2021年6月12日土曜日

バイ×2ゲームをしよう!

 子どもたちに,次のように投げかけます。

「カピバラチーム対犬チームで,バイ×2ゲームをしよう」

クラスを半分に分けます。カピバラチームと犬チームの対抗戦です。代表の子どもがじゃんけんを行います。勝ったら,得点が10倍になります。負けた場合は,得点は変わりません。

このルール説明を行ったとき,次の声があがりました。

「もし0点だったら,何回勝っても0点になる」

「0×10は0だもんね。何回繰り返しても0点だね」

0の特殊性に気付いた声です。よい視点が生まれてきました。この気付きから,最初の持ち点は0点ではいけないことが見えてきました。

そこで,最初の持ち点は1点以上にすることにしました。代表の子どもに,裏返した1~9の数字カードから1枚ずつ選択させます。カピバラチームは9点,犬チームは6点を引きました。カピバラチームは大喜びしています。ところが,犬チームから声があがります。

「じゃんけんで勝てば6点が10倍になるから60点。その後もどんどん勝てばいいんだよ」

カピバラチームの喜びは,ぬか喜びだったようです。

いよいよジャンケンです。1回戦,2回戦は,両チーム1勝1敗でした。犬チームの場合の得点は,60点になります。子どもたちにその求め方を尋ねます。

「6点の10倍だから,6×10で60だよ」

「6+6+6+6+6+6+6+6+6+6でもできるよ」

「でも,それってめんどうくさい」

ここまでは既習の計算で10倍の数を求めることができます。

3回戦の勝負は,犬チームが勝ちました。従って,60点の10倍を求めることになります。子どもからは,「簡単」「60×10」という声もあがりますが,首をひねっている子どもの姿も見えます。60×10はまだ未習だからです。そこで,「どうやって考えたらいいのかな?」と子どもたちに尋ねます。すると,次の声が生まれてきました。

「さっきは,6点の10倍が60点だったでしょ。すると,0が1つ増えたでしょ。だから,次の60点も10倍したら0が1つ増えるんじゃないかな」

6点の10倍が60点になる関係で見つけた0の変化のきまりを,60点の10倍にも同様に当てはめて考えたのです。類推的な考え方が生まれてきました。既習を生かす素晴らしい発想力です。

しかし,本当に0が1つ増えるのかは,「60+60+60+…+60」の計算をしないと,この段階の子どもたちには確かめられません。「面倒」という声もあがりましたが,子どもの予想通り答えは600になりました。10倍したら,今度も0は1つ増えました。類推的な考え方が確かめられました。

すると今度は次の声が生まれてきます。

「だったら,100倍したら,0は2に増える」

「1000倍したら,0は3つ増える」

「100000000倍したら,0は8個増える」

10倍の10倍は100倍です。従って,6点の100倍は600点なので,0が2つ増えることが確かめられました。

すると,子どもたちがこの見方のよさを語り始めます。

「0が増えるきまりをつかえば,たし算もかけ算もいらなくなる」

「すぐに答えが分かって簡単だ」

簡単に10倍の得点を求められることが分かりました。残りの時間は,ジャンケンを繰り返し,10倍の数を何回も考えていくことができました。