2017年5月19日金曜日

次の角の大きさは?(比)


子どもたちに,次のように投げかけます。
「縦32㎝,横48㎝の長方形の1本の対角線に角ができます。半分に折るとその角の大きさはどうなるでしょうか」
実物の長方形(図①)を提示します。角の位置を確認します。①の長方形を半分に折ります。②の長方形ができます。同じ位置にできる角の大きさを考えさせました。

ほとんどの子どもたちは,角の大きさは変わらないと予想しました。「だって同じ長方形じゃん」「直角の部分を分けているから同じに決まっている」と,子どもたちは自分の考えに自信満々です。
そこで,実際に2つの長方形を重ねます。結果はなんと②の角の方が大きくなったのです。この事実に子どもたちも驚きです。
 さらに,この事実をもとに「だったら次はもっと大きくなる」と子どもたちは考えました。さらに折り紙をおった場合の角の大きさを予想したのです。角の大きさが「小」→「大」と出現したので,次はもっと大きくなると考えたのです。ここまでの情報をもとに,次の場面を予想する態度はすばらしいことです。

さて,実際の角の大きさはどうなってるのでしょうか。これも実際に実験します。結果は,再び子どもの予想を裏切るものでした。なんと角は小さくなりました。しかも,最初の長方形と同じ大きさになりました。
 ここまでの事実から,今度は新しい気づきが生まれてきます。
「わかった! 角は小→大→小→大が順番に繰り返す」
「小→大→小→大の順で,この後も全部分かる」
 このきまりなら,角の大きさは簡単に分かりそうです。

 そんな子どもたちに,極小の長方形を提示します。子どもたちは「何回折ったのですか?」と質問をしてきます。しかし,その回数は教えません。すると「だったら辺の長さを教えてほしい」と声があがります。辺の長さは,縦2㎝,横3㎝です。この情報があれば,子どもたちは角の大きさが大か小か判断できると考えました。
「角は小です。だって最初の長方形と比べると,縦は32㎝と2㎝だから÷16。横も48㎝と3㎝だから÷16
「2番目の長方形と比べると,縦は24㎝と2㎝で÷12だけど,横が32㎝と3㎝なので÷12になっていないから大の仲間ではない」

 子どもたちは,縦の横の長さの割合に目を付けて大の角の仲間であることを見つけていきました。この学習は「比」の見方を引き出す1時間です。素敵な視点が子どもから生まれた1時間でした。

2017年5月17日水曜日

『算数授業がもっとうまくなる50の技』目次は?



いよいよ発刊の『算数授業がもっとうまくなる50の技』の目次は次の通りです。

はじめに
序章 授業の腕前次第で子どもの学びは変わる
子どものアクティブな学びを引き出すには
算数授業は導入で8割決まる!?
つぶやきを生かせる教師生かせない教師
第1章 問いの引き出し,つなぎがもっとうまくなる4の技
1 友だちの考えとのズレを引き出す
2 予想とのズレを引き出す
3 感覚とのズレを引き出す
4 既習とのズレを引き出す
第2章 課題づくり・発問がもっとうまくなる12の技
5 先行学習で対応できないしかけをつくる
6 似て非なる問題を扱う
7 情報を整理し過ぎない
8 認識の曖昧さを自覚させる
9 安定感を崩す
10 自由実験でしかける
11 拡がりのある課題でしかける
12 大量の情報を提示する
13 見せ方を変える
14 条件不足にする
15 既習内容が使えそうで実は使えない課題を扱う
16 答えがありそうで実はない課題を扱う
第3章 子どもの見とりがもっとうまくなる4の技
17 算数が苦手な子どもに注目する
18 先行学習をしている子どもをゆさぶる
19 「わかりました」に騙されない
20 瀬戸際に立たせることで意思表示させる
第4章 話し合いの授業がもっとうまくなる10の技
21 マイチョークで参加意欲を高める
22 板書した子以外の子どもを巻き込む
23 友だちの気持ちを語らせる
24 わからなさを表現させる
25 本時のポイントを2つの方法で全員に再現させる
26 念押し発問で話し合いをまとめる
27 子どものつぶやきに食らいつく
28 価値あるつぶやきを共有する
29 一般化の考えを使わせる
30 教師が親切に解説しすぎない
第5章 ノート指導がもっとうまくなる5の技
31 「思考の検索先」という意識で指導する
32 ていねいさと自由さのバランスをとる
33 振り返りの目的を意識させる
34 振り返りでは目標数値を提示する
35 ノートはその日に返す
第6章 数学的な考え方の育成がもっとうまくなる7の技
36 相反する2つの「だったら」
37 混沌を打開する「例えば」
38 実験範囲の拡張を促す「たまたまじゃないの?」
39 表現したいことの高まり「絶対に」
40 一般性の吟味「もし…だったら」
41 素直な疑問「でもさぁ」
42 数学的な考え方への確信「やっぱり」
第7章 板書がもっとうまくなる4の技
43 検索インデックスとなる1行目にこだわる
44 めあてとまとめの扱いを工夫する
45 子どものつぶやきを色チョークで明示する
46 1時間の流れを1枚で見せる
第8章 教科書の使い方がもっとうまくなる4の技
47 教科書の見せ方を少しだけ変える
48 教科書の考え方を予想させる
49 教科書の展開を少しだけ変える
50 単元末の練習問題の扱い方を工夫する
読めば算数の授業がもっとうまくなるおすすめの20冊
おわりに

最初から読んでも構いませんが,自分が興味のあるページから読み進め,読んだ内容を早速,教室で試されることをお薦めします。1回でうまくはいかないかもしれませんが,何回もチャレンジするうちに,腕前も向上してくるはずです。教師の腕前の向上は,すなわち目の前の子どもたちの学力向上を意味します!

いよいよ刊行『算数の授業がもっとうまくなる50の技』(明治図書)

5月29日,明治図書より新刊本が発売されます。
『算数の授業がもっとうまくなる50の技』

 算数の授業は,毎日1時間あります。毎日の算数授業の質をほんの少し高めるだけで,子どもは算数好きになります。ほんの少しの質のアップの蓄積が,子どもたちの思考力・判断力・表現力の向上,さらには学びに向かう力の向上にもつながっていきます。

では,どのように授業を変えればほんの少しの質のアップができるのでしょうか? 本書では,以下の視点で質アップの方法を紹介しています。

・子どもの問いを引き出し,つなぐ腕を上げる方法
・課題づくり・発問の腕を上げる方法
・子どもを見る腕を上げる方法
・話し合いづくりの腕を上げる方法
ノート指導の腕を上げる方法
数学的な考え方を育てる腕を上げる方法
板書の腕を上げる方法
教科書の使い方の腕を上げる方法

間もなく発刊です。どうぞお求めください!

2017年5月11日木曜日

半円をつなぐと・・・


直径が20㎝の半円を右図のようにつなげ,「端から端までは何㎝ですか」と尋ねます。
ここで子どもから,「端から端ってどこ?」と声があがります。端から端と言っても,縦方向もあれば横方向,さらには斜め方向もあります。子どもたちは問題文にきちんと向き合って,そこで感じた素直な思いを表現してきました。この場合の「端から端」は,左端から右端までの長さでであることを伝えます
さらに,「はみ出している長さを教えてほしい」という声もあがります。その部分が分からないと,端から端の長さは分かりません。はみ出している部分は8㎝です。

これらの情報をもとに,子どもたちは長さを求めます。「式も書ける」という声もあがります。この場合は,「8+20」又は「20+8」で28㎝になります。図をよく見れば,式で端から端までの長さを求めることができます。
 
 最初の長さを求めているとき,「どんな風につながるの?」という声が聞こえました。半円がさらに続く状態をイメージしているのです。子ども自らが,場面を拡張する姿もすばらしい気づきです。

そこで,右のように半円をつなげていきます。この場合は,「8+20×2」「20×2+8」で48㎝と求められます。
 計算をしながら「きまりがある」「きまりがわかった」と声をあげる子どもたちが生まれてきました。もう,子どもたちには,簡単に長さを求められそうです。

そこで,半円が合計26個つながった長さを考えさせました。子どもたちは,数字の式を作るだけではなく,「言葉の式も作れる」と考えました。この問題を言葉の式に置き換えると,次のようになります。
「半円の長さ×上の半円の数+ずれの長さ」
 実は,言葉の式に置き換えるときに子どもたちがこだわった部分があります。それは「ずれの長さ」です。この問題でのずれは8㎝です。しかし,「ずれはいつでも8㎝とは限らない」と子どもたちは考えました。ずれが9㎝や10㎝になれば,「ずれの長さ」の言葉の部分の数字も変わってきます。変わるものと変わらないものの存在にも,子どもたちは気付いたのです。

 この時間は「文字と式」の入り口の学習です。変わるものをaxなどの文字に置き換えて式を作る学習です。上の問題では,ずれの長さを8㎝と固定すれば,「20×a+8」という文字式になります。