2022年12月6日火曜日

比例のグラフを疑う・・・

 子どもたちに次の問題を提示します。

「植木鉢を1個・2個・3個・・・と積み重ねていきます。植木鉢の個数x個と高さy㎝はどのような関係になりますか」

当初は「比例のやつだ」と,問題場面を比例と認識する声が聞こえてきました。ところが,それからしばらくすると「向きいっしょ?」という声が聞こえてきます。「向き」を考えることに,なにか意味はあるのでしょうか?

そこで,「『向き』と言っている人がいるけど,気持ちは分かる?」と尋ねます。

「植木鉢の向きを上下にしたら,比例になる」

「もし高さが5㎝なら,5㎝・10㎝・15㎝となって比例になる」

植木鉢を上下向きを交互にして積み重ねたら,比例関係になるといのです。比例関係を作るために,植木鉢の向きが関係があったというわけです。

一方,「同じ向きなら比例にならない」という声も聞こえてきました。そこで,「同じ向きに重ねるとはどういうこと?」と,その積み重ね方を尋ねます。

「植木鉢の中に植木鉢が入っていく」

「植木鉢の頭のところだけが増える」

「もし,頭が1㎝なら1㎝ずつ増える」

子どもたちは,同じ向きに植木鉢を重ねると,増え方が先ほどとは異なると考えたのです。この場合は,積む個数が2倍・3倍となっても,高さは2倍・3倍にはなりません。積み方によって,比例にはならない場合があることが見えてきました。それと同時に,次の声が聞こえてきました。

「紙コップも同じ増え方だ」

「水筒や宿題を入れるかごも同じだ」

「お皿もそうだ」

「給食で出たゼリーカップもそうだ」

同じ向きで植木鉢を積み重ねるのと同じ増え方をする例を,子どもたちが見つけてきました。場面を拡張して考える姿勢は,すばらしいものがあります。

さて,このあとこれらの2つの変化の関係をグラフに表現しました。子どもたちは,「1個で5㎝,2個で10㎝。3個で15㎝・・・」などと点を打ち,その後,それらを直線でつないでいきました。2つ目の表も同様にして,グラフ化しました。子どもたちは,ここで完全に安定しています。ここで,このグラフへの違和感を抱く子どもが現れることを期待しましたが,子どもたちは全く安定しています。

そこで,「もう一度問題を読んでみよう」と揺さぶりをかけます。しばらくすると,「前の勉強でリボン1mの値段が150円のとき,2mでは,3mではという勉強をしました」と既習とつなげた考えが生まれてきました。これをきっかけに,子どもが気付き始めます。

「間がないんだ」

「植木鉢2.5個とかないんだ」

「2個の次は3個だ」

「リボンはつながるから小数があるけど,植木鉢はつながらないから小数はない」

「水の量はつながるけど,人はつながらない」

植木鉢の高さは分離量です。子どもたちの比例のグラフに対するイメージは,単なる一直線です。連続量が対象の場合は当てはまりますが,分離量では当てはまりません。この思い込みが,植木鉢のグラフを疑うことを避ける原因になったのです。

 この場合のグラフは,単に点が連続するだけなのです。子どもたちが獲得した学びの当たり前に揺さぶりをかけた1時間となりました。