2021年5月31日月曜日

時刻と時間が長さ・かさとつながる

 子どもたちにつぎの問題を提示します。

「午前7時50分に学校を出発したポチ君は,犬駅まで20分かかりました。犬駅についた時刻を求めましょう」

式が「7時50分+20分」であることは,すぐに理解できました。そこで,どうやって犬駅に到着した時刻を求めるのかを考えさせます。多くの子どもたちは,「筆算で計算した」と声をあげます。そこで,どんなふうに筆算を書くのかを考えさせます。

子どもたちは右のような筆算をノートに書きます。しかし,


本当にこのような筆算の書き方でいいのでしょうか? 「これでいいの?」という私の問いかけに対して,つぎの声が聞こえてきました。

「いいよ。だって,mLとLの時と同じようにすればいいよ」

「㎝と㎜の時もそうだよ」

「同じ単位で揃えて計算すればいいんだよ」

子どもたちは,当たり前のように「時」と「分」の部屋を分けて筆算をしていましたが,そこには前述のような既習の学びが隠されていたのです。水のかさ・長さの学習では,単位を揃えて計算するよさを学習しました。そこで学んで単位を揃えるよさが,時間の学習でもリンクされたのです。単元を超えた見方・考え方の共通性に気がつける子どもたちの視点,本当に素晴らしいですね。子どもたちには,「超すばらしい」マークを板書でプレゼントしました。

このあと,単位を揃えた筆算で計算を進めていきます。そのまま計算すると,答えは「7時70分」になります。これに対して,子どもたちが説明を始めます。

「1時間は60分でしょ。だから,70分は60分と10分に分けるでしょ。そのうちの60分は1時間だから,7時にあげる」

「分はまだ10分だけ残っている。だから,8時10分になる」

分の位の数字が60分を超えた繰り上がりになります。その繰り上がりの数字の処理の仕方について,子どもたちは分かりやすく説明していくことができました。

量と測定領域の「時刻と時間」「水のかさ」「長さ」が,計算方法を考えることで一気につながった1時間となりました。



情報が多すぎて無理!

3年生の「時刻と時間」の 学習の一コマです。子どもたちに,次の問題を提示します。

「ネコランドのチケットセンターを出発してから1時間40分後の午前11時30分に,ネコタワーの頂上に着きました。チケットセンターを出発した時刻を求めよう」

実際の問題文は,ホワイトボード6行になりました。子どもにとってはかなりの長文です。そのため,「文が多すぎて無理」「よく分からない」という声が聞こえてきました。問題文の量の多さに圧倒された素直な声です。

しかし,子どもたちは必死で文章に向き合っていきます。やがて,「そういうことか」「ひき算かな」「繰り下がりがあるかな」と声がきこえてきます。

子どもたちが考えた式は,「11時30分−1時間40分」です。しかし,この式を見ても首を捻っている子どもの姿が見えました。なぜ,その式になるのか納得できていないのです。そこで,前述の式だと考えた理由を説明させます。

ところが,言葉の説明ではまだ納得できていない子どもの姿が見えました。そこで,「まだ,もやもやしている人がいるね。そんな時はどうしたらいいかな」と投げかけます。

ここで生まれてきたのが,「図にしたらいい」という声でした。

子どもから生まれてきたのは,右の図です。この図を,


クラス全体で読解していきます。

「タワーの頂上に着いたのが,11時30分」

「チケットセンターを出発した時刻が分からないから,?にした」

「チケットセンターからタワーまで1時間40分かかったから,それを矢印にした」

「?はと同じ意味だから,+1時間40分=11時30分になる」

を知りたいから,11時30分−1時間40分にすればいい」

これで,前述の式でよい理由を全員が納得しました。式が見えたので,実際に計算をしていきます。すると,今度は子どもたちの計算結果にズレが生まれました。また,計算しながら「意味不明」「できない」という声も聞こえてきました。

そこで,このズレを取り上げていきます。右のように筆算で考えた式を提示し,気持ちを全員で読解します。

「30分−40分ができないから,1時間繰り下げる」


「11時が10時になる。100分繰り下げたから,130−40=90分」

「90分は60分と30分。60分は1時間だから,9時に1時間あげる」

「だから,10時30分」

10時30分と答えが出たものの,納得できない表情の子どもがいます。

「なんか変だよ。10時30分だと,タワーに着いた11時30分の1時間前にしかならないよ」

この声に「確かに」と納得の声があがります。計算のどこかが間違えていたようです。一体,どこが間違えていたのでしょうか。子どもたちに考えさせます。

「1時間は60分でしょ。だから繰り下がりも60分だよ」

「さっきのは,繰り下がりを100分にしている」

「160−70の繰り下がりなら,10を繰り下げる。でも,この計算は,10繰り下げてはだめだよ」

「60分繰り下げて計算するから,60分と30分で90分にして考える」

時間の計算は,分の単位が60進法です。この部分が3年生の子どもには間違えやすいのです。前述のような計算をする子どもがいるのは,これまでの既習の整数の計算をもとに考えているので自然な姿だとも考えられます。この既習と比較することで,60進法の特殊な時間の計算の仕方について考えていくことができました。




2021年5月24日月曜日

騙されていたのは子どもたち!?

 「差が小さい方が勝ちゲーム」でできた計算カードの得オザを順に計算してきました。ここまでに子どもたちは,繰り下がりのない計算に取り組んできました。

 この時間は,計算がまだ終わっていない計算カードに取り組んでいきます。当初,「一の位が繰り下がる」と子どもたちが考えた計算カードが,まだたくさん残っています。そこで,「一の位が繰り下がる計算からやってみよう」と投げかけます。

ところがこのカードを見た子どもたちから「あれ?十の位も繰り下がるのがあるんじゃない」と声があががります。子どもたちから指摘されたのは,「600−404」のカードです。その理由を次のように説明します。

「一の位の1から4は引けないでしょ。だから,十の位から借りたいけど,十の位が0だから借りられない」

「そうすると百の位から借りるから,2回繰り下がるん


じゃないかな?」

「十の位が0と0だと2回繰り下がるんだ」

「だったら,他にも十の位が同じ数字があるよ。411−318も1と1で同じだ」

「581−284も十の位が8と8で同じだ」

「前のたしざんのだまされたシリーズと同じだ。繰り下がり1回に見えて,本当は2回あるんだ」

たしざんの学習では,見た目は繰り上がりが1回なのに,実際に計算をすると繰り上がりが2回という計算がありました。その構造と,今回の繰り下がりの構造が似ているという考えです。数字の構造に目を付けた子どもたちの見方は鋭いですね。

子どもたちの指摘は,さらに続きます。

「百の位が同じカードもあるよ。490−481は百の位の数字が4と4で同じだ」

「571−568も百の位の数字が5と5で同じだよ。だまされたシリーズで繰り下がりは2回ありそうだ」

同じ位に同じ数字があれば,繰り下がりの回数が増えるのではないかと考えたのです。十の位の見方を百の位にも拡張するよい見方です。

さて,子どもたちの予想通りに指摘された計算カードはだまされたシリーズになるのでしょうか。先ずは,簡単に計算ができそうな百の位の数字が同じ「490−481」から取り組みます。

計算が始まってしばらくすると,次の声が聞こえてきます。

「あれ,繰り下がりがない」


「百の位は繰り下がらない」

「1回しか繰り下がりがない」

子どもの想定外の結果となりました。「568−571」にも取り組みますが,この計算も繰り下がりは一の位の1回でした。だまされたシリーズにだまされてしまったのは子どもたちでした。

では,十の位の数字が同じパターンの繰り下がりの回数も1回なのでしょうか。「600−404」に取り組みます。計算が始まってしばらくすると「ごちゃごちゃする」という悲鳴が聞こえてきます。

「一の位の0から4は引けないでしょ。十の位から借りたいけど,0で借りられない」

「だから,百の位の6から十の位の十を貸して,その十の位からまた一の位に貸す」

「繰り下がりが2回あるからごちゃごちゃする」

「もし,660−404の計算だとしたら,一の位が引けなくても,十の位の6から借りられる。でも,600の場合は借りられないからごちゃごちゃになる」

「600−404」と「660−404」を比較することで,前者の計算の大変さを分かりやすく説明していくことができました。

十の位が同じ数字のパターンは,だまされたシリーズと同じで繰り下がりが2回ありそうです。この日はここで時間切れとなりましたが,計算を構成する位相互の数字に目を付けることで,繰り下がりの回数を考えていこうとするよき見方が生まれた1時間となりました。



2021年5月21日金曜日

簡単な計算はどれ?

 前回の「小さい方が勝ちゲーム」の続編です。前回は,ゲ


ーム結果の数字カードを繰り下がりの回数に応じて仲間分けしました。

本時は,実際の計算に取り組んでいきます。子どもたちに,次のように投げかけます。

「簡単に計算できそうなのは,どのカードですか?」

子どもたちは,「繰り下がりがない」カードを一斉に指摘します。しかし,繰り下がりのないカードは8枚もあります。そこで,次のように問いかけます。

「8枚の中で,一番簡単に計算できそうなのはどれかな?」

これは全員が同じカードを指摘します。「509-508」のカードです。そこで,なぜこのカードが簡単だと考えたのかを尋ねます。

「だって,508と509は1違いだから簡単」

「数字が,508,509とつながっているでしょ。だから簡単」

「同じ数字が2つある」

「百の位は5と5,十の位は0と0。だから計算が簡単」

「同じ数字の位が,百の位・十の位と続くから簡単」

「316と306も同じ数字の位が2つあるけど,百の位と一の位と離れているから少し難しい」

子どもたちは,2つの数字の位同士の関係を比べ,簡単に計算できそうな理由を論理的に説明していくことができました。

子どもたちが選択した「509-508」は簡単に計算できるのかを確かめます。計算に取り組んだ子どもからは,「簡単」「すぐにできた」と声があがりました。

次に子どもたちが簡単だと考えたのは,「750-650」です。同じ数字の位が2ヵ所あります。それは十の位・一の位と連続しています。この計算も,「簡単」だと子どもたちは取り組み後に声をあげました。

その後,「316-306」などの同じ数字の位が離れている計算,「491ー200」の02つある計算,「718ー707」の同じ数字の位が1つしかない計算と取り組みました。いずれの計算も「簡単」と子どもたちは声をあげました。

ひきざんの学習では,教師から与えられた計算問題を解いていくだけの展開になりがちです。しかし,本実践のように子どもに選択させる場面を設定することで,目的意識をもった展開を進めることができます。






2021年5月19日水曜日

差が小さい方が勝ちゲームをしよう!

 算数の時間,「差が小さい方が勝ちゲーム」を行いました。以前に行った「1000に近い方が勝ちゲーム」の第2バージョンです。前回はたしざんの導入としての扱いでしたが,今回はひきざんの導入としての扱いです。

 さて,今回のゲームは,隣の友だちとの差が小さい方が勝ちという点が前回のゲームとのルールの違いです。


 ジャンケンが終わり,ペアの得オザカードをホワイトボードに貼り出していきます。その後,次のように投げかけます。

「この中で一番簡単に計算できそうなカードはどれかな」


子どもが真っ先に指摘したのは509オザ・508オザ」です。そこで,このカードを選んだ気持ちを尋ねます。

「だって,繰り下がりがないから簡単だよ」

「1違いだら,計算が簡単ですよ」

「繰り下がりがないカードは,まだあるよ」

 

 子どもたちは,繰り下がりの回数に視点を当てて,カードの仲間分けを始めました。その後,「繰り下がりがない」「一の位だけ繰り下がる」「十の位だけ繰り下がる」カードに仲間分けを進めていきます。


 この中で子どもたちの考えが分裂したのが581オザ・284オザ」「410オザ・318オザ」です。多くの子どもたちは当初は「一の位だけ繰り下がる」と考えていました。ところがしばらくすると,次の声があがります。

「あれ?」

「十の位も繰り下がる」

「前の『だまされる事件』に似ている」


「だまされる事件」というのは,「578+522」が見た目は一の位の繰り上がり1回なのに,実際には十の位も繰り上がり,結果として繰り上がりが2回あるタイプの計算のことです。一の位の計算結果が,十の位に影響を与えるパターンです。この計算を「スリップ計算」と子どもたちは命名しました。


今回のカードも,仕組みがそれと似ていることに子どもたちは気付いたのです。一の位の計算結果が,十の位の計算に影響するというパターンです。この計算には「スリップ繰り下がり」と名前が付きました。


たし算での学びをひき算にも進んで活かそうとする子どもたちの視点,すばらしいですね!



2021年5月16日日曜日

繰り上がりは2回? 3回?

 「1000に近い方が勝ちゲーム」で,最後に残されたカードは,「578+522」です。この計算カードの繰り上がり回数を,2回と考える子どもと3回と考える子どもに判断が分裂します。ズレが生まれたのです。

先ずは,「くり上がり2回」と考える子どもたちの気持ちを読解します。

「一の位は1+8,百の位は5+5で繰り上がる」

「だから,繰り上がりが2回ある」

パッと見ると,一の位と百の位が繰り上がることはすぐに見えてきます。しかし,この読解の後,「でも」「そうじゃなくて」という声が多数聞こえてきます。

まだ繰り上がる場所があるという声です。しかし,実際に計算を行わないとその真偽を確かめることはできません。そこで,ノートに「578+522」を計算することにしました。

筆算で計算する子ども,位分け分けで計算する子どもがいました。

位分け分けで計算すると,繰り上がりの回数が一の位と百の位にあることは分かります。しかし,十の位が繰り上がることは,見た目では分かりにくいことを子どもたちも実感します。

「筆算みたに繰り上がりの数が書いてないから,分かりにくい」

「十の位は,繰り上がっていないように見える」

「横に計算すると,分かりにくい」

一方,筆算については次の声が聞こえてきます。

「筆算は,繰り上がりが分かりやすい」

「十の位も1+7+2で10だから繰り上がるね」

「筆算は,一の位も十の位も百の位も縦に計算するから分かりやすい」

「くり上がりの回数は,縦に計算する筆算が分かりやすいね」


繰り上がりの回数に着目することで,筆算のよさに子どもたちは気付くことができました。

「1000に近い方が勝ちゲーム」結果は,「499+499」という結果だったチームが1000から2オザ差の988オザでチャンピオンとなりました。



2021年5月13日木曜日

いつの間にか筆算しちゃってた・・・

子どもたちが「簡単」だと考えていた百の位をたす「位分け分け」方式ですが,繰り上がりが増えてくると「正しく計算ができるか心配になる」と考える子どもたちが増えてきました。一方,「位分け分けは,いつでも簡単だよ」と考える子どもたちもいました。この段階では,計算方法の簡便さの優劣を子どもたちはそれほど感じてはいません。

 

1000に近い方が勝ちゲーム」で計算が終わっていないカードが,まだ数枚残っていました。そこで,それらのカードの計算に取り組みます。


最初に取り組んだのは,「540+579」です。子どもたち


のノーを見て回ると,11人の子どもたちが「位分け分け」で計算間違いをしていました。約1/3に当たる子どもたちが計算間違いをしていたことになります。繰り上がりが増えると,やはり計算が面倒になってくるようです。


この事実に出合った子どもたちからは,「やっぱり筆算の方が簡単だと思う」と声があがります。気がつくと,勝手に筆算をしていた子どももいました。子どもは困ったことがあると,よりよい方法を主体的に模索していくのですね。


いつの間にか子どもたちが勝手に取り組んでいた筆算は,本当に簡単なのでしょうか? 540+579の筆算に全員に取り組ませることにしました。筆算自体は,これまで十の位同士の計算でも経験しています。その経験を基に計算を進めていきます。

「筆算は簡単だ」

「すぐに答えが出る」

「位分け分けだと,同じ位を線でつないだあとの計算(合計)が大変」

「位分け分けは,筆算の倍の計算がいるから大変」


「筆算」と「位分け分け」の両方の計算を体験することで,その違いを子どもたちは意識することができました。この後も数問の問題に,「位分け分け」「筆算」の両方の方法で取り組んでいきます。

多くの子どもたちは,「筆算が簡単」と考えました。筆算の簡便さが実感できたようです。一方,「位分け分けがやっぱり簡単」と考える子どももいます。子どもの思いは様々です。




2021年5月12日水曜日

繰り上がりが2回になると・・・

1000に近い方が勝ちゲーム」でできた得オザカードには,ま


だ計算が終わっていないものがあります。繰り上がりのあるカードがたくさん残っています。そこで,これらのカードの計算を,子どもたちが「簡単」だと考えている「位分け分け方式」で順に取り組んでいくことにしました。

 最初に計算したのは,「514+512」です。百の位が繰り上がる計算です。「簡単」と考えていたにも関わらず,何人かの子どもたちが計算ミスをしていました。しかし,多くの子どもたちは「単なる計算間違いだから大丈夫だよ」と声をあげます。「位分け分け方式」に自信をもっているようです。


 その後も,百の位だけ・十の位だけ繰り上がる計算(写真右側列)に取り組みました。答えを求めることはできました。


 「やっぱり簡単」という声が聞こえてきます。一方,「繰り上がりが増えたら,どうかなあ?」「間違えやすくなるんじゃないかな?」と「位分け分け」の限界を感じる声も聞こえてきました。


 繰り上がりが増えても「位分け分け」は簡単にできるのでしょうか? 今度は繰り上がり2回の計算に挑戦していきます。

最初の問題は,「609+482」です。子どもたちのノートを見ていると,計算を間違える子どもが激増しました。「繰り上がりをたすときに間違えちゃう」と計算間違いの理由を説明する声があがります。


次に挑戦したのは,「618+528」です。この問題も計算間


違いの子どもが見られます。この計算に取り組んでいるとき,筆算をしている子どもがいました。理由を尋ねると,「心配だから,筆算で確かめた」と説明します。「位分け分け」に不安を抱いている証拠です。素直な思いを表現してくれました。

 

 繰り上がりが増えても「位分け分け」は簡単なのか,子どもたちに最後に尋ねます。心配と考える子どもが,以前よりも増えてきました。



愉しい算数授業を創る研修会延期のお知らせ

 6月に大阪府池田市で開催を予定していました「愉しい算数授業を創る研修会」は,新型コロナ感染拡大が落ち着きを見せない現状を踏まえ,延期することといたしました。愉しみにされていた先生方,申し訳ありません。既にお申し込みをいただいた先生方には,事務局より連絡をさせていただきます。

この会は対面での実施を基本としています。そのため,延期という措置を執らせていただきました。

延期日程は,現段階では9月4日(土)を予定しています。正式に決まりましたら,お知らせいたします。6月に会にお申し込みの先生方は,無条件で9月の会の予約決定とさせていただきます。

新型コロナ感染が1日早く落ち着くことを祈るのみです。

2021年5月11日火曜日

繰り上がりがあっても簡単?

1000に近い方が勝ちゲーム」のその後です。ゲームを終えたペアの各得オザをカードに書きます。ホワイトボードには,得オザカードが貼られていきます。

そして,次のように投げかけます。

「この中で,簡単に計算できそうなカードはあるかな?」


子どもたちは,

600+308は簡単

300+431も簡単だよ

「だって,繰り上がりがないから」

「だから,計算がややこしくない」


子どもたちは,2枚のカードを簡単だと判断した理由を説明します。繰り上がりに視点を当てた,数字に対するよき見方が生まれてきました。


その後,800+471も繰り上がりがない」という声があがります。しかし,カードをよく見ると百の位が繰り上がっています。

「百の位が繰り上がるよ」

「でも,0が多いから簡単だよ」


「800+471」が簡単に見えた理由を子どもたちが読解していきます。単に考えを否定的に見るのではなく,このように簡単だと思えた理由を推論できる見方はとても素晴らしい姿です。

 

800+471」が取り上げられたことをきっかけに,子どもの視点は繰り上がりのあるカードへと向かっていきます。先ほどのカードの出現が,カードを整理していく上でのよい視点の転換を導き出したと考えられます。


「百の位が繰り上がるのは,まだあるよ。514+512もそうだよ」

「十の位だけ繰り上がるのもあるよ。380+389がそうだよ」

「繰り上がりが2回あるのもある。798+520は,百の位と十の位が繰り上がるよ」

「だったら,十の位と一の位が繰り上がるのもあるよ。499+499だよ」

「百の位と一の位が繰り上がりのもあるよ。618+528だよ」

「まだあるよ。578+522も2回繰り上がるよ」

「あれ? これって3回繰り上がるよ」

「えっ? 2回だよ」

「どういうこと?」


 繰り上がりを巡って,様々な考えが生まれてきました。この段階では,繰り上がりを視点に数字カードを仲間分けすることが目的です。「578+522」の繰り上がりの回数を巡るズレは,クラス全体で考えていく価値あるものです。(これは後日,じっくりと取り組みます)ここでもよい見方が生まれてきました。

 

 この時間は,「600+308」「300+431」「800+470」にチャレンジしました。いずれも「位分け分けは簡単」と子どもたちは考えました。ここまでは順調です・・・。



2021年5月10日月曜日

1000に近い方が勝ちゲームをしよう!

3年生「たし算とひき算」の導入場面です。


3種類のパターンブロックを使って,「1000に近い方が勝ちゲームをしよう」と投げ掛けます。次の3種類のブロックを子ども達に配布します。使用したのは,パターンブロックです。


六角形(100オザ):4個 

○四角形(10オザ):9個 

○三角形ブロック(1オザ):10


 合計500オザがゲーム開始当初の持ちオザです。最初の自分の得オザを考える時点で,子どもからは,次のこえが聞こえてきました。


「100オザが4個なら,400オザになる」

「10オザが9個なら,90オザ」

「400オザと90オザをたせば,490オザになる」


 これらの声は,位取り記数法の考え方に沿ったものです。ゲームのルールを確認する活動の中から,本単元で大切な位取りの見方が生まれてきました。


 ジャンケンをして,パーで勝ったら100オザ,チョキで勝ったら10オザ,グーで勝ったら1オザ分のブロックが相手からもらえます。ジャンケンは5回。

 このゲームは個人戦ではありません。隣の席の友だちとの合計が1000オザに近いペアが勝ちです。従って,ジャンケンで負け続けても必ずしも悲しむ必要はないのです。


 5回戦のジャンケンが始まります。子ども達は相手を変えながら,ジャンケンを進めていきます。5回戦が終わった後,得オザをノートに書かせます。各ペアの得オザを合計しますが,百の位同士のたし算は未習です。そこで,「211オザ」「350オザ」を獲得したペアの計算方法を全員で考えていくことにしました。


 この場面で「筆算でできる」という声もあがりました。筆算は抽象度が高く形式的な計算方法です。この場面で大切な数の仕組みを考えるには,筆算を使わない方法を考えることに価値があります。そこで,筆算を使わない計算方法を考えさせました。


 多くの子ども達が考えたのが,右のような計算方法です。同じ位同士の数を線でつなぎ,それらを計算していく考えです。ここで引かれた線の意味を,ていねいに読解していきます。この読解活動の中で,子ども達は線を引く順番にこだわりました。


「百の位から線を引いちゃあ,ダメだよ」


「一の位から引かないと,繰り上がりがあったら困るよ」

「この計算は繰り上がりはないけど,繰り上がりがあると計算が大変になるから,一の位から計算しないとだめだよ」

「どこで繰り上がりがあるか分からないから,一の位から計算しておいた方がいいよ」


繰り上がりの存在を意識することで,計算の手順を見直す声が生まれてきました。これは「位分け分け」と2年生で名付けた計算方法です。子どもたちは,「位分け分け」なら「簡単に計算ができる」「位が大きくなるまで品さんはもう必要ない」と考えています。本当に筆算は必要ないのでしょうか?


本実践は,『板書で見る全単元・全時間の授業3年上」(東洋館出版社)のアイディアを参考に展開をアレンジしたものです。