2022年6月3日金曜日

子どもの見方

 分数×分数の授業を行っていたときのことです。縦:2/3m,横:3/4m,高さ:4/5mの直方体の体積を求める問題に取り組んでいました。体積を求める式は,「2/3×3/4×4/5=2/5(㎥)」になります。私は,次は別の図形の問題に進もうと考えていました。すると,N子が「気付いたことがあります」と声があげました。一体,なにに気付いたというのでしょうか。

「3つの式の最初の分数の分母は3。2つ目の分数の分子は3で同じ。分母が4。3つ目の分数の分子は4で同じ。そして,答えは,同じ数字がない最初の分数の分子と最後の分数の分母になっている」

この声を聞いて,「当たり前だよ」という声も聞こえてきましたが,「たまたまだよ」という声も聞こえてきました。前者は演繹的に考える見方です。後者は一般化の視点に立った見方です。

先ずは,N子の見付けたきまりに,一般性があるのかを「4/5×5/6×6/7」の計算で試します。すると,結果は4/7です。この計算でもN子の決まりが当てはまりました。一般性が見えてきました。すると,今度は「当たり前だよ」という声が,先ほどよりも強烈に高まってきます。子どもたちが,式に対して演繹的に捉えたくなっていることを示した姿です。

「今の計算なら,途中式で分母と分子を約分すると,同じ数同士が消える。残るのは4と7だから当たり前だよ」

「分母と分子の数字の順番を入れ替えたら,さっきの式は『5/5×6/6×4/7』になって,『5/5×6/67』は『1×1』と同じだから4/7になる」

「数字の順番を入れ替えてもいいのは,途中式が分子は『4×5×6』で分母は『5×6×7』だから,その部分だけを見たら数字の順番を入れ替えてもいいんだよ」(Y子)

Y子の説明は,式の数値を単純に変えたら問題場面の意味が変わることを意味しています。『5/5×6/6×4/7』に式変形を行うと,直方体の形自体が変わってしまいます。場面を変えて考えるのではなく,途中式の分母と分子に視点を分けて考えることで,式の順番を変える正当性を説明したのです。論理的なすぐれた見方が生まれてきました。

短い時間でしたが,子どもから生まれた発想をもとに,分数の新たな見方を実験することで,その一般性を確かめることができた時間となりました。