2018年6月16日土曜日

ボーリング場から平行の概念を引き出す

4年生の子どもたちに,次のように投げかけます。

「ボーリングをします。どちらのボーリング場でやりたいですか」

2つのボーリング場のレーンを提示します。多くの子どもたちは,Aのボーリング場を選択しました。
一方,Bがいいと考える子どももいました。そこで,ボーリング場を選択した理由をノートに書かせます。

理由を書き終えた子どもたちが,理由を発表します。
「Bがいいです。だって,Bは長さが違うから短い方でボーリングしたらお得だから」
「長さが違うのは,平等じゃないよ」
「Aは,長さが全部同じだから平等」
「Aは,どのレーンも長さが同じだよ」
「Bだと左端のレーンならいいけど,右端のレーンになったら長いからいやだよね」
「長さが同じ方がけんかにならない。Bだとけんかになるよ」
「Aは全部同じだからいいんだよ」(K子)

子どもたちは,上下の2本の直線の間にあるレーンの縦の長さに着目しました。Aはどのレーンも同じ長さ,Bは長さが異なることに気づいていきました。この気づきを価値づけます。

次に,K子の声を子どもたちに投げ返します。

「K子さんが『全部同じだよ』と言っているけど,どういうことかわかるかな」

レーンの縦の長さが等しいことを説明する声と同時に,次の声もあがってきました。
「角も同じだよ」
「Bは斜めになっているでしょ」
「Aは4つとも同じ角だよ」
「Bは上の角は100°,Aは90°」

「同じ」の意味を子どもたちに投げ返すことで,長さだけではなく角の大きさも同じ部分があることが見えてきました。
そんな子どもたちに,「もっとレーンが増えたら,どんなボーリング場ができるかな」と尋ねます。

「Aはどこまで行っても同じ長さのレーンになる」
「Bは右に行くと,どんどん遠くなる。反対に左に行くとどんどん近くなる」
「最後は三角形になる」
「ありえない」

平行な2直線は,永遠に交わらないことが見えてきました。

最後に,次のように投げかけます。
「もう1つボーリング場があるのを忘れていました。このボーリング場は,けんかにならないレーンですか,けんかになるレーンですか」

3つ目のボーリング場を提示します。子どもたちは,ボーリング場の絵を見つめます。「えっ,どっち」と子どもたちの判断は分裂しました。

本当はどちらのボーリング場なのか,子どもたちは知りたくなっています。「ボーリング場の印刷された紙がほしい」と声があがります。子どもたちが動き出した姿です。そこで,同じ図を配布します。子どもたちは,角度や長さを測定します。
「あれ,けんかの起きる方だ。角度は93°」
「レーンの縦の長さも微妙に違う」
「上にまっすぐな(平行)線を引くと,隙間ができる」

3つ目のボーリング場は,微妙に平行ではありません。微妙な図を提示することで,子どもたちは平行か否かを確認したくなったのです。さらに,角の大きさと長さの視点で,平行か否かを実験することもできました。

ボーリング場を素材とすることで,平行の概念を子どもから引き出すことができた1時間でした。