2021年11月19日金曜日

暗算は十の位が先? 一の位が先?

 子どもたちに次のように投げかけます。

「1本24円のあめを3本買います。代金はいくらですか」

子どもからは,「かけ算だ」「簡単だね」「筆算でできるね」などの声があがってきます。そこで,「今日は筆算を使わずに,暗算で答えを求めることはできるかな?」と投げかけます。子どもたちは,「できるよ」「筆算と同じようにすればいいだけ」と考えます。

早速,暗算で計算をしてもらいます。多くの子どもたちが,すぐに答えを見つけることができました。そこで,「頭の中で,どうやって計算したの?」と尋ねます。

「最初に一の位の4×3で12。次に十の位で20×3で60。最後に,12+60で72」

二位数×一位数の既習は,一の位から計算をしていました。この経験値から考えれば,この手順で計算を行うのは当然です。

一方,「こんなやり方もあるよ」と声があがります。

「最初は十の位で20×3で60。次が一の位で4×3で12。最後に60+12で72」

最初のかけ算の順番を入れ替えるという考えです。ところが,「それって同じでしょ」「やりやすさも同じ」「どうせ最後にたすんだから,同じだよ」と声が続きます。

この声に対して,次の声が聞こえてきます。

「最後のたし算の一の位は,最初のは2+0でしょ。後のは0+2でしょ。2に0をたすよりも,0に2をたす方が簡単だよ」

この声に対する反応は,分裂しました。「確かに!」「同じでしょ」とズレが生まれました。

そこで,たし算の一の位の0が先にある方が計算が本当に簡単なのかを,実験することにしました。

「これから先生が言う式の答えが分かったら,3秒手をあげます」

このように説明した後,次の問題を口頭で発表します。

ア 39+30

イ 20+37

ウ 47+30

エ 40+37

4問の実験の結果,多くの子どもたちは一の位に0が先にあるイ,エの計算の答えを早く見つけることができました。すると,子どもたちも「十の位から計算した方が簡単だ」と考えが変容していきます。しかし,「アも簡単だよ」と主張する子どもも半数います。やはり,計算に慣れている方法にこだわるのも自然な姿です。

そこで,今度はかけ算問題で暗算の実験を行うことにしました。

「63×4を,一の位を先に暗算しよう」

「54×3を,十の位を先に計算しよう」

この問題は,最後のたし算が「12+240」「150+12」となっています。一の位に0がある計算です。この両タイプの計算を体験したことにより,次の声も聞こえてきました。

「十の位+百の位を計算するよりも,百の位+十の位を計算する方が簡単だよ」

最後のたし算の構造を分析的に捉えて声です。この声に納得する子どももいましたが,「同じでしょ」と捉える子どももいました。

そこで,今度も実験をして計算のしやすさを体験することにします。

④48+250

⑤350+24

暗算で答えが求められたら,手をあげてもらいました。圧倒的に⑤の問題が早く答えが求められる子どもが多くいました。

頭では今まで通りの筆算手順が暗算でも簡単だと思っていた子どもたちでしたが,実際に復習の問題を体験していく中で,十の位を先に計算するよさを実感することができた1時間でした。

家に帰ってから自主学習で両方のやり方を体験し,それらにかかった時間を計測し,十の位を先に計算するやり方の簡便さを見える化してきた子どもたちもいました。