2022年4月9日土曜日

社会人として必要な「おもてなし」の力

 学校教育の目的は,教科を中心とした知識や考え方を教えることだけだと私は考えてはいません。実は,これよりももっと大切なことを教える必要があると考えています。それは社会人になった時に必要な力です。社会人に最も必要な力は,チーム力です。ほとんどの仕事はチームで行います。たとえ個人営業だとしても,周りの社会と関わらなければ生計は立てられませんから,結局どんな仕事にもチーム力は必要になるのです。

チーム力の根本にあるのは「おもてなし」の心だと私は考えています。この心を,子どもたちと出会った最初の3日間は徹底的に引き出していきます。

子どもたちと出会った1日目,ファイルを配布しました。そのファイルは10冊ずつ,ビニールで包まれていました。最初のファイルの束の包み紙を外します。ここで子どもが動き出す瞬間を待ちましたが,なにも起こりません。そこで,2つ目のファイルの束の包み紙を外します。残念ながら,また何も起こりません。そこで,3つ目のファイルの束の包み紙を大げさに放り投げました。

すると,ある男のがその包み紙を目で追う姿が見えました。それと同時に,足がファイルに向かって動き出しました。それを見ていた別の女の子も動き出します。2人の子どもが,合計3つのファイルの束の包み紙を捨ててくれました。

彼らの行動のどこにどんな価値があるのか,また,その行動を起こした勇気と実行力を大げさに褒めました。どのような行動に価値があるのを教えることは,大人の大切な役目です。本来は,このような力は家庭教育・地域教育が担うべきものです。しかし,残念ながらその教育力はほぼ期待できないのが現実です。

ファイルを配布してから1時間後,今度はノートを配布します。このノートもビニールで包まれています。すると今度は,包み紙に私が手をかけると同時に,多くの子どもたちが「ゴミを捨てます」と集まってきてくれました。価値ある行動を自分化して実行に移すことができたのです。6年生でも素直でかわいい瞬間はたくさんあるのです。

包み紙をわざと子どもの前ではがすのは,意図的仕掛けです。こんな仕掛けを,子どもとの出会いの3日間ほどはたくさん用意しておきます。その上で,その仕掛けを乗り越える子どもの姿を見つけることに全神経を集中していきます。すると,教科学習とは異なる子どもの素敵な姿がたくさん見えてくるのです。

「おもてなし」の心につながる子どもの行動を引き出し,価値づけることで,クラスの空気感はどんどん温かいものへと変化していきます。今年もよい1年が送れそうです!