2021年8月10日火曜日

個別最適化×ICTが次の教育課題・・・?

夏休み,オンラインでの研修会にいくつか参加しています。そこでの話題の一つが「個別最適化」でした。次の指導要領改訂の目玉とも言われているものです。一人一人の子どもの学びの実態に合った最適な学習を保障するというものです。この個別最適化を展開するうえで欠かせない道具がICT機器であり,それをもっと活用していこうという話題が大きくなっているというものでした。ざっくりとしたイメージでは,なんとなく分からなくはない主張です。

一方,別の研修会では今回の学習指導要領の目玉である主体的・対話的で深い学びを引き出す授業改善が,コロナ禍やICTの影響で後退しているという話題もありました。これは,コロナ禍でも行われている授業を拝見させていただく機会がありましたが,私も実感しています。

大学受験などを目的として現在の塾業界は,完全に「個別最適化」にシフトしています。私が講師を務めるスタディーサプリを筆頭に,東進ハイスクール や河合塾マナビスなどでは,生徒一人一人が自分の学びのペースで,神授業の動画を視聴しています。自分のペースですから,ゆっくり見たり,飛ばしてみたり,繰り返し見たりすることもできるのです。授業動画につながるドリル問題は,AIドリルです。個別最適化に特化した塾業界は,目的とする大学受験でも華々しい成果を出しています。

学校教育は塾業界のスタイルを後追いすることになるのでしょうか? そうだとしたら,もはや学校には先生が必要なくなるかもしれません。神授業の動画を自分のペースで子どもがタブレットで視聴し,その後は教室にいるチューター役の先生(もはや先生とは呼べないかもしれませんが・・・)がフォローすればいいのです。塾は完全にこのスタイルです。

学校と塾では目的が異なります。学校は大学受験だけが目的ではありません。特に小学校では,現在の学習指導要領にも明記されているように,授業を通して子どもたちの見方・考え方を培うことが大きな目的です。この部分は,動画視聴だけでは十分に進めることはできません。

見方・考え方を培うためには,子どもたちがそれを使って考えたくなるような授業を教師が展開できることが必要です。さらには,授業の中で生まれきた見方・考え方を教師が即座にキャッチし,クラス全体へと共有化し価値づけていくことも大切です。これらの一連の活動は,動画視聴だけでは絶対にできません。だからこそ,主体的・対話的で深いを引き出す授業展開を進める教師の授業技量を高める必要があると考えています。

夏休みも残り半分ほどになりました。コロナの影響で対面の研修講座はほぼありませんが,先生方もオンラインや書籍などを通して,見方・考え方を培うことにつながる授業の在り方を学び,よい2学期のスタートを切っていただきたいと考えています。