2018年5月17日木曜日

的当てから円の感覚を引き出す

3年生の子どもたちに,次のように投げかけます。
「4人で的当てをします。どちらのコートでゲームをしたいですか」

多くの子どもたちは,右のコートを選択します。その理由を尋ねます。
「左のコートだと,④の人は遠くて,③の人は近い」
「左のコートでやると,もめごとが起きる」
「右のコートは,4人が同じ長さだから」
「同じ長さなら,もめごとは起きないから」
 子どもたちは,もめごとが起きない平和なコートを選びました。等距離で考えたいという根拠が,もめごとが起きないことにあったのです。子どもらしい素敵な発想です。


 正方形状に並ぶことを選んだ子どもたちに,次のように投げかけます。
「4人の友だちが,『私も入れて』と言ってやってきました。お友だちは,どこに入れてあげますか」

 子どもたちは,ジェスチャーで「あそこ」と口々に言い始めます。そこで,ノートにやってきた友だちの位置を描かせました。ほとんどの子どもたちは,右のように,正方形の頂点の間に,追加の4人を入れようと考えました。一方,ノートに追加の4人の位置を記入できずに,「あれ?」と悩んでいる子どももいました。正方形状の間に立たせることに違和感をもったのです。

 多くの子どもが考えた位置に,印を付けてみます。すると,この印を見た一部の子どもから,「なんで?」と声があがりました。この声の意味を,多くの子どもはまだ見えていません。そこで,「『なんで?』と言った人がいるけど,その気持ちは分かるかな」と尋ねます。

「青の所だと,短くなる」
「はじめの人は的まで遠くて,後から来た人は的までが近い」
「的から近くなると,もめごとが起きちゃうよ」
「後から来た人も,はじめの人も同じにならないとだめだよ」

青の位置では,的までの距離が短くなることが見えてきました。そこで,「後から来た人を,どこに立たせればもめごとは起きないのかな」と投げかけます。
子どもたちは,青の位置よりも外側に新しい位置を設定しました。

さらに,「今度は8人やってきました。どこに立たせてあげればいいですか」と尋ねます。磁石を使って,追加の位置を貼らせます。今度は,的からの距離を意識して磁石を貼っていきます。追加の8人の位置が決定すると,子どもから次の声があがります。
「花火みたいになっている」
「丸くなっている」
「円になったね」

的から等距離にある人の位置を16人作図することで,その軌跡が円に近くなることに子どもたちは気付いたのです。円の感覚を,的当てゲームを教材とすることで引き出すことができた1時間でした。