2019年7月14日日曜日

秒の必要感を引き出す

3年生の時間の学習「秒」の導入場面です。

子どもたちに,折り紙で作った2種類の大きさの違う三角形を提示し,次のように投げかけます。

「どちらの三角が早く落ちるでしょうか」

子どもの予想は3つに分かれます。

「大きいのが早い。だって,重たいから」
「小さいのが早いよ。小さいから風の抵抗が少ないでしょ」
「同じだと思うよ。昔,ガリレオがピサの斜塔から重さの違う鉄を落としたら,同時に地面に落ちたって本に書いてあったよ」

予想段階で,ガリレオの話題が出てきてびっくりでした。しかし,この話し合いを終えても子どもの予想にはズレが生まれたままでした。

そこで,実験で早さを確かめることにします。大きい三角を手に持ち,上から落とそうと準備します。すると,それを見た子どもたちが叫びます。

「えー,なんで」
「小さいのも落とさないとだめだよ」

子どもたちは,2つの三角を同時に落とすものだと信じていたようです。とろこが,私が1枚の三角しか持たなかったため,先の叫び声が生まれてきたのです。しかし,この声に続いて子どもたちは,話し合いを進めていきます。

「同時じゃなくてもできるよ。タイマーがあればいいよ」
「タイマーがなくてもできるよ。数を数えればいいよ」
「でも,みんなが同じに数えないとだめだよ」(K子)

2種類の折り紙を別々に落としても,早さを比べる方法があると子どもたちは考えました。先ず,声があがったのはタイマーを使うことでした。体育の50m走の測定などでも目にしています。しかし,子どもたちはタイマーがなくても比べられると考えました。そこで生まれてきたのがK子の声です。K子は不変単位の必要性を説明しました。しかし,これが全員にはすぐには理解できません。言葉で友だちを納得させるのには,時間がかかるのです。
最終的に全員が納得したのが,R子の次の説明でした。

「もし,1回目にいーち,にーい,さーんと数えたとします。2回目,いち,に,さんと数えたとしたら,数える長さがズレるから同じに数えないとだめなんだよ」

この説明で「あー」と全員が納得しました。R子は,具体例を提示することでそれまで曖昧だった説明を見えるようにしたのです。
混沌とした状況を,具体例を挙げることで解決した場面は過去にもありました。子どもたちは,「この前のD君の説明の仕方と同じだ」とその見方・考え方の共通点に気付きました。この気付きもすばらしいことです。

全員が同じに数える方法として,子どもたちが考えたのが教室の壁にある時計の秒針を使ことでした。不変単位として,子どもたちは秒針を選択したのです。
さて,時計と折り紙の動きを同時に見ることは難しいので,子どもたちは時計を見る役割と,折り紙の動きを見る役割を分担することにしました。

役割分担をして,2種類の折り紙を落としていきます。大きい折り紙は4秒,小さい折り紙は3秒で落ちました。三角の折り紙は紙吹雪のように一定方向には落下しません。そのためこのような結果になりました。秒を使って考えたくなる必要感を引き出した1時間でした。