2025年5月30日金曜日

1が2つあるから・・・

「0,1,1,2,3,4のカードから3枚選んで3桁の数を作ります」
このように子どもに投げかけます。101や103ができます。試しに百の位が1の場合の数を書き出します。樹形図を使うことで,20通りの数が作れることが見えてきました。

すると子どもからは,次の声があがります。
「だったら20×4で80通りある」
「百の位が2,3,4の時に20通りずつだから20×4で80通り」
「昨日の旗の色の塗り方と同じだった」
前日の旗の色の塗り分け方と同様に考えることで,3桁の数字作りも計算で総数を求めることができるという考えです。

ところが,ここで「1が2つある」と声があがります。この声をきっかけに子どもの声が続きます。
「112と112は同じ?」
「黒の1と赤の1があるとすると,黒1赤1の112と赤1黒1の112は同じになる」
「だから,百の位が3だとしたら,三百十の十は赤の十も黒の十も同じになる」
「だから,20通りよりも少なくなる」
「えっ,多くなる?」

1が2つあることで,1に色を付けて考えたら112は2種類できます。しかし,本来は数に色はないので同じ112となります。この事実から,3百台の数の種類が20ではないことは見えてきました。しかし,その数が20よりも少ないのか多いのかは,子どもの中でもズレが生まれました。

そこで,百の位が3の場合の3桁の数を実際に樹形図で書き出してみます。結果は13通りでした。百の位が2も4も同様に考えられるので,総数は13×3+20で59通りと見えてきました。

同じ数字が2枚あることと,その2枚を別物と考えるか同一と考えるかで総数に違いが生まれることが見えてきました。


 

正三角形なら?

前回の学習では,正方形のパーツで構成された図形の最短ルートを探しました。その時に生まれてきたのが,「他の形になったらどうかな?」の声でした。
そこで,今回は正三角形で構成された図形の最短ルートを探ることにしました。先ずは,正三角形2枚がひし形状につながった形です。
「線対称だ」
「昨日の方法が使える」
「1×2で2通りだ」
線対称図形であることと,右半分のルートが分かればその数を2倍することで総数を求めることができました。

その後,正三角形の数を増やしていきます。いずれの場合も,前時の方法を活用することで求められることが分かりました。また,正三角形の数が増えていくと樹形図がより使いやすい調べ方であることも見えてきました。


 

2025年5月28日水曜日

最短ルートは?

 「最短ルートを見つけよう」

このように投げかけ,正方形の対角線の位置にある2つの頂点を結ぶ最短ルートを探しました。正方形が1つの場合は,2通りあります。

次に正方形の数を4個に増やします。図を見た子どもから,次の声があがります。

「めっちゃある」

「4通り?」

「6通り?」

「もっとある?」

予想にズレが生まれます。そこで,実験します。「6通り」の声が多数を占めました。そこで,最短ルートを確認します。最初に描かれたのは,右に2ます進み,上に2ます進むルートでした。すると,これを見た子どもから声があがります。

「反対がある」

「線対称」

「対称の軸だ」

1つのルートを見た子どもから,線対称と関連付けることで,反対側に同様のルートができるという発見が生まれてきました。この方法を使えば,対称の軸の片方側だけルートを見つけたらよいことになります。この図形では3通りなので,総数は3×2で6通りとなります。

次に,縦・横3ますの9ますの最短ルートを探します。一気に難易度が増します。子どもたちの予想値もバラバラになりました。実験の途中で「面倒」「同じの書いてるかも」と声が聞こえてきます。

そこで,図の中の交点に数字を位置づけます。これでルートの確認がしやすくなります。その後,数字を使ってルートを書き出します。

最終的に,10通りのルートが確認できました。これは線対称の半分のルートなので,実際はこの2倍の20通りあることになります。

同じルートを書き出さないために交点を数値化しましたが,それでも「面倒」という声が聞こえてきました。板書のルートは,同じ数字が固まるように意識して書かれています。この同じ数字の部分を1つに省略することで,樹形図が完成します。

樹形図につながる見方を引き出す最短ルート探しの学習でした。


2025年5月24日土曜日

小松市の3年生ときまり発見授業をしました!

 昨日は,石川県小松市内の小学校で3年生にきまり発見につながる授業公開を行いました。虫食い算を解いていく中から,虫食い算の見えている数字とできる虫食い算の種類数の関係を見出していく授業でした。

3の数字で3種類の計算が完成する場面で,きまりを発見し盛り上がりました。元気でかわいい子どもたちでした。

また,訪問した学校では京都の向日市立第二向陽小の研修システムである複数学年の先生方で構成されたメンター制を取り入れられていました。メンターチームでの授業後の協議はとても質が高く深いものでした。他校の参考となる優れたシステムです。是非,先生方の学校でも取り入れられてはいかがですか?


2025年5月23日金曜日

「子どものストーリーでつくる算数の授業」セミナー開催!

 来週末は大阪で授業テラス主催の対面&オンラインセミナーが開催されます。テーマは,

「子どものストーリーでつくる算数の授業」

です。詳細は以下の通りです。

日時:5月31日(土)13時30分〜

会場:大阪市エル・おおさか

内容:

13:15 受付

13:30 オープニング
13:45 模擬授業

  • 参加者の希望者による算数模擬授業
  • 協議(感想・意見)
  • 尾﨑先生による講評

15:35 尾﨑先生による講義(”子どものストーリー”でつくる算数の授業)
16:45 閉会、解散

17:15 懇親会(希望者のみ:先着10名限定)

今回は難関単元の模擬授業も開催されます。こちらも楽しみな企画ですね。


お申し込みは,以下のアドレスからお願いします。

https://peatix.com/event/4390444/view?utm_campaign=pod-11433527&utm_medium=email&utm_source=follow-organizer&utm_content=5588415&dlvid=714ffcb8-c8b4-4667-b9cb-4803fa71553d&sltid=0

石川県小松市を訪問

 今日は,石川県小松市にある小学校を訪問します。昨年度からおじゃましている学校です。

石川県は全国学力調査でも毎年高い結果を出している県です。その秘密は石川県を訪問してみると分かります。小松市の小学校も同様です。いろいろな意味でレベルが違います!

今日は先生方の授業参観の他に,私も公開授業を行います。石川の子どもたちとどんな授業が展開できるのか楽しみです!

2025年5月22日木曜日

答えが一番小さい式

 「計算をしないで,答えが一番小さくなる式を見つけよう」

このように投げかけます。A・c/b÷dの記号の中に2〜5の数字を1回ずつ代入します。答えが最小になる式を計算をせずに式だけを書いてもらいました。

子どもから生まれたのは,2・3/4÷5と2・3/5÷4の式です。整数部分は同じ大きさです。また,分子部分も同じ大きさです。計算する部分は分母部分の4×5と5×4です。ここまで考えると,答えは等しくなりそうです。

そんなとき,次の声があがります。

「№23で似ている勉強しました。1・2/3÷3の計算で,整数の1を÷4をしないで2/3の分数だけ計算したら正しくなかった。仮分数に直さないと正しくできなかった。だから,この問題も仮分数に直して考えないといけない」

帯分数の計算問題に取り組んだときの考え方を活用する声です。そこで,帯分数を仮分数に置き換えてみます。

すると,11/4÷5と13/5÷4と置き換わります。分母部分の計算は変わりませんが,分子の大きさが異なることが見えてきました。分子が13と11です。明らかに分子13の方が大きな答えになります。半数近い子どもは,2番目に答えが小さくなる式を書いていました。

既習の考え方と関連付けながら論理を組み立てることで,よりよい考え方を作り上げることができました。




2025年5月21日水曜日

途中で約分はできるの?


「長さ3mで重さa㎏の鉄棒があります。1m当たりの重さは何㎏ですか」
と問題を提示します。式は,a÷3になります。

そこで,aにどんな数を入れたら簡単か考えさせます。「3の倍数」と声があがります。わる数が3なので,このような声が生まれてきました。

次に難しい数字を尋ねます。「分数かな」と声があがります。そこで,3/9÷3を計算してみることにしました。

これまでの学習を生かして分子をそのまま割る計算方法と,逆数をかける方法の2つが生まれてきました。さらに,分子をそのまま割る計算方法の途中で,分子の3÷3と分母の9を3で約分する方法が生まれてきました。ところが,途中で約分を行うと答えがそれまでの方法とは異なってしまいます。

分数のかけ算では途中で約分することができました。それと同じ方法を,わり算の途中にも当てはめてみたのです。この考え方自体は価値があります。しかし,答えが異なります。

この結果,分数のわり算では途中で約分を行うと答えを正しく導き出すことができないことは見えてきました。しかし,「なんで?」と疑問があがります。
しかし,この疑問を乗り越えることは難度の高い問題でした。式変形を行ったり,図を使ったりして説明を進めていきました。分数のわり算で約分を行うと,図を使うことで問題場面自体が変わることが見えてきました。この部分は難しかったようです。

分数のわり算の途中で約分したくなる考え方は,分数のかけ算を体験した子どもにとっては当然生まれてくる発想です。この部分をもとに子どもたちと考えた時間でした。


 

2025年5月20日火曜日

倍分方式はいつでも使えるのか?

「倍分のやり方は,どんな分数でも使えるのかな?」
子どもたちに投げかけます。多くの子どもは,前時に生まれてきた倍分方式が一般化できると考えています。

そこで「4分で5/6Lのジュースを作るマシンが1分で作ることができるジュースの量は」の問題場面で考えることにしました。式は5/6÷4になります。このままでは分子をわることはできません。すると,次の声があがります。

「5/6を変えたらいいよ」
「4で割り切れるようにしたらいい」
「4倍したらいい」

「4倍」という声が生まれてきました。なぜ「4倍」なのでしょうか。そこで,4倍する理由を考えさせます。

「だって,昨日もそうだった」
「昨日は4/5÷3で4/5を3倍に倍分した」
「÷3だから×3をした。だから・・・」
「だから,今日の問題は÷4だから×4をしたらいい」

昨日の問題と今日の問題の共通点を見いだし,そこから倍分を行う数を見いだしたのです。複数の情報をつなげて共通点を見いだす帰納的な見方・考え方が発揮された場面です。

5/6の分母・分子を4倍ずつすると20/24になります。これなら4でわることができます。答えは5/24です。しかし,この答えが正しいのかを図で確認します。結果は,図の中にも5/24が見えてきました。従って,倍分方式は別の問題でも使えそうなことが見えてきました。

さて,倍分の式で計算していると「気づいたことがある」と声があがります。
「ここが無駄だよ」
「だって,×4をして÷4をしたら無駄になる」
「分子は5になる」

倍分で計算を進める式変形の中に,計算を省略ができる部分を見つけた声です。それを「無駄だよ」という子どもらしい言葉で表現してきたのです。

この無駄な部分を省略すると,教科書などに掲載されているb/a÷c=b/(a×c)という式に置き換えることができます。

分数÷整数の計算は,この方式と前時に子どもたちが見つけた倍分方式の2つがあることが見えてきました。問題場面に応じて,子どもが適切な方法を使い分けられるのがよい学び方ですね。






 

2025年5月19日月曜日

分子が割れなかったら?

「2分で4/5Lのジュースを作るマシンがあります。1分では何Lのジュースを作れますか」

問題に出会った子どもから,次の声があがります。

「かけ算は分子をかけたから・・・」

この声の意味を共有したあと,続きを考えさせました。

「わり算はかけ算の反対だから,分子ではなく分母を計算する」

「分子をかけ算したから,今度は分子をわる」

多くの子どもは,後者を考えました。そこで,分子をわってみます。答えは2/5Lと求められます。しかし,「本当に合ってるの?」と計算に対する疑問の声があがります。

そこで,図で確認します。結果は,図でも同じ答えになりました。ところが,次の声があがります。

「まだ3回やっていないから ,正しいか分からない」

「分子が割れなかったらどうするの?」

早急な一般化を疑う声です。そこで,他の問題で実験します。

6/7÷3は式でも図でも計算が正しいことが確かめられました。

一方,4/5÷3の場合は,そもそも分子が4÷3=1.333・・・となりわりきれません。この計算方法の限界でしょうか。

すると,次の声があがります。

「四捨五入したら」

「約1/5」

「でも,それって正確じゃないよ」

「われるようにしたらいい」

「4/5を3倍3倍して12/15にしたら3でわれる」

「本当だ」

「4/5と12/15は同じ大きさだからできるね」

4/5を倍分するアイディアが生まれてきました。この方法を使えば,先ほどと同じように計算ができます。結果は4/15Lです。図でもこの答えになることが確認できました。

倍分のアイディアを使えば,どんなわり算も計算できそうだということが見えてきました。


2025年5月15日木曜日

分子を計算はいつでも使えるのか?

前回からスタートした分数×整数の問題。前時は時間の関係で1問しか取り組んでいません。そこで,次のように子どもに投げかけます。
「昨日の計算方法は,いつでも使えるのかな?」

多くの子どもは使えると考えています。そこで,「1分で2/3Lのジュースマシンが4分で作ることができるジュースの量は?」と尋ねます。

式は2/3×4になります。前時の方法なら,分子だけを2×4と計算することで積を求めることができます。しかし,この答えは正しいのでしょうか?

子どもたちは図と式で確かめることを考えました。いずれの方法でも答えが一致しました。この活動の中で,分数のたしざんの式の下に対応するようにコップの図を描く子どもがいました。式と図を対応させて考える姿の表出です。

ところが,「まだ3回実験していないから決められない」と早急な一般化を疑う声が生まれます。このような声が生まれてくるのは,素晴らしいですね。

そこで,別の問題場面にも取り組みました。仮分数の含めた問題場面に取り組みましたが,いずれも前時に見つけた方法が一般化できそうなことが見えてきました。

式と図を往還させながら計算方法の一般化を目指すストーリーで1時間が構成されていきました。


 

2025年5月14日水曜日

ジュースの計算

「1分間で4/5Lのジュースを作るマシンがあります。3分では何Lのジュースができますか」
子どもたちに尋ねます。式が4/5×3になることは,すぐに分かります。しかし,この計算は未習です。

すると次の声があがってきます。

「分子だけ計算したらいい」
「4×3で12」
「だから12/5」

ところが,納得できない表情の子どもがいます。分子だけかけ算をして,分母はかけ算を行わないからです。また,この答えがそもそも正しいのかも分かりません。
すると,子どもたちが説明を始めます。

「5年の分数で,4/5+5/5の時は9/10とはしなかった。分母はたさなかった」
「図でも説明できる。ピザを5つに分けた4つ分と5つに分けた5つ分をたすと,9つ分」
「9/10だとすると,ピザの中が10等分されることになって,ピザの分け方の大きさが変わるからおかしくなる」
「ジュースも同じ。コップの絵でみたら,1/5が12個で12/5になる」

分子はかけても分母はかけない理由を,5年生の分数のたしざんや図を使うことで,子どもたちは説明を進めてきました。

また,4/5+4/5+4/5=12/5というたしざんでも12/5Lになることを証明することができました。ところがこの方法に対しては,次の声があがります。

「何分の数が大きくなったら大変だ」
「切手の問題も,列が大きくなったら計算が大変になったのと似ている」

分子だけを計算する有効性が見えてきました。すると,どんな数でもこの方法が有効に見えてきます。ところが,「でも3回やっていないから分からないよ」と,早急な一般化に警鐘を鳴らす声が聞こえてきました。

本時は30分ほどの授業時間のため,1問だけで終わってしまいましたが,よい見方が生まれてきました。


 

但馬算数セミナー開催のお知らせ

夏休み中の8月21日(木)に兵庫県豊岡市で但馬算数セミナーが開催されます。テーマは,

「愉しさが溢れる算数授業づくり」

「愉しさ」か「楽しさ」か。読み方は同じですが,意味は全く異なります。この部分に焦点化して話を進めていきます。

地元の先生による模擬授業も開催されます。豊岡市はコウノトリの繁殖で有名な場所ですね。また,近くには城崎温泉もありますね。観光のついで?に,セミナーに参加されてはいかがですか。

お申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com/event/a3b5a0a21cd35100bc3d8c47dfecbee2/第2回但馬算数セミナー~愉しさが溢れる算数授業づくり~

2025年5月13日火曜日

楽しい算数? 愉しい算数? 求める授業像はどちら?

 昨晩は今夏出版される全国算数授業研究会企画の出版本に掲載する座談会が開催されました。テーマは「算数授業に必要な愉しさ」です。

「たのしい」という言葉を漢字に置き換えると「楽しい」「愉しい」の2種類があります。私たち全国算数授業研究会が求める「たのしさ」は後者の「愉しさ」です。

学習指導要領が求める「主体的で対話的で深い学び」もこの「愉しさ」がベースとなっています。

「楽しい」「愉しい」の違いはなにか,またそれを授業レベルで考えたら具体的にどういうことなのかを座談会で語り合いました。

メンバーは私の他は筑波大学附属小の盛山先生(会長),大野先生,青山先生です。4人での座談会の内容は今夏発刊される企画本に掲載されます。お楽しみに!

2025年5月12日月曜日

周りの長さは?

長方形の周りの長さを求める問題を提示します。ヒントがないと求めることはできません。
そこで,内部に正方形があること。また上の辺の左側が12m,下の辺の右側が8mであることを伝えます。しかし,これでもまだ周りの長さは分かりません。そこで,「どこを知りたい?」と尋ねます。子どもからは「正方形の長さ」と声があがります。
そこで,正方形の一辺の長さは5mであることを伝えます。これなら計算で長さが分かります。結果は,40mになりました。

次に,正方形の一辺の長さを変えても計算ができるのか尋ねます。「できる」「さっきと同じ」と声があがります。そこで,7mの場合を計算します。
結果は40mです。先ほどと同じ答えに子どもたちはざわめいています。多くの子どもは,答えは長くなると予想したからです。

こうなると子どもたちは,答えが同じになる理由を知りたくなります。
「伸びて縮んだんだ」
「横が長くなった分,脇が短くなる」
「文字式だと横は12−a+8で縦はamになる」
「aが1mなら横は19mで縦は1m。aが2mなら横は18mで縦は2m」
「横は縮んで縦は伸びた」
「差し引き0だ」

文字式を使うことで,正方形の長さが変わっても周りの長さが変わらないことが見えてきました。


グラウンドのセパレートコースは合ってる?

 「グラウンドトラックの1m外側を走ったら,内側よりも何m長く走ったことになりますか」

このように尋ねます。子どもから,グラウンドの「直径の長さを知りたい」と声があがります。そこで,直径が20mであることを教えます。

計算の結果,外側を走る人は6.28m長く走ることが分かりました。

次に,地球の表面と1m外側を走った場合の差を考えます。「グラウンドよりも長くなる」と考える子どもも多くいました。

計算の結果は,この場合も差は6.28mとなりました。この結果を見た子どもから,声があがります。

「さっきと同じだ」

「やり方が同じだ」

「+2が同じだ」

子どもたちは,グラウンドと地球の差を求める式を比べたのです。結果は,グラウンドの20mと地球の1280000mの数字が異なるだけで,残りの式は同じ構造になっていることに気がつきました。すると,「文字式にできる」「変わったところを文字にしたらいい」と声があがってきます。

そこで,2つの式を文字式に変身してみます。結果は,次のようになりました。

(x+2)×3.14−x×3.14=(X+2−x)×3.1=2×3.14

文字式に置き換えることで,直径がどんな長さでも答えはいつでも6.28mになることが見えてきました。

子どもたちが運動会で行う徒競走でも内側と外側の差を考慮してスタートラインがずれています。そこで,その実際の長さを確認すると,「そんなに離れていない」と声があがります。最終的には,1人のレーンの横幅は「1mもないよ」と声があがります。0.5mなら,今回学習した長さのズレの半分になります。最後は体育場面と関連させて考えることができました。




切手を切る

「何か所切ったら切手はバラバラになりますか」
子どもたちに尋ねます。縦に4枚つながった切手シートは,3カ所切ることでバラバラになります。
では,この切手シートが2列になった場合は何か所でバラバラになるでしょうか。切手1枚の辺に沿って切るのを1か所というルールにすると10カ所でバラバラになります。
この結果から,次の声があがります。

「7増えた」
「だったら,次は17だ」

3列目を予想する声が生まれてきました。そこで,3列目を実験します。結果は予想通りに17カ所です。すると,声があがります。

「比例だ」
「比例?」
「比例は2倍3倍になるんだよ。でも,これはなっていない」
「7ずつ増えるんだよ。だから次は24」
「絶対にそうなるね」
「もう何列でも大丈夫だ」

7ずつ増えることへの確信を持った声が生まれてきました。
そこで,「51列なら何か所?」と尋ねます。子どもの予想する数はズレました。そこで,時間をとって考えさせます。

多くの子どもは単純に7ずつ増やすのではなく,次の式を書いていました。
3+7×(51ー1)=53

ところが,この式を見た子どもから「なんでー1?」と声があがります。それ以外の部分の意味は読解できているようですが,「ー1」の意味が見えないようです。

「1列増えると7ずつ切る場所増える」
「でも,1列目だけは3カ所」
「だから,1セットが7カ所なのは列の数よりも1つ少ない」
「手の指の間の数と同じだよ」
「だから,列をxにしたら3+7×(xー1)になるよ」

様々な例で,子どもたちは「ー1」の理由を説明してきました。最後は,文字式を使った説明も生まれてきました。


 

2025年5月8日木曜日

何を表している?

「(a+b)×4÷2の式は何を表していますか」
このように子どもたちに尋ねます。子どもからは,「台形の面積」と声があがります。
そこで,自分のイメージした台形の図をノートに描かせます。上底の長さをa,下底の長さをb,高さを4㎝とする図が描かれました。ところが,「それだと÷2がない」と声があがります。そこで,「÷2」が見えるようにするためにはどうしたらいいのかを考えます。
子どもたちは,台形の面積の求め方を考えた学習場面に戻り,倍積変形の図を付け足しました。これなら「÷2」が図の中に見えてきます。

すると今度は,「ひし形もできるんじゃない?」と声があがります。そこで,ひし形も文字式に当てはまるのかを考えます。子どもたちは「無理矢理だけど・・・」と言いながら,1本の対角線を中点から左右にa㎝・b㎝と分割した上で,倍積変形の図を完成させることで図ができると考えました。ところが,次の声があがってきます。
「aとbは違う数なのに,この図だとaとbは同じ長さになるのでおかしい」
異なる文字を使っているのに,図のaとbの長さが等しいことに対する違和感です。このような感覚をもてることも大切ですね。

「だったらこんな図ならどうかな・・・」
この声で生まれてきたのがたこ型です。これなら1本の対角線の長さを,対角線の交点から左右に違う長さに設定できます。

さらに「三角形もできるんじゃない」の声が聞こえてきます。そこで,イメージした図を描かせます。
多くの子どもの図は,底辺を左右に分割しそれぞれa㎝・b㎝とするものでした。
この図を考えた源泉は,ひし形やたこ型にあります。1本の対角線をa㎝・b㎝に分割したイメージを活用したのです。
一方,底辺をb㎝としてその上の頂点部分をa㎝と考えた子どももいます。この場合は,aの部分の実質的な長さは0㎝です。この図を考えた源泉は,台形の図です。
どの考え方を源泉とするのかで,新しい問題場面への向き合い方も変わってきます。

最後に正方形も同じようにできるのか,図を描いてみました。ひし形・たこ型を源泉とした子どもは,正方形の一辺の長さをaとbの2つに分割しました。しかし,この図では(a+b)×4÷2にはなりません。
そこで,台形を源泉とする図で考えます。この場合は,正方形の下底部分をb,上底部分をaと考えることで,文字式と合致できます。

文字式と図の往復運動で考えを深めていくことができました。



 

2025年5月7日水曜日

必ずしもそうではない!?

 「X+7=35の式に当てはまる問題文を作りましょう」

このように投げかけます。問題文作り自体は簡単です。その後,Xの値も求めます。この文字式では,35-7=28と引き算でXの値を求めることができます。

そこで,「たしざんの式になる場合はXに当てはまる数は,その逆の引き算で求められます」とここまでのことをまとめました。すると,この言葉をきっかけに,子どもたちが動き出します。

「だったら,わり算だったらかけ算だね」

「待って,必ずしもそうではないかも」

「わり算でもわり算かも・・・」

「かけ算ならわり算だよ」

「引き算ならたし算だよ」

「これも違うのあるかも?」

子どもたちは,Xを求めるためには必ずしも逆算にはならない場合があるかもしれないと考えました。

そこで,絶対に逆算になると子どもたちが自信があるかけ算の場合を考えます。

「8×X=20」

この場合は,わり算でXの値が求められます。すると,「(Xの位置が)逆なら?」と声があがります。そこで,「X×4=32」を実験します。この場合も,逆算のわり算でXの値を求めることができました。

次に,「必ずしもそうではないかも」と声のあがった,引き算とわり算を実験します。

「X−6=15」→足し算

「15−X=1」→引き算

「X÷4=8」→かけ算

「45÷X=15」→わり算

子どもたちの予想通り,必ずしも逆算ではない式もあることが見えてきました。

子どもの声で次の問題場面が生まれてきた1時間でした。逆算でない式は小学校では扱わないことになっていますが,子どもの思いはそれを超えていきます。


2025年5月5日月曜日

今年も淡路楽しmath講座開催です!

 毎年恒例の兵庫県淡路島で開催の淡路楽しmath講座が開催されます。

日時:7月27日(日)13時30分~16時30分

会場:兵庫県洲本市洲本市民交流センター

今年も私の公開授業と講演があります。授業は異学年混合で行います。複式×2のような学級編成ですが,毎年盛り上がっています。淡路島観光を兼ねてお出でください!

お申し込みは,以下のアドレスからどうぞ!

daisukeuematu78@yahoo.co.jp




2025年5月2日金曜日

丸は全部で何個?

「丸は全部で何個?」
子どもたちに尋ねます。図を提示する前でしたが,子どもからは「数えたらいい」「縦×横でできる」「でも,四角じゃなかったらできないよ」と声があがります。図のイメージが浮かんでいるようです。

子どもに提示したのは,正三角形状に丸が並んだ図です。丸が12個あることは分かりました。1つずつ丸を数えた子どももいましたが,計算で求めた子どももいます。

4×3
5×3−3
1+2+3+4+5−1−2
3×3+3

これらの式が生まれてきました。
その後,「5×3−3の式を文字式にできるかな」と尋ねます。一辺の丸の数をxとすると,文字式は「x×3−3=y」となります。この文字式の意味を読解すると,子どもから次の声があがります。
「この文字式なら,四角形もできるよ」
「正方形ならだけどね」

子どもたちは,文字式の対象場面を拡張していく方に考え方を進めていきました。そこで,四角形の場合の文字式を考えます。文字式は, 「x×4−4=y」となります。しかし,これで合っているのかは確信がもてません。そこで,具体的な事例を入れて検証します。一辺の数を5個の場合を実験します。
「5×4−4=16」
式の答えも図の答えも合致しました。

すると,「正○角形なら大丈夫なんじゃない?」と声があがります。そこで,正六角形も実験します。文字式は「x×6−6=y」です。実際の図で実験しても,この文字式の正しさが見えてきました。

子どもが文字式を使いたくなる場面は,大人の考え方とは異なる一面もあります。だからこそ,子どもの思いに寄り添って展開を修正していくことも大切になりますね。

 

2025年5月1日木曜日

□番目は誰?

 「こぶた・たぬき・きつね・ねこの□番目は,誰ですか」

このように子どもたちに問いかけます。この問題文を見ただけで,子どもたちは「しりとり歌」を歌い始めました。お馴染みの歌ですからね・・・。

最初は「14番目は?」と尋ねます。「1,2,3,4,5,6・・・」と順に数える子どもたちの姿も見られました。一方,式で答えを見つけようとする子どももいました。

式を使う場合は,「14÷4=3あまり2」となります。この式の意味を全員で読解していきます。あまりの数によって,どの動物が□番目になるのかを決定できることが見えてきました。

その後,25番目,400場面の動物を考えます。400番目はあまりはありません。この場合は,「あまり0」「あまり4」と考えることで,「ねこ」になることが見えてきます。

次に問いかけたのは,「□番目と聞かれたら,どんな式を作りますか」です。子どもたちは,これまでに学習した記号を活用して,「□÷4=○あまり△」と式を作りました。的確に記号を使うことができました。

その後,□をxに,○をyに,△をaに置き換えます。文字式との出合いです。文字式を見た子どもからは,「スキッリする」「かっこいい」などの肯定的な声が聞こえてきました。

難しいイメージのある文字式ですが,子どもの身近な題材から導入することで文字式へのハードルを下げることができました。