2019年2月5日火曜日

2mの1/4と1/4m

 本校の研究発表会が終わりました。参加された先生方,ありがとうございました。

私は3年生「分数」の授業公開を行いました。教師が提示する問題と同じカードを見つけるゲーム場面を設定しました。

この時間の主発問は「1/4mカードはどれですか」でした。しかし,この発問を投げかける前から,子どもたちからこの数値が生まれてきました。問題場面に主体的にかかわっている証拠です。

子どもたちが1/4mと判断したカードは2つありました。1つ目は,1mを4等分した1つ分に色が塗られたカードです。これは,全員が「1mを4つに分けた内の1つ分」という理由で納得しました。

一方,判断が分かれたのが2mを4等分した1つ分に色が塗られたカードです。多くの子どもたちは,このカードも1/4mと考えました。
「だって,2mを4つに分けた1つ分でしょ。だから1/4m」

これが子どもたちの論理でした。量分数の基準は1を単位とします。ところが子どもたちには,その1ではなく長さの単位であるmだけに意識が向いていたのです。

ところで,正解である1/4mのカードと問題をつなげて考える子どもが現れます。
「1/4mは1mがもとだから,2mのカードは違うと思う」
「1mの1/4は25㎝でしょ。2mの1/4は50㎝でしょ。長さが違うよ」

分数で表記されたmを㎝に置き換えることで,2mのカードが正しくないことを説明したのです。この論理は説得力がありました。長さの視点で比べたら,2つのカードの長さは異なるのです。ところが,「でも」という声があがります。

「でも,2mを4つに分けた1つ分だから1/4mだよ」

2mの1/4であることは間違いありません。その事実と1/4mの違い,25㎝と50㎝の違いがうまくリンクしないのです。感覚的に1/4mと言ってしまいたくなるのです。この感覚を崩すのは至難の業でした。

「2mのカードは,1mだけ見たら1/2mだから,これは1/2mだよ」

この発言をきっかけに,少しずつ子どもたちは2mのカードのおかしさに気づいてきましたが,時間内で全員が納得することはできませんでした。子どもの感覚を教師の論理ではなく,子どもの内なる気付きを基に変革していく難しさを実感しました。一方,子どもたちの論理を主張しつづける姿にも感動しました。

翌日です。この問題の続きを行いました。子どもたちの思いを発表させます。

「2mのカードは違う。1mのカードは,1mを4つに分けた1つ分です。でも2mの方は,2m全体を4つに分けた1つ分だから違います」

この発言には,この問題を解決する大きなヒントが隠れています。「全体を」という視点です。この視点を,時間をかけて共有していきました。すると,今度は子どもたちの視点が点から面へと拡がっていきました。

「4日前に勉強したノートを見て下さい。リンゴ1/4個は,もとがリンゴ1個だったでしょ。次の問題は,『リンゴの1/2』これは,リンゴ全体の1/2だから4個だった。これと同じだよ」
「ピザ2/3枚,水2/5Lは,どれももとが1枚,1Lで1なんとかだった。だからもとは1なんだよ。2がもとだとだめなんだよ」

子どもたちは,研究会前の授業と研究会で扱った分数の共通点に気がついたのです。単位がつく分数は,どれももとは1単位(L・枚・m)なのです。これでほとんどの子どもたちが納得しました。

4日前の問題では,バナナの問題を扱いました。「バナナ1/2本」です。この問題を想起することで,一気に子どもの考えが変わりました。
「バナナ1/2本は,左のバナナだけ半分にした。右のバナナは無視した」
「だったら,2mも同じだ。(2mテープの)左の1mだけ見るんだ。そして,右の1mは無視するんだ。そうすると,左は1/2m。右は無視するから1/2mだよ」

これで「そうか」「わかった」「なるほど」という納得の声が聞こえてきました。

最後は,4日目のバナナの1/2本とつながることで,子どもの納得の声が生まれてきました。2時間掛かりましたが,子どもたちが過去の学習とリンクする瞬間を引き出すことで,本当に子どもが納得する量分数と分割分数の違いを見つける授業が構成できました。