「何が見えるかな?」
このように投げかけ,次の文を板書します。
「若山や はるか光は 山や川」
「若山や」の板書が終わった時点で,「俳句だ」「短歌かも」という声が聞こえてきました。
そこで,残りの文章を板書していきます。「山や川」までの板書が終わった時点で,次の声が聞こえてきました。
「やっぱり俳句だ」
「五七五になっている」
「これって国語?」
「どこから算数になるの?」
「あれ,回文?」
「えっ,本当だ!」
「平仮名にすると分かるよ」
「『わかやまや はるかひかるは やまやかわ』だから回文だ」
「真ん中は『ひ』だね」
「奇数だから,真ん中があるね」
1つの文章から様々な気付きが生まれてきました。すごい子どもたちです。この文章から見えてきたのは,「俳句」「回文」でした。
さて,この視点は次の問題にも当てはまるのでしょうか。次に提示したのは「丸くなるな車」です。これは,明らかに俳句ではありません。一方,平仮名に置き換えると「まるくなるなくるま」なので,回文です。従って,2つの文章の共通点は「回文」ということになります。
そこで,「次も回文かな?」と言って「Ⅰ」が5個並んだものを提示します。多くの子は,「『いちいちいちいちいち』だから,回文じゃない」と声をあげます。一方,「回文だよ」と考える子どももいました。そこで,「回文だと言っている人の気持ちは分かるかな?」と尋ねます。
「左から見ても,右から見ても同じ形が見える」
「真ん中のⅠから見ると,左右の同じ形がある」
「鏡みたいになっている」
文ではなく,「形」で見たら同じ物が左右に鏡のようにあるので回文に見えるという気持ちを共有していくことができました。
すると,次の声も聞こえてきました。
「縦を真ん中にしても重なるけど,横を真ん中にしても重なるよ」
折り目の線を縦方向から横方向へと変えても,回文に見えるという声です。これも素晴らしい視点です。
すると今度は,「だったら回文じゃなくて,回図じゃないかな」との声があがります。確かに,文ではなく図として「Ⅰ」を見ることで,左右が回文の構造になっていることが見えてきました。すると「回図」の言葉をきっかけに,子どもの発想が広がっていきます。
「円も回図だ」
「正方形もそうだ」
「長方形もそうだ」
「二等辺三角形だ」
「正三角形もだ」
「正多角形もだ」
「正とついていたら回図だ」
「平行四辺形もだ」
「え?違いかも」
「斜めに折ったら重なるよ」
「え?斜めでもだめだよ」
「台形は大丈夫」
「待って。跳び箱みたいな台形はいいけど,そうじゃないのは回図にならない」
「ひし形は回図だ」
「左右が合同なら,回図になるんだ」
「ⅠⅠⅠⅠⅠ」が回図であることを共有したことをきっかけに,回図の範囲を子どもたちが拡張して考えていくことができました。対象場面を拡張できる見方・考え方は立派ですね。
その後,2つの三角形を提示し,回図であるか否かを考えました。回図であるかを調べる中から,図形を半分に折るだけはなく,辺の長さや角度を調べる方法も見出していきました.図形の構成要素を探る視点の出現です。
2つ目に提示した三角形は,二等辺三角形と似て非なる図形でした。見た目で回図と判断した子どもたちも多数いましたが,調べる中から「違う」「回図じゃない」と気づいていきました。
子どもたちが名付けた回図とは,線対称な図形のことです。国語から算数の世界へと広がった学習でした。