2021年10月29日金曜日

23×3はできない?

 3年生に次の問題を提示します。

「1個23円のチロリチョコを3個買います。代金は全部で何円ですか」

問題に出会った子どもからは,「たし算できる」「かけ算だ」「でも,かけ算は習っていない」などの声が聞こえてきます。

全員ができると自信があるのは「たし算」です。先ずは,たし算で計算します。

「23+23+23=69」

「たし算は簡単」

たし算なら確実に計算ができます。次に,まだ不安要素のあるかけ算に取り組みます。「23×3」の立式だけなら全員ができます。しかし,この計算方法は未習です。すると子どもから,「だったら分けらたらいい」「さくらんぼでやればいい」と声が聞こえてきます。たし算・引き算でさくらんぼを使っ経験を,かけ算にも当てはめて考えたのです。

そこで「23をどうやって分けるのですか?」と尋ねます。

「12と11に分けたらいい」

「それはきりの悪い数。10とか20のきりのいい数にした方がいいよ」

「20と3ならきりがいい数だよ」

23を20と3に分けることで,きりのよい数に分けられることが見えてきました。しかし,まだ問題が残っています。

「20×3をするけど,この計算は習っていないよ」

「だから,20の0を隠して2×3にして・・・」

「違うよ。20を10でわって,2にするんだよ」

「2×3なら計算ができる。答えは6」

「さっき10でわったから,10倍して元に戻せばいいから60になる」

「これって,どっかでやったね」

「10月4日の重さの学習でやっているよ」

20×3のかけ算九九は未習です。しかし,重さの単位変換の問題で,重さの数値が1000倍と1000分の1の関係のなっている学習を行いました。そこでの見方・考え方と,20×3の問題が似ていると考えたのです。既習を活かしたよき見方・考え方が生まれてきました。

かけ算の筆算につながるこの単元では,導入場面で20×3や30×3等の何十×になる問題だけを取り扱う事例が多くあります。その後の学習する23×3等の計算がスムーズに進むための配慮です。しかし,子どもたちの既習の中では20×3の計算の仕方につながる見方を引き出す学習は何回か経験しているのです。その見方を引き出すことができれば,20×3や30×3を取り出して指導を行わなくても授業はできるのです。

授業のその後です。

「次は,残った3と3をかけて9」

「さっきの60と9を合わせて69になる」

このように考えれば,最初はできないと考えていた23×3の計算もかけ算でもできることが見えてきました。たし算でもかけ算でも計算はできそうです。

すると今度は,次の声が聞こえてきます。

「たし算もできるけど,たす数が増えてきたら,たし算は大変になりそう」

「でも,かけ算もめんどくさそう」

たし算・かけ算の計算方法が一般化できるのだろうかという声です。この時点では,たし算にもかけ算にも不安を抱えた子どもも多く見られました。

そこで,②21×4,③11×7と順に両者の求め方を体験していきます。②21×4は,両者やりやすいという声もあがりましたが,③11×7では,たし算に悲鳴が上がりました。

「わかんなくなってきた・・・」

「7回もたすの大変」

「時間もかかる」

一方,かけ算方式には次の声が聞こえてきました。

「すごい簡単」

「すぐにできる」

「たし算はすごく式が長かったけど,かけ算は式が短いからやりやすい」

かける数が大きくなると,たし算方式は大変になることを実感した子どもたちでした。かけ算サクランボを使えば,どんなかけ算もできそうな予感がして授業が終わりました・・・。





2021年10月26日火曜日

分数倍を図で乗り越える!

 子どもたちに次の問題を提示します。

「3色の紙テープがあります。青は黒の1/2の長さです。赤は青の1/3の長さです。赤は黒の○/○の長さですか」

問題に出会った子どもからは,「図でできそう」「式は難しいね」「どれが一番長いの?」「ごちゃごちゃしてきた」などの声が聞こえてきました。

問題の構造自体は,前回学習した問題と似ています。しかし,数値が分数になることで問題場面のイメージ化のハードルが高くなったのです。当面の子どもたちの問いは,テープの長さはどの色の順で長いのかです。

そこで,「テープの長さはどの順になっているの?」と焦点化した問いを投げかけます。

「『青は黒の1/2の長さ』だから,黒の方が長い。『赤は青の1/3の長さ』だから,青の方が長い」

「2つを合わせると,黒,青,赤の順で長い」

「シーソーの図でも分かるよ。黒と青をシーソーに載せると,黒が長いから黒が下がる。青と赤をシーソーに載せると,青が長いから青が下がる。この2つのシーソーをつなげると,黒,青,赤の順に長いことが分かる」

このシーソーの説明が,子どもたちには分かりやすかったようです。「そういうことか」「分かりやすい」と声があがります。

さて,長さ比べの順位は分かりました。しかし,まだ赤は黒の○/○かは分かっていません。すると子どもからは,「図に描けば分かる」「長さを入れたらいい」などの呟きが聞こえてきました。そこで,ノートに図を描いて○/○を考えることにしました。

「黒の長さの半分が青でしょ。だから青はこの長さ(図示しながら)」

「青の長さの1/3が黒でしょ。だから赤はこの長さ(図示しながら)」

「赤は青に3つ入る(図示しながら)」

「さっきと同じことをすれば,黒も分かる」

「赤が黒の中に6つ分入る(図示しながら)」

「だから1/6になる」

テープ図で1/6という関係を見つけることができました。

また,具体的な長さを入れて考えた子どもたちもいました。

「黒が12㎝なら青は6㎝になる」

「だったら,赤は6㎝の1/3だから2㎝」

「2×6で12㎝だから1/6」

「12÷2=6でも分かるよ。1/6」

「最初は式は難しいと言ってたけど,式でもできたね。すごいね」

テープ図に具体的な数字を入れることで考えやすくなることは,前回の学習で子どもたちが発見した見方です。その見方を本時でも活用してみたのです。さらに,数値化することで,最初は難しいと考えていた式化もできることが見えてきました。

分数のかけ算につながる見方や分数倍の見方を,図を使いたくなる場面に出会わせることで引き出していくことをねらった学習です。




2021年10月23日土曜日

何倍の何倍はたしざん? かけざん?

 3年生の子どもたちに,次の問題を提示します。

「紙テープがあります。赤は青の2倍の長さです。黒は赤の3倍の長さです。黒は赤の何倍ですか」

問題に出会った子どもからは,「?」「頭の中がごちゃごちゃしてきた」などの声が聞こえてきました。問題場面が複雑で,うまくイメージができないのです。

そこで,頭の中のごちゃごちゃを解消するにはどうしたらよいのかを考えます。子どもたちは「図にすると分かりやすい」と考えました。

子どもたちは右のような図を描きます。これで,各色のテープの関係がかなり整理されてきました。

すると今度は子どもから,「5倍だね」「えっ?6倍でしょ」と,青と黒のテープが何倍の関係に当たるのかを考える声が聞こえてきます。

そこで,「5倍と考えた友だちの気持ちは分かるかな?」と,5倍の気持ちの読解を行います。

「青から赤が2倍。赤から黒が3倍。だから,これを合わせたら5倍になる」

この説明に子どもたちも納得です。しかし,「でも!」とこの論理を否定する声が聞こえてきます。一方,「5倍でしょ」という声も聞こえてきます。

いったい5倍なのか,6倍のなのか? 子どもの中から,「だったら長さを入れたらいい」と声が聞こえてきます。ここまでは具体的な長さがない状態で,青と黒の関係を考えていました。しかし,これでは5倍か6倍かがはっきりとしません。そこで,具体的な数値を入れれば分かるというアイディアです。

「もし青が1㎝なら,赤は2倍の2㎝。そうすると,黒は2㎝の3倍だから6㎝」

「だから,6÷1の計算をすれば6倍だと分かる」

具体的な数値で考えることで,子どもたちも青を黒の関係が6倍になることを全員が納得をしました。

抽象的な場面に意図的に出会わせることで,具体的な数値を使って考える良さを子どもたちは実感していくことができました。

その後,テープ図を作図しても6倍の関係が見えることも分かりました。








全国算数授業研究大会東京大会オンライン開催のお知らせ

 2年ぶりに「全国算数授業研究大会東京大会」が開催されます。算数の学びに飢えていた?全国の先生方,お待たせいたしました。今回はオンラインという形ですが,例年通りの授業公開もあります。その他にも学年別・見方考え方講座,ワークショップ,シンポジウムも行われます。

オンライン開催の申し込みは始まっています。大会の詳細や申し込みは,以下のアドレスからお願いいたします。

https://eventpay.jp/event_info/?shop_code=8349540894465184&EventCode=8926899624






2021年10月21日木曜日

長さの感覚を磨く!

 3年生の子どもたちに,次の問題を出します。

「縦18㎝,横30㎝,高さ6㎝の箱があります。この箱に,ボールが15個ぴったり入っています。ボールの直径は何㎝ですか」

この問題に出会った子どもからは,「昨日の逆だ」「わり算だね」などの声が聞こえてきます。前日のボールを1列に箱に入れる問題との違いを的確に感じた声です。

ここで,どんな箱をイメージしているのかノートに図を描いてもらいました。子どもたちのノートに描かれていた図は,下の写真にあるような2種類でした。Aの図の子も,Bの図の子も自分の図には自信満々です。

Aの図の気持ちを読解します。

「昨日の図も,横にボールが1列並んでいたから,同じように描いた」

ボールの個数も正しく15個描かれています。この図でもよさそうです。ところが子どもからは,「18㎝は無理」と声が聞こえてきます。何が「無理」だというのでしょうか?

いくつか生まれた理由の中で,長さの感覚を活かした素敵な声があがりました。

「縦の18㎝は横の30㎝のだいたい半分でしょ。だから,30㎝の半分はだいたいこの長さ(図の横の半分の場所を指さしながら)でしょ。これが縦に来るはずだから,本当はもっと縦が長くなる(図の縦部分を指さしながら)。Bの横半分はだいたいこの辺(図の横半分を指さしながら)。これが縦に来るから(縦部分に指さしながら),この図の縦の長さとだいたい合っている」

18㎝と30㎝の長さの関係が,だいたい2倍(または半分)の関係になっている感覚を持てば,Aの図の不自然さが見えてきます。

きちんと計算をしなくても,2倍や半分などの日常生活でも使う長さや数の感覚を活用して,対象を見つめ直す視点を磨いていくことも,算数授業では大切にしていきたい部分です。




2021年10月20日水曜日

ボール5個を箱に入れる

 朝学習の短い時間を使って,次の問題を子どもに出しました。

「半径4㎝のボール5個が,箱の中にぴったり入っています。箱の縦と横の長さは何㎝ですか」

教科書などにも掲載されている問題です。教科書では,問題文と同時にボールが入った箱の絵も提示さています。

この問題文を提示した際には,図は提示していません。従って,子どもたちが頭にイメージする箱の形にはズレがあることをこの時に直感しました。そこで,「どんな箱をイメージしているの?」と尋ねます。すると下の写真のような様々な並び方の箱をイメージしていることが分かりました。本当に子どもたちは,様々な箱をイメージするものです。

ボールの並びが決まらないと,縦・横の長さを決定することはできません。子どもたちは,板書にある4パターンの中で,ボールが横に5個並んでいる箱が「横も縦も簡単に求められる」と考えました。そこで,この横向きバージョンの長さを求めていくことにしました。

子どもたちの中には,「横:4×5=20(㎝),縦:4×1=4(㎝)」と式をノートに書いて,満足している子どもたちもいました。

そこで,この式を板書します。子どもからは「えっ?」「そういうこと!」と声があがります。そこで,「この式を書いた友だちの気持ちは分かるかな?」と,式の意味の読解活動を行います。

「半径が4㎝でしょ。ボールが5個あるから,その長さを5倍すれば20㎝になる」

論理的な説明です。しかし,「ちがうちがう」と声があがってきます。

「半径じゃだめです。直径です」

「直径は半径の2倍です。だから,4×2で8㎝にします。その直径が5個あるから8×5で40㎝です」

「だから,縦の長さも違います。これも直径で考えるから,4×2で8㎝。8㎝が1個分だから8×1で8㎝です」

教師はていねいに全ての条件を提示してしまうことがあります。そうではなく,問題場面の条件を一部だけ提示することで,子どもの想像力を培うことにもつながります。



2021年10月18日月曜日

算数教科書を活用した授業づくり会場,素敵です!

 昨日,「算数教科書を活用した授業づくり」講座の会場になる数研出版関西本社で会議が行われました。京都市営地下鉄丸太町駅降りてすぐの場所に会場はあります。目の前には京都御所があります。

3階建ての京都にふさわしい外観の素晴らしい建物です。会場になる地下の廊下には,高校地学の教科書発行会社にふさわしい鉱石の標本や化石などがたくさん展示されています。まるで博物館のような素敵な会場です。

地下のホールに入れる人数は限定50名です。(オンラインは200名)

私たちの講義・模擬授業だけではなく,会場の素晴らしさも堪能していただけたらと考えています。京都御所(御苑)もすぐですので,こちらの散策や観光もおすすめですよ!