2022年2月6日日曜日

個別最適化で本当に大丈夫?

次の学習指導要領のキーワードは個別最適化になりそうです。この話題は,昨日の新潟大学教育学部附属新潟小学校の志田先生の公開授業の協議会後の自由ディスカッションでも話題になりました。

志田先生の授業に対して,「教師が出過ぎている」「もっと子どもに個別に考えさせるべき」などの声が事前アンケートで生まれてきたそうです。個別最適化を意識した声です。

志田先生の授業では,子どもが困っている場面で,その声を授業の舞台に載せ,クラス全体の問いとして位置付けました。この部分を個別最適化したらどうなるでしょうか。子どもの困りはそのままになります。そこに,教師が個別に指導を進めれば,困ったことは解決するかもしれません。しかし,志田先生の授業では困った子どもの人数はクラスの半分以上でした。これを個別最適化の名のもとに展開していたら大変なことになります。

授業では,クラス全体で考えたり話し合ったりする時間帯は必ず必要です。現在の学習指導要領でも重視している見方・考え方は,クラス全体での学び合いの中から引き出され,そのよさが実感されるのです。個別最適化で,見方・考え方を引き出していくことはかなり難しいのではないでしょうか。

個別最適化の発想はどこからきているのでしょうか。もとは企業の発想です。子会社を個別に競わせる個別最適化で,グループ企業全体の業績が向上すると考えられ取り組まれてきました。しかし,実際に運用していくと,マイナス面が多く見れることが明らかとなってきました。無駄な部分や同じことを子会社同士が取り組んでいることにより,結果としてグループ全体の業績が向上しないことが見えてきたのです。ある1兆円企業では,現在は全体最適に舵を切っています。企業としての運営方針を子会社全体で共有した上で,適切に仕事を進めていく全体最適に舵を切っています。その結果,業績が再向上しているのです。

学校教育にこの企業論理が周回遅れで取り入れられようとしています。すでに,企業では個別最適化のマイナス面が明らかとなっているのにです。文部科学省と経済産業省の力関係を考えると,そうなってしまうのでしょうか・・・。

知識・技能の習熟では,個別最適化は有効です。しかし,思考力・判断力・表現力を培うためには,全体最適での学びが必要なのです。

教師は,キーワードに簡単に躍らされないことが大切ですね。