2021年5月19日水曜日

差が小さい方が勝ちゲームをしよう!

 算数の時間,「差が小さい方が勝ちゲーム」を行いました。以前に行った「1000に近い方が勝ちゲーム」の第2バージョンです。前回はたしざんの導入としての扱いでしたが,今回はひきざんの導入としての扱いです。

 さて,今回のゲームは,隣の友だちとの差が小さい方が勝ちという点が前回のゲームとのルールの違いです。


 ジャンケンが終わり,ペアの得オザカードをホワイトボードに貼り出していきます。その後,次のように投げかけます。

「この中で一番簡単に計算できそうなカードはどれかな」


子どもが真っ先に指摘したのは509オザ・508オザ」です。そこで,このカードを選んだ気持ちを尋ねます。

「だって,繰り下がりがないから簡単だよ」

「1違いだら,計算が簡単ですよ」

「繰り下がりがないカードは,まだあるよ」

 

 子どもたちは,繰り下がりの回数に視点を当てて,カードの仲間分けを始めました。その後,「繰り下がりがない」「一の位だけ繰り下がる」「十の位だけ繰り下がる」カードに仲間分けを進めていきます。


 この中で子どもたちの考えが分裂したのが581オザ・284オザ」「410オザ・318オザ」です。多くの子どもたちは当初は「一の位だけ繰り下がる」と考えていました。ところがしばらくすると,次の声があがります。

「あれ?」

「十の位も繰り下がる」

「前の『だまされる事件』に似ている」


「だまされる事件」というのは,「578+522」が見た目は一の位の繰り上がり1回なのに,実際には十の位も繰り上がり,結果として繰り上がりが2回あるタイプの計算のことです。一の位の計算結果が,十の位に影響を与えるパターンです。この計算を「スリップ計算」と子どもたちは命名しました。


今回のカードも,仕組みがそれと似ていることに子どもたちは気付いたのです。一の位の計算結果が,十の位の計算に影響するというパターンです。この計算には「スリップ繰り下がり」と名前が付きました。


たし算での学びをひき算にも進んで活かそうとする子どもたちの視点,すばらしいですね!



2021年5月16日日曜日

繰り上がりは2回? 3回?

 「1000に近い方が勝ちゲーム」で,最後に残されたカードは,「578+522」です。この計算カードの繰り上がり回数を,2回と考える子どもと3回と考える子どもに判断が分裂します。ズレが生まれたのです。

先ずは,「くり上がり2回」と考える子どもたちの気持ちを読解します。

「一の位は1+8,百の位は5+5で繰り上がる」

「だから,繰り上がりが2回ある」

パッと見ると,一の位と百の位が繰り上がることはすぐに見えてきます。しかし,この読解の後,「でも」「そうじゃなくて」という声が多数聞こえてきます。

まだ繰り上がる場所があるという声です。しかし,実際に計算を行わないとその真偽を確かめることはできません。そこで,ノートに「578+522」を計算することにしました。

筆算で計算する子ども,位分け分けで計算する子どもがいました。

位分け分けで計算すると,繰り上がりの回数が一の位と百の位にあることは分かります。しかし,十の位が繰り上がることは,見た目では分かりにくいことを子どもたちも実感します。

「筆算みたに繰り上がりの数が書いてないから,分かりにくい」

「十の位は,繰り上がっていないように見える」

「横に計算すると,分かりにくい」

一方,筆算については次の声が聞こえてきます。

「筆算は,繰り上がりが分かりやすい」

「十の位も1+7+2で10だから繰り上がるね」

「筆算は,一の位も十の位も百の位も縦に計算するから分かりやすい」

「くり上がりの回数は,縦に計算する筆算が分かりやすいね」


繰り上がりの回数に着目することで,筆算のよさに子どもたちは気付くことができました。

「1000に近い方が勝ちゲーム」結果は,「499+499」という結果だったチームが1000から2オザ差の988オザでチャンピオンとなりました。



2021年5月13日木曜日

いつの間にか筆算しちゃってた・・・

子どもたちが「簡単」だと考えていた百の位をたす「位分け分け」方式ですが,繰り上がりが増えてくると「正しく計算ができるか心配になる」と考える子どもたちが増えてきました。一方,「位分け分けは,いつでも簡単だよ」と考える子どもたちもいました。この段階では,計算方法の簡便さの優劣を子どもたちはそれほど感じてはいません。

 

1000に近い方が勝ちゲーム」で計算が終わっていないカードが,まだ数枚残っていました。そこで,それらのカードの計算に取り組みます。


最初に取り組んだのは,「540+579」です。子どもたち


のノーを見て回ると,11人の子どもたちが「位分け分け」で計算間違いをしていました。約1/3に当たる子どもたちが計算間違いをしていたことになります。繰り上がりが増えると,やはり計算が面倒になってくるようです。


この事実に出合った子どもたちからは,「やっぱり筆算の方が簡単だと思う」と声があがります。気がつくと,勝手に筆算をしていた子どももいました。子どもは困ったことがあると,よりよい方法を主体的に模索していくのですね。


いつの間にか子どもたちが勝手に取り組んでいた筆算は,本当に簡単なのでしょうか? 540+579の筆算に全員に取り組ませることにしました。筆算自体は,これまで十の位同士の計算でも経験しています。その経験を基に計算を進めていきます。

「筆算は簡単だ」

「すぐに答えが出る」

「位分け分けだと,同じ位を線でつないだあとの計算(合計)が大変」

「位分け分けは,筆算の倍の計算がいるから大変」


「筆算」と「位分け分け」の両方の計算を体験することで,その違いを子どもたちは意識することができました。この後も数問の問題に,「位分け分け」「筆算」の両方の方法で取り組んでいきます。

多くの子どもたちは,「筆算が簡単」と考えました。筆算の簡便さが実感できたようです。一方,「位分け分けがやっぱり簡単」と考える子どももいます。子どもの思いは様々です。




2021年5月12日水曜日

繰り上がりが2回になると・・・

1000に近い方が勝ちゲーム」でできた得オザカードには,ま


だ計算が終わっていないものがあります。繰り上がりのあるカードがたくさん残っています。そこで,これらのカードの計算を,子どもたちが「簡単」だと考えている「位分け分け方式」で順に取り組んでいくことにしました。

 最初に計算したのは,「514+512」です。百の位が繰り上がる計算です。「簡単」と考えていたにも関わらず,何人かの子どもたちが計算ミスをしていました。しかし,多くの子どもたちは「単なる計算間違いだから大丈夫だよ」と声をあげます。「位分け分け方式」に自信をもっているようです。


 その後も,百の位だけ・十の位だけ繰り上がる計算(写真右側列)に取り組みました。答えを求めることはできました。


 「やっぱり簡単」という声が聞こえてきます。一方,「繰り上がりが増えたら,どうかなあ?」「間違えやすくなるんじゃないかな?」と「位分け分け」の限界を感じる声も聞こえてきました。


 繰り上がりが増えても「位分け分け」は簡単にできるのでしょうか? 今度は繰り上がり2回の計算に挑戦していきます。

最初の問題は,「609+482」です。子どもたちのノートを見ていると,計算を間違える子どもが激増しました。「繰り上がりをたすときに間違えちゃう」と計算間違いの理由を説明する声があがります。


次に挑戦したのは,「618+528」です。この問題も計算間


違いの子どもが見られます。この計算に取り組んでいるとき,筆算をしている子どもがいました。理由を尋ねると,「心配だから,筆算で確かめた」と説明します。「位分け分け」に不安を抱いている証拠です。素直な思いを表現してくれました。

 

 繰り上がりが増えても「位分け分け」は簡単なのか,子どもたちに最後に尋ねます。心配と考える子どもが,以前よりも増えてきました。



愉しい算数授業を創る研修会延期のお知らせ

 6月に大阪府池田市で開催を予定していました「愉しい算数授業を創る研修会」は,新型コロナ感染拡大が落ち着きを見せない現状を踏まえ,延期することといたしました。愉しみにされていた先生方,申し訳ありません。既にお申し込みをいただいた先生方には,事務局より連絡をさせていただきます。

この会は対面での実施を基本としています。そのため,延期という措置を執らせていただきました。

延期日程は,現段階では9月4日(土)を予定しています。正式に決まりましたら,お知らせいたします。6月に会にお申し込みの先生方は,無条件で9月の会の予約決定とさせていただきます。

新型コロナ感染が1日早く落ち着くことを祈るのみです。

2021年5月11日火曜日

繰り上がりがあっても簡単?

1000に近い方が勝ちゲーム」のその後です。ゲームを終えたペアの各得オザをカードに書きます。ホワイトボードには,得オザカードが貼られていきます。

そして,次のように投げかけます。

「この中で,簡単に計算できそうなカードはあるかな?」


子どもたちは,

600+308は簡単

300+431も簡単だよ

「だって,繰り上がりがないから」

「だから,計算がややこしくない」


子どもたちは,2枚のカードを簡単だと判断した理由を説明します。繰り上がりに視点を当てた,数字に対するよき見方が生まれてきました。


その後,800+471も繰り上がりがない」という声があがります。しかし,カードをよく見ると百の位が繰り上がっています。

「百の位が繰り上がるよ」

「でも,0が多いから簡単だよ」


「800+471」が簡単に見えた理由を子どもたちが読解していきます。単に考えを否定的に見るのではなく,このように簡単だと思えた理由を推論できる見方はとても素晴らしい姿です。

 

800+471」が取り上げられたことをきっかけに,子どもの視点は繰り上がりのあるカードへと向かっていきます。先ほどのカードの出現が,カードを整理していく上でのよい視点の転換を導き出したと考えられます。


「百の位が繰り上がるのは,まだあるよ。514+512もそうだよ」

「十の位だけ繰り上がるのもあるよ。380+389がそうだよ」

「繰り上がりが2回あるのもある。798+520は,百の位と十の位が繰り上がるよ」

「だったら,十の位と一の位が繰り上がるのもあるよ。499+499だよ」

「百の位と一の位が繰り上がりのもあるよ。618+528だよ」

「まだあるよ。578+522も2回繰り上がるよ」

「あれ? これって3回繰り上がるよ」

「えっ? 2回だよ」

「どういうこと?」


 繰り上がりを巡って,様々な考えが生まれてきました。この段階では,繰り上がりを視点に数字カードを仲間分けすることが目的です。「578+522」の繰り上がりの回数を巡るズレは,クラス全体で考えていく価値あるものです。(これは後日,じっくりと取り組みます)ここでもよい見方が生まれてきました。

 

 この時間は,「600+308」「300+431」「800+470」にチャレンジしました。いずれも「位分け分けは簡単」と子どもたちは考えました。ここまでは順調です・・・。



2021年5月10日月曜日

1000に近い方が勝ちゲームをしよう!

3年生「たし算とひき算」の導入場面です。


3種類のパターンブロックを使って,「1000に近い方が勝ちゲームをしよう」と投げ掛けます。次の3種類のブロックを子ども達に配布します。使用したのは,パターンブロックです。


六角形(100オザ):4個 

○四角形(10オザ):9個 

○三角形ブロック(1オザ):10


 合計500オザがゲーム開始当初の持ちオザです。最初の自分の得オザを考える時点で,子どもからは,次のこえが聞こえてきました。


「100オザが4個なら,400オザになる」

「10オザが9個なら,90オザ」

「400オザと90オザをたせば,490オザになる」


 これらの声は,位取り記数法の考え方に沿ったものです。ゲームのルールを確認する活動の中から,本単元で大切な位取りの見方が生まれてきました。


 ジャンケンをして,パーで勝ったら100オザ,チョキで勝ったら10オザ,グーで勝ったら1オザ分のブロックが相手からもらえます。ジャンケンは5回。

 このゲームは個人戦ではありません。隣の席の友だちとの合計が1000オザに近いペアが勝ちです。従って,ジャンケンで負け続けても必ずしも悲しむ必要はないのです。


 5回戦のジャンケンが始まります。子ども達は相手を変えながら,ジャンケンを進めていきます。5回戦が終わった後,得オザをノートに書かせます。各ペアの得オザを合計しますが,百の位同士のたし算は未習です。そこで,「211オザ」「350オザ」を獲得したペアの計算方法を全員で考えていくことにしました。


 この場面で「筆算でできる」という声もあがりました。筆算は抽象度が高く形式的な計算方法です。この場面で大切な数の仕組みを考えるには,筆算を使わない方法を考えることに価値があります。そこで,筆算を使わない計算方法を考えさせました。


 多くの子ども達が考えたのが,右のような計算方法です。同じ位同士の数を線でつなぎ,それらを計算していく考えです。ここで引かれた線の意味を,ていねいに読解していきます。この読解活動の中で,子ども達は線を引く順番にこだわりました。


「百の位から線を引いちゃあ,ダメだよ」


「一の位から引かないと,繰り上がりがあったら困るよ」

「この計算は繰り上がりはないけど,繰り上がりがあると計算が大変になるから,一の位から計算しないとだめだよ」

「どこで繰り上がりがあるか分からないから,一の位から計算しておいた方がいいよ」


繰り上がりの存在を意識することで,計算の手順を見直す声が生まれてきました。これは「位分け分け」と2年生で名付けた計算方法です。子どもたちは,「位分け分け」なら「簡単に計算ができる」「位が大きくなるまで品さんはもう必要ない」と考えています。本当に筆算は必要ないのでしょうか?


本実践は,『板書で見る全単元・全時間の授業3年上」(東洋館出版社)のアイディアを参考に展開をアレンジしたものです。