すべき内容が,一気に1時間の中で生まれてきた授業となりました。

2017年9月2日土曜日

授業準備にスタディーサプリ!

夏休み中に多くの学校の先生と交流する機会がありました。新採用の若い先生が,全国各地で増えています。彼らの悩みは,授業の準備が大変ということでした。「愉しい算数の授業をしたいけど,他にも国語も社会も図工も体育もあるし・・・。とにかく授業準備の時間が足りません」という悲鳴をたくさん聞きました。

小学校の先生は,ほぼすべての教科を自分で教えています。そのため,1週間の空き時間がほとんどない先生方も多数いらっしゃいます。子どもの笑顔あふれる授業のために,やりたいことがたくさんあるのに,絶対的な授業準備の時間が足りないのです。教師を増員して,先生方の持ち時数を減らせばこの問題は一気に改善します。しかし,これは当面かないそうもありません。

また,新学習指導要領が告示されて,教育界は「主体的・対話的で深い学びの授業改善」が声高に叫ばれています。これまで以上に,子どもが主体的に動きだす授業作りが全教科で求められています。ますます授業準備の時間が必要になります。「もう,どうすればいいの」という声が聞こえてきそうです。

そんな先生方にお薦めなのが「スタディーサプリ」の小学校算数基礎講座です。

https://studysapuri.jp/course/elementary/

この講座の授業はすべて私が担当しています。私が自分のクラスで実際の授業を行ったものと同じ教材を使った授業動画が見られます。この授業は,小学校4年生~6年生の各学年30時間分がそれぞれ見られます。すべての単元を網羅しています。授業準備の時間がないときは,スタディーサプリの授業を覗いてみてください。ご自分の教室で同じ教材・同じ発問で授業を行えば,子どもたちの「主体的・対話的で深い学び」が引き出されること間違いなしです。

「愉しい算数授業準備がたった15分でできるスタディーサプリ」を,是非,ご活用ください。

現在,スタディーサプリは東京や福井などいくつかの自治体でも導入されています。そして,学力も確実に向上することも証明されています。先生方の教材研究としても,ご活用ください!

2017年8月13日日曜日

対話的学びは形式では進まない

第29回全国算数授業研究大会が終わりました。この会では,参会の先生方のお悩み相談コーナーを設置しました。その中で,対話的な学びについてのお悩みが出されました。
対話的な学びは,次期学習指導要領改定のキーワードの1つです。出されたお悩みは,参会の多くの先生方に共通していました。それは,次のものでした。
「対話的な学びを進めるために,ペア説明や4人でのグループでの話し合いを取り入れるように言われています。でも,これで本当にいいのか疑問に思っています」

対話的な学びが,形式的に推し進められようとしているのです。対話的な学びは,本来は子どもが話したい・友だちの考えを聞いてみたいという思いのあるときに行われるべきものです。ところがお悩みで出された声は,形式的に対話場面を取り入れようとしていることが分かります。そこには,子どもの思いは存在しません。これは指導要領がめざす姿ではありません。対話的学びの前提には,子どもが主体的な学びに向かっていることが前提です。問いを授業で持たせることが,指導要領でも強調されています。対話的学びは,主体的な学びとセットなのです。決して形式的に対話的学びを進めることを求めているのではありません。

形式的に授業改善を進めることは簡単です。一見,教師には改善が進んだように思える満足感があるのかもしれません。しかし,それでは本当の授業改善にはなりません。指導要領の本質を見極めた授業改善が大切です。

来春,次期学習指導要領改訂の本当の意味と,それと連動した算数の授業改善のあり方についての本を刊行予定です。こちらもお楽しみに!

2017年8月6日日曜日

データを活用したくなる授業

新潟の6年生の子どもたちに,データの活用の授業を行いました。2020年版指導要領では,データの活用が新たな領域として生まれてきました。データの活用の授業で大切なことは,データを活用させることではなく,子ども自身がデータに働きかけ,データを活用したくなる授業を構成することです。

6年生の子どもたちと私で「100に近い方が勝ちゲームをしよう」と投げかけました。封筒に入っている数字カードを取り出して,100に近い方が勝ちというゲームです。
子どもチームは,封筒の中の数字カードの平均値が102の封筒を選択しました。私は95の封筒から数字カードを取り出します。
ゲームを何回を継続しますが,いずれも私が勝ってしまいます。5回戦中子どもは全敗です。この結果を見たある女の子が,両手で子どもチームの数字カードの分布状況をジェスチャーで表現する姿が見えてきました。そこで,この女の子の思いを共有化します。
「100から離れている」
ある子どもが,このようにつぶやく声が聞こえてきました。子どもチームの数字カードは100から離れているカードばかりでした。その様子を,この言葉で表したのです。さらにこの言葉を,両手を大きく広げて表現する姿が生まれてきました。一方,私のデータは100に近いカードばかりでした。このデータを,両手を近づけて表現する姿も生まれてきました。
その後,これらの両手の表現を数字カードを移動させて表しました。このカードの分布こそ柱状グラフそのものです。

子どもがデータをグラフ化したくなる仕掛けをいかに構成していくのかを,子どもたちの素直な表現をもとに授業した1時間でした。