「(a+b)×4÷2の式は何を表していますか」
このように子どもたちに尋ねます。子どもからは,「台形の面積」と声があがります。
そこで,自分のイメージした台形の図をノートに描かせます。上底の長さをa,下底の長さをb,高さを4㎝とする図が描かれました。ところが,「それだと÷2がない」と声があがります。そこで,「÷2」が見えるようにするためにはどうしたらいいのかを考えます。
子どもたちは,台形の面積の求め方を考えた学習場面に戻り,倍積変形の図を付け足しました。これなら「÷2」が図の中に見えてきます。
すると今度は,「ひし形もできるんじゃない?」と声があがります。そこで,ひし形も文字式に当てはまるのかを考えます。子どもたちは「無理矢理だけど・・・」と言いながら,1本の対角線を中点から左右にa㎝・b㎝と分割した上で,倍積変形の図を完成させることで図ができると考えました。ところが,次の声があがってきます。
「aとbは違う数なのに,この図だとaとbは同じ長さになるのでおかしい」
異なる文字を使っているのに,図のaとbの長さが等しいことに対する違和感です。このような感覚をもてることも大切ですね。
「だったらこんな図ならどうかな・・・」
この声で生まれてきたのがたこ型です。これなら1本の対角線の長さを,対角線の交点から左右に違う長さに設定できます。
さらに「三角形もできるんじゃない」の声が聞こえてきます。そこで,イメージした図を描かせます。
多くの子どもの図は,底辺を左右に分割しそれぞれa㎝・b㎝とするものでした。
この図を考えた源泉は,ひし形やたこ型にあります。1本の対角線をa㎝・b㎝に分割したイメージを活用したのです。
一方,底辺をb㎝としてその上の頂点部分をa㎝と考えた子どももいます。この場合は,aの部分の実質的な長さは0㎝です。この図を考えた源泉は,台形の図です。
どの考え方を源泉とするのかで,新しい問題場面への向き合い方も変わってきます。
最後に正方形も同じようにできるのか,図を描いてみました。ひし形・たこ型を源泉とした子どもは,正方形の一辺の長さをaとbの2つに分割しました。しかし,この図では(a+b)×4÷2にはなりません。
そこで,台形を源泉とする図で考えます。この場合は,正方形の下底部分をb,上底部分をaと考えることで,文字式と合致できます。
文字式と図の往復運動で考えを深めていくことができました。