2022年9月30日金曜日

偶然かもしれないけど・・・

 比の学習が進み,様々な文章問題に取り組んでいたときのことです。子どもから,「偶然かもしれませんけど…」という声が聞こえてきました。

なにかを発見したのです。その発見を聞いていきます。

「3:12は15:60でした。これを,ななめにかけて3×60をすると180で,反対の斜めも12×15でかけると180で同じ答えになる」

この発見を聞いて,「本当だ」「すごーい」と驚きの声があがります。それと同時に,次の声も聞こえてきました。

「さっきのもそうなっている。3:12=21:84も3×84と12×21は同じ答えだ」

最初の発見が,他の問題でも当てはまるのかを考えたのです。このような見方ができることもすばらしいですね。しかし,ここまでに確かめたのは2種類だけです。これだけでは,まだ見つけたきまりの一般性を確信することはできません。そこで,子どもたちに等しい比を自由に作らせ,見つけた決まりが当てはまるのかを考えさせました。しばらくすると,「同じ答えになった」という声が次々と聞こえてきました。きまりの一般性が確かめられました。それらの中のいくつかを板書させました。どの比でも,同じ答えになることが確かめられました。これは中学数学で学ぶ内容ですが,小学生でも自然にそのきまりを発見することはできるのです。



2022年9月27日火曜日

画用紙を半分に折ると?

 子どもたちに「画用紙を半分に折ると,角はどうなるでしょうか」と尋ねます。意図的に曖昧な発問を行います。この発問から,子どもたちは「どこの角のこと?」「どう半分に折るの?」と声をあげてきました。このように,問題の曖昧さを子どもに指摘させ少しずつ問題場面を明確にしていくことも,ときには必要です。

紫の大きな画用紙に対角線を1本引きます。そこと底辺の間にできる角が,本問題での角です。これで角の位置が確認できました。次に,画用紙は左右に半分に折ります。その半分になった画用紙にも,対角線が引かれ同じ位置に角が出現します。その角と,紫の画用紙の角との大きさを比べるのです。

多くの子どもたちは,「同じ長方形なのだから,角の大きさは変わらない」と考えます。一方,「なんとなく大きくなる」と感じている子どももいました。

さて,本当は角の大きさはどうなるのでしょうか。実際に紫の画用紙を半分に折って確かめます。すると,角は大きくなったのです。これには子どもたちもびっくりです。予想とのズレに出会ったからです。

すると,この結果から「だったら,もう半分に折ったらもっと角は大きくなる」と声があがります。角の大きさが,小→大と変化したので,次はもっと大きくなると考えたのです。多くの子どもが同様に考えました。一方,「小さくなる」「今と変わらない」という考えもありました。子どもたちの予想にはズレが生まれました。

そこで,さらに黄色い画用紙を半分に折ります。結果は,紫の画用紙と同じ角の大きさが出現します。こうなると,「分かった! 小→大→小→大が繰り返す」と角の大きさの変化の予想が生まれてきました。子どもたちも,今回の予想には自信満々です。そこで,ピンクの画用紙を半分に折り,角の大きさを確認します。結果は,子どもたちの予想通りとなりました。

さて,自信満々の子どもたちに赤い画用紙を提示し,「小と大,どちらの角の仲間かな?」と尋ねます。茶色い画用紙から,一気にジャンプしたのが赤い画用紙です。このままでは,何回折ってできた形なのかは分かりません。すると,「辺の長さを教えてほしい」「赤と紫を教えてほしい」と声が聞こえてきました。そこで,赤は2㎝×3㎝,紫は32㎝×48㎝であることを教えます。すると,「小さい方の仲間だ」と声があがります。そこで,その根拠を尋ねます。

「横の長さは,3㎝が48㎝だから16倍。縦の長さは,2㎝が32㎝だから16倍」

「縦も横もどちらも16倍だから,小さい角の仲間」

「赤の横の3㎝は縦の2㎝の1.5倍。紫の横48㎝は縦の32㎝の1.5倍。どちらも1.5倍だから,小さな角の仲間」

「黄色の横の32㎝は縦の24㎝の1.333・・・倍だから,倍の数が違うから同じ仲間じゃない」

縦の辺同士と横同士の割合,また,縦と横の割合で比較する2つの見方が生まれてきました。これらは「比」の学習につながる見方です。「比」の導入を,画用紙を使って展開した1時間でした。




2022年9月21日水曜日

算数授業づくりセミナー IN 西宮 開催!

以下の日程で,算数授業づくりセミナーを西宮市で開催します。興味のある方は,以下のアドレスからお申し込み下さい。

算数授業づくりセミナーIn西宮 2022年11月23日(兵庫県) - こくちーずプロ (kokuchpro.com)


子どもに算数を好きになってもらいたい、クラスみんなで学べる授業にしたい、算数の授業を少しでも良くしたいと思う先生のために、教科書を通して、その視点や方法を一緒に考えるセミナーです。

 山本先生と樋口先生の模擬授業後の協議会では、会場の皆さんも一緒に授業について考えていきます。最後は、授業名人であり多くの書籍を出版されるなど幅広くご活躍されている尾﨑正彦先生にご講演をいただきます。オンラインはなく会場開催のみです。ぜひ皆さん会場にお越しください!

※新型コロナウイルス の感染拡大状況によっては、延期まはたオンライン開催に変更となる可能性がある旨、予めご了承ください。
※本セミナーは、小学校の先生および教育委員会・教育センターにお勤めの方、または先生を目指している学生の方が対象となります。

<日時>
 2022年11月23日(水)12:50~16:20(12:30受付開始)

<テーマ>
「教科書を活用した"わかる"が生まれる授業」

<開催場所>
 兵庫県西宮市勤労会館 第8会議室
 (〒662-0912 兵庫県西宮市松原町2-37)
 ※JR西宮駅から徒歩約7分。阪神西宮駅から徒歩約8分
 ※会場は感染症対策を講じたうえで開催します。

<講師>
 尾﨑 正彦 先生 (関西大学初等部)
 樋口 万太郎 先生 (香里ヌヴェール学院小学校)
 山本 正貴 先生 (兵庫県公立小学校)
 久保田 健祐 先生(兵庫県公立小学校)

 <プログラム>
 12:30~12:50  受付
 12:50~12:55  開会行事
 12:55~13:20  山本正貴先生 模擬授業 3年生「三角形と角」
 13:20~13:55  協議会、質疑応答、リフレクション(司会:久保田健祐先生)
 14:05~14:30  樋口万太郎先生 模擬授業 5年生「図形の面積」
 14:30~15:05  協議会、質疑応答、リフレクション(司会:久保田健祐先生)
 15:05~15:15  休憩
 15:15~16:15  尾﨑正彦先生 講演「なにがわかれば、"わかる" 授業なのか」
 16:15~16:20  閉会行事
 ※スケジュール、内容は変更になる場合がございます。

<参加費>
 2000円 ※当日会場にてお支払いください。


2022年9月16日金曜日

L字型の立体の体積

 L字型の立体の体積を求める問題は、教科書にも掲載されています。縦分割・横分割・直方体と見立てて増やした部分を引く方法が、一般的な考え方です。ところが子どもたちは、私の想定を超える様々な求め方を考えました。子どもの発想の柔軟さにびっくりしました。思わず「すばらC」マークを連発しました!



2022年9月14日水曜日

京都府・第2向陽小学校研究会申し込みアドレス

11月2日(水)に京都府向日市第2向陽小学校で開催される研究発表会の新しい申し込みアドレスをお知らせします。

研究テーマ「子どもたちの問いを大切にした算数の授業」~数学的な見方・考え方を生かして、より深い学びの実現へ~

お申し込みは,以下のアドレスからお願いします。

http://www.kyoto-be.ne.jp/2kouyou-es/cms/

体積は全て24㎤なのかな?

 辺の長さの合計が同じ3つの立体の体積を求めていました。これまでに直方体・三角柱の体積を求めました。いずれも24㎤でした。残るは底面が菱形の四角柱です。

この立体の体積の計算に入る前に,子どもたちは三角柱の底面を4分割すると,それが菱形の底面の1つの部分になるから体積は同じになるのではないかと考え始めました。具体的な長さがなくても,ここまで考える子どもたちの力にびっくりしました。

さて,子どもの予想通りに体積は,これまでと同じになるのでしょうか。菱形の対角線の長さを提示し,計算を進めます。

「4×3÷2×4=24」

この式の「4×3÷2」の部分は,菱形の底面の高さ1㎝分の体積であることを確認します。従って,先の式を言葉の式に置き換えると,「底体積×高さ」となります。底面積を何個積んでも,薄いままだと子どもが考えたからです。

3つの立体の体積はいずれも24㎤になりました。そこで,子どもたちに次のように尋ねます。

「周りの辺の長さが同じ立体なら,体積はいつでも24㎤なのですね」

これにはほとんどの子どもが「そうじゃないのもある」「菱形は潰したら細くなるから,体積も小さくなる」などと,声をあげてきます。具体的な図形がイメージできている子どももいます。

そこで,ノートに自分がイメージする見取り図を作図させ,長さを入れて体積を計算していくことにしました。やがて,「24㎤より小さい体積がありました」「24㎤より大きいのもありました」などと声があがってきました。

子どもたちが最もシンプルと考えたのは,一辺が3㎝の直方体です。この体積は27㎤なので,これまでの3つの立体よりも大きい体積になりました。この他にもたくさんの24㎤以外の体積の図形が発見されました。




2022年9月12日月曜日

三角柱の体積が小さい? それとも・・・

前回の3つの立体の体積問題の続編です。 授業冒頭に,次の声があがります。

「全部,同じ。この前のケーキの問題と同じ。正方形の中に1つの円,4つの円,9つの円が入った面積は,全部同じだった。この問題もそれと同じじゃないかな」

円の面積の学習とつなげたよい考え方が生まれてきました。一方,次の声もあがってきます。

「円は全部が同じ形。でも,今回は形が違うから同じとは限らない」

これもよい視点です。

その後,新たな視点が生まれてきます。

「三角柱は2でわるから,体積は他の立体よりは小さくなる」

「高さが同じだとしたら,直方体の底面の長方形と四角柱の底面のひし形は同じ長さ。でも,ひし形は長方形をつぶした形だから面積は小さくなる。だから,四角柱の体積は小さい」

ここまでくると,子どもたちの視点は底面の面積に焦点化します。代表の子どもが,立体の実物の底面を合わせて大きさを確かめます。その結果,底面が長方形と三角形は面積が同じように見えることが分かりました。そうなると,長方形と三角柱の体積は同じで,四角柱はそれよりも少し小さいと子どもたちは考え始めます。

そこで,辺の長さを提示していきます。簡単に計算できると考えた直方体から考えます。高さ3㎝,縦2㎝,横4㎝なので,2×4×3=24(㎤)と計算できます。

するとここで,「でも,三角柱の体積はどうやって求めるの?」と声があがります。ここでは,「簡単」という声と「どうやるか分からない」と2つの声が聞こえてきました。そこで,三角柱の体積の求め方を考えます。

「もし高さが7㎝の三角柱だとします。底面積が15㎠なら,1段目は15㎤。これが,1段,2段…7段とあるから,15㎤×7で計算できる」

形式的に「底面積×高さ」と考えるのではなく,高さ1㎝の1段目の体積が高さ分あるという考え方が生まれてきました。体積の学習の基本に立ち返った素晴らしい考え方です。

この考え方で三角柱の体積を求めると,24㎤となりました。ここまでは子どもたちの予想通りです。残るは四角柱のみ。こちらは時間切れで次回となりました。

体積の基本的な考え方をベースにした見方・考え方が生まれた1時間でした。



2022年9月9日金曜日

体積が大きいのはどれ?

 周りの辺の長さの合計が同じ3つの立体を提示します。「体積が一番大きいのはどれ」と投げかけます。

提示したのは,直方体・三角柱・四角柱(菱形)です。まずは,直感で判断をさせます。多くの子どもは,「3つとも同じ」と考えました。一方,直方体と四角柱は同じで三角柱は小さいと考える子どももいました。

なぜ,三角柱の体積は小さいと考えたのでしょうか?

「三角柱は,四角柱を半分にするから,体積は小さくなる」

「辺の長さの合計は同じ。でも,底面の三角形の面積は底辺×高さ。高さは三角形の辺の中になるから,外の辺より短くなる。同じ長さの辺なのに,内側の高さは外の辺より短くなるから長さの損をしているから,体積は小さくなる」

なるほど!子どもらしい発想です。

一方,次の声もあがります。

「直方体が一番大きい。底面の長方形とひし形を重ねたとすると,ひし形は長方形の中に入るから,体積は小さくなる」

「本当にひし形は長方形の内側に入るの?」

底面の大きさで比較しようという発想です。しかし,この時点では長方形がひし形よりも大きいかははっきりとはしません。

すると子どもたちは,直方体と四角柱の底面の大きさを比較したいと考えました。そこで,2つの立体の底面を重ねてみます。すると飛び出す部分と引っ込む部分があることが分かりました。これらが凸凹が相殺されるなら,体積は同じになるのではと子どもたちは考え始めます。

最終的な子どもたちの考えは分裂したままでした。意図的に具体的な辺の長さを提示しないことで,子どもたちは深く考えていくことができました。25分間の体積授業の導入場面でした。




2022年9月7日水曜日

県の面積は?

 子どもたちに「大山古墳の面積を求めよう」と投げかけます。古墳の地図を配り,面積を求め始めます。ところがしばらくすると,「正確に求めるのは無理だよ」「それなら,ある程度でいいんじゃない」と声が続きます。古墳には凸凹があったり,既習の多角形ではありません。そこで,およその形と捉えて面積を求めようと考えたのです。

多くの子どもは,古墳の下部を台形か長方形,上部を半円と捉えることで面積を求めました。多くの子どもは,50万㎡前後の面積になりました。

次に,好きな都道府県を1つ選択させ,その面積を計算させてみました。「沖縄」という声がかなりありましたが,「でも,島がたくさんあるよ」「だったら東京」「東京も小笠原諸島があるよ」などの鋭い指摘があがってきます。

子どもたちは,県の形が長方形や台形などに見立てやすいところを探していました。岩手県・秋田県・香川県などが,子どものわかりやすさ度では人気がありました。

計算後は,地図帳の県別データで答え合わせを行いました。多くの子どもが,本当のデータに使い計算結果になりました。子どもの力はすごいですね!



2022年9月5日月曜日

京都府向日市立第2向陽小学校研究会のご案内

 11月2日(水)13時30分から,京都府向日市立第2向陽小学校で算数科教育研究発表会が開催されます。私と田中博史先生,小松信哉先生が長年指導に入らせていただいている学校です。第2向陽小学校の算数教育レベルは,日本の公立学校の中でも群を抜いています。「日本一の算数学校」を標榜できるレベルまで高まっています。「公立学校の奇跡」と言っても語弊がないほど進化した第2向陽小学校の研究会に,是非おいで下さい。6学年の公開授業が行われます。私は,第2向陽小学校が進化した秘密を解き明かす講演を行います。

研究会では,これまでの学校改革をまとめた本が発売予定です。私と第2向陽小学校の先生がで共同執筆しています。こちらもお楽しみに!

詳細・申し込みは以下からお願いします。





2022年9月1日木曜日

折り紙で円の面積を求めよう

円の面積問題も大詰めです。子どもたちに円形の円の折り紙を配ります。これを使って、円の面積の概算ができないかを考えました。

円の折り紙を16分割して並べ替えると、平行四辺形もどきが完成します。これを平行四辺形だと考えれば、面積を求めることができます。底辺は、円周の半分です。高さは半径です。 従って、「円周の半分×半径=直径×円周率÷2×半径」という式になります。この式を見た子どもから、「直径÷2で半径になる」という気づきが生まれてきました。この声をもとに、先の式を変身していくと、「半径×円周率×半径」となります。

円形の折り紙を使って、円の面積の公式を見つけ出す時間となりました。