2018年5月7日月曜日

わり算の意味の統合を教科書通り進める

3年生のわり算には,等分除と包含除の2つの種類があります。この2つのわり算は,かつては別の演算と捉えられていました。しかし,現在では同じわり算として統合しています。教科書でも,両方のわり算場面を学習した後に,意味の統合を行います。

この意味の統合を行う場面を,教科書の問題通りに展開してみました。問題は次の通りです。

「トマトが10個あります。10÷5になる問題を作りましょう」

子どもたちは,ノートに問題を作っていきます。「問題は2個できるよ」という声も,その活動の中から聞こえてきました。

できた問題を発表させます。
「トマトが10個あります。5人で分けると,何個もらえるでしょう」
多くの子どもたちが,この等分除型の問題を作りました。これは10÷5の問題場面です。そこで,子どもたちに答えをどうやって求めたか尋ねます。
□×5=10のを探せばいい」
が1人何個分になる」
も10も単位は個だから,□×5=10で見つける」

次に,「問題は2個できる」の声を受け,別の問題を発表させます。
「トマトが10個あります。1人5個ずつ配ると,何人に配れるでしょう」
包含除の問題です。この問題も10÷5になります。次に,答えの見つけ方を尋ねました。
「これも□×5=10のを探せばいい」
と声があがりました。ところが,「えっ?」という声も同時にあがります。
「今度は,5×□=10だよ」
 後者の式で求めることは,既に学習しています。しかし,3年生にとってその学習はすぐには定着しないものです。
「同じわける問題だから,最初の問題と同じでしょ。だから,□×5=10でもいいよ」
このような声もあがります。後者の式を主張する子どもが,過去のノートを開いて説明していきます。最終的に,子どもたちが最も納得したのが次の説明でした。
「あのね,最初の問題(等分除)はトマトを横に配っていったでしょ」
このように言いながら,図をかき始めました。図を使って2つのわり算場面の違いを説明し始めたのです。
 そこで,後者の問題(包含除)はどのような図になるのかを,子どもたち全員にノートに描かせました。この場合は,トマトは一気に縦に5個分の図を描くことになります。つまり,1人分の5個を一気に描くのです。次に,2人目の5個を縦に一気に描きます。

 2つの図を見ると,同じ配る問題でも答えに当たる部分の囲まれ方が全く異なることが見えてきます。問題場面を図に置き換えることで,2つの式の違いが明確に認識できました。

教科書では,作問の後,かけ算の式で答えの見つけ方を確認する展開です。しかし,実際の子どもは,かけ算の式の違いを簡単には理解できません。その時に有効なのが,図だったのです。教科書に問題場面の図は掲載されています。しかし,その図は子どもから引き出すというのではく,教師から提示するようなイメージがあります。図は教師から提示するのではなく,前述のように,図を使いたくなる瞬間を引き出すことで,2つのわり算場面の違いをより明確に意識できるのです。教科書の展開を少し演出することで,子どもが創り上げる授業が具現できます。