2019年3月19日火曜日

×11にきまりはあるの?

3年生の子どもたちに,「こんな計算はできるかな」と問題を出しました。

①25×11=275
②16×11=176
③34×11=374
④61×11=671

①〜④までを筆算で計算を進めていきます。④の計算が終わったところで,子どもから「気づいたことがあります」と声があがります。この声で,他の子どもたちも「きまりはあるのだろうか?」と①〜④の計算を見直します。きまり発見の授業展開で大切なことは,すぐにきまりを発表させないことです。どんなきまりがあるのかを,クラス全体で探すことを愉しむ時間をたっぷりと確保することです。

子どもたちが見つけたきまりを発表します。
「どれも11をかけている」
「筆算の計算の1段目と2段目のかけ算の答えは同じになっている」
「②の16×11だったら,かけられる数の16は1+6で7。この7が答えのところで,1と6の間に入っている」
「本当だ! すごい」
「だったら③もそうだ。34×11は3+4で7。この7が答えでは374だから間に入っている」

この7が生まれるきまりを,子どもたちは②③の事例で納得しました。そこで,このきまりを隣同士で再現します。再現することで,見つけたきまりの考え方を定着させるためです。
さて,この再現活動の中で,S子は先ほどの話題にはなかった④の式を事例に話をしていました。きまりの説明の対象場面を自ら広げてみたのです。このような考え方・説明の仕方も大切です。

7のきまりを共有した子どもたちの思考のベクトルは,さらに深まっていきます。

「もし,11×11ならどうなるかな」
「11×11なら,今のきまりなら答えは121になるよ」

先ほどまではかけられる数の2つの数値の合計は7でした。その数値の組み合わせが7にはならない場合にも,同様のきまりはあるのだろうかと考えたのです。このように場面を拡張する考え方もすばらしい発想力です。

11×11が本当に121になるのかを実験します。結果は「121」になりました。この結果から子どもたちは,×11ならいつでも前述のきまりが当てはまるのだろうかと考え始めます。一方,きまりの一般性を信じ切れない子どももいます。そこで,自分で自由に数値を設定し,(AB)×11=A(A+B)B になるのかを実験することにしました。子どもに,この部分は任せたのです。時にはこのように子どもたちに実験部分を任せることも大切です。

子どもたちは自由に数値設定をして,計算を進めていきます。やがて,「なった」「私もだ」と喜びの声があがります。一方,「73×11=803」となり先ほどのきまりはそのままではあてはまりません。しかし,子どもたちは「7+3=10でしょ。十の位の1が7に繰り上がると考えれば803」と説明してきます。見方を変えることで,きまりは当てはまることを説明してきたのです。

自由に計算を進める中で,子どもたちは「×11はいいけど,×22や×33になったらきまりは当てはまらない」と考えはじめます。子どもたちの思考の範囲が,さらに拡張していったのです。

そこで,かける数が×22の場合にきまりが当てはまるのか否かを自由に実験させます。やがて,「これはだめだ」「うまくいかない」と声があがります。

34×22=748
33×22=726
21×33=693

このような結果となります。先ほどのきまりは当てはまりません。ところがここで,「そうかな」という声が聞こえます。

「34×22なら3+4=7でしょ。×22だから×11の2倍。だから,7も2倍にすると14。この4が748の真ん中に入っている」
「それなら33×22も同じだ。3+3=6で6×2=12。答えは726だから真ん中が2になっている」
「×33も同じだ。21×33は2+1=3で3×3=9。答えは693だから真ん中は9になっている」

きまりは当てはまらないとあきらめかけていた×22,×33の計算も,見方を変えるときまりが当てはまることを見つけたのです。鋭い視点,さらにはあきらめない粘り強さをもった子どもたちです。

たくさんのきまりが次々に生まれ,さらには子どもたちが追究のベクトルを次々と自ら設定した1時間となりました。この実践は,筑波大学附属小学校の田中博史先生の授業を参考に展開しました。