2019年1月30日水曜日

3年分割分数と量分数

 3年生の分数では,量分数に出会います。2年生で学習した分数は分割分数です。単位がつくかつかないかの違いなのですが,この差を区別することは,子どもにはかなりハードルが高いのです。

分割分数と量分数の違いを意識化させるために,次のように子どもたちに投げかけます。
「りんご1/4個に色を塗りましょう」

右のようなリンゴを上から見た図を提示します。子どもたちは,このリンゴを4分割した後,その中の1つ分に色を塗っていきます。これは,簡単にできました。

続いて,次のように投げかけます。
「1/2のリンゴに色を塗りましょう」
提示したのは,右図です。リンゴが8個ある図です。

子どもたちは,どのように色を塗るでしょうか。2つの考え方に分かれました。
1つ目は,1つのリンゴを半分にして,その1つ分に色を塗ります。この考え方をクラス全体で共有します。
一方,別の塗り方もありました。そこで,「答えは2つあるんだね」と投げかけます。こここが,分割分数と量分数のせめぎ合いの場面です。

「1個のりんごの半分塗れば,それは1/2だけど,1/2個というんだよ」
「問題は1/2のりんごでしょ。りんごは全部で8個あるんだから,その1/2だから4個分塗るんだよ」
「もとが1個じゃなくて,もとは8個のリンゴだから4個のりんごに色を塗るんだよ」
「さっきは,もとが1個だから答えも1/4個。でも,今の問題はもとはりんご1個じゃないから,4個のりんごを塗るんだよ」

最初の問題は,りんご1個がもとにする量でした。ところが,この問題はもとにする量がりんご8個分になっています。もとにする量が1個,1m,1Lなどの単位量である場合とそうではない場合の分数表記の違いに気づいてきました。この気付きの共有は,かなりの時間が掛かりました。やはり,分割分数と量分数の違いを明確に意識することはハードルが高いようです。

その後,「みかん1/3個」「バナナ1/2」の色塗りに取り組みました。分数に単位が付いているのか否かに着目して,子どもたちは正しく色を塗ることができました。










2019年1月29日火曜日

子どもが発展的に場面設定する「変わり方」(4年)の授業

 4年生「変わり方」単元の第1時間目です。子どもたちに,次のように投げかけます。

「六角形をつなげていくと?」

黒板に右の図形を提示します。六角形が2列つながった図です。子どもたちにも,ノートに作図をさせます。子どもたちは,「面倒だなあ」と声をあげながら作図を行っています。「面倒だなあ」という気持ちを持たせることが,この変わり方の学習では大切なポイントです。

子どもたちに作図を終わったところで,次のように子どもたちに投げかけます。

「まわりの辺は何本ですか?」

子どもたちは,図を指さしながら本数を数えます。見ただけではすぐには判断ができないからです。やがて,「12本だ」と声があがります。

次に,先ほどの図形の右側に,さらにもう1列六角形をつなげていきます。この作図もノートに描かせます。先ほどにも増して「面倒」という声が聞こえてきます。
子どもたちに,まわりの辺の数を尋ねます。ここでも子どもたちは,図を指さしながら辺の数を数えます。やがて「18本」と声があがります。それと同時に「きまりがある」「式がある」という声も聞こえてきました。

「6本ずつ増えている」
「最初の六角形は6本。2列になると12本で6本増えた。3列になると18本。今度も6本増えた」
「だったら,もう1列増えたら24本になる」

六角形の列と本数の間にきまりを見つけたのです。さらに,きまり発見をきっかけに,まだ目の前にはない4列目の本数を予想する声が生まれてきました。類推的な思考が発揮された瞬間です。
そこで,4列目が本当に24本になるのかを,作図で確認します。この作図も面倒です。やがて,「やっぱり24本だ」という喜びの声が聞こえてきます。子どもたちに予想通りの結果が生まれました。それと同時に,「全部×6になる」という声があがります。新しいきまりに気づいた声です。

「1列目は6本だから,1×6。2列目は12本だから,2×6。3列目も3×6で18本。4列目も4×6で24本」
「だったら5列目も,5×6で30本」

変わり方の学習では,教師から表を提示して,見えてきたデータをそこに当てはめてきまりを発見させる展開があります。しかし,このような展開を行えば,表に当てはめなくても子どもたちはきまりを発見することができます。また,子どもたちの各データへの見方・考え方は表という枠組みがないだけで,それと同様の活動を進めているのです。

さて,データを横方向・縦方向と2つの見方で見つめることできまりを見つけた子どもたちです。今度は,このきまり発見から,次の声が生まれてきました。

「このきまりは,四角形でも五角形でも当てはまると思う」

六角形とは異なる図形にも,このようなきまりがあるのではないかと考えたのです。深い学びの世界へと,子どもたちの学びのベクトルが進んでいきました。
そこで,「四角形だったら,どんなふうに図形を作図するかな?」と,つながり方そのものを子どもに考えさせました。
子どもたちが考えた,四角形のつながり方の予想図は様々でした。大別すると,右の3種類です。1種類ずつ検討します。すると,左と真ん中は,いずれも「1列目4本,2列目8本」となります。列の数×4というきまりが見えてきます。六角形の縦のきまりと同様のきまりです。この2つの図形を見つめていた子どもが,おもしろいことに気がつきます。
「真ん中の形は,回したら左と同じ形だよ。だから同じきまりなんだよ」
確かに同じ形です。

右の図形は,「1列目4本」ですが,2列目が問題でした。列同士の結合部分の中途半端な縦の辺をどのように数えるのかが問題となりました。中途半端な長さをそれぞれ0.5本と数えると,「2列目8本」となります。この見方だと,左と真ん中と同じ結果になります。

六角形のつながり方を考える学習を通して,変わり方の見方・考え方や,場面を発展的に設定していく深い学びの世界も生まれた1時間となりました。



2019年1月27日日曜日

2019年4月Math Labo!算数授業講座 4月スタート編開講

2018年度マスラボ講座が終了しました。最終講座は数学的な見方・考え方がテーマでした。難しいテーマでしたが,参加された先生方と楽しく学ぶことができました。雪の降る中にもかかわらず集まっていただいた先生方,ありがとうございました。懇親会では,新年度のマスラボの新しいアイディアも生まれてきました。2019年度は新しい企画を進めていきます。

さて,2019年度・第1回のマスラボの予定をお知らせします。

期 日 4月13日(土)13時~
会 場 京都テルサ
テーマ 4月のスタートに大切にしたいこと

学級経営も算数授業も4月のスタートが大切です。この1か月のスタートの良しあしが,その後の1年を左右します。4月のスタートに大切にしたいことを,先生方と考えていく講座を開催します。お楽しみに!

詳細は以下の案内をご覧ください。


1305~ 受付
1315~  オープニングトーク
1325~1350 授業ビデオ参観  (樋口学級、1週目の様子を!)
          樋口万太郎(京都教育大学附属桃山小学校)        
※申し訳ありませんが、予定とさせてください。                         
1350~1415 講座① 授業をもとに大切にしていることを語ります
1415~1430 リフレクション(尾崎先生を交えて協議していきます。) 
1440~1505 講座② 「未定」
              要景太(大阪市公立小学校)
1510~1535 講座③「未定」
              西村祐太(京都市公立小学校)
1540~1640 講座④ 「スタートで子どもと教師に本当に必要なこと〜手遅れにならないために〜」尾崎正彦(関西大学初等部)
1640~ エンディングトーク
申し込みは,以下のアドレスからお願いします。

2019年1月25日金曜日

第5回マスラボ会場変更になっています!

1月26日(土)の第5回マスラボは,いつもの京都テルサではありません。

京都市立醍醐西小学校に会場変更しています。

地下鉄東西線醍醐駅から徒歩5分ほどの場所です。お間違えのないようにお願いします。

京都テルサに行ってしまうと大変です! 誰もいません・・・。

今回は数学的な見方・考え方がテーマです。まだ,申し込み可能です。先生方の参加をお待ちしています!

2019年1月20日日曜日

教科書活用セミナー神戸大会 日程・会場変更のご案内

教科書活用セミナー神戸大会のお知らせを,以前のブログで行いました。都合により,日程と会場が変更になりました。

日程 4月7日(日)13時~
会場 兵庫県中央労働センター 大ホール

新しく担任する学年の授業準備にふさわしい内容を開催します。お楽しみに!

詳細は以下をご覧ください。


算数教科書活用セミナー・第4回(神戸大会) 

※元の予定の、3/25(月)神戸大会が、本4/7神戸大会に変更になっています(日程と会場が変更)。 
 講師とセミナー内容の変更はありません。 

【テーマ】教科書教材を使った算数授業びらき&4月の算数授業 

◆授業びらきは、算数との出会いの時間。苦手意識を持った子供たちに「今年の算数は何か違うぞ」と感じさせる大きなチャンス。◆算数科の本質は教科書の中にこそあります。教科書教材を使った授業びらきについて考えましょう。◆「授業びらき」と「4月の算数授業計画」が本大会のテーマ。2本の模擬授業を通した提案です。本研究会代表の尾崎正彦の講演もご期待ください。 

【プログラム】 
◆12:30 受付開始 

◆13:00~13:45 
講座『4月の算数授業はこう作る』尾﨑正彦 (45分) 

◆14:00~15:30 
教科書を活用した模擬授業(30分×2本) 
 ① 千葉修平の算数授業びらき(第3学年) 
 ② 松井恵子の算数授業びらき(第1学年) 
 ※小グループで学びのシェア。 
 ※尾﨑正彦のコメント。 

◆15:45~16:30 
『4月単元攻略法』~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 

◆16:30~17:00 
算数授業づくりQ&A 

【会場】『兵庫県中央労働センター』(2階・大ホール) 
【参加費】2000円 

※ 本セミナーは学校現場の先生方対象です。それ以外の方は参加できません。

申し込みは以下のアドレスからお願いします!
 https://kokucheese.com/event/index/552822/

2019年1月17日木曜日

分数のたしざんから引き算へ,そして・・・

3年生の子どもたちに,右の図を提示して次のように投げかけます。
「何mあるでしょうか?」

前回のブログの次の時間です。長さを分数で表現することはすぐにできます。「3/4m」です。

ここで子どもから,「式でもできる」と声があがります。前時も式化を行いました。同様の発想が,ここでも生まれてきました。

多くの子どもが考えた式は,
「1/4+1/4+1/4」
でした。青い部分の長さを順にたしたのです。

「まだ,別の式があります」と声があげる子どもが何人かいました。
「1/4+2/4」
という式を発表する子どもがいました。図の右端の2つの青い部分をまとめて2/4mと見たのです。ところが,この見方は子どもに難しいようです。2つの青をつなげて見てしまうと1/2mになるからです。分割する縦線は見えることから,子どもたちは右端の青い部分が2/4mになることを納得していきました。

たしざんの式には,2種類あることが見えてきました。すると「だったら引き算にもできる」という声が聞こえてきました。一方,「引き算?」という疑問の声も聞こえてきました。
引き算の子どもたちは,次のような式を考えていました。
「1m=4/4m 4/4−1/4=3/4m」
式の中の1/4が何を意味するのかが難しかったようです。少しずつ時間をかけて,式の意味を共有していきました。

式の意味が見えた後,子どもたちは次のように話し合いを進めていきました。
「分数の引き算でも,分母は変わらないね」
「これは,分数のたしざんと同じだね」
「前回の勉強と今回の勉強は同じだったね」
「だったら,分数のかけ算も分母は変わらないのかな?」
「???」

子どもたちは,分数の引き算とたしざんに共通する点があることを見つけてきました。発見した共通点が,分数のかけ算にもあてはまるのだろうかと発想を広げたのです。類推的な見方・考え方が生まれた瞬間だと言えます。子どもたちの素晴らしい発想力に驚きました。

さて,分数のかけ算は5年生の学習内容です。しかし,子どもの発想に寄り添った展開を進めていくと,子どもが教科書を超えて発想を拡張していくのです。分数のかけ算の計算自体は3年生にはできません。しかし,立式はできます。「1/4+1/4+1/4」をもとにすれば,式は1/4×3であることがわかります。また,この式の答えもたしざんと同じなので3/4mであることがわかります。分母に着目すると,「4」になるのでたしざん・引き算と変わっていないことが分かります。

分数のたしざんの場面をきっかけに,分数の引き算・分数のかけ算と子どもたちが場面を発展させていくことができた1時間となりました。

2019年1月16日水曜日

関西大学初等部研究会申し込み〆切りました

2月2日(土)開催の関西大学初等部研究会の申し込みは,本日16時をもって終了しました。1000名近い先生方から申し込みをいただきました。ありがとうございます。

申し訳ありませんが,今後の申し込みはネットも電話も受け付けておりません。また,当日受付も行っておりません。ご了承ください。

来年度も研究会を開催予定ですので,次回の申し込みをお待ちしております。