2016年4月22日金曜日

「アクティブ・ラーニングでつくる算数の授業」 発刊のお知らせ

4月がスタートしました。先生方の算数も順調に進んでいることではないでしょうか? 今年,私は5年生担任です。3年連続の持ち上がりです。3日前から,周りの辺の長さの合計が52㎝で中身が一番大きい箱を作ろうという学習に取り組んでいます。この学習は盛り上がりました。まずは,縦・横・高さの3辺の合計が13㎝になる組み合わせを考えれば,簡単に周りの辺の長さの合計が52㎝の箱を見つけられることに子どもたちは気づきます。これなら,当てずっぽうに辺の長さを探さなくとも簡単に題意の箱の候補を見つけることができます。これだけでもすごい発見! 
その後,中身の比べ方へと子どもたちの興味が移ります。子どもは砂や粘土を入れて,重さを数値化することで比較しようと考えました。数値化で比較ができることへの気づきも,すばらしいです。さて,箱の中に砂や粘土を入れる実験をしました。その結果,どんなことが起きたと思いますか? 同じ箱に同じように粘土を入れたのに,重さはバラバラになりました。この結果に,「これでは正確に調べられない」と子どもたちは考えます。比較できると考えていた方法での比較が,壁にぶつかります。そこで生まれてきたのが,「だったら同じ大きさのブロックを入れて,その数で比べる」という発想です。重さからブロックの数へと数値化の中身が変化します。この活動の中から体積の公式への気づきも生まれました。愉しい3時間でした。ときにはゆったりと活動を愉しむ算数も大切ですね。


 4月末,「アクティブ・ラーニングでつくる算数の授業」の単著が,東洋館出社から発刊されます。
国立教育制作研究所の小松信哉氏の特別寄稿もあります。「アクティブ・ラーニング」は,次期学習指導要領のキーワードです。しかし,実際にどのように授業を変革していけばよいのかは漠然としています。一部では,ある形式に当てはめることで「アクティブ・ラーニング」の授業ができたと勘違いされている実践も見られます。では,どのように授業を変革すればよいのしょうか? そのポイントを,具体的実践例を通して紹介していきます。是非,ご覧下さい。目次は以下の通りです。

目次

はじめに

1章 「アクティブな授業」ってどんな授業?
 1 ごく普通の導入なのに…
 2 子どもが次の課題を創り出す瞬間
 3 子どもがアクティブに授業を創り出す
 4 「小学校教育は既にアクティブ」説は本当か?
 5 文部科学省の解説からアクティブ・ラーニングを考える
 6 能動的な学びがなければアクティブ・ラーニングではない
 7 学習方法のキーワードはアクティブ・ラーニングの目的ではない

2章 最初の3ヵ月で子どもが変わる
 1 子どもは教師の出方を見ている
 2 子どもは教師の授業スタイルに3ヵ月で染まる
 3 教師が変わらなければアクティブな展開はできない
 4 自由に表現できる雰囲気作りは最初の3週間が勝負
 5 子どもの発想を鍛えるのは最初の3ヵ月が勝負
 6 2学期から子どもが変わる
 7 子どもに委ねると授業は愉しくなる
 8 子どもがアクティブになると教師も子どもも愉しくなる

3章 「問い」の連続がアクティブ・ラーニングをつくる
 1 能動的な学習を展開しているつもりではありませんか?
 2 「問い」がアクティブ・ラーニングへつながる
 3 アクティブ・ラーニングを深化させる「問い」の連続
 4 仕掛けがなければアクティブな追究は生まれない
 5 「ズレ」を仕掛ける

第4章 「12の仕掛け」でアクティブな授業をつくる!
 仕掛け1 先行知識が役立たない場面をつくる
 仕掛け2 似て非なる課題がズレを生む
 仕掛け3 情報を整理しないで提示する
 仕掛け4 あいまいさを自覚させる
 仕掛け5 子どもの安定感を崩す
 仕掛け6 認識とのズレを生む
 仕掛け7 きまりの連鎖で仕掛ける
 仕掛け8 大量の情報を提示する
 仕掛け9 見せ方を変える
 仕掛け10 条件を不足させる
 仕掛け11 関係性がありそうな発問で仕掛ける
 仕掛け12 答えがない問題を提示する 

5章 こんな「授業スキル」で子どもはもっとアクティブに!
 形式を真似るだけでは授業はアクティブにはならない
 スキル1 子どもの呟きや態度をキャッチする
 スキル2 価値ある呟きや態度を共有化する
 スキル3 価値ある呟きや態度を価値付ける
 スキル4 一般化の考えを育てる
 スキル5 教師が親切に解説しすぎない
 スキル6 念押し発問でアクティブに方向付ける
 スキル7 技能を鍛える

6章 授業で大切にしたい「7つのアクティブ・ワード」
 ワード1 「だったら」――相反する2つの意味
 ワード2 「例えば」――混沌をアクティブへと転換
 ワード3 「たまたまじゃないの」――実験範囲の拡張につながる
 ワード4 「絶対に」――表現したいことが高まる
 ワード5 「もし…だったら」――対象の一般性を吟味する
 ワード6 「でもさあ」――素直な疑問の出発点
 ワード7 「やっぱり」――数学的な考え方に確信をもつ

7章 「アクティブ・ラーニング」=「問題解決授業」?
 1 問題解決型ではいけないの?
 2 形骸化している問題解決型学習
 3 焦点化されていない数学的な考え方
 4 「わくわく」「ドキドキ」がない課題提示
 5 答えを教えられてしまう見通し
 6 クラスが二極化する自力解決
 7 聞いたふりをしている発表会
 8 ピントがズレた話し合い
 9 まとめていないまとめ
 10 形骸化した問題解決型授業で育つ子ども像
 11 形式で学力は育たない

特別寄稿 小松信哉(国立教育政策研究所)
 アクティブ・ラーニングがめざす方向
 1 教育課程企画特別部会「論点整理」より
 2 新しい学習指導要領等が目指す姿~育成すべき資質・能力~
 3 学習活動の示し方や「アクティブ・ラーニング」の意義等
 4 学習評価の在り方について

あとがき

東洋館出版社 http://www.toyokan.co.jp