2019年8月28日水曜日

1年「20までの数」で10のよさを引き出す

 子どもたちに,「丸のカードゲットゲームをしよう」と投げかけます。

クラスを赤・青の2チームにわけます。各チーム,最初は各色の丸カードを10枚持っています。これが最初の持ち点です。

代表の子どもがじゃんけんをします。

パーで勝つと3枚,チョキで勝つと2枚,グーで勝つと1枚のカードが相手チームからもらえるルールです。

代表の子どもが次々と出てきてじゃんけんを行います。しばらくして,じゃんけんを止め,どちらの色チームが勝ったかを尋ねます。
「青が勝った」
「12枚」
という声が聞こえてきます。それと同時に,次の声も聞こえてきます。
「いっぱいあって,わからない」
「数えにくい」

各色のカードは,最初から意図的にバラバラに提示していました。じゃんけんで勝った子どもたちも,ゲットしたカードは同じようにバラバラに貼っていました。そのために生まれてきた声です。数えにくいと考えた子どもたちの声は,さらに続きます。

「散らばっているから数えにくい」
「きれいに並べたらいいんだよ」

きれいに並べるという声が生まれてきました。そこで,どのように並べたらきれいに見えるかを考えさせました。いくつかのアイディアが生まれてきました。その中で,右のように並べた図を提示します。「わかりやすい」という声もあがりましたが,「なんでそんなふうに並べるの」という声も聞こえてきます。

そこで,この図を考えた子どもの気持ちの読解を行いました。

「10個のまとまりと2個のまとまりに分けた」
「10個に2個をたすと12個で簡単」
「10の横に2があるとわかりやすい」

子どもなりの説明で,10の固まりを作るよさを一生懸命に説明してきます。「10と2に分けるとわかりやすい」と考える子どもたちに,次のように投げかけます。

「9個と3個はわかりやすくないの?」
「7個と5個はわかりやすくないの?」

これらの数値に対しては,いずれも「ごちゃごちゃしてわかりにくい」「数えにくい」と声があがります。「10と2だと,すぐに12とわかる」と10のよさを意識した声があがります。10ではない数値と比較することで,10のよさをよりよく実感することができました。

10を超える数を数えるときには,10とあといくつと考えるのが自然な思いのようです。子どもたちの素直な思いを引き出すことで,10のよさをより実感させることができた1時間でした。






2019年8月10日土曜日

本当の問題解決力を育てる講座案内

今週は新潟の学校の5年生に公開授業を行いました。元気で素直な子どもたちでした。さて,全国各地を訪問していると「〇〇スタンダード」(〇〇は地域名)が急速に浸透しています。1時間の授業の流れを形式でまとめたものです。

形式でまとめると,先生は安心するのでしょうか。あるいは,授業を形式でまとめることで主体的・対話的で深い学びが具現できるのでしょうか。算数授業は形式でまとめられるほど簡単ではないと思います。そんなに簡単なら研究授業は必要ないのではないでしょうか。

このような授業の形式化に対して,その是非を含めて考え合う講座を10月27日(日)に開催します。講師は,私の師匠・田中博史先生,私の同志・小松信哉先生です。3人で刺激的な会を開催します。詳細は,以下をご覧ください。


講演会「スタンダードに沿う授業づくりは、本当に子どもの思考力を育てられるか」
~対話で子どもの状態をよみとり展開を変えていく勇気を持つ教師を増やすために~

学校図書×授業・人塾

◇講師:
田中博史 先生 前筑波大学附属小学校副校長/授業・人塾主宰
小松信哉 先生 元国立教育政策研究所教育課程研究センター 学力調査官・教育課程調査官/福島大学准教授
尾崎正彦 先生 関西大学初等部教諭

◇日時:
2019年10月27日(日)

◇スケジュール:
10:00~     受付開始
11:00~12:00 尾崎先生講演「深い学びに必要な条件」
13:00~14:00 小松先生講演「新学習指導要領と全国学力調査からみる授業改善のポイント」
14:15~15:15 田中先生講演「その算数授業は『人』を育てることにつながっているか」
15:30~16:30 緊急提言シンポジウム「スタンダードに沿う授業づくりは、本当に子どもの思考力を育てられるか」
~対話で子どもの状態をよみとり展開を変えていく勇気を持つ教師を増やすために~

◇場所:
図書印刷ホール 〒114-0001 東京都北区東十条3-10-36

◇会費:
4,000円(当日会場でお支払いください)

◇募集人数:
100名

申し込みは以下のアドレスからお願いします。
https://gakuto.co.jp/lecture-2/

2019年8月3日土曜日

明日から全国算数授業研究大会

明日から筑波大学附属小学校で全国算数授業研究大会が開催されます。今年のテーマは次のものです。

教師の言語活動を問う
ー子どもと教師の言葉で編む算数授業ー

「対話的な学び」という言葉が,2020年からの授業改善の視点の1つとして学習指導要領にあります。今回のテーマは,この部分に近いものがあります。
対話的な学びを引き出すために,教師が心掛けなければいけないことはなんでしょうか。子どもに対話を丸投げすることではありません。また,逆に教師が子どもの声をコントロールし過ぎることでもありません。近年,参観させていただく授業には,この2者のパターンが多く見れれるようになりました。

では,どのようなことに気を付けて教師は言語活動を進めればよいのでしょうか。私の考えは,大会2日目(8月5日)のシンポジウムでお伝えします。

本大会は,事前の申し込みはありません。会場に直接おいでいただければ大丈夫です。

8月4日(日)12時30分~
8月5日(月) 9時~
8月6日(火) 9時~
参加費 8000円(1日参加でも同額)

シンポジウムの他にも,大会テーマに合わせて公開授業が9本行われます。是非,実際の授業を見て,教師の言語活動のあり方について学び合いましょう!

2019年8月1日木曜日

素直さが子どもをクラスを伸ばす

7月31日,熊本の玉名町小の子どもたちに平行の導入場面の授業を行いました。4年生の子どもたち,とても素直でかわいい子どもたちでした。

友だちの考え方に対して,「あー」「そーかあ」など素直に驚いたり納得したりする反応が次々と生まれました。子どもたちが,時間の経過とともに学習内容を着実に自分のものにしていくことが,手に取るようにわかりました。

子どもが育つ,学力が伸びるクラスの根底には,子どもの素直さが絶対に必要だなと実感しました。この子どもたちなら,明日も授業したいなと感じるすばらしい子どもたちでした。

きっと担任の先生が,子どもたちの思いに寄り添った授業展開をしたり,子どもの考えに驚いたり価値づけたりすることを続けられてきたのではないでしょうか。素直さは,これらの取り組みの継続の上に成長します。子どもは,自分の思いを肯定的に受け止めてくれる大人の前では素直になれるからです。

質の高い授業を展開するためには,教材研究なども大切です。一方で,子どもの素直さを伸ばす肯定的な接し方も大切なのです。今回の玉名の子どもたちとの出会いで,この大切さを改めて実感した1日となりました。玉名の子どもたち,素敵な出会いをありがとう!

2019年7月28日日曜日

割合学習の進め方

教科書活用セミナー西宮大会が終わりました。多くの先生の感心の高さがひしひしと伝わってきました。

次回の教科書活用セミナーのテーマは「割合」です。小学校算数最難関単元です。塾では「はじき」なる言葉による指導が進められています。しかし,形式で理解できるほど割合の指導は簡単ではありません。割合の授業の具体的な進め方について,先生方とじっくりと考える時間にしていきたいと考えています。

詳細は以下をご覧ください。

期日 8月31日(土)
会場 兵庫県川西市『川西市キセラホール』(大会議室)


『算数教科書活用セミナー』(川西大会) 

【テーマ】割合学習を充実させる
◆新しい学習指導要領の3本柱の一つが「割合学習の充実」です。新指導要領では、割合学習の内容はどのように充実が図られたのか。2本の模擬授業を通して考え、語らいます。◆第4学年の授業は「簡単な割合」の導入場面。新内容の授業です。◆第5学年の授業は「割合」単元の導入場面。割合的な見方・考え方を教科書ベースの授業でも十分に引き出せることを提案を通して学び合います。◆講演は、本研究会代表の尾﨑正彦です。 

【プログラム】 
◆12:00 受付開始 

◆12:30~13:15 
講座 『割合学習を充実させるとはどういうことか』尾﨑正彦 (45分) 

◆13:30~15:00 
教科書を活用した模擬授業(30分×2本) 
① 田渕幸司先生の「簡単な割合の授業」(第4学年) 
② 西村祐太先生の「割合の導入授業」(第5学年) 
※小グループで学びのシェア。 
※尾﨑正彦のコメント。 

◆15:15~16:00 
『2学期単元.攻略法』 ~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 
1年「たし算(2)」 
2年「三角形と四角形」 
3年「小数」 
4年「簡単な割合」 
5年「割合」 
6年「拡大図と縮図」 

◆16:00~16:30 
算数授業づくりQ&A 

【会場】『川西市キセラホール』(大会議室) 
【参加費】2000円 
※ 本セミナーは学校現場の先生方対象です。それ以外の方は参加できません。

【申込・詳細】は以下のアドレスからお願いします。

https://kokucheese.com/event/index/571400/

2019年7月14日日曜日

秒の必要感を引き出す

3年生の時間の学習「秒」の導入場面です。

子どもたちに,折り紙で作った2種類の大きさの違う三角形を提示し,次のように投げかけます。

「どちらの三角が早く落ちるでしょうか」

子どもの予想は3つに分かれます。

「大きいのが早い。だって,重たいから」
「小さいのが早いよ。小さいから風の抵抗が少ないでしょ」
「同じだと思うよ。昔,ガリレオがピサの斜塔から重さの違う鉄を落としたら,同時に地面に落ちたって本に書いてあったよ」

予想段階で,ガリレオの話題が出てきてびっくりでした。しかし,この話し合いを終えても子どもの予想にはズレが生まれたままでした。

そこで,実験で早さを確かめることにします。大きい三角を手に持ち,上から落とそうと準備します。すると,それを見た子どもたちが叫びます。

「えー,なんで」
「小さいのも落とさないとだめだよ」

子どもたちは,2つの三角を同時に落とすものだと信じていたようです。とろこが,私が1枚の三角しか持たなかったため,先の叫び声が生まれてきたのです。しかし,この声に続いて子どもたちは,話し合いを進めていきます。

「同時じゃなくてもできるよ。タイマーがあればいいよ」
「タイマーがなくてもできるよ。数を数えればいいよ」
「でも,みんなが同じに数えないとだめだよ」(K子)

2種類の折り紙を別々に落としても,早さを比べる方法があると子どもたちは考えました。先ず,声があがったのはタイマーを使うことでした。体育の50m走の測定などでも目にしています。しかし,子どもたちはタイマーがなくても比べられると考えました。そこで生まれてきたのがK子の声です。K子は不変単位の必要性を説明しました。しかし,これが全員にはすぐには理解できません。言葉で友だちを納得させるのには,時間がかかるのです。
最終的に全員が納得したのが,R子の次の説明でした。

「もし,1回目にいーち,にーい,さーんと数えたとします。2回目,いち,に,さんと数えたとしたら,数える長さがズレるから同じに数えないとだめなんだよ」

この説明で「あー」と全員が納得しました。R子は,具体例を提示することでそれまで曖昧だった説明を見えるようにしたのです。
混沌とした状況を,具体例を挙げることで解決した場面は過去にもありました。子どもたちは,「この前のD君の説明の仕方と同じだ」とその見方・考え方の共通点に気付きました。この気付きもすばらしいことです。

全員が同じに数える方法として,子どもたちが考えたのが教室の壁にある時計の秒針を使ことでした。不変単位として,子どもたちは秒針を選択したのです。
さて,時計と折り紙の動きを同時に見ることは難しいので,子どもたちは時計を見る役割と,折り紙の動きを見る役割を分担することにしました。

役割分担をして,2種類の折り紙を落としていきます。大きい折り紙は4秒,小さい折り紙は3秒で落ちました。三角の折り紙は紙吹雪のように一定方向には落下しません。そのためこのような結果になりました。秒を使って考えたくなる必要感を引き出した1時間でした。

2019年7月11日木曜日

算数夏祭りIN新潟ーめあて・まとめ・ふりかえりー

ここ数年,算数授業で見られる光景の1つが,授業の冒頭に「めあて」が提示される光景です。また,授業終末には,「まとめ」と「ふりかえり」が行われます。この展開で子どもの学力を高めることはできるのでしょうか。また,次期学習指導要領が求める「主体的・対話的で深い学び」を具現することはできのでしょうか。
また,“「めあて」「まとめ」「ふりかえり」を行わざるを得ないのですが,どうしたらいいですか”という相談も受けます。もし,この形式で授業を行わなければいけないとしたら,そこに改善策はあるのでしょうか。

実は,このような疑問の声が全国多くの先生方からあがってきています。一生懸命に算数を学ぶ先生ほど,この疑問を感じているようです。

形式に子どもを当てはめることで,子どものやる気スイッチが入ったり,学びが深まったりするのであればいいのですが・・・。先生方の思われている実感はいかがでしょうか。

この夏,この疑問に応える講座を開催します。題して「算数夏祭り」です。近年の形式的な算数授業展開を見直し,よりよい授業のあり方を探る会を開催します。
私の同志である新潟大学附属新潟小の志田先生とのコラボ企画です。また,次代を担う新潟の若い先生方の講座も開催します。多くの先生方のご参加をお待ちしています。


日時 8月24日(土) 13時〜16時30分
会場 ほんぽーと(多目的ホール)
   新潟市中央区明石2−1−10
会費 2,000円


詳細は以下のご案内をご覧下さい。

授業で形式的に行われていることの多い「めあて、まとめ、振り返り」。 

子ども達にとって本当に大切なこととは何か。 
今のままで新学習指導要領が目指す授業を実現できるのか。 

関西大学初等部の尾﨑正彦先生、新潟大学附属新潟小学校の志田倫明先生のダブル講師をお迎えしての研修会です。 

この夏、子ども達が熱くなる算数の授業を一緒に考えてみませんか。 


お申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://kokucheese.com/event/index/571989/